LEICA Ⅲ - 1933年発売

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LEICA Ⅲ型
LEICA Ⅲ型

 この LEICA 型にて レンズ交換距離計低速シャッター大特徴が実現された。 シャッター最高速は1/500秒で、1/20秒から1秒までの低速シャッターが使えるようになり、50mm対応ファインダーの横に1.5倍の視度補正機構付き距離計がある。 LEICA Ⅲ型のアメリカでの呼び名は LEICA F型 で、日本での呼び名は LEICA DⅢ型 だった。 ちなみに、このカメラからカメラ本体にストラップ環が付けられた。


LEICA Ⅲ

 今では塗装や刻印が劣化して「おばあちゃん」になっちゃったけど、その昔は美人...というより小さくて可愛いらしい娘だった。 製造台数は1933年から1939年までの間に約76,000台が製造され、ブラックペイントが約27,000台でクロームが約49,000台らしい。 LEICA Ⅲ型が製造されたのは第2次世界大戦前なので非常に作りが良かったと言われているが、実際には高精度なダイカスト加工前の時代だったので、高度な職人技による板金加工で作られたカメラという事なのだろう。

シャッターダイヤル

シャッターダイヤル
シャッターダイヤル

 LEICA Ⅲ型の上面には高速用シャッターダイヤルがあり、1/500秒から1/30秒までのシャッター速度が選択できる。 シャッター速度の選択はシャッターがチャージされた状態で、ダイヤルを持ち上げながら回して所望のシャッター速度をアクセサリーシューの指標に合わせて選択する。
 低速シャッターを利用する場合は、高速用シャッターダイヤルで「20-1」を選択したうえでカメラ前面の低速用シャッターダイヤルで1/20秒から1秒のシャッター速度を選択する。 2種類のダイヤル軸があるのでちょっと面倒だ。

ファインダーと距離計

距離計とファインダー
距離計とファインダー

 撮影者側から見るとファインダーと距離計が並んで配置され、左側が距離計で右側がファインダーである。 ファインダーは50mm専用のシンプルなファインダーで、倍率が0.5倍で見口が小さいので決して覗き易くはない。 ファインダー内にはブライトフレームも無く、視界全体が50mmの視野となり、当然パララックス補正もされない。 50mm以外のレンズを使う場合は外付けのファインダーを装着する必要があるけど、50mmレンズでも外付けファインダーを使った方が良いと思う。

 距離計も覗き易くは無いがけど、充分使用できる距離計である。 ピントを合わせる部分が拡大される様に倍率が1.5倍になっている。 これは基線長の短さもカバーしていて、ピント合わせ精度を確保している。 また、距離計の接眼部に視度補正レバーが付いていて、使用者の視度に合わせられるのは親切な仕様である。 ただし、視度調整レバーが直ぐに動いてしまうので調整し直す必要があり、しまいには面倒なので視度調整しないで使っちゃう。 視度が合ってなくても感で二重像を合致させられるけど、視度調整が付いているという事は90mmなどでは精度がギリギリなのだろう。

 LEICA Ⅲ型 と LEICA Ⅲa型 は距離計とファインダーの間隔が20mmも離れていたけど、LEICA Ⅲb型 では6mmに狭められ、さほど眼を移動させなくても使い分けられるように改善されている。

フィルム巻き上げ

カメラ右肩回り
カメラ右肩回り

 フィルム巻き上げノブを時計方向に回してフィルム巻き上げとシャッターチャージを行う。 シャッターチャージに合わせてシャッターダイヤルが回転するので、シャッターダイヤルにストレスを与えない様にしよう。 また、レリーズ時にもシャッターダイヤルが回転するのでストレスを与えるとシャッター速度が変わってしまうので注意が必要だ。
 なお、レリーズボタンの前方にあるのはフィルム巻き戻しセットレバーで、撮影時はAポジションにしておき、巻き戻しの時にA⇒R側にすればフィルムの巻き戻しが出来る

フィルム装填

フィルム装填
フィルム装填

 フィルム装填はカメラの底蓋を外してスプールを引き抜き、そのスプールにフィルムのベロを挟み込んでフィルム装填の準備をする。 次に、パトローネとスプロケットとを一緒にフィルムを溝に落とし込む。 その際に「テレホンカード」を差し込んでシャッター幕側をガードする様にすればフィルム装填がやり易い。 今となってはテレホンカードを知らない人もいるのかなぁ? 僕はカメラケースのポケットにテレホンカードを忍ばせている。
 フィルムとスプールをカメラに落とし込んだらテレホンカードを抜きとる。 底蓋を装着・ロックしたら巻き戻しノブを時計回りにそっと回してフィルムの弛みを取っておこう。 フィルム巻き上げ・レリーズを2回行ったらカウンターダイヤルを回してゼロにセットする。 なお、この巻き上げ操作に応じて巻き戻しノブが反時計方向に回っている事を確認しておく。 巻き戻しノブが回らなかったらフィルムのベロがスプールから外れている可能性が高い。

巻き戻し

カメラ左肩回り
カメラ左肩回り

 巻き戻し切換えレバーをA⇒R側にし、巻き戻しノブを時計回りに回せばフィルムを巻き戻せる。 巻き戻しノブは引き上げられるので、引き上げて回せば楽に巻き戻しができる。
 背蓋開閉式じゃないので、フィルムのベロは残さず巻き取ってしまった方がシャッター幕に優しいと思う。 なお、巻き戻しが終わったら切換えレバーをR⇒A側に戻すことを忘れない様にしよう

標準レンズ

Elmar f=5cm 1:3.5 Red Scale Elmar
Elmar f=5cm 1:3.5 Red Scale Elmar

 このカメラに装着しているレンズは Elmar f=5cm 1:3.5 で、沈胴式の赤エルマーと呼ばれているレンズだ。 沈胴してしまえば大変コンパクトになり収納に便利だし、カメラのハードケースも沈胴レンズの装着を前提に薄く作られている。 レンズ前面で行う絞りの設定がやたらにやり難く、フードに装着して絞り操作が行えるアダプタが発売されていた。 レンズ構成はテッサーと同じ3群4枚であるが、Zeissの特許があるため、絞りが第二レンズ(凹レンズ)の前に配置されているけど、良く写る優れたレンズである。 詳しくはこちらを参照してください。

沈胴レンズの操作
沈胴レンズの操作
 撮影に際しては沈胴しているレンズを引き出し、突き当ったら時計方向に回せばロックされる。 収納時はその逆で、反時計方向に回してロック解除されたらレンズをスルスルと沈胴させる。 なお、沈胴したらレンズをクルクル回せるけど、無限遠状態で「Leitz」刻印が下になる様にしておかないと壊したりガタツキ発生の原因になるので注意しよう。

 ピント合わせはレンズ基部のノブで操作し、最短撮影距離は約3.5フィート(約1メートル)で、レンズヘリコイドの回転に合わせてカメラ距離計の二重像が連動して動く。
 なお、無限遠ロック機構が付いていて、ピント操作ノブをカメラ側に押し込んで回せば無限遠から抜け出せる。 逆にそのまま回して無限遠にすれば自動的に『カチッ』とロックされる。 ちなみに、この赤エルマーは1954年製なので、LEICA Ⅲ にとっては娘みたいに若いレンズだ。

あとがき

最初のⅢと最後のⅢを手に取ると良く「育った」事が判る
最初のⅢと最後のⅢを手に取ると良く「育った」事が判る

 バルナック型ライカは1911年にカール・ツァイス社からライツ社に移籍(ツァイスでは正社員にして貰えなかったらしい)したオスカー・バルナック氏が試作した「Urライカ」が始まりだそうだ。 1926年に発売された LEICA A型 が最初の量産機で、レンズは固定式だし距離計も低速シャッターも付いていなかった。 1933年に発売されたこの LEICA Ⅲ型 で「」が示す通り レンズ交換・距離計・低速シャッター の3機能が揃った事になる。 第二次世界大戦を挟んでモデルチェンジ重ねたバルナック型ライカも、1956年発売の LEICA Ⅲg型 が最後となり、1954年に発売されたM型ライカに替わっていった。

 LEICA Ⅲ はおばあちゃんなので、スローシャッターが「チリ..チリ.....チリ..」とかなり遅くなっている。 そろそろオーバーホールしたい時期だけど、年寄りは簡単に骨折したりするので、専用工具を揃えたり充分な準備をするにはお金が掛かりそうなので、専門業者に依頼した方が良いかも知れない。

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