NIKKOR-UD Auto 20mm F3.5 - ニコンのオールド超広角レンズ

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Nikon NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm
Nikon NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm
 このレンズは NIKON S シリーズ用光学系を使った NIKKOR-O 1:4 f=2.1cm の後継レンズで、ミラーアップしなくても装着出来る様になった「本当の」一眼レフ用20mm超広角レンズである。

NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm - 1968年発売

 この時代は焦点距離が24mm以下のレンズを超広角レンズと分類していて、NIKON F 用で最初の超広角レンズは1960年に発売された NIKKOR-O 1:4 f=2.1cm だったが、レンジファインダー機の NIKON S シリーズ用光学系を NIKON F マウントにしたレンズなので、ミラーアップしなければ装着できない代物だった。
 その後、1967年にミラーアップ無しで装着できて世界初の近距離補正機構を搭載した NIKKOR-N Auto 1:2.8 f=24mm が発売され、その翌年の1968年に発売されたのが NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm である。 このレンズは近距離補正機構も搭載されていないのに 24mmより高価で大きなレンズであった。
 ちなみに、NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm のフロントキャップは180mm F2.8と同じΦ72mmネジ込み式メタルキャップなので『サッと出して撮影』という訳には行かかった。 なので、僕はプロテクトフィルターとフードを装着してフロントキャップは携行しない事が多かったなぁ。

 キヤノンもレンジファインダー用超広角レンズ CANON 19mm F3.5 のマウントをFLマウントに変更してミラーアップが必要な FL 19mm F3.5 を1964年に発売したが、翌1965年にはレトロフォーカス型を採用してバックフォーカスを確保した FL 19mm F3.5 R を発売していたので、一眼レフ用超広角レンズはキヤノンの方が先行していた。 この頃のキヤノンのカメラはFLマウントで外測式露出計を搭載した CANON FX の時代である。

レンズ構成

NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm 構成図
レンズ構成図
 9群11枚構成で凹パワー先行のレトロフォーカス型レンズで、前玉には厚くて大きな凹メニスカスレンズが配置されている。 フィルター径をΦ72mmにしたので24mmレンズと比べると鏡筒の大きさが際立っていて、レンズ先端側からマウント側へ収束して行く鏡筒デザインは「光の収束美」を表している様でカッコ良い。
 残念なのは最短撮影距離が0.3mまでな事で、決して寄れない訳ではないけど TOPCON RE, Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm の様に0.16m!まで寄れたら更に楽しいレンズになったと思う。
 なお、超広角で開放F3.5は当時として平均以上の明るさだったけど、ファインダーがチョット暗いなぁと感じたのは確かだ。 NIKON F2 / F3 の時代に明るいフォーカシングスクリーンが登場したので開放F3.5でも覗き易くはなった。

描写特性

遠景描写

 絞り開放ではわずかにフレアっぽいけど中央は充分な解像感があり、四隅を除いてなかなかシャープだ。 F5.6に絞れシャープ感が向上するけど四隅の画質向上は鈍い。 F8まで絞っても四隅の画質には不満が残る。 画面中央から周辺にかけてはなかなか良い描写だけど、画面四隅は絞ってもなかなか画質が向上しない。 原因は四隅の非点収差が大きいためで、画面隅の同心円方向の解像感は良くても像高方向の解像感が悪いのだ。

 回折の影響は絞り値がF8までは問題ないけどF11からは回折の影響でぼやけ始め、F22ではかなりぼやける。 ただし、画面四隅はそもそも解像が悪いので絞り込むことで画面全域を均質(つまり、ぼやけた感じ)に近づける事は出来る。

 なお、周辺光量落ちは結構あるけど急激な崖落ちタイプではないので、中央の主題を強調する様な雰囲気のある写真が撮れる。 絞りF5.6では周辺光量落ちがまだあるけどF8に絞ると殆ど判らなくなる。 まぁ、記録写真じゃないなら素敵な効果として楽しもう。
NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm 絞り:F3.5
絞り:F3.5
NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6
NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm 絞り:F8
絞り:F8

一般撮影

 50年以上も前に発売されたオールド超広角レンズにしては悪くない描写だ。 発色に派手さはなく落ち着いた感じで、発色の偏りは無さそうだけど「濁り」が感じられる。 この「濁り」がオールドレンズっぽいとも言える。 周辺光量低下の影響を受けた部分は露出アンダーになる関係から青空などの発色が濃くなる場合もある。 倍率色収差は少なく画面周辺のハイコントラスト部でも目立つ色ズレが無いのは優秀だし、ディストーションも良く補正されている。

 後ボケにはエッジが立つ2線ボケの傾向があるので、後ボケ量が小さい状況では背景が煩くなる場合がある。 主被写体にググッと寄って背景を大きくボカすか、F5.6以上に絞れば2線ボケの傾向が緩和される。 ヘリコイドアダプターを使って寄ってもピント位置のシャープ感低下は「意外と」少なく、接写で平面複写じゃない限り近距離補正機構は無くても大丈夫だ。

 画面に太陽を入れ込んだりすると数珠なりゴーストが現れるけど、コレはコレで効果として楽しめる。 また、逆光フレアによる極端なコントラスト低下も少ない方なので、現代ならアプリの「クリアビュー」などを施せばスッキリした画像に補正できるだろう。

NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm 絞り:F3.5
絞り:F3.5
NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm 絞り:F3.5
絞り:F3.5
NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm 絞り:F3.5
絞り:F3.5
NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm 絞り:F3.5
絞り:F3.5
NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm 絞り:F3.5(ヘリコイドアダプター併用)
絞り:F3.5
NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm 絞り:F3.5
絞り:F3.5

絞り込み接写撮影

 ヘリコイド付きマウントアダプターを使うとグイグイ寄れるので、絞り開放とF22まで絞り込んだ場合とで表現にどれだけ差が出るか試してみた。 LAOWA 15mm F4 WIDE MACRO 1:1 の様にググッと寄りつつ周りも広く写し込む様な表現が出来るので、絞りはF32まで欲しいところだ。 銀塩時代では絞り回折によるぼやけ回復なんて出来ない時代だったので、絞り値がF22までなのは仕方ない。
接写して絞り値による違いを比較(ヘリコイドアダプター併用)

あとがき

 現代ではミラーレスデジタル一眼にヘリコイドアダプターを使ってオールドレンズを楽しめる。 画質は置いといて最短撮影距離が極端に短く出来るのは楽しいものだ。 でも、現代のレンズの方が開放から高解像で綺麗な写真が撮れるしオートフォーカスも秀逸なので、超広角のオールドレンズを積極的に使う意味はあまりないと思う。
 大昔には24mmの画角が好物で、1970年代は NIKKOR-N・C Auto 1:2.8 f=24mm を常用していた。 ただ、使い進むにつれて『何だかなぁ...』と思う事が多々あり、レンズを整理する際に NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm は残して NIKKOR-N・C Auto 24mm  は NIKKOR-P Auto 180mm と共に手放した。 今となっては本当に『何だかなぁ...』だったのかは忘却の彼方だけど、この NIKKOR-UD Auto 1:3.5 f=20mm ガ容姿がカッコ良いので手元に残して置きたいと思う。
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