Canon EF - 1973年発売

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Canon EF
Canon EF
 1973年に発売された Canon EF はシャッター速度優先AEを搭載した一眼レフで、1971年に発売された Canon FTb と1976年に発売されて爆発的ヒット製品となる Canon AE-1 までの代打的なカメラと言える。

Canon EF

 Canon EF のシャッターユニットはコパル製のメカ制御シャッター「コパルスクエア」で、1/1000秒~1/2秒とバルブは機械制御で、1秒~30秒は電子制御というちょっと変わったハイブリッド制御方式である。
 ただし、1秒~30秒の電子制御領域でも1/2秒のスローガバナーが動作するので、電子制御している時間はシャッター速度より0.5秒短い様だ。 つまり、スローガバナが腐ったら電子制御範囲も腐ってしまうと思われる。
 測光連動範囲はEV-2~18と低輝度にたいへん強く、30秒のスローシャッター搭載も意味をなす。 Canon EF の8年後に発売される Canon New F-1 でも測光連動範囲は EV-1~18 であった。
 なお、測光方式は Canon F-1Canon FTb に搭載されているカットコンデンサー式ビームスプリッタによる「代理焦点面測光方式」ではなく、アイピース上に受光素子を配した普通のTTL測光を搭載している。 恐らく、「コパルスクエア」シャッターは上下にスペースを食うので、横走りシャッターの Canon FTb などと同じ位置に受光素子を配置するのは無理だったのだろう。
 それにしても、これだけ低輝度に強いカメラなのにアイピースシャッターが内蔵されていないのは残念だ。 付属のアクセサリーシューカバーを外してアイピース部に被せる「覆い」方式だったけど、みんなシューカバーを紛失してしまうのだ。

ファインダー表示

Canon EF のファインダー表示
Canon EF のファインダー表示
 ファインダー内には下側にシャッター速度スケールがあり、右側には絞りスケールと露出メーター指針が配置されていて、とても賑やかなファインダーだ。 絞りスケールは装着レンズの開放F値にメカ連動し、上下にシフトして開放F値の補正が行われる。
 このカメラはAEで撮影する事が基本で、マニュアル露出での露出合わせは面倒だ。 AE撮影の場合は絞りスケールに表示される指針が指す絞り値で撮影されるのだが、マニュアル露出の場合は絞り込み測光により指針が定点に来るようにシャッター速度や絞りリングを操作する方式で、この時代でもファインダーが暗くなる絞り込み測光は論外だと思う。
 説明書には記載されていないけど、マニュアル露出で開放測光を使う場合はメーター指針が示す絞り値とレンズの絞り値を合わせれば良いのだけど、絞り値追針が無いのでやはり使い難い。 設定絞り値が判る追針があれば最高のファインダー情報表示になっただろう。
ただし、ファインダー像透過式で拡散板照明式じゃないので被写体によってはスケールが読み難くなる欠点は残る。

シャッターダイヤル

シャッターダイヤル周り
シャッターダイヤル周り
 巻き上げ軸の周りにシャッターダイヤルを配置したカメラというと ZEISS IKON の CONTAX を連想するけど、Canon EF はレバー式巻き上げだしモダンなデザインだ。
 シャッター速度優先AEカメラはシャッター速度の変更操作がし易くないと話にならないし、僕は摘まんで回すシャッターダイヤルは操作性的に好きじゃないので、摘ままなくて良い Canon EF は使い易いカメラのひとつである。
本当なら OLYMPUS M-1 の様にマウント基部にシャッターリングがあればベストなんだけど、スピゴットマウンを回してしまいそうなのでキヤノン機では採用できなかっただろう。
 それにしても、1/1000秒から30秒まで刻んであるシャッターダイヤルは珍しい。 シャッターダイヤルを巻き上げ軸に配する事でダイヤルが大径化した恩恵だろう。

露出計スイッチ

露出計スイッチ
露出計スイッチ
 露出計はスイッチをONにしないと通電しない。 スイッチをONにすると巻き上げレバーが予備位置に出て来る。 また、ご丁寧に背面に『撮影時以外はメインスイッチをOFFにしてください』と記載されたシールが張り付けられていて、消費電力が多い事をアピールしている。 なお、スイッチをOFFにして巻き上げレバーを格納(予備角をゼロ)すると巻き上げレバーもロックされ、巻き上げ操作も出来なくなってしまうのは物凄く不便な仕様だ。
 露出計スイッチの中央にあるボタンは多重露光用のボタンで、このボタンを押しながら巻き上げればフィルムは給送されない。 説明書を読まないでいると、露出計スイッチのロックボタンだと勘違いしてしまう。

露出記憶スイッチ

露出記憶スイッチ
露出記憶スイッチ
 測光中に露出記憶スイッチを押し続ければ絞り値が記憶(ロック)されるのだが、軍艦部左上に配置されていて大変使い難い位置だ。 今で言うAEロックに相当するのだが、制御絞り値がロックされるだけで、シャッター速度を変えたら露出がズレてしまうので『露出記憶』という名称は正確ではない。
 なお、電気的に「露出記憶」している訳ではなく、メーター指針をメカ的にロックしているのでスイッチの自由なレイアウトは出来なかったのだろう。 無理をすればエプロン左側面にスライド式の「露出記憶スイッチ」を配置できそうな気がするけど、『もっと使い易い場所にあればなぁ』とため息が出る残念な仕様だ。
 それから巻き戻し部に配置されている赤いLEDはバッテリーチェック用で、カメラ底面の赤いバッテリーチェックボタンを押してLEDが点滅すればOKである。 また、1秒以上のスローシャッター露光中にも点滅する。

改造されている部分

改造されている部分
改造されている部分
僕が入手した Canon EF には改造(純正改造なのかどうか不明)が施されている。
・ファインダースクリーンがスプリットマイクロプリズムになっている
・シャッターダイヤルにガードが付いている
・シンクロターミナル兼スイッチが外されている
・CATスイッチが取り外されている
の4点が改造点で、ネットで調べると確かにその様な改造が存在していたらしい。
 Canon EF には前期型と後期型があり、明確な違いはファインダースクリーンで、前期型はマイクロプリズムで後期型はスプリットマイクロプリズムに変更されている。
僕の Canon EF はシリアル番号的に前期と後期の狭間の番号なので、ファインダースクリーンが改造対象だったのかどうかは判らない。

あとがき

キャッチフレーズは『太陽と影』
キャッチフレーズは『太陽と影』
 Canon EF のキャッチフレーズは『太陽と影』だった。
太陽の様に昇る様な勢いは無かったと思うし、影に沈んだ売れないカメラという訳でもなかったと思う。 つまり、あまり記憶に残っていない影の薄いカメラという事なのである。
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1 件のコメント :

  1. はじめまして。F-1記事で来ました。最近、捨てられそうになっていた個体を引き取りました。汚れ等を掃除してあげると、なんと、傷ひとつない、新品同様な綺麗なものだったのです。どうして、こんな物が??? とにかく、F-1の妹分みたいで、可愛いです。海外サイトに、electric version of canon f-1と書かれていました。なるほど、そっくりさんですね。使うかどうか、姉貴分の旧F-1に相談です。でも、後期型なので、EFよりも年下ですかね。それでは....。

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