OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4 の分解メンテナンス

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OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm
OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm
 このレンズは1972年に発売された OLYMPUS M-1 の標準レンズで、システム名称も M-SYSTEM(米谷システム) となっていた。 ライカ社から製品名変更の申し入れがあり、1973年からカメラ名は OLYMPUS OM-1 に改められ、システム名称も OM-SYSTEM となりました。 M-1 / M-SYSTEM は最初の量産ロット分だけだった様です。 私の個体は初期の OLYMPUS M-1 に装着されていたレンズで、最近になって絞りが粘り始めた事に気が付いた。 LEDライトでよ~く見るとレンズ内部にゴミも入っているので分解・メンテナンスする事にした。

粘った絞りの修理

絞り羽根は綺麗
絞り羽根は綺麗
 僕のレンズにはカビも曇りもキズもなく、症状は絞りの粘りだけである。 絞り羽根は綺麗だし油滲みなどは見当たらないので、粘りの原因は絞り駆動系レバー系が怪しいとにらみ、マウント側から分解してみます。
マウント枠の取り外し
マウント枠の取り外し
 絞り伝達レバーには段が付いていて遮光板を外しにくいので、先ず黒い遮光板の黒皿ビス(黄〇)を外して遮光板を取り除き、マウント面の銀皿ビス(赤〇)を外せばマウント枠が外せる。 M-SYSTEMはマイナスビスなのでキズを付け易いので注意が必要です。
マウント枠内の絞り駆動レバー回転部
絞り駆動レバー回転部
 マウント枠の裏側には絞り駆動レバーが回転する様に(大きな赤まる部分)装着されていて、このレバーの回転が粘っていた。 なお、このレバーと連動する鏡筒内部の絞り駆動レバーは、絞り込んだ指を離せば元気良く開放へ戻るので問題は無さそうである。
潤滑油を注油
潤滑油を注油
 ということで、原因はマウント枠内の回転レバーが粘っているからでした。 マウント枠内の粘った絞りレバー回転部を洗浄してから、インジェクターでちょっとだけ注油したら弱いバネだけでもスムースに開放側へ戻ってくれる様になった。 今回と同じ病気を発症しているズイコーレンズも多いのではないだろうか?
 なお、注油後は余分な油分を綺麗に拭きとり、組み戻す前に暫く放置して揮発する油分を飛ばしておかないとレンズ内クモリの原因になってしまう。

レンズ各面の清掃

レンズ内のゴミ
レンズ内のゴミ
 細かい汚れがある前玉と後玉以外に内部のレンズ面にもゴミが付着しているので、分解して清掃する必要がありそうだ。 マウントを外してあるので後群から攻める事にし、後群を基台から外して絞り前後面までは後ろ側から清掃した。
絞り環の縦穴に入っているクリック用ボールとバネ
クリック用ボール
 前群は、フィルター枠を押さえている銘板をゴムリングで回して外せばフィルター枠が外れる。 フィルター枠が絞りリングを押さえていて、絞りのクリック用ボールとバネが絞り環の縦穴に入っているので無くさない様に気を付ける必要がある。 このクリック用ボールやバネはグリスによりフィルター枠裏側に付着している場合もあるので注意しましょう。
 このレンズの前群は基台に接着剤を使って硬く止められているらしく、無水エタノールで接着剤を溶かしながらトライしても緩まない。 根気よくやるしかないのだけれど、僕は根気がないので諦めて、前群は第1~3・6面だけを清掃し、第4~5面は放置した。
 綺麗なレンズだと思っていたけど、使用に伴う経年のゴミが入っていたり、カビが発生しそうな面もあったので、クリーニングして気持ち良くなった。 また、距離環が軽くなっていたのでヘリコイドグリスも入れ換えて、各パーツを組み戻して清掃作業を終えた。

ブラウニング対策

紫外線照射
紫外線照射
 このレンズはトリウム酸化物を含む硝材を前群の凸レンズに使っているアトムレンズである。 1年ほど前に紫外線を照射してブラウニング対策を実施してあるので、現在は殆ど黄変が目立たないけれど、今回も紫外線ランプを照射しておいた。
 なお、同じ銀枠 G.ZUIKO 50mm F1.4 であっても生産途中で硝材・設計の変更が行われたみたいで、製造番号が新しい個体は黄変しないらしい。 また、後期の黒枠レンズは明らかに光学系が設計変更され、マルチコーティング化されている。

実写確認

絞り:開放 絞り:F2.8 絞り:開放
絞り:開放 絞り:開放 ヘリコイド付きアダプタで接写 絞り:開放 ヘリコイド付きアダプタで接写
 SONY ILCE-9 に装着して実写確認してみた。 特許情報から読み解かれる描写とは違う感じだけど、特許データと実物とは違う事は普通な事だ。 ボケは充分滑らかだけど後ボケに輪郭が現れる場合がある。 絞り開放ではフレアでほわほわな描写で、ちょっと絞り込むとコントラストが増して線が太めの描写になる。 普通の遠景描写や中景描写だけじゃなく、ヘリコイド付きマウントアダプタを用いて接写の実写もしてみたけど、意外とイケる描写だろう。
 本家 LEICA の SUMMILUX は使ったことが無いけど、このレンズは「和製ずみるっくす」と呼ばれることもあるそうだ。 本家がどんな描写なのか確かめたいけど先立つものがない。

あとがき

6群7枚構成の拡張ガウスタイプ
拡張ガウスタイプ
 この標準レンズは6群7枚構成の拡張ガウスタイプで中川治平氏による設計である。 後にこの構成と似たレンズが Carl Zeiss から Planar T* 50mm F1.4 として発売されている。 同時代の他社製品の様に解像力重視だった標準レンズたちとは違った思想で設計されたレンズだと言える。 線が太めだけどコントラストが高い描写特性で、小型軽量の OLYMPUS M-1 に似合う優秀な大口径オールドレンズである。

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