HASSELBLAD 2000FC - 1977年発売

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HASSELBLAD 2000FC
HASSELBLAD 2000FC
 1957年にフォーカルプレーンシャッターの HASSELBLAD 1000F に替わって、レンズシャッター式の HASSELBLAD 500C が発売され、フォーカルプレーンシャッターの灯が消えてしまった...と思っていたら、20年ぶりに HASSELBLAD 500シリーズの風情のままのフォーカルプレーンシャッター機 2000FC が発売された。 電子制御金属幕フォーカルプレーンシャッターは1秒~1/2000秒の設定が可能で、これまでのレンズシャッターを搭載したCシリーズレンズも使用できる。 なお、レンズシャッター式の500シリーズも継続して開発・生産され続けた。 ちなみに、ハッセルは製造番号で製造年が判る事は他でも書いたが、本カメラの製造番号にある2文字のアルファベットは「RV」なので、1981年製造だと判る。 1981年は 2000FC/M が発売された年である。

HASSELBLAD 2000FC

 レンズマウントもフィルムマガジンもインターフェースは500シリーズと同じで、基本的な使い方も同じだけど、主ミラーはクイックリターン式に改善されのでレリーズ後にファインダー像が直ぐに復帰するし、Fレンズであればチャージしなくても絞りが開放に戻る。 なお、昔の 1000F は 14/1000mm厚のステンレススチール幕だったけど、 2000FC では 14/1000mm厚のチタン幕に材質変更され、6Vの4LR44電池を使う電子制御式になった。 また、Cシリーズレンズでは絞りとシャッタースピードが連動するEVロック方式だったけど、Fシリーズレンズは「あえて」ボタンを押さない限り絞りとシャッター速度とを自由に設定できる。 フォーカルプレーンシャッターやクイックリターンミラーの搭載により 500シリーズより重くはなったけど、使い勝手がすこぶる向上した究極の中版カメラだと思った。

巻き上げクランク基部にミラー動作設定がある
ミラー動作設定
 巻き上げクランク基部にミラー動作設定あり、0:クイックリターン、1:ミラーアップ(巻き上げで復元)、2:ミラーアップしたまま の3種からマイナスドライバ等を使って設定できるが、僕はクイックリターンモードしか使った事が無い。 また、中央の赤いボタンは多重露光ボタンで、押しながら巻き上げるとシャッターチャージのみ行われる。 なお、巻き上げクランク下部にミラーアップレバーが設けられている。
 また、巻き上げクランクを畳んだまま巻き上げノブ風にも使えるので、ノブ巻き上げが好きな僕はクランクを伸ばして巻き上げる事はほとんど無かった。

交換式ファインダー

交換式ファインダー と 交換式スクリーン
交換式ファインダー
 ファインダー周りは500シリーズと同じなので従来のファインダーが装着できる。 僕は45°のプリズムファインダーが基本なので、露出計が内蔵された純正の「PME 5」などを装着していた。 PME 5はファインダー下部に測光結果がデジタルで赤く表示されるので、そのEV値をレンズに記載された絞り・シャッター速度の組み合わせとして設定する。 この45°プリズムファインダーは重量級の50mmF2.8と組み合わせた場合でも、左肘を腰に当ててカメラを保持するスタイルとして覗き易いのだ。 90°のプリズムファインダーも試したけど、真後ろから覗くのではカメラを保持する高さが高くなりすぎて、肘と腰で支えられなくなり使い難かったので手放した。 また、フォーカシングスクリーンも交換式なので、スプリットイメージがある明るいスクリーンを常用していた。

ウクライナ製Spot TTL Prism Finder
ウクライナ製ファインダー
 今世紀になってからウクライナ製の露出計内蔵スポットTTLファインダーを購入してみた。 アイポイントが短めだけど価格が安いし、像の歪みは純正より少ないし、スポット測光と中央重点測光の切換えも可能なのでお勧めのファインダーだ。 外装ダイヤルを回してファインダー内の▶◀LEDが両方点灯すれば適正露出が判る。
 欠点は適正露出になるシャッター速度と絞りの組み合わせがファインダー内ではなく外装ダイヤルの指標から読み取る必要がある事だ。 また、指標が1/1000秒までなので、シールで1/2000秒の指標を追加してある。 現在、このファインダーは2023年に購入した本家?の Kiev 88 に装着している。

交換式フィルムマガジン

 ハッセルはフィルムマガジンにより撮影途中でも異なる種類のフィルムに変更が出来るシステムだ。 基本的に500シリーズと仕様は同じなので双方に装着できる。 本当かどうかは判らないけど、フィルムマガジン外装の製造番号と中枠の製造番号が同一でないと故障の原因になるという「噂」がある。

A24フィルムマガジン
A24フィルムマガジン
 ハッセルのフィルムマガジンには裏紙が有る120フィルム用のA12マガジンと、裏紙が無い220フィルム用のA24マガジンとが用意されていた。 でも、僕はA24マガジンに120フィルムを詰めて問題なく使っていた。 乳剤面を圧板で基準位置に押し付けているので裏紙の有無はピントに影響しないし、撮影駒間隔が少し長めになるけど12駒分の撮影ができる。 注意点は12駒撮影してもフィルム終了(巻き上げロック)にならないので、フィルムが終わった事に気付かないまま撮影を継続してしまう事がある。 既に220フィルムは絶滅したけど、A24マガジンを持っている人は120フィルムを詰めて試してみると良いだろう。 なお、個人の使用経験というだけで、A24マガジンで120フィルムの使用が保証されている訳ではない...と思う。

LINDAHL製スライドキーパー
LINDAHL製スライドキーパー
 ちなみに、フィルムマガジンに引き蓋を挿入しないとカメラと脱着出来ない仕組みなので、引き蓋を携行し忘れるとフィルムマガジンを交換できなくて途方に暮れる。 そこで、引き蓋を格納するスライドキーパーが用意されていた。 このアクセサリはフィルムマガジンの背面に両面テープで接着する方式で、LINDAHL等のサードパーティー製品が流通していた。

交換レンズ

交換レンズ C 80mmを装着 左は Carl Zeiss Sonnar F 150mm F2.8 T*
交換レンズ
 2000シリーズはフォーカルプレーンシャッターを搭載したことでレンズシャッターに制限されない明るいFレンズシリーズが投入された。 明るい高性能レンズが多かったたけど、高価も高価なのでなかなか手を出せなかった。 特に Planar F 110mm F2 はお姫様に庶民には手の届かない存在だった。
 とはいえ、Fシリーズレンズが無いと始まらないので最初に入手したレンズが Sonnar F 150mm F2.8 である。 500C で使っていたCレンズの Sonnar C 150mm F4 は『もっと明るくてボケ量も欲しい』と感じていたからだ。

 新たに購入した Sonnar F 150mm F2.8 以外は 500C 用のCレンズを流用していたため、FレンズとCレンズとでシャッターモードを変えるのは面倒なので、カメラは通常通りフォーカルプレーンシャッターを使い、Cレンズ側のシャッター速度をバルブに設定して、バルブから動かない様にレンズの絞りを変化させればフォーカルプレーンシャッターモードで利用できた。
 ただし、Cレンズなのでレリーズ後はチャージ(巻き上げ)するまでレンズシャッターが閉じたままなので、クイックリターンミラーの恩恵は受けられないのがイマイチだ。 なお、前述のウクライナ製のスポットTTLファインダーは、適正露出になるシャッター速度と絞りの組み合わせをダイヤルから読み取る方式なので、バルブにした状態のCレンズを使うには本家のEV表示方式より都合が良かった。

EV連動ボタン
EV連動ボタン
 CレンズはEVロックがデフォルトだったけど、FレンズはEVロックしないのがデフォルトとなり、絞り環のボタンを押せばEVロック爪が出てきてカメラのシャッター速度環内側のギヤ歯を噛んで連動する方式になっている。 個人的にはこの方が僕の好みに合っているし使い易い。 なお、カメラ本体に露出計を内蔵してAEがデフォルトとなった 205TCC などはカメラのシャッター速度環内側のギヤ歯が無くなってEVロックが出来ない様になった...けど、使わないので全く不自由はない。 ちなみに、Fレンズの絞り環はボタンを押しながら絞り環を回すとレンズ側の絞りクリックが働かない様になっている。 多分、カメラ側のシャッター速度環のクリックを優先するためだろう。

Carl Zeiss Sonnar F 150mm F2.8 T*

(期限切れで腐ったリバーサルフィルムなのでサンプル写真が妙です💦)
Carl Zeiss Sonnar F 150mm F2.8 T* 絞り:F2.8(期限切れで腐ったリバーサルフィルムなのでサンプル写真が妙です)
Carl Zeiss Sonnar F 150mm F2.8 T* 絞り:F2.8
Carl Zeiss Sonnar F 150mm F2.8 T*
レンズ構成
 Sonnarという名称だけどレンズタイプ的には4群5枚構成のエルノスター型で、レンジファインダー時代の3群7枚構成のゾナー型とは性質が全く異なるレンズである。 レンズ構成が比較的シンプルなせいか抜け感がとても良くコントラストも高いと感じる。 全体的に優しい描写でボケ味も良好で妙なクセはないけど、絞り開放の遠景では画面の四隅で画質がちょっと低下する。 寄って開放で撮影すると主題を強調するかの様に背景が気持ちよくボケてくれる優れたレンズだと思う。

Carl Zeiss Sonnar F 150mm F2.8 T* 絞り:F2.8 ベローズ使用(期限切れで腐ったリバーサルフィルムなのでサンプル写真が妙です)
ベローズ使用 絞り:F2.8
 また、ベローズを使って接写してみると Makro-Planaer 5.6/135 みたいにシャープじゃない(持ってないから想像)けど、平面複写でなければ対象物の描写も充分だし、絞りを開けて主題以外を大きくボカす事ができるし、何よりファインダーが明るくて見やすいのが良い点だ。
 困ったことに、このレンズは使っているうちに距離環のゴムリングが千切れてしまった。 ゴムリングの残骸を両面テープで貼り付けてはあるけど、代替のゴムリングが見つからない。 また、絞りに油ジミは無いけど動作が粘る様になってきたので、そろそろオーバーホールが必要そうだ。

フード

Sonnar F 150mm F2.8 T* に装着した蛇腹フード
蛇腹フード
 レンズのバヨネット外爪に装着する各レンズ専用角型フードの他に、B70バヨネットに対応可能な新型の蛇腹式フードも用意されていた。 蛇腹フードを使えば迷光を効果的にカット出来た...けど、とても大袈裟な風情になってしまう。 蛇腹フードの取り付け口にはシートフィルターの差込み溝があり、ゼラチンフィルターなどを装着出来た。 また、B70対応の新しいフードは使わないときにレールを折り畳める様になったので携帯性も考慮されていたけど、やはりかさばるので普段は使っていない。

F 150mm に装着した CONTAX METAL HOOD 4
CONTAXのフードを流用
 常用しているフードは内爪バヨネットB70/77mm変換リングと77⇒86mmステップアップリングを使って CONTAX METAL HOOD 4 を流用(ちょっと浅いけど)している。 角型フードの方が効率が良いのだけれど、機材を持ち運ぶときに嵩張るのが嫌なのだ。 コレであればフードを逆付けしてコンパクトに持ち運べる。
 ちなみに、中央を摘まむタイプのΦ77mmキャップなら、フードを装着したままフード底にキャップを装着出来るし、フードを逆付けした場合でもキャップを装着出来る...外れやすいけど。

ベローズ

ベローズに Sonnar F 150mm F2.8 T* を装着
ベローズに装着
 接写リングも便利だけど、ぐぐぐ~っと寄りたい時はベローズが適している。 Carl Zeiss Sonnar F 150mm F2.8 T* は開放F値が明るいので意外と扱い易い。 本当はベローズに装着して無限遠からマクロ域まで撮影出来る Makro-Planar CF 135mm f5.6 T* というレンズを使ってみたくてベローズを先に入手したのだけれど、ついにレンズを買えないままになってしまった。
 ベローズは大袈裟になるので接写リングを使う方が便利だけど、接写リングには注意点がある。 2000シリーズや200シリーズのマウント部にはシャッター速度リングがあり、8mm厚の接写リングは土手がシャッター速度リングと干渉して装着出来ない。💦 32mm厚の接写リングとかなら充分に土手が逃げているので装着可能だけど、Distagon F 50mm F2.8 などで、もうちょっとだけ寄りたい時に8mm厚リングを着けようとすると途方に暮れる。

あとがき

手放したクロームの 2000FC
手放したクロームの 2000FC
 HASSELBLAD 2000FC は故障し易いと感じる。 機械系がジャムってしまったり、シャッターが不調になったりする故障が多いと思う。 その昔、クロームの HASSELBLAD 2000FC も持っていたんだけど、低速シャッターが不調になり修理料金を考えた結果「訳アリ品」として格安で放出した。 縮んで糊でベタベタになる貼革とか、剥がれ易いブラック塗装とか、刻印じゃなく剥げやすいプリント文字など、高価な割に仕上げ品質が良いとは言えないカメラだと思う。
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