PENTAX LX はペンタックスの35mm判一眼レフで初めてのプロ用高級機で、旭光学創立60周年(1919年設立)を記念してローマ数字の60を意味する「LX」と命名されたらしい。
PENTAX LX
その当時はファインダー交換式であることがプロ用フラッグシップ機であり、PENTAX LX もファインダー交換式である。 なお、中版一眼レフである PENTAX 6x7 もファインダー交換式のプロ用カメラで、それまでは PENTAX 6x7 が旗艦であった。
露出制御は絞り優先のAEを搭載し、1/75~1/2000秒の高速側とバルブはメカ式に制御される横走りシャッターを搭載している。 また、世界初の防塵・防滴構造としてプロ機らしさに一役かっている。 以下に PENTAX LX の特徴的な項目に絞って書いておく。
測光方式
ダイレクト測光用集光レンズ |
測光方式はIDM(ダイレクト測光)方式で、ファインダー側には測光機能は無くボディー側で測光される。 レリーズ前にファインダーを覗いている時の事前測光は主ミラー背後のサブミラーによりミラーボックス下面に配置された測光素子で測光している。
絞り優先AE時には、露出中のフィルム面(シャッター先幕も使用)の反射量により適正露出にしているので、レリーズ前に表示されるシャッター速度は単なる参考値でしかない。 このため、フィルムを装填しないで絞り優先AEでレリーズすると、黒い圧板を測光するのでスローシャッターになってしまう。
サブミラー範囲は狭い |
また、事前測光ではサブミラーの範囲しか測光できないので、画面周辺に街燈などの強い輝点があっても事前測光では反応しないのに、実際に絞り優先AEでレリーズすると数段早いシャッター速度で切れてしまうので、思ったより露出アンダーの写真になる。 ファインダー表示から『+1.5段の露出補正を掛けよう』と思っても、実際の露出が異なるのでどうしたら良いか判らなくなり『せめてAEロック機能があればなぁ』とため息をついてしまう。
PENTAX K2DMD には便利な「メモリーロック機能」があったのに、PENTAX LX ではなぜ省いてしまったのだろう?
ちなみに、同年に発売された LEICA R4 も PENTAX LX の事前測光と同じような測光システムを搭載しているが、大きなサブミラーを搭載していているのでちゃんと中央重点測光になっている。 また、LEICA にはメカ切換え式のスポット測光まで搭載されていて、絞り優先スポット測光時にはAEロックされる仕様で『さすがだなぁ』と思わせる。
ファインダー内表示
ファインダー内表示 |
昔の PENTAX SP などと比べると格段に見やすいファインダーだけど、ザラつきは残っている。 情報表示はファインダー視野外上部に絞り直読窓があるけど、眼の位置によっては見えなくなる。 眼鏡利用者で接眼レンズを上から覗く人は直読窓の存在に気が付かないかもしれない。
ファインダー視野内右側にシャッター速度値が縦に並んでいて、シャッターダイヤルの選択状況は緑色の透過バーで示され、視野外右側には指針代わりのLED列が配置されている。 LEDの色は1/2000秒~1/30秒が緑色で1/15秒~4秒が黄色でLT.Bが赤色となっていて色により状況が判る。 露出補正を掛けるとAの上方に赤ベロ警告が出てくる。 デジタル表示だけどメーター表示の様なアナログ感も残したカラフルで賑やかな情報表示だ。
反射して見える速度値 |
面白いのは視野内のシャッター速度値で、暗がりでは見えなくなるけど眼を少し離してずらすと速度数値が反射して読める様になることだ。 恐らく、通常はファインダー像の光を速度数値が遮光して黒く見えているのだけど、眼を離すとファインダー逆入光が速度数値に反射して見えているのだと思う。 意図した設計かどうか知らないけど、ファインダー右側に暗がりがあってもシャッター速度が確認できるのはありがたい。
ちなみに、2000年に出たナチュラルブライトマットスクリーンなら明るくてピントの山を掴み易いらしく、PENTAX LX の測光はIDM方式なので問題なく利用できるらしい。
交換式ファインダー
ファインダーを外した状態 |
カタログ上のファインダー |
ファインダーブロックの左横のレバーを反時計方向に捻ればロックが解除され、ファインダーを接眼側にスライドさせて外す事が出来る。 装着時はレールを合わせてロックされるまで前方へスライドさせれば良い。 「ファインダー交換は、真のプロフェッショナル仕様の証し。」と謳っている通り、ウェストレベルファインダーやアクションファインダーなど充実していた。
標準の FA-1 ファインダーには-1.5~0ディオプターの視度調整が付いていて、ファインダーを外してひっくり返せば設定ダイヤルがある。 ファインダーを覗きながら調整できないのはちょっと頂けない。 人によってはトンガリ頭の FA-2 が良いという人も居るけど、僕は FA-1 の方が安定感があって好きなデザインだ。
なお、脱着レバーの中央にあるボタンは露出補正ダイヤルのロック解除ボタンで、ファインダー内の測光表示開始ボタンも兼ねている。
ストラップ
ネジレるのが気に喰わないストラップ仕様 |
カメラ前面の隅3ケ所にストラップ用の専用ラグが付いていて、ここに専用のストラップアイレットを装着する。 右側のラグは上隅だけで右下隅はグリップ装着ソケットである。 通常は右上と左上のラグを使ってストラップを利用するのだけれど、アイレットがくるくる回るのでストラップのネジレ(売却したPENTAX 6x7も同じだった)が気になってしまうのは僕だけだろうか?
Anchor Links の応用 |
右側ラグを使って専用グリップを装着出来る。 グリップは右上ラグに引っかけてから右下のソケットにネジで固定する。 カメラが比較的小型なのでグリップがあった方がホールドが良いのだけれど、グリップを装着するとストラップは左側上下のラグを使う事になる。 そうすると、カメラを縦位置でぶら下げる事になり、個人的に我慢できない仕様なのだ。 ラグを装着改造した Grip B をたまに見かけるけど、負荷的に問題ないのか心配になってしまう。
結局、僕のストラップ対応策は、左側はそのままアイレットを使用し、右側は Anchor Links をストラップに刺して Grip B の隙間で吊るすことでメラを横位置にぶら下げる様にしてある。 これまで Anchor Links を他のカメラでも運用していて全く問題は起きていなし、通常の Anchor Links の使い方と異なるので強度的な不安が無い訳じゃないけど大丈夫でしょう...多分。
安っぽいシャッター音
このカメラの感触で最も嫌いな点は、レリーズ時に「パイ~ン」とブリキのおもちゃの様な安っぽい残響音がするシャッター音だ。 バルブで確認すると、先幕走行時も後幕走行時も大きな残響がある。 どこかの金属板が共振して鳴っている感じだけど、僕のカメラの生産ロットの問題なのか全ロット共通の「残響」なのかは判らない。 「プロ用高級機」であるならシャッター音にも気を使うべきで、この音では写欲が一気に萎えてしまう...何ていうか、うるさくないのに撮った感のある萌える音にして欲しいんだよねぇ。
あとがき
PENTAX LX と FAレンズ |
プロ機なのでモータードライブや長尺フィルムバックなども揃えられ、20年以上も生産されたので、LX ゴールド(1981年)、LX チタン(1994年)、LX LIMITED(1995年)、LX 2000(2000年)などの限定モデルも発売された。 また、各種改造サービスもあったらしい。 旭光学は警察向けの売り込みも熱心で鑑識用カメラに採用されたり、近年では改ざん防止SDメモリカード(Write Onceメモリカード)に対応したりしている。 記憶があいまいだけど、警察向け Write Once対応カメラは一般販売しちゃダメだった様な...忘れました。
Kマウントなので絞り環が備わっている smc PENTAX-D FA MACRO 50mmF2.8 や smc PENTAX-FA 35mmF2AL などのAFレンズも装着して使用できるけど、距離環のフィーリングがイマイチなのが難点だ。
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