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Canon F-1N - 1976年発売 |
1971年に発売された Canon F-1 の部分改良版として、5年後の1976年に発売された。 Canon F-1 発売時に『向こう10年間は不変です』と、開発放棄を宣言したので Canon F-1N は部分改良しか施されなかった。
Canon F-1N
Canon F-1 から Canon F-1N への主な部分改良点は
- 予備角+巻き上げ角を15度+180度から30度+139度に変更
- フィルム感度使用域の高感度側をISO 2000から3200へと拡大
- 巻き上げレバーに指当てを迫加
- シンクロターミナルのソケットを抜け止め式にする
など、13項目ほどが改良されたらしい。
交換式ファインダー
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交換式ファインダー |
部分改良なので主なアクセサリーは Canon F-1 のままで、ファインダーも EYE LEVEL FINDER の他に暗所用の BOOSTER T FINDER や 自動露出を実現する SERVO EE FINDER や アイポイントが長大な SPORTS FINDER などもそのままだった。
SPORTS FINDER を購入した事もあったけど、スポーツ撮影では背蓋に顔を密着させて手振れを防ぐ必要があり、全く役に立たないので直ぐに手放した。
フォーカシングスクリーン
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フォーカシングスクリーン |
4種類だった交換フォーカシングスクリーンは、レーザーマットスクリーンが採用されて9種類に増えている。 フォーカシングスクリーンを交換する際は「型式が記載された辺」をレンズ側にしないと測光出来なくなるので注意が必要だ。
なお、Canon F-1 / F-1N のボディーには露出計が内蔵されているので、SPORTS FINDER に換装しても露出計が使えたのは NIKON F2 より優れた利点だった。
露出計スイッチ
露出計のスイッチは左肩にあり、ONにしないと露出計は動かない。 これが困りもので、たいていはOFFにするのを忘れちゃうので電池の消耗が早い。 シャッターボタンの半押しとか巻き上げレバーを引き出したらメーターがオンになれば便利なのだが、CAT(Canon Auto Tuning)システムが足かせになっていたのだろう。
一方、NIKON F2 本体に露出計は搭載されていないが露出計用電池は本体に収納する方式で、巻き上げレバーを引き出せば露出計の電源が入る羨ましい方式だった。
ファインダー内表示
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Canon F-1N のファインダー内表示 |
大きく動くメーター指針・追針に加えて範囲外警告表示が赤くてオシャレだったけど、既に NIKON F2 Photomic では絞り値表示が実現されていたので、絞り値表示が無いのはとても残念だ。
Canon F-1 では装着するレンズの開放絞り値によって追針が上下にオフセット移動するので、絞り値スケールを表示する事が難しかったのだろう。 この欠点は開発放棄宣言された Canon F-1 では設計変更されず、
Canon New F-1 まで待つしかなかった。
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Canon EF のファインダー |
ちなみに、Canon F-1N 発売前の1973年に登場した
Canon EF ではシャッター速度スケールに加えて絞り値スケールが表示されていた。 装着レンズの開放F値によって絞り値スケールが上下にオフセットして開放F値補正をするという、複雑なメカ連動機構が搭載されていた。 装着レンズの開放F値で追針が上下にオフセットする Canon F-1 や
FTb と似た開放F値補正方法であるが、残念ながら
Canon EF には絞り追針が無かった。
Canon Motor Drive MF
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Canon Motor Drive MF |
5駒/秒で連写できるモータードライブで、カメラの底板を外してモータードライブを装着しなければならない。 底板と背蓋が一体だった
NIKON F のシステムよりは良いけど、メリットが全くない底板交換式は頂けない。
また、グリップ部に単三乾電池を10本も装填するのでフル装備にすると非常に重いシステムになり、たった7.2秒でフィルム1本を撮りきってしまう。 つまり、一般人にとってはカッコイイ飾り物でしかない。 連写速度は2駒/秒と物足りないが、一般人には Power Winder F で充分だろう。
Canon F-1 Flash Coupler F
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Flash Coupler F |
Canon F-1 には標準でストロボ接点付きアクセサリーシューが無い。 クリップオンストロボをシンクロコード無しで使うには、この様なアクセサリーを装着しなければならない。
この仕様は
NIKON F や NIKON F2 や Minolta X-1 も同様で、その頃のプロカメラマン達はグリップ型ストロボや大型スタジオストロボの利用が主で、アマチュアが使う様なクリップオンストロボなんて使わなかったのだろう。
ちなみに、Flash Coupler F にストロボを装着し、ストロボをレンズ側に倒す様な圧力を掛けるとペンタ部斜面が凹む(実証済み)ので、使用にあたって注意が必要だ。
Canon F-1 Flash Coupler L
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Flash Coupler L |
これもクリップオンストロボを装着出来るようにするアクセサリだが、前述の Flash Coupler F はシンクロ接点しかなかったが、Flash Coupler L はCATシステムの接点やメーター連動回路・電源を装備している。 更にカメラの露出メーターの照明も可能となっている。 ただし、H-D電池1個(CAT用)と大型のH-P電池1個(照明用)を収納し、CAT用メーター連動回路なども入れるため異常に大きい事に加え、装着したままではフィルムの巻き戻しは出来ないし、背蓋も開けられないという欠点が多いアクセサリだった。
CATシステム
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CATシステム(手持ちの旧F-1カタログから) |
CATシステムとは Canon Auto Tuning System の略で、SPEEDLIGHT 133D と組み合わせてフラッシュ撮影の露出調節を簡便化してくれるシステムである。 良く理解していないライターが書いたWeb記事などでは『自動調光してくれる』という記載を見かけるけど、FTb や F-1 などのマニュアル露出カメラでは自動的に露出調整されない事に注意して欲しいのと、いわゆるフラッシュマチックなので「調光」という言葉を使って良いのか微妙である。
CATシステムの使い方は、
- FDレンズ前枠に距離情報リングを装着して SPEEDLIGHT 133D とコード接続する。
- シャッター速度を1/60秒(シンクロ速度)にする。
- 主被写体にピントを合わせる。(ピント位置が適正露出になる)
- ストロボ経由で距離位置に応じた信号が測光値の様にカメラに伝えられてメーター指針が振れる。
- 追針が指針と合う様に絞りを操作すれば適正露出になる。
SPEEDLIGHT 133D からカメラに伝えられる信号は充電状態も反映しているので、SPEEDLIGHT 133D の充電量に応じた発光バラツキも考慮される事になる。
なお、
Canon EF のAEモードと組み合わせればメーター指針の絞り値で撮影されるので、手順5が不要でフラッシュ撮影でも自動露出撮影が可能になる。 いづれにしてもフラッシュの発光量に対して絞りで適正露出にするフラッシュマチックなので、利点もあるけど真っ暗闇で撮影しない限り露出補正が必要になる前時代的なシステムである。
外光式オートストロボの方が環境光の影響が考慮されるのでそちらの方が良さそうだし、1975年発売の OLYMPUS OM-2 に搭載されたTTLオート調光方式が主流になるのである。
CATシステムは距離情報リングを装着する必要があるし、使用出来るレンズが限られていたり、環境光の影響が考慮されなかったりで、開発陣には申し訳ないが全く評価できないシステムだった。
そういえば、上記写真の Canon F-1 のカタログにはCATシステムの記述があったけど、Canon F-1N のカタログには何の記述も無いので、キヤノンでもアホさ加減は判っていたのだろう。
FDレンズ
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所有レンズの一部 |
僕はNewFDではなく旧FDレンズが好きだ。 決してス便利じゃないスピゴットマウントだけど、重厚な作りが所有欲を満たしてくれる。 NewFDは質感が安っぽくて、白い超望遠レンズ以外は好きになれないんだよねぇ。
それにしても自分自身に残念なのは、旧FD300mm F2.8 S.S.C. Fluorite や New FD300mm F2.8L をEFマウントに改造するという取り返しの付かない悪事を犯してしまった事だ。
あとがき
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僕の Canon F-1N を構える某スポーツカメラマン |
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Canon F-1N - 1976年発売 |
某有名スポーツカメラマンに僕の Canon F-1N を持って頂き、取材現場で記念撮影。 師は軽くて細身の FD 400mm F4.5 を多用していたそうだ。
プレスルームで、ヨーロッパ撮影ツアーの話 や 試作の FD 400mm F2.8L を真っ二つに壊した話 や コマーシャル撮影現場の話 などなど大昔の撮影秘話を楽しく聞かせて頂いた。
また、トリミング指示などを書き込んだ実物コンタクトプリントを見せて頂き、作品としての考え方なども学ばせてもらい、僕の写真撮影にも大いに影響している。
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