minolta MC ROKKOR-PG 58mm F1.2 - 銘玉・緑に光る鷹の目ロッコール

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minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm
 ロッコールレンズの中で最も明るいレンズで、大きさも重さも威風堂々とした標準レンズである。 また、決してバカ玉ではなく1960年代設計のレンズとしては素晴らしい描写性能をもっている。

minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm - 1973年発売

minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm レンズ構成
レンズ構成
 MC ROKKOR 58mm F1.2 は1968年に梅鉢タイプ金属距離環で発売され、1973年にゴム巻き距離環へデザイン変更された。 レンズ構成は発売当初から5群7枚の拡張ダブルガウス型である。 前側の貼り合わせを分離した6群7枚構成のレンズが主流になりつつあったが、ミノルタは古いタイプの拡張ダブルガウス型のままだった。 本レンズはゴム巻きにデザイン変更された後期型で、酸化トリウム含有硝材の置き換えが行われた様で、光学設計も微妙に変更されているらしい。
 この時代のロッコールレンズにはレンズ構成が表記されていて、このレンズは -PG と表記されている。 最初のPPentaの略で5群構成である事を意味していて、次のGはアルファベット7番目なので7枚構成である事を意味している。

緑に反射する2層アクロマチックコーティング
緑の鷹の目ロッコール
 ロッコールレンズは前玉のACコート(2層アクロマチックコーティング)が角度によって緑色に見える事から、『緑のロッコール』と呼ばれていた。 緑色に反射して綺麗なんだけど、このACコートは蒸着が弱いらしいので雑に拭くとキズが付き易いと言われている。 また、このレンズは獲物を狙う鋭い鷹の目に例えて『鷹の目ロッコール』とも呼ばれていた。 カタログ等で『鷹の目ロッコール』と謳われていた記憶は無いので、広告か何かだったかも知れない。 ちなみに製品名先頭の MC は Meter Coupler の略で、絞りリングに露出計連動カプラー爪が付けられた製品シリーズである。 

描写特性

遠景描写

minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F1.2
絞り:F1.2
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2
絞り:F2
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2.8
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minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F4
絞り:F4
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F8
絞り:F8
 遠景描写の絞り開放ではフレアが発生するけど解像感はある。 柔らかいフレアは輪帯の外縁付近のみが補正過剰になっているからなのだろう。 F2に絞ると画面周辺にフレア感は残っているけど中央付近はスッキリした描写になる。 F2.8なら極四隅以外は充分な描写になり、F4なら極四隅もシャープになる。
 また、素敵な周辺光量落ちがあり、F2.8で気にならなくなりF4でほぼ解消する。 明るいF1.2レンズとしては周辺光量落ちが少ない方だし、崖落ちしないので嫌いじゃない。

夜景描写

minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F1.2
絞り:F1.2
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2
絞り:F2
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2.8
絞り:F2.8
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F4
絞り:F4
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F8
絞り:F8
 絞り開放では輝点に盛大なフレアが発生し、画面周辺には大きなサジタルコマフレアが見られるけど、輝点が放射方向へ流れていないので非点収差が少ない事が判る。 F2に絞れば画面中央付近はスッキリした描写となり、画面四隅のサジタルコマフレアも半減する。 F2.8に絞れば画面隅でも夜景撮影で何とか使えそうな描写となる。 隅々まで点光源を点光源として撮影したい場合はF4~F5.6に絞った方が良いが、夜の街スナップならF2.8に絞れば充分だろう。

玉ボケ描写

minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F1.2
絞り:F1.2
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2
絞り:F2
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2.8
絞り:F2.8
 距離環を1mに設定して夜景を撮影してみた。 絞り開放では玉ボケ周囲にエッジが立つので若干シャボン玉ぼけ風になる。 また、画面周辺ではレモン型になるけど細くはないのでグルグルボケは目立たないだろう。 F2に絞ると既に8多角形ボケに見えてしまい、画面隅のボケ形状がちょっといびつになる。 F2.8に絞ると画面全域で形が揃った8角形ボケとなる。 もちろん非球面は使っていないので年輪などは現れないし綺麗な瞳が現れるので、できればF2.8まで円形ボケを維持する絞り羽根にしてもらいたかった。

一般撮影

minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F1.2
絞り:F1.2
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2
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minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2.8
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minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F1.2
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minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2
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minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2
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minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2
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minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F1.2
絞り:F1.2
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F1.2
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minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2.8
絞り:F2.8
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2.8
絞り:F2.8
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2.8
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minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F1.2
絞り:F1.2
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2
絞り:F2
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2
絞り:F2
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2
絞り:F2
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2
絞り:F2
minolta MC ROKKOR-PG 1:1.2 f=58mm 絞り:F2
絞り:F2
 F1.2開放では画面全体がフレアがかっているけど解像感はあると思う。 また、被写体にハイライトが無ければ激しいフレアは目立たなく、ソフトな描写という感じだ。 F2に絞ると覚醒した様にクリアな描写になり、画面極隅を除いて風景以外なら絞りF2.8で充分な描写だと感じる。 絞り開放ではフレアが多すぎるし絞りF2だともう少しソフトな感じも欲しいと思う場合がある。 絞りクリックがF1.2の次はF2になってしまうけど、F1.4とかF1.8とかのクリックがあればどうだったのか気になってしまう。 発色はニュートラルだけど色乗りはコテコテ系ではないと思う。

 後ボケに若干の硬さはあるけどスムースなボケ味だと思うが、ちょっと残念なのはハイライト部のボケ像周りに後ボケは緑色で前ボケは紫色に色が付く「色ボケ」がある事だ。 また、それなりにゴーストが発生するけど逆光フレアを含めて少ない方で、絞り込んだ場合のゴーストは効果として利用できるだろう。

 『鷹の目ロッコール(Hawk Eye)』と呼ばれていただけあって優秀なレンズだ。 絞り開放ではフレアが多いけど、少し絞り込めば素晴らしい描写となる。 絞りをF2で撮れば立体感を楽しめ、画面周辺が気になるシーンではF2.8以上で撮れば良いだろう。
 焦点距離が58mmなので50mmより少し長いだけだけど、撮影していると中望遠みたいに感じてしまうのはボケ量が大きいからかも知れない。 開放でのフレアが少なかったら文句ないけど、1960年代設計のF1.2レンズとしては銘玉と呼べるだろう。

あとがき

 以前『このレンズは酸化トリウム硝材を使っているので黄変しちゃうだろうなぁ』と思い込んでいたが、何十年経っても黄変症状は現れない。 海外のレンズ情報サイトには本レンズと同じ後期型でも「The use of glass with radioactive elements makes the optics prone to yellowing.」という記載があるけど恐らく間違いで、硝材の変更・設計修正が行われたのだと思う。 勿論、描写特性が変わらないなら黄変しないレンズの方が良いのは当然だ...描写特性が同じなのか知らんけど。

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