CONTAX IIIa - 1951年発売

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CONTAX IIIa Color Dial
CONTAX IIIa Color Dial
 戦前の1936年に発売されたセレン光電池式電気露出計内蔵の CONTAX III を、戦後に小型化・改良してツァイス・イコンの本拠地である西ドイツのシュトゥットガルトで製造したカメラが CONTAX IIIa である。 戦前の CONTAX III は 基線長89.5mm、ファインダー倍率0.7倍、有効基線長約63mm であったが、CONTAX IIIa は小型化により 基線長74mm、ファインダー倍率0.65倍、有効基線長約48mm と測距精度が低下した。

CONTAX IIIa Color Dial

 CONTAX IIIa 自体は1951年に発売されたが、1954年にシャッター速度ダイヤルの色が変更されたマイナーチェンジモデルを Color Dial と呼んでいる。 低速側シャッター速度は黒色のままで、X接点を示す1/50秒が黄色となり、それより高速側を赤色に色付けされた。 また、シンクロ接点は一般的なDIN規格に変更されている。 このカメラは1961年まで製造・販売され、IIa / IIIa が最後のツァイス・イコン製「CONTAX」であった。

カメラ正面

カメラ正面
カメラ正面
 正面向かって右側にファインダー窓があり、左側は距離計窓である。 バルナック型ライカと異なり、ファインダーと距離計は同一の接眼部から覗く様になっている。 使い勝手の点ではコンタックスのファインダーの方が使い易い。 中央のレンズマウントには内爪と外爪の二種類が装備され、内爪は回転ヘリコイドになっている。 ヘリコイドには無限遠ロックがあり、ファインダー窓斜め下のポッチを上方に引けばロックが解除される。 また、距離計窓上方にあるダイヤルがヘリコイドと連動していて、右手人差し指でピント調節が可能だ。 この距離ダイヤル部にも連動した無限遠ロック解除ボタンがあり、このダイヤルを回すときは必然的に無限遠ロックが解除される。 残念な事に回転が重いので、左手でピント調節した方がやり易い。

カメラ上面

カメラ上面
カメラ上面
 右側には巻き上げノブがあり、時計方向へ回して巻き上げ・シャッターチャージする。 巻き上げノブの上面はフィルムカウンターになっていて、フィルムを装填した後に駒数をゼロに合わせておく。 その中央にシャッターボタンがある。
巻き上げノブの基部にシャッター速度ダイヤルがあり、シャッター速度の変更はダイヤルを持ち上げて所望速度の位置で指を離せばダイヤルが落ちてシャッター速度が設定される。
 左側には巻き戻しノブがあり、カメラ底面の巻き戻しボタンを押しながら時計方向へ回せばフィルムを巻き戻せる。 巻き戻しノブの基部にあるのは露出計用調整ダイヤルでメーター自体を回転させている。 露出計用調整ダイヤルに刻まれたシャッター速度とその内側に刻まれた絞り値との組合せが適正露出を表している。
 中央にはセレン式露出計をメーター指針表示窓がとアクセサリーシューが備えられている。 カメラの製造番号はアクセサリーシュー刻まれている。

カメラ背面

カメラ背面
カメラ背面
 左側にファインダーの覗き窓があり、ファインダー視野中央に距離計が重なって見え、二つの像を一致させる事でピント調節する。 露出計ブロックの下方にあるのは露出計の定点調整ネジで、穴の奥にネジがある。 このネジで定点板を移動させて定点が暗黒状態のメーター針と一致する様に調整する。 更にその下にあるのがシンクロターミナルで、一般的なDIN規格のものになっている。

露出計

露出計の操作
露出計の操作
 僕の CONTAX IIIa は随分前にアメリカ人から買ったカメラだけど、その時には既にセレン式露出計が死んでいた。 メーター針が入射光に応じて振れないカメラなので、正確には判らないけど露出計の使い方を記載しておく。
  1. 巻き戻しノブ基部にあるフィルム感度を合わせる。
  2. 露光計の蓋を閉める。
  3. 巻き戻しノブ基部のダイヤルを反時計方向に突き当たるまで回す。
  4. メーター針が▲に合っている事を確認する。
  5. 露光計の蓋を開ける。
  6. 巻き戻しノブ基部のダイヤルを回してメーター針を定点に合わせる。
  7. 巻き戻しノブ基部のダイヤルが示す絞りとシャッターの組み合わせ読み取る。
  8. 撮影目的に応じた絞りとシャッターの組み合わせを設定する。
蓋の軸を押せば露出計蓋が開く
軸を押せば露出計蓋が開く
 メーター針の調整ができているなら2~4は必要ない。 このカメラの露出計は絞り設定やシャッター速度設定に連動するものは一切なく、単に露出計が乗っかているだけなのだ。 その程度の露出計の代償として、こんな不細工なカタチになってしまった。 中古市場では露出計が無くてスッキリした顔立ちの CONTAX IIa の方が人気があるのは当然だろう。
 ちなみに、百均でソーラー電卓を買ってきてセレン素子を入れ換えれば露出計が復活しそうな気がするので、そのうち試してみようと思う。

鎧戸式フォーカルプレーンシャッター

鎧戸式縦走りシャッター
鎧戸式シャッター
 CONTAX のシャッターは縦走り金属シャッターで、その構造から鎧戸式シャッターと呼ばれた。 ライカはゴム引き布幕の横走り式フォーカルプレーンシャッターを採用していたが、CONTAXは金属の縦走りシャッターとし、太陽が結像してもシャッターに穴が開かないとか、動体の変形が少ないとか、高速シャッターの精度が高いなどの優位性を謳っていた。 この鎧戸式シャッターが壊れたら代替部品は無いだろうから大切に扱わないとならない。

ファインダー視野

CONTAX IIIa のファインダー視野
CONTAX IIIa のファインダー視野
 ファインダー視野の中央に黄色く色付いた四角い二重像合致式距離計枠が配置されている。 写野を示すフレーム枠などは無く、見える範囲の外周が標準レンズの写野範囲という事である。 パララックス補正もされないので、かなりアバウトなビューファインダーである。 距離計の視認性は悪くなく充分にピント合わせが出来るが、枠のエッジが明確じゃないので上下像合致式の様な使い方は無理だ。
 戦前の CONTAX III は 基線長89.5mm、ファインダー倍率0.7倍、有効基線長約63mm であったが、CONTAX IIIa は小型化により 基線長74mm、ファインダー倍率0.65倍、有効基線長約48mm と測距精度が低下した。

標準レンズ

Carl Zeiss Sonnar 1:1.5 f=50mm
Carl Zeiss Sonnar 1:1.5 f=50mm
 標準レンズは回転ヘリコイドになっているマウント内爪に装着して距離計と連動する様になっていて、標準レンズ以外は固定されているマウント外爪に装着する。 外爪に装着したレンズはレンズ自体のヘリコイドでピント調節する事になるけど、内爪の回転ヘリコイドと連動することで距離計が働く仕組みになっている。 ちなみに、外爪にレンズを装着するとレンズマウントが無限ロック解除ボタンを押しやるので無限遠ロックが自動的に無効となる。
絞り:F1.5(開放)
絞り F:1.5
絞り:F5.6
絞り F:5.6
絞り:F11
絞り F:11
遠景点光源実写 絞り:F1.5(開放)
絞り F:1.5
遠景点光源実写 絞り:F5.6
絞り F:5.6
距離環1mでの遠景点光源玉ボケ 絞り:F1.5(開放)
絞り F:1.5
絞り:F1.5(開放)
絞り F:1.5
絞り:F1.5(開放)
絞り F:1.5
3群7枚構成のSonnarタイプ
レンズ構成
 このカメラに装着している標準レンズは3群7枚構成の Sonnar 50mm F1.5 で、ツァイス・イコン社のベルテレ博士が1929年に発明したレンズ構成である。 その当時としてはF1.5を達成した銘玉なのではあるけど、中央部のシャープな描写に対してコマ収差が立っている画面周辺は残念な描写になる。 玉ボケはバブルボケっぽくて面白いけど、周辺玉ボケがおむすび状になるのでかな~り嫌らしい。 「オールドレンズらしい描写」といえば終わっちゃうけど、絞っても周辺画質がなかなか改善されないので、日の丸写真にして主題を強調する構図で撮るレンズだと思う。

あとがき

CONTAX IIIa Color Dial と LEICA IIIg
CONTAX IIIa Color Dial と LEICA IIIg
ライカ 対 コンタックス
 LEICA III型 や CONTAX I型 が販売されていた戦前の日本ではライカ教とコンタックス教に分かれて、どちらのカメラが優位かの論争が巻き起こっていた。 そんなおり、アサヒカメラに『「ライカ」と「コンタツクス」とどちらがよいか?』なんて記事が掲載されたものだから、輸入代理店を巻き込んで宗教戦争が勃発してしまった。 この宗教戦争は戦後になっても小競り合いが続いていた。
 今のカメラ雑誌は広告収入の関係からメーカの都合が悪いことは書かなくなって久しいけれど、当時は随分と辛辣な記事もフツーに掲載されていた。 困るのは判っていない評論家が書いた記事を読者が信じちゃう事だった。 活字は真実...という時代だったからねぇ。

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