LAOWA 15mm F2 Zero-D
星景写真用に LAOWA 15mm F2 Zero-D を購入してしまった。 星景写真には SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art や TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD を使っていたけど、残念ながら
SONY α9Ⅲ を購入するためにSIGMAもTAMRONも手放してしまったからだ。
LAOWA 15mm F2 Zero-D のレビュー LAOWAの製品としては 15mm F4 WIDE ANGLE MACRO を持っているけど、明るくないし実質的にAPS-Cサイズ用の光学性能だし、古い SAMYANG 14mm F2.8 ED AS IF UMC も光学性能的に難点がある。 仕方ないので LAOWA 15mm F2 Zero-D と SAMYANG XP 14mm F2.4 とを比較検討して LAOWA 15mm F2 Zero-D を購入してしまった。 この製品自体は2017年発売なので最新レンズではないけど『まっ、イイかぁ』と、軽率 に買ってしまったのは事実ではある。
製品の外観
製品の外箱
『アレぇ、携帯電話だっけ?』と思うほどオシャレな外箱だ。 付属品は前後キャップと専用フードとビニール袋(ポーチ?)と説明書・保証書などだけで、携行用のケースは自前の物を用意する必要がある。 もっとも、僕はメーカー純正のポーチなどは使った事が無いので不要だけどね。 このレンズに使用するレンズポーチは手持ちの中で最も小さいポーチがジャストフィットだった。
鏡筒 一眼レフ用との比較
これまで使っていた14mmクラスのレンズは一眼レフ用であったため、図体が大きく前玉が出目金タイプのレンズだった。 LAOWA 15mm F2 Zero-D はミラーレス専用設計となり、前枠にΦ72mmのフィルターが装着できる「普通の」広角レンズとなっている。 大きさも一眼レフ用レンズと比べて小型である。 鏡筒に対候性はないけど金属製で高級感があり、作りはとても良い。 なお、小型ではあるけど500gの重さがあるので高級な重量感である。 これが400gだったら安っぽさを感じたかも知れない。
このレンズはフォーカシングで鏡筒の全長に変化はなく、後群が前後するインナーフォーカスタイプになっている。 ちなみに、SONY FE 14mm F1.8 GM はミラーレス専用設計だけど出目金タイプを採用している。
また、カメラとの通信接点がなくメカ的に脱着するバヨネットが存在するだけのシンプルなマウントになっている。 それから防塵・防滴構造ではないせいか、マウント部にゴムスカートなどはないのでバヨネット脱着がずいぶんと軽い のが気になる。
フード 付属の金属製フード
花弁型の金属製フードが付属していて、前枠外側のバヨネットに取り付けるタイプだ。 ただし、回転→圧入タイプなので、装着ロックも装着完了クリックも無いので
ぶら提げて持ち歩くとフードが回ってしまう 事がある。 せめてクリックだけは欲しかった。 ストリート写真撮影でこのレンズを使用する時は念のためセロテープで固定した方が良い。
また、フードの内側には遮光線が刻んであるけど表面が光っている。 効果のほどは判らないけど、フード内面は艶消し処理して貰った方が安心感がある。
絞り環 絞り環とクリックレバー
絞りには一段ごとにクリックがあり、クリックのオン・オフが可能だ。 絞り環はグリスが効いていて重めの操作感で、指掛かりの平目ローレットが浅いので操作し難い。 個人的にはもっと軽い操作感の絞りの方が良いと思う。 また、操作が軽いクリックのオン・オフレバーが絞り環に隣接しているので、重めの絞り環を操作するときにオン・オフレバーに触れて切り換わっちゃうのも困りものだ。
距離環 距離環
距離環の操作感は適度な重さがあって使い易い。 メートル指標は白でフィート指標は赤なのだけれど、∞指標が赤いので暗い環境下では見えにくい。 ∞指標はメートル指標の並びにあるのだから白い方が視認し易くて良かったと思う。 なお、距離環の回転方向がソニー製品とは逆回りなので、ちょっと面食らう。 LAOWAの製品はレンズによって距離環の回転方向が異なる様なので、コストアップになっちゃうけど各マウント向けの距離環回転方向にして欲しかった。
脱着指標 判り難い脱着指標
脱着指標はレンズマウント面に赤点が打ってあるだけなので、レンズをカメラに装着するときにカメラのマウントに嵌る位置がとても判り難い。 マウント面だけでなく、レンズ側面にも脱着指標を設けるべきで、ソニー純正レンズの様にマウント付近の鏡筒側面に白い凸ポッチを付けて欲しかった。 タムロン製品などには判り難い白線が印刷してあるだけで、サードパーティーも白い凸ポッチの脱着指標を付けてほしい。
レンズの画質 レンズ構成
レンズ構成は2枚の非球面レンズを含む9群12枚構成で、高性能な予感を感じさせる断面図だ。 恐らく、絞りより後ろのレンズ群を一体として繰り出すインナーフォーカス方式だと思われるけど、日本人光学技術者が設計した様なエレガントなレンズ配置に中国の光学設計能力の高さを感じる。 なお、残念ながらレンズの画質評価用として高画素カメラを持っていないので、手持ちの SONY α9 などの24メガピクセル機による評価なのはご容赦願いたい。
解像感描写
絞り:F2
絞り:F2.8
絞り:F4
絞り:F5.6
絞り:F8
絞り:F11
実写画像を見ると画面中央付近は開放でも良く解像してくれるけど、画面周辺に向けて徐々に解像が悪くなる。 とはいえ、開放F2の明るいレンズとしては画面周辺部も素晴らしい性能だと思う。 なお、若干だけどオーバーの像面湾曲があるので、画面隅の画質悪化を避けて画面全体の解像感を優先するなら像高70~80%ほどの位置でピントを合わせるのが良さそうだ。 絞りをF2.8にすると画面周辺の解像が少し向上し、F4まで絞れば画面全域で良い解像感となり、絞りF5.6だと文句ない解像感になる。
写真は掲載していないけど、F16だと回折の影響でちょっと解像が悪くなり、F22だと明らかに解像が悪くなる。 レンズの解像性能は、たぶん SONY FE 14mm F1.8 GM に劣るだろうけど、クセが少ない優れた光学性能を持つレンズだと思う。
ところで、今回の撮影は絞り値に応じてカメラのシャッター速度を一段づつ変化させている。 従ってレンズのTナンバーが正確なら画面中央の露出は揃うハズだ。 このレンズの場合、開放F2の絞り位置とF2.8の絞り位置とでは光量変化が1段ではなく0.5段ほどしかない。 また、最小絞りであるF22ではF16からの光量変化が僅かしかないので、レンズの絞り調整がかな~りいい加減な感じだ。 絞り優先AEで撮影している人は気が付かないかも知れないけどね。
点光源描写
絞り:F2
絞り:F2.8
絞り:F4
絞り:F5.6
絞り:F8
絞り:F11
絞り開放だと画面周辺に若干のコマ収差が発生して点像が変形しているけど、なんとか我慢できるレベルだろう。 F2.8に絞れば画面周辺の点光源描写も少し向上し、F5.6まで絞ると画面全域で充分な点光源描写となる。 撮影した写真の用途にもよるけど、僕の24M機なら『絞り開放で撮影しても良いかなぁ』と感じた。 恐らく使用機材が50~60Mの高画素機なら我慢できないと思う。 なお、これらは絞り優先AEで撮影し、絞り開放(F:2)の画像だけは点光源描写が比較し易い様に周辺光量補正を掛けて現像してあります。
SONY α9Ⅲ の低輝度AEは妙で、上記写真では絞りF8と絞りF11とでシャッター速度が5秒→6秒しか変化していない。 なので、撮影したF8より小絞り側は暗めに写っている。 BV:-10を境に低輝度環境は写真も暗く写すAEアルゴリズムなのかもしれないけど、余計なお世話だし急に変わり過ぎる...ひょっとしたらバグなのかも知れない。
ディストーション
ディストーション
「Zero-D」と謳っているので、ディストーションは良く補正されている。 カメラの補正が掛からないJPEGでも問題なく使えるレベルだし、正確さが必要ならRAWに微妙な補正を加えれば完璧な「Zero-D」となるだろうけど、僕には補正の必要はないと思う。 最近のレンズはデジタル補正を前提とした光学設計が多いので、この性能は素晴らしいと言える...というか、通信接点すら無いフルマニュアルレンズなので、こうでないと扱い難い。
周辺光量
絞り:F2
絞り:F2.8
絞り:F4
絞り:F5.6
絞り:F8
絞り:F11
カメラによる補正が掛からないので、JPEG画像にも周辺減光がある。 ただし、なだらかな減光なので嫌らしい感じは無く、一般撮影では表現手段として好ましい印象がある。 F4に絞れば気にならなくなるけど、絞り開放撮影の星景写真などではRAW画像に補正を加えれば良いし、素直な減光なので補正も難しくは無い。
なお、上記の写真は クリエイティブルック:FL を使ってみた。 空の色が青じゃなく水色に表現されるけど「FL」って「Film Like」の事なのだろうか? 納品するスポーツ写真には使えないけど、個人的な写真としては嫌いじゃないなぁ。
玉ボケ
画面周辺の玉ボケは放射状に延びぎみだけど、玉ボケが良く維持されているし明確な年輪ボケもみられないので優秀と言える。 玉ボケ内の波面は均質じゃないけど、目立つ不整脈は無いので殆ど気にならない。
SONY FE 20mm F1.8 G の綺麗な玉ボケには劣るけど、なかなか良い。 なお、丸い玉ボケなのは絞り開放だけで、少しでも絞ったら7角形の角ボケになる。 玉ボケを重視するなら絞り開放で撮影するのが良いだろう。 ちなみに、RFマウントとZマウント用レンズは5枚絞りらしい。
ボケ味
このレンズのボケ味はなかなか良いと思う。 背景ボケに嫌らしい二線ボケの傾向が少ないので背景のザワツキが控えられている。 一方、前ボケはやや二線ボケ傾向なのでシーンによっては騒々しくなる場合がある。 また、周辺グルグル傾向もないので画面全体が綺麗にボケてくれ、嫌味の無い写真が得られる。 焦点距離が15mmの超広角レンズだけど開放がF2と明るいし、1/4倍まで寄れるレンズなのでボケを活かした写真が撮れる。 玉ボケ具合も良いこのレンズは、大抵はボケが無い星景写真には勿体ないなぁ と思わせる。 星景写真でも星空をボカすと面白い効果が得られるだろう。
光芒の出方とゴースト
絞り:F2
絞り:F2.8
絞り:F4
絞り:F5.6
絞り:F8
絞り:F11
このレンズは円形絞りになっていないので、絞れば14本の光芒がハッキリと現れ易い。 円形絞りを採用したレンズはかなり絞り込まないと光芒が得られないけど、このレンズは夜景点光源などではF5.6からハッキリとした小光芒が得られ始める。 太陽などの強烈な光源を入れるとフレアの影響で判り難くなるけど、やはりF5.6あたりから光芒(サンスター)が得られる。
また、強烈な光源を入れればゴーストが「ちゃんと」発生する。 ゴーストは対角線的なゴーストが出るけど、夜景の点光源などではゴーストの存在はまったく判らない。 恐らく、センサー面の反射光が絞り付近のレンズ面で再反射して像を結んでいるのだろう。 また、条件にもよるけどF2~F2.8では光源(対角線ゴーストにも)を中心としたリング状のゴーストと光源と反対側に赤いフレアが発生することがある。 これらも夜景の点光源などではゴーストの存在はまったく判らない。
リアフィルターホルダ改造 フィルターホルダー式に改造
このレンズは先端にΦ72mmのフィルターが装着できるので、レンズ前枠にシートフィルターを装着するのも簡単だ。 しかしながら、シートフィルターをレンズ前面に装着すると夜露に悩まされるので、外気に触れないレンズ後端にシートフィルターを装着したいのだ。
そこで、レンズ後端の遮光環を外してシートフィルターホルダーを装着してみた。 利用したフィルターホルダーは Haida の SONY FE 14mm F1.8 GM 用交換ホルダーで、LAOWA 15mm F2 Zero-D とはホルダー取付け仕様が異なる(LAOWAの遮光環はネジ込み式)し、本来はガラス製フィルターを装着するものだけど、金属製ホルダーの外周を削ってレンズマウント部に無理やり圧入してある。 後玉がケラレている様にみえるけど、画面の短手方向なので全く問題ない。
お勧め度: LAOWA 15mm F2 Zero-D の利点は
価格が比較的安価 開放値がF2と明るい 明るいのに画質がそこそこ優れている 前枠にΦ72mmフィルターが装着できる 最短撮影距離が0.15m(1/4倍)まで寄れる ディストーションが良く補正されている 対して欠点は
通信機能すら無いフルマニュアルレンズなので不便 絞り値によっては想定通りの光量変化がない フードにロックもクリックも無く回り易い マウントが緩め というところだろう。 僕の用途としての評価は★3.5個という感じかなぁ。 ちょっと厳しめだけど、発売された2017~18年当時なら★4個に評価したと思う。 シートフィルターホルダーが標準装備だったら★0.5個追加しただろう。
星景写真撮影用のレンズにするつもりなのでAFできない「フルマニュアルレンズ」でも苦にはならないけど、スナップ的な撮影に使おうとすると扱いが面倒なのは確かで、マニュアルフォーカスのみだとしてもレンズ通信により焦点距離や絞り値情報などがカメラに伝達されればより便利に使えただろう。 価格も SONY FE 14mm F1.8 GM が¥188,100円(マップカメラ)に対して、安めとは言っても¥123,750円(マップカメラ)なので購入には勇気が必要だ。 お金持ちの人には迷わず SONY FE 14mm F1.8 GM を勧めるけど、僕の様な金欠老人には良い選択肢だと思う。
あとがき
VIDEO
都会の夜空 SONY ILCE-9 LAOWA 15mm F2 Zero-D
上弦の月夜だったけど LAOWA 15mm F2 Zero-D を使って SONY ILCE-9 のインターバル撮影機能で夜空を絞り開放で撮影してみた。 東京の夜空は明るいので1駒だけの撮影だと全く星景写真にならないので、比較明合成とか動画にして星の軌跡を浮かび上がらせた。
LAOWA 15mm F2 Zero-D は前枠にΦ72mmの通常のネジ枠フィルターが装着できるのが特徴だけど、僕はソフト効果用シートフルターをリアに装着したいのでレンズを改造してしまった。 標準でシートフィルターホルダーが装備されていれば喜ぶ人が多いと思う。
LAOWAの製品はAFや通信などに対応した製品は殆ど ないけどマクロレンズなどの個性的な製品が多い。 一般人にはお勧めし難いけど、機能的に「欲しかった」人にはツボに嵌るレンズがみつかるだろう。
ところで、通信機能すら無いフルマニュアルレンズを SONY α9Ⅲ に装着して、絞り開放で昼間に撮影をしてみると、SONY α9Ⅲ の『あれれれれぇ?』という仕様が発覚した。 SONY α9Ⅲ に通信機能の無いレンズを装着すると、最高シャッター速度が1/8000秒に制限される様だ。 最低感度がISO:250なので、超高速電子シャッターが使えないと明るいレンズの絞り開放撮影では露出オーバーになってしまう。 初代 α9 ではISO:100で最高速1/16000秒シャッターが使えたのに2.3段もの仕様後退は許せない。 これは早急に仕様変更して貰わないと困りますねぇ。 ファームウェアのアップデートを待つしかない。
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