銘玉 TOPCON RE, Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm

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専用フードを装着した TOPCON RE, Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm
専用フードを装着した TOPCON RE, Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm

 このレンズは世界初のTTL開放測光一眼レフカメラで「歴史的名機」TOPCON RE Super と共に発売された超広角レンズである。 前玉が大きく、レンズ先端ほど広がった鏡筒デザインは銘玉に相応しい威風堂々とした感じだ。 マニアの間では『このレンズの写りは非常に立体感があり、全トプコール中でもこの点では筆頭に位置する』と言われている。

レンズの特徴

RE Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm の特徴
RE Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm の特徴

RE,Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm のレンズ構成
レンズ構成
 1963年にカメラと同時発売された
7群7枚構成のレトロフォーカスタイプ超広角レンズである。 発売時は f=2.5cm というセンチメートル表記だったが、私の個体は f=25mm とミリメートル表記に変更された後期型である。 ただし、専用フードは 2.5cm 表記のままだった様だ。 前期型は距離・絞り指標が赤色だったりレンズ側マウント下部に凹部分が成型されていたけど、後期型では距離・絞り指標が緑色となり凹部分(何の為の凹部分なのか不明)が無い。 生産されたレンズは殆どがクローム鏡筒で、カタログには載らない程の極少数だけブラック鏡筒が存在するらしい。
 レンズ先端にはフィルターネジが無く、レンズ後部にバヨネット式の小さな専用フィルターを装着する。 また、専用フードを装着すればフード内に Series 9 フィルターが利用できるけど、広角レンズで使いたくなる偏光フィルタは利用できない。 絞り範囲はF3.5~F22までで、0.5段ごとにクリックがある。 特筆すべきは最短撮影距離が0.16メートルと短いことで、被写体にグイグイグイッと寄って撮影できる。 現代の超広角レンズでもここまで寄れるレンズは滅多になく、このレンズならではの表現が可能だ。
 ちなみに、RE Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 専用の四角い革ケースはレンズ本体と専用フードと専用フィルター9枚を収納できる。

描写特性

 最近はフィルムが高価すぎるので SONY ILCE-9 に装着して撮影してみた...つまり、オールドレンズ遊びってことねぇ。 なお、写真は記載が無いものは絞り開放で撮影してトリミングはしていません。

遠景・中景描写

RE Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 絞り:開放 RE.Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 絞り:開放 RE.Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 絞り:開放
RE.Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 絞り:開放 RE.Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 絞り:開放 RE.Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 絞り:開放
 絞り開放では周辺光量落ちと若干フレアっぽい描写がオールドレンズらしいけど、1963年に市場投入された超広角レンズとしては解像感もあり歪曲収差も良く補正されていると思う。 光学設計上はかなり近距離を基準に収差補正されている様に感じた。 現代のレンズみたいに開放から画面全域で超絶シャープに写る訳ではないし、その昔は『1~2段ほど絞ると良い写りになる』のがレンズの常識だった。 現代の電子シャッター式デジカメなら超高速シャッターが使えるので、オールドレンズの開放絞りで往年の「味」を楽しもう。

近距離描写

RE Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 絞り:開放 RE Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 絞り:開放 RE Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 絞り:開放
 グイグイ寄れるレンズなので超広角なのに背景ボケを活かした写真を撮れる事から、マクロ好きの僕には現代レンズの LAOWA 15mm F4 WIDE ANGLE MACRO 並みに楽しめるレンズである。 近距離でピントを合わせた部分はとてもシャープだし「のトプコン」らしく赤系の発色が良い感じだ。

玉ボケ・夜景描写

RE Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 絞り:開放 距離環:至近 RE Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 絞り:開放 RE Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 絞り:F5.6
至近玉ボケ 絞り:開放 夜景実写 絞り:開放 夜景実写 絞り:F5.6
 超広角レンズなので玉ボケには縁が無さそうだけど、前述通り近接撮影能力が高いレンズなので距離環を0.16mにした場合の玉ボケ描写を確かめてみた。 全体繰り出しレンズなので至近状態では思った以上に周辺光量があり、比較的綺麗な玉ボケだと思う。 また、絞り開放での夜景実写では意外とコマフレアが少なく、一段ちょい(F5.6)絞れば実用的な夜景写真が得られる。 当時の超広角レンズとしては優秀だと思う。 なお、絞り羽根は6枚で、点光源の回折スパイクを強調するならF11より小絞りにした方が良い。

立体感って何?

RE Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 絞り:開放 RE Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 絞り:開放(アプリで周辺光量補正) RE Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 絞り:F22
絞り:開放 絞り:開放 App補正 絞り:F22
 世間で言うところの「立体感」って、何をもって「立体感」なのか僕にはイマイチ判っていない。 このレンズはグイグイ寄れるので必然的に背景がボケるし、周辺光量落ちが主被写体を強調する働きをしているのではないかと考えている。 細かく言えば合焦面からボケ始めの滑らかさとかあるんだろうけど、超広角レンズなのでその辺りの描写にどれほど差があるのか良く判らない。 絞り開放では背景がボケつつ周辺光量落ちで手前の花が強調されてるけど、アプリで周辺光量補正すると花の存在が若干弱くなる。 当然ながらF22に絞るとコンデジで撮影した様な平面的な写真になる。

偏光フィルターの使用

自作のフィルターアダプター
自作アダプター

 偏光フィルターを手軽に使える様に、他社製フードの締め付け部にステップアップリングをエポキシで接着してフィルター装着アダプターを作ってみた。 偏光フィルターを手で持ったまま撮影するには三脚が必要だけど、このアダプターを使えば偏光フィルターをレンズ前面に装着して片手でグルグル回せるので手軽に利用できる。
 今回は僕の手持ちフィルターセットである口径Φ82mmのフィルターを装着する様にした。 締め付け式はレンズ側の傷付きが気になるので、金属製の締め付けリングに薄い樹脂シートを張り付けておいた。

 なお、RE, Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm はリアフィルターの光路長を考慮した設計になっているので、レンズ前面にフィルターを装着するからと言ってリアフィルターを外してしまうと無限遠が出なくなってしまう。 どうしてもリアフィルターを外して撮影したい場合はレンズの無限遠を調整する必要がある。

レンズ脱着指標の不思議

中央じゃない脱着指標
中央じゃない指標

 トプコールレンズ側の話ではないけど TOPCON RE Super 以降の「RE」マウントには奇妙な事がある。 それは RE Super の赤いレンズ脱着指標が少し中央からズレている事だ。 TOPCON R などの RE Super より前のカメラはレンズ脱着指標が「気持ち良く」カメラの中央にあった。 勿論、その当時の古いレンズを RE Super に装着出来るし、レンズの距離・絞り指標もちゃんと中央にくる。
 RE Super ではカメラの赤いレンズ脱着指標と距離・絞り指標が中央一直線に揃っていなく、微妙にズレていて非常に気持ち悪いのだ。 恐らく、マウントの爪が噛合う量を増やすために、レンズロックレバーの位置は変えずにカメラのマウント爪を反時計回りにちょっとだけオフセットさせた(装着回転角を増やした)んじゃないかと想像している。 135mm/F2とか300mm/F2.8とか500mm/F5.6などの重いレンズが開発され、小口径であるExaktaマウントの強度が問題になったのかも知れない。

あとがき

 RE.Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm は 1:1.4 f=58mm と並ぶ銘玉と称されるレンズである。 7群7枚構成のレトロフォーカスタイプで、国産一眼レフカメラ用「超広角」交換レンズとしては初めてのレトロフォーカスタイプらしい...超広角としてね。 色乗りも良いしピント面はシャープだし、最短撮影距離が0.16mと異常に短いのでグググっと寄れる楽しいレンズだ。 とても魅力的な銘玉で、中古市場で高値で取引されている理由が判るオールドレンズである。

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