Canon AE-1 - 1976年発売

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Canon AE-1
Canon AE-1
 このカメラは妻が彼女の実家から持ち帰ったカメラで、20年近く使われていなかったカメラだ。 仏壇脇の戸棚から出てきたそうで、ケースは劣化してボロボロだった。
『カメラもレンズもカビだらけなんだろうなぁ...』と思いながらケースを開けてみると、意外と綺麗で、レンズにもカビは無いようだ。 それ以上に驚いたのは、電池も元気で液漏れも無かった。

Canon AE-1

 1959年発売の Canonflex から始まったキヤノンの一眼レフはスピゴット式ののRマウントから始まり、自動絞りレバーを備えたFLマウントを経て開放測光対応のFDマウントへと変遷してきたが、ヒット製品と呼べる一眼レフは無かった。
 そんなキヤノンから低価格でシャッター速度優先AEを搭載した Canon AE-1 が1976年に発売された。 世界的なヒット製品となった Canon AE-1 はモーターワインダーが装着可能で、当時のキャッチコピーは『(連写一眼)』だった。

軍艦部外装はプラスチック

エンプラのメッキ仕上げはなかなか良い
エンプラのメッキ仕上げはなかなか良い
 一眼レフといえば金属製でボディー本体はアルミダイカストで外装は真鍮製の製品が殆どだったが、Canon AE-1 の外装はエンプラ(エンジニアリングプラスチック)製である。
 当時からエンプラを使った製品の『質感』に否定的な意見が多く、当然キヤノンも意識はしていたはずだ。 そこで Canon AE-1 のエンプラ外装には数層のメッキが施され、爪で叩くと『金属か?』と思わせる出来栄えだったが、熱容量が金属とは違うので、触った時のひんやりした金属らしさは演出できない。
 勿論エンプラでも強度は充分で、ぶつけると金属なら凹んでしまうけどエンプラなら全く問題ない(限界を超えると割れるけど)し、軽量化と低コスト化と形状の自由度に大きなメリットがある。 Canon AE-1 も使い込めば上層メッキが剥がれて下地の銅色メッキが現れるので、あたかも金属外装の様になるハズ(試作だけだったかなぁ?)だが、アマチュア向けカメラなので角が擦り減るほど使い込まれた Canon AE-1 を見たことがない。

シャッターダイヤル周り

シャッターダイヤル周り
シャッターダイヤル周り
 Canon EF と同様に巻き上げ軸周りにシャッターダイヤルが配置されている。 Canon EF ではシャッター速度設定単機能で30秒のスローシャッターまであったが、Canon AE-1 では感度設定も兼ねていてスローシャッターは2秒までである。 部品としての質感は高くないが操作性は良い。
  シャッターボタン周りにはセルフタイマーレバーがあり、レバーを引き出すと赤いLEDが現れる。 LEDが現れている状態でレリーズする、とLEDが点滅してセルフタイマーのカウントダウンが始まる。

逆光補正ボタンと露出読み取りスイッチ

逆光補正ボタン(上)
逆光補正ボタン(上)
露出読み取りスイッチ(下)
 Canon AE-1 の測光分布は一般的な「中央重点平均測光」となっているが、逆光などに敏感に反応して主被写体が露出アンダーになり易いと感じる。 そこで、AEロックボタンではなく+1.5段の「逆光補正ボタン」が設けられていた。
 1973年発売の Canon EF には「露出記憶スイッチ」が設けられていたので、AEロックの概念が無かった訳ではないハズだ。 開発担当者ごとにやることがバラバラでメーカとしての思想が無いのはキヤノンらしい。
 なお、AEロックボタンは無いけど「露出読み取りスイッチ」が「逆光補正ボタン」の下に付いている。 レリーズボタンを半押しすれば露出計が動作するのに、わざわざ露出読み取りスイッチを押す必要性は全く感じられない。 しかも不用意にスイッチが入らない様にと考えたらしく、ガードが高すぎて思いっきり押し込まないとスイッチが入らない。 こんなスイッチは要らないのでAEロックボタンにすべきだと思う。 後に発売される Canon A-1 では「逆光補正ボタン」が「露出ロックボタン」に変更されたけど「露出読み取りスイッチ」はそのまま搭載されていた...判らん。

ファインダー内表示

Canon AE-1 のファインダー内表示
Canon AE-1 のファインダー内表示(AE撮影時)
 ファインダー内表示は絞りスケールとメーター指針が表示されている。 絞りスケールは固定で、どんな開放F値のレンズを装着してもF1.2~F22まで表示され、開放F値より明るくしないと適正露出が得られない場合は露出アンダー警告ランプが点滅する。 なお、最小絞りを超える様な露出オーバーでの警告は出ない。
 絞りスケールには定点があり、マニュアル露出では絞り込み測光を使ってメーター指針を定点に合わせれば適正露出となる。
説明書には絞り込み測光による定点合わせ式しか記載が無いけど、マニュアル露出での開放測光も可能だが Canon AE-1 には絞り追針が無いので、「指針が示す絞り値とレンズ絞り値を合わせる」という非常に使い難い方法になる。
マニュアル警告
マニュアル警告
 また、所望の絞りで撮影しようと思ってシャッター速度リングを回してもファインダー内にシャッター速度が表示されないので、ファインダーから眼を外してシャッター速度を確認する必要がある。
 なお、レンズの絞りを「A」マークから外すと、ファインダー内の「M」警告ランプが目障りに点滅し、マニュアル露出撮影なんか許さないという強い意思が感じられる。
露出警告
露出警告
 このカメラの測光連動範囲はEV1~18であるが、設定感度やレンズ開放F値などにより連動範囲外になる事が多々ある。 連動範囲外になると、レンズの開放絞り値で撮影されてしまう。 つまり、適正露出になる絞り値がF4だけど連動範囲がF5.6以上だった場合はF1.8等の開放F値で撮影されるため露出オーバーになってしまう。 また、高輝度側で連動範囲外になると開放絞りで撮影されちゃうので、写真は真っ白になってしまう。
 設計者は『警告を出してるもん!』と考えているのだろうけど、警告を出しながら出来るだけ適正露出にする努力が必要だ。 写真を撮らない人が設計するとこうなっちゃうという典型的な例だろう。

あとがき

 Canon AE-1 は福島工場で生産された一眼レフカメラで、世界的なヒットを受けて生産ラインも増強され、キヤノンに大きな利益をもたらした事だろう。
福島工場は1969年に設立され Canon AE-1 や Canon T90 や Canon EOS 初期製品などの生産を経て、1991年にカメラの生産を大分工場に移管してしまった...大分は御手洗一族の故郷なのである。

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