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Rolleicord Ⅴ型 初期型と通常型(右は Rolleicord II type2型) |
僕の父親もカメラ好きで、Rolleicord II型(1936年製)が形見となった。 中学生の頃にその Rolleicord II型 で撮影して光学性能に驚いた...画面周辺の酷さにね。 Rolleicord II型 の撮影レンズは Zeiss Triotar 7.5cm F3.5 で、3枚構成レンズの限界を知ったカメラでもあった。 I型やII型の3枚構成レンズを使う庶民たちは中央部をトリミングするのが普通だった様だ。
さて、時は流れて自分でカメラを買えるようになり、父親のカメラよりも良く写る中古の Rolleicord V型 を使っていたのだけれど、初期型10枚絞りの Rolleoicord V型 を発見して追加で衝動買いしてしまった。 Rolleicord は『いかにもクラシックカメラ』という容姿で佇まいが美しいカメラだと思う。
Rolleicord Ⅴ型
巷では『Rolleoicordは円形絞りのⅣ型までが良く、絞り羽根が10枚から5枚に減ったV型以降はダメだ』という評判だったけど、良く調べてみるとV型の初期製品は10枚羽根の円形絞りだった事を知り、ずいぶんと探して15年ほど前に初期型「も」手に入れた。
初期型と通常型の違い
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初期型と通常型の違い |
初期型と通常型とを比べるとシンクロ切換え兼セルフレバーや多重露光防止レバーが銀色から黒色になっていたり、スプロケットノブの形状が変更されていたり、スプール室の押さえバネの形状が変更されていたり細かな違いがあるけど、最も大きな違いは絞り羽根が10枚羽根から5枚羽根に減少してしまった事だ。 ボケ味を気にする一部のユーザーは5枚羽根に不満があった様だけど、シャッターメーカーのコストダウンを容認した結果なのだろう。 この時期以降のレンズシャッターに使われる絞り羽根は5枚羽根が主流になっている。
ライトバリュー連動方式
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ライトバリュー連動式 |
Rolleicord Ⅴ型 はライトバリュー連動式が採用されている。 露出計が指すライトバリュー値を絞りレバーで選択すれば、シャッター速度を変更してもライトバリューが同一となる様に絞り値が連動して(右の写真はLv13・F8・1/125sに設定)変わってくれる。 ところがこれが余計なお世話で、ライトバリュー指示じゃない露出計を使って絞り値を設定してからシャッター速度を変更すると絞り値が勝手に変わってしまう。 ライトバリューを使わない場合は先にシャッター速度を設定してから絞り値を設定する必要があり、絞り優先的な使い方ではかえって面倒になる。
背面のライトバリューアイコン表
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ライトバリューアイコン表 |
カメラの背面には絵アイコンによるライトバリュー一覧表が示されている。 使用フィルムの感度と撮影シーンのアイコンからライトバリュー値を読み取ってカメラに設定するもので、露出計が無くても露光量を大外れさせない工夫だ。 これはライトバリュー方式ならではの簡単設定機能といえる。 なお、純正ハードケースの背面にはセルロイドシートを張った窓があり、一覧表を見る事が出来る。 ただ『このシーンは何だろう?』と思っちゃう絵もある。
シャッターレバー
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シャッターレバー |
シャッターレバーは赤矢印方向へ引いてシャッターチャージし、黄矢印方向へ押してレリーズする。 レシーズしたら巻き止めが解除されてフィルムを巻き上げられる。 フィルムを巻き上げたらシャッターチャージが可能になる。 この様にセルフコッキングじゃないのでちょっと面倒だ。 ちなみに、多重露光防止レバーを下方に倒して赤●が見えている状態にすれば巻き上げに関係なくシャッターチャージ・レリーズが可能で多重露光できる。
巻き上げノブ
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巻き上げノブ |
右側面上方にある大きなノブがフィルム巻き上げノブだ。 1駒づつの巻き止め機構があり、レリーズすると巻き止めが解除されてフィルムを巻き上げられる。 また、丸い小窓はフィルムカウンターで、フィルム装填時にカメラとフィルムのスタートマークを合わせてから裏蓋を閉じ、カウンターが1になるまで巻き上げれば巻き止めされて撮影可能となる。 その後は1駒ごとに巻き止めが働き12駒撮影後は巻き止め無しで最後まで巻きとれる。
フォーカスノブ
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フォーカスノブ |
右側面中央前方にある大きなノブがフォーカスノブで、これを回すと前板が前後してピント合わせが行われる。 最短撮影距離は3フィート(約0.9メートル)と遠いので、ググッと近寄って撮影することは出来ない。 僕のカメラの距離目盛はフィート表示だけど、日本人が馴染みやすいメートル表示のカメラも存在する。 なお、露出計は搭載されていないけどフォーカスノブ内側に備忘用のフィルム感度情報を設定しておける。
フォーカシングフード
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ピントフード |
カメラのフォーカシングフードを引き上げて、上方からフォーカシングスクリーンを覗いてピント合わせを行う。 フォーカシングフードを引き上げてから「Rollei F&H ロゴ」面をちょっとだけ押せば拡大レンズが跳ね上がるので、通常は眼を拡大レンズに近づけて(顔を近づけて)フォーカシングスクリーンへの外光を防ぎながらピントを合わせる。 屋外で眼を離して覗き込むとスクリーンの映像は殆ど確認できない。
また、フォーカシングフードの「Rollei F&H ロゴ」面をググイッと押し込めばスピードファインダーになるけど、置きピン撮影となるので実用的ではない。
フォーカシングスクリーン
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交換済みスクリーン |
オリジナルのフォーカシングスクリーンは普通の摺りガラスタイプなので、暗くて被写体が見えないしピントの山も掴み難くて楽しめない。 スクリーンは交換式じゃないけど、フォーカシングフードを外して入れ換える事は可能である。 僕は中央にスプリットプリズムがありフレネルと方眼線が付いた(中華製?)明るいスクリーンに交換してある。 フレネルが荒めだし周辺のフレネル角度が適合してないけど、老眼ではこのスクリーンでなければ撮影がままならない。 少年の頃に Rolleicord II型 のオリジナル摺りガラスでピントを合わせられた事が信じがたい。
なお、スクリーンを交換する場合はピント面が下側となるので、厚みが異なるスクリーンを流用する場合はファインダー側のピント調整を行う必要がある。 スクリーンの大きさは 56mm(横)x 64mm(縦)x 1.3mm(厚み) で、縦長なのは撮影範囲の視差補正のためである。
セミオートマット方式
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セミオートマット方式 |
フィルム送りはセミオートマット方式で、フィルム装填時にリーダーペーパーのスタートマークを赤●に合わせてから裏蓋を閉め、フィルムカウンターが1になるまで巻き上げノブを回せば1コマ目で巻き止めが働く。 レリーズすれば巻き止めが解除されて次の駒へ巻き上げる事が出来る。
ちなみに、「セミ」じゃない「フル」のオートマット方式はフィルムのリーダーペーパー先端を巻き上げスプールにセットしたら裏蓋を閉じてどんどん巻き上げれば自動的に1駒目で巻き止めされるので、スタートマーク合わせは不要だ。 だたし、オートマット方式の実装にはそれなりの精度が必要なので、高級機種以外ではセミオートマット方式が一般的だった。
撮影レンズ:Xenar 75mm F3.5
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Xenar 75mm F3.5 |
Rolleicord Ⅴ型 の撮影用レンズは Schneider-Kreuznach 製 Xenar 75mm F3.5 なので、いわゆる3群4枚構成のテッサータイプだ。 シャープで抜けの良い優れた描写のレンズだけど、Rolleiflex 2.8C型 に搭載されている4群5枚構成の Xenotar 80mm F2.8 の描写が僕の好みにぴったり過ぎるので、操作性は悪いけど Rolleiflex 2.8C型 は手放せない。
ちなみに、Rolleiflexも 2.8C型 までが10枚羽根の円形絞りで、Rolleiflex 2.8D型 以降は5枚羽根の絞りに退化してしまった。 なお、Rolleicord Ⅴ型のビューレンズは3群3枚構成の Heidosmat 75mm F3.2 が装着されている。
接写アクセサリー:Rolleinar
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Rolleinar を装着 |
二眼レフは撮影光学系の上にファインダー光学系があるので、被写体に対して上下の視差が生じる。 無限付近の被写体なら問題ないけど近距離だと撮影範囲の視差が無視できなくなるので、ファインダーには視差補正機構が内蔵されている。 残念ながら、カメラの最短撮影距離は約3フィート(約0.9メートル)と遠いし、単純にクロースアップレンズを装着しただけではクローズアップ撮影での視差は補正されない。
そこで活躍するのが専用のクローズアップレンズである Rolleinar だ。 内爪 BAY I(レンズアクセサリ用バヨネットサイズ) の Rolleinar は2個のクローズアップレンズと1個の視差補正プリズムが1セットになっている。 クローズアップレンズを撮影光学系とファインダー光学系の両方に装着し、加えて上方のファインダー光学系に視差補正プリズムの赤●が上になる様に正しい向きで装着すれば、視差が補正されつつクローズアップ撮影が可能になる。 いちいち装着したり外したりするのが手間けど、寄れない二眼レフを散歩に持って行く場合はポケットに忍ばせておくべきアクセサリーだと思う。
Rolleinar には接写倍率が異なる Rolleinar 1/2/3 の3種が用意されていて、そこそこ寄れる Rolleinar 2 がお勧めだ。 なお、Roleicode V のレンズアタッチメントは BAY I なので、サイズを間違えると装着できません。
ちなみに、中古品にはプリズムの向きが狂っている品物があるので良く確認してから購入するか、自分で修正してから使いましょう。 補正プリズムの赤点を上にして縦線被写体をプリズム通して目視で観た時に縦線がプリズム内外で横にズレてるなら修正が必要です。 プリズム面の洗浄ついでに修正しておきましょう。
露出計付きフード:Rolleilux
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露出計付きフード Rolleilux |
これはアタッチメントサイズが外爪 BAY I の Rolleicord や Rolleiflex や Rolleiflex 4x4 の二眼レフカメラで使用できるフードである。 ゴッセン製のセレン式露出計が付いていて、携行時は露出計自体をフードの内側に格納できるので便利である。 全体が美しいクロームメッキで Rolleicord V型 にはちょっと派手だけどライトバリュー値も指示されるので便利でカッコ良いアクセサリである。 このセレン式露出計は今でもちゃんと測光できるので貴重品かも知れない。
レンズキャップの塗装
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塗装したアルミキャップ |
Rolleicord のレンズキャップはチープなアルミ製で、傷や劣化が酷くて残念なものが多い。 僕のレンズキャップも同様で、この際塗装してしまう事にした。
アルミキャップを清掃・脱脂処置してプライマーを吹付け・乾燥させてから、メッキ調スプレーで仕上げてみた。 新品キャップのオリジナル状態を知らないけど、メッキ調スプレーではピカピカ過ぎる気もするけどイイ感じに仕上がった。 でも、せっかく塗装して綺麗にしたけど Rolleiflex 3.5 用折畳みメタルキャップと比較すると『何だかなぁ』という安っぽさはそのままだ。
カメラケース
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カメラケース |
ローライを使うときはストラップが無いとどうにも使い難い。 メーカー純正の革製ハードケースには背面にライトバリュー一覧表を確認できる窓があってストラップも付いているけど、フィルムを交換するときに脱がすのが面倒だし、劣化している革ケースをダメにしてしまいそうだ。 そこで、カメラ本体に直付けする専用ストラップ(Rolleiflex 2.8C型と同仕様)を装着し、撮影時はカメラを裸で使い、移動時などはサードパーティー製のソフトケースに入れている。 安くはなかったけど、サッと脱がせられて便利でおしゃれなケースだ。
あとがき
写真を趣味にしている娘が『ネットで見かけるにがんれふってどうなの?』と尋ねてきたのでローライコードを持たせてみた。 左右が反転していて混乱する構図決めなど、現代人に使えるアイテムではない事を理解したようだ。 背景ボケが大きな写真を撮れるんじゃないかと思ったらしいけど、僕のいちがんれふに 50mm F1.4 とか 90mm F2 とか 100mm F2 を装着して背景が存分にボケた写真を楽しんでもらおう。
フィルム巻き上げがクランク式の Rolleiflex 2.8C型 も持っているけど、クランク式のメリットは感じないし、フィルム巻き上げが右手/ピント合わせは左手という操作性が好きになれない。 その点、Rolleicord V型 は少年時代に使い慣れた Rolleicord II型 と同じで、左手でカメラを持ちながらフィルム巻き上げもピント合わせも右手で操作するのがとても使いやすい。 唯一、セルフコッキングじゃない点が惜しまれる。 なお、Rolleicord Va型 からピントノブが Rolleiflex と同じ左手側になってしまったのは残念だ。
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