smc PENTAX-D FA 50mm F2.8 MACRO - 鍛えれば万能レンズ

0

smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO
 本レンズはボディー駆動式AF対応のレンズで、等倍までの撮影が出来る便利な標準マクロレンズである。 今世紀に発売されたレンズではあるけど、レンズ構成は恐らく1988年設計なので、オールドレンズとした。

smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO - 2004年発売

 旭光学の標準マクロレンズは1964年に発売されてから長い間 50mm F4 という仕様だった。 1964年当時はプリセット絞り式の等倍マクロだったが、1966年に自動絞り対応となったが仕様はハーフマクロへとスペックダウンした。 開放F値が暗いので、暗いペンタックスのファインダーではピント板がザラついて快適とは言えないレンズだった。 1983年にようやく 50mm F2.8 と一段明るい仕様に変更されて快適に覗ける様になり、1988年に自動絞りのまま等倍まで接写可能な 50mm F2.8 マクロレンズへと設計変更された。

レンズ構成

smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO レンズ構成
レンズ構成
 1988年に発売された smc PENTAX-F 1:2.8 50mm MACRO と基本的なレンズ構成は同じで、7群8枚構成の等倍マクロレンズである。 第2~6レンズは「でんぐり返したクセノター型」構成で、たまに見かける構成だ。 その後方にある第7~8レンズ(凹凸ダブレット)は近距離補正レンズである。 また、ちょっと離れて前方に配した凹メニスカスの第1レンズによりレトロフォーカス風にしてバックフォーカスを確保しているのだと思う。 「でんぐり返したクセノター型」を拡張ダブルガウス型に置き換えれば、同じ2004年に発売された SIGMA 50mm 1:2.8 EX DG MACRO の構成になる。 ただし、ペンタックスは前世紀の1988年に発売していた事は先に書いた通りだ。

フルタイムマニュアルをメカ的に解除するCLAMPスイッチ
CLAMPスイッチ
 このレンズはボディー駆動方式のオートフォーカスに対応していて、オートフォーカス時に距離環が回転しないフルタイムマニュアルになっている。 また、鏡筒横に「CLAMP」と書かれたスライドスイッチがあり、「オン」にすればフルタイムマニュアルが解除されて距離環に触れてもメカ的にピントが変化しない(内部に伝わらない)様になる。
 0.195mの至近端までフォーカスするとレンズの内筒がにゅるにゅると飛び出してくる。 前群(第1~6レンズ)と後群(第7~8レンズ)の繰り出し移動量が異なるフローティング機構搭載で、AF動作トルクを軽くするためにヘリコイド方式ではなくカム方式によるフォーカシングとなっている様だ。 にゅるにゅる出て来るカム機構は2つの内筒を異なる比率で移動させて主レンズ群と補正レンズ群とを制御している。 レンズ先端(フィルター枠)への衝撃などでカムコロが破損し易いので、ぶつけない様に注意して扱う必要がある。 ちなみに、伸びた中筒を触ってみると少しガタツキがあり、メカ構造的に無理がある気がする。

鏡筒内筒がフートの先端まで伸びて来る
最大繰出し状態
 付属フードはフィルター枠ではなく繰り出されない距離環前縁に装着するバヨネットタイプで逆付け収納ができる。 標準レンズ用とは思えないほど大きめのフードが付属し、このフードを装着して最大繰り出しにすると、ほぼフード前面までレンズが繰り出される。 このフードを装着していれば繰り出したときの情けない容姿を隠せるし、ぶつけた衝撃によるカム破損も防げるだろう。
 また、マクロレンズにありがちだけど、距離環敏感度が高いのでピント合わせに神経を使う。 ピントリングの操作感が良くないので微妙なピント操作がやり難いのが残念だ。

マウント内側にアルミ箔を挟んで片ボケ調整した
片ボケ調整
 特に残念なのはこの個体には片ボケがあり画面の中央でピントを合わせると、画面右側は良いのだけれど画面左端は解像が低下していた。 絞れば片ボケの影響が幾分かは軽減するけど左隅の解像不良は残っている。 片ボケの原因は判らないけど、レンズマウント内側の一部にアルミ箔を4~6枚ほど挟んで(実際には2ケ所に挟んだ)像面の平行度を修正して左右の描写が同じになる様にしてある。 なお、この作業を行う場合はフィルタ枠に静圧を掛けない様にフードを装着して行った方が良いだろう。 ちなみに、smc PENTAX-FA 35mm F2 AL も片ボケがあったので同様の調整を施してある。 ペンタックスのAF世代レンズは工作精度が悪くなっている気がするなぁ。

描写特性

遠景描写

smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8(片ボケ調整前)
絞り:F2.8(調整前)


smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F4
絞り:F4
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F5.6
絞り:F5.6
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F8
絞り:F8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F11
絞り:F11
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F16
絞り:F16
 絞り開放から良い描写で絞り込んで行くと周辺光量落ちが改善して行くけど、描写はあまり変わらないほど開放から良い描写だ。 絞りがF16だと回折の影響でぼやけが表面化し始める。 周辺光量落ちはF5.6で判らなくなりF8で解消する。
 無限遠では少しだけ負の像面湾曲があり、画面隅では近距離側にピントが移動気味だ。 この像面湾曲が無ければ絞り開放から画面極隅まで素晴らしい描写だったであろう。 先にもかいたけど、この個体には片ボケがあったので像面の平行度を修正する事で画面内の均質化を図ってある。 片ボケ調整前の写真では画面左下隅がかなり前ピンになっていて、家屋の白壁や白い自動車が解像していない事が判る。 ただ、挟み込むアルミ箔が少し多すぎたかも...

一般撮影

 記載の絞り値などは記憶に頼っているので間違っているかも知れません。

smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F5.6
絞り:F5.6
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F8
絞り:F8?
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F8
絞り:F8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F8
絞り:F8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
smc PENTAX-D FA 1:2.8 50mm MACRO 絞り:F2.8
絞り:F2.8
 F2.8開放でも充分な描写だし遠景でも「片ボケ調整」で鍛えておけば充分に使えるが、大伸ばしにするなら一段ほど絞った方が良いだろう。 絞り開放ではハイライト部の前後ボケ周囲に色が付く「色ボケ」があるけど、目立つ程ではない。
 画面内に太陽を入れ込んでも逆光フレアが少ないのは好感がもてるが、ゴーストが少ないのは少し寂しい。 ぐいぐい寄っても絞り開放でも良い描写なので、絞りは安心して深度制御に利用できる。

 このレンズは年寄りの散歩レンズとして万能レンズとして活躍してくれるが、個人的にはハーフマクロでも良いので、開放がF2だったら嬉しかった。

あとがき

 年寄りはマクロレンズが大好きだ。 散歩に持って行くレンズがマクロレンズじゃないと道端の草花に寄れないからだ。 だたし、等倍まで寄れるからといって寄り過ぎると体のブレや被写体のブレで、ピント合わせに難儀するのは仕方ない。
 ちなみに、2002年に社名を「旭光学工業株式会社」から「ペンタックス株式会社」へ変更したので、2004年に発売されたこの商品の記事タイトルには「ASAHI OPT.」は付けなかった。
Sponsored Link
Sponsored Link

0 件のコメント :

コメントを投稿

Sponsored Link