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OLYMPUS OM-2 SPOT/PROGRAM |
OMシリーズで初めてプログラム露出制御機構を搭載した機種で、プログラムAE機能とマニュアル露出時のスポット測光機能を搭載していた。 モデル名に OM-2 の名称が付いている様に容姿が OM-2 に似ているけど、OM-4 をベースとした新規開発機種である。
OLYMPUS OM-2 SPOT/PROGRAM
一眼レフでプログラム機能を実現するためには、カメラから絞り制御を正確に出来ないと露出過多/不足となってしまう。 これまでのOMシステムレンズは絞り駆動レバーのF値対応性がレンズ間で揃っていなかった。 そこで、ボディー側からプログラム絞り制御を行う際に、ダイレクト測光機能を用いて「瞬間絞り込み先幕測光」を行って適正露出が得られる様に補正を行う方式とし、既存のOMシステムレンズでもプログラム制御(当然ながら誤差はあるけど)を可能にした。 ちなみに、この OM-2 SPOT/PROGRAM 以降に発売された交換レンズはプログラム絞り制御のメカ対応性を向上させてあるそうだ。 ここからは OM-2 SPOT/PROGRAM という名称は長すぎるので、略して OM-2 SP と記載する。
モードセレクトレバー
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OFFポジションが無い |
巻き戻しクランクとペンタ部の間にモードセレクトレバーがあり、BATTERY CHECK と PROGRAM と AUTO と MANUAL/SPOT が選択できる。 自動露出である PROGRAM と AUTO は中央重点測光方式で、MANUAL/SPOT のマニュアル露出ではスポット測光方式となる。 TTLダイレクト測光方式なのでAEロック出来ないことから、スポット測光はマニュアル露出モードの時だけという潔い仕様だ。
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電子回路基板 |
ここでもうお判りかと思うけど「OFF」ポジションは存在しない。 つまり、カメラに2個のSR44電池を装填したら常に電源スイッチは「ON」状態なのである。 勿論、「測光タイマー」により消費電流が少ないスタンバイモードに移行はするのだけれど、このカメラの電子回路はスタンバイモードの消費電流が異常に多いのが欠点だ。 新品電池を装填しても、しばらく放置すると電池が放電してしまい、メカシャッターのバルブと1/60秒以外は使えない状態になる。 どうやら OM-4 もスタンバイ消費電流が多かった様で、OM-4 Ti では電子回路が改善・修正されたらしいが、残念ながら OM-2 SP の回路は修正されずに生産が終わってしまった。 OM-2 SP は動作制限電圧も高めに設定してあるみたいだし、スタンバイモードの消費電流が多い問題は絶対に設計バグだと思う。 試作機のテスト中に動作不能になるのが速い事は判っていたハズなので、技術者達は確信犯だったと思う。
測光システム
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測光センサー |
シャッター先幕に反射パターンが描かれた伝統のTTLダイレクト測光方式を搭載していて、測光センサーはミラーボックス下側にフィルム面を睨む受光センサーが配置されている。 レリーズ前は主ミラー裏面のサブミラーによりミラボックス下の測光センサーへ入射光が導かれる。 これによりマニュアルスポット測光値出力やAE時の中央重点平均測光参考値を行っている。
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断面図 |
自動露出時のシャッター速度は撮影開始後に決まるので、自動露出モードの場合は測光表示値は単なる参考値でしかなく、OM-2 等では測光値表示用のセンサーがファインダーアイピース部にあったため、明るいファインダースクリーンに交換すると最終露出値は問題なくても表示値が間違っているという問題があった。 OM-2 SP では主ミラーを半透過ミラーとして測光センサーに光を導くため、どんなファインダースクリーンに交換しても測光値表示に影響しないのは大きな利点だが、ファインダーの明るさが少し犠牲になっている。 明るいレンズを装着しても『なんだか暗い』と感じてしまう。
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測光系 |
プログラム(PROGRAM)モードではミラーアップ後に露光前の先幕を測光する「瞬間絞り込み測光」により絞り量の制御が行われている様だ。 このため、レリーズタイムラグが長くなり、モータードライブによる連写駒速は先代の最高5駒/秒に対して最高3.5駒/秒へ低下している。
娘が使っている僕の OM-2N を返して貰おうと思い、OM-2 SP を触らせて交換を申し入れてみたら『レリーズが変!』と判っちゃうほどタイムラグがあるので OM-2N を返して貰えなかった。 TTLダイレクト測光だけで瞬間絞り込み測光を要しない絞り優先AE(AUTO)モードやマニュアル露出(MANUAL/SPOT)ならタイムラグを短く出来るハズだけど、動作シーケンスを切換え式にする手間やコストを省いた様だ。 そもそもレンズの焦点距離が判らないし相対絞り値しか判らないシステムなのでプログラムAEもへったくれもないが、他社機はプログラムAE搭載が普通になったので対抗する必要があったのだろう。
PROGRAM モードでは開放状態からどの程度絞り込むかが重要だけど、従来のレンズシステムは絞り込みレバーの駆動量が統一されていなかった。 このカメラ発売以降のOMレンズシステムでは絞り駆動量の統一が図られたらしく、PROGRAM モードを使うなら新しいレンズを選択した方が良いけど対応レンズの見分けがつかないし、僕は PROGRAM モードなんて使わないので関係ない。
なお、OMシステムの露出制御はTTLダイレクト測光により、最終露出は撮影中に決まる方式なので「AEロック」が出来ないのが最大の欠点だ。
シャッター
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シャッター速度環 |
シャッター速度ダイヤルは従来通りマウント基部にあり、フォーカスも絞りもシャッター速度も左手で操作できる。 シャッターダイヤルが軍艦部にあるカメラよりマニュアル露出操作が楽だけど、個人的に絞り環はマウント側にある方が好きだ。 なお、マウント付近が太目のレンズを装着すると、シャッター速度環を操作し難いという欠点もあるけど、僕はAEしか使わなかったので問題なかった。
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シャッター先幕 |
シャッターは旧式のままの布幕横走りの電子制御方式で、シャッター先幕には OM-2 からのTTLダイレクト測光に対応する白い測光パターンが設けられている。 最高速は1/1000秒までしかないし、同調速度も1/60秒と低速で時代遅れ感は否めない。 ただ、メカ式のバルブとメカ式の1/60秒が追加されているので、電池切れの際は1/60秒でならマニュアル露出(露出計は動かないけど)で撮影を継続できるし、長時間露光でも後幕保持コイルへの電流が流れない様になっている。
電池切れ状態の時にメカ制御シャッター以外でレリーズするとミラーアップしてシーケンスが止まってしまう。 この状態になったらシャッターダイヤルを赤いバルブか赤い1/60秒にセットすればミラーがダウンして復帰する。
ファインダー視野
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ファインダー表示 |
アナログメーターではなくファインダー左視野外にLCDで表示され、AE時はシャッター速度スケールが表示され、その右横にドットバーで制御速度が示される。 マニュアル時はシャッター速度スケールが消えて定点マークが表示され、その右横にドットバーで適正具合が示される。 アナログ風の表示を実現しているが、マニュアル時にシャッター速度が判らないままだし好みが別れるところだろう。
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バックライト点灯時 |
カメラ右側前面の露出補正ダイヤル下にLCDの採光窓があるけど採光効率が悪いらしく暗がりでの見え具合が非常に悪い。 その対策として、エプロン部右のスイッチを押すとバックライトが点灯してLCD表示が見やすくなが、バックライトを多用すると電池の消耗が更に早くなるのが難点だ。
もともとOMシステムでは絞り環の絶対値が判らない方式なので仕方ないけど、絞りの設定値がファインダーに表示されないし、PROGRAMモードの時に制御される絞り値が表示されないのは使い難い。 また、ほとんどの OMシステムのレンズは絞り環がレンズ先端部に付いているので絞り直読窓を搭載する事も出来なかった。
セルフタイマー
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セルフタイマー |
セルフタイマーは電子制御になっていて、OM-2N等のメカ式セルフレバーがあった所に赤いプラ製ドームがある。 ドーム基部のリング上部にポッチがあるので、そのポッチを上に引き上げて反時計方向に回せばセルフタイマーモードになり、戻さない限りセルフターマーモードが継続する。 また、ドームの中にはLEDが入っていてセルフカウントダウン動作を表示する様になっている。 それにしても、折角電子制御にしたのなら、右手中指が当たるカッコ悪い赤ドームはスッキリと無くしちゃって、セルフタイマー動作表示はLCD採光窓が赤く点滅する様にすれば良かったのになぁと思う。
ちなみに、セルフタイマー撮影がスタートするとミラーアップ後に8秒間の「虫の息」みたいな小さな間欠音が出て、レリーズ2秒前に音が大きくなる。 なお、ドーム基部のポッチを時計方向に回せば無音のセルフタイマーモードになる。
グリップ
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脱着式グリップ |
OM-3/OM-4系と共通の脱着式グリップが用意されていた。 実際にはグリップというより指掛かり的なものだけど、右手中指を引っ掛けてボディーを握り易くなる。 装着しておいて損は無いアクセサリーだ。
操作性が向上するのだからカメラのデザインとして一体・固定となっているべきだけど、グリップがあると、ワインダーやモータドライブを装着出来ないという事情がある。 過去のアクセサリとの互換の為に仕方なかったのだろうけど、同梱していても良かったと思う。
OLYMPUS Electronic Flash T32
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Electronic Flash T32 |
広角24mmをカバーし、非ズームタイプだけどガイドナンバーが32と強力でバウンスも可能なストロボである。 小型軽量なOMシリーズにはちょっと大きくて重すぎてアンバランスだけど、 OLYMPUS OM-2 シリーズ のTTL自動調光機能が最大限に利用できた。 発行部を上下に変化させられるので、天井バウンスができるけど、縦位置撮影の時はオフカメラシューで離して別途バウンスさせるしかない。 スナップ撮影なら小型な T20 の方が適しているだろう。
現代ではオフカメラストロボ撮影がワイヤレス方式のTTL自動調光で利用できるが、この時代では有線式だけどオフカメラTTL自動調光が可能で最強のマクロ撮影システムだった。 残念ながら電気パーツの経年劣化などにより正しく機能しない T32 が多いらしい。
モータードライブ / ワインダー
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MOTOR DRIVE 1 |
OLYMPUS OM-2 SP の底板にはモータードライブ装着用のカプラー穴や接点があり、モータードライブを購入すれば改造なしで装着できた。 でも、このカメラにドライブ類を装着する事は少なかったし、華奢なOLYMPUSにモータードライブは怖いので、装着する場合でも単三電池が使えるワインダーの方が多かった。 なお、僕のモータードライブ用Ni-Cd電池は2つとも死んでしまったので使えない。 アクセサリーとして単三電池が使えるグリップ電源も存在したが僕は持っていない。 動作させられなくなったアクセサリーって悲しい。 ちなみに、ワインダーを探しても見当たらない...何処へしまったんだろう。
交換レンズ
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OM交換レンズ |
OMシステムは小型軽量の先鞭をつけた一眼レフシステムなので、どのレンズも他社同仕様製品と比べて大変コンパクトに設計されていた。 僕のOMシステム用交換レンズは 28mm / 50mm / 90mm / 100mm / 600mm と、テレ系に偏っているので、広角レンズやズームレンズは各社のマウントに交換が出来るタムロンレンズを使っていた。
あとがき
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2台ある OM-2 SP |
大昔、誰だったか忘れたけど OM-1 MD 一式を買った友達がいて、ファインダーの広さや5駒/秒のモードラに驚愕すると同時に直ぐに壊れそうな頼りなさを感じたのを覚えている。 オリンパスは当時流行のプログラムAEが無いと戦えないと考えたのだろうけど、僕は絞り優先AEとマニュアル露出だけで充分で、AEロックを搭載してくれれば幸せになれたのに...
僕の OM-2 SP の巻き上げが不調になったので、部品取り用にジャンクの OM-2 SP を購入してみたら、同じ原因の故障品だった。💦 結局、両カメラの底蓋を開けて遊星ギア関連を外し、清掃・注油・再組立てしたら両カメラとも復活してくれた。(修理写真を撮ってませんでした...)
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