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| CANON New FD REFLEX LENS 500mm 1:8 |
ニコンが商品化していた反射望遠レンズの仕様に合わせてキヤノンも商品化した様に思えるが、『機材を減らしたいけど500mmを持って行きたい』という場合に良い選択肢になるレンズだ。
CANON New FD REFLEX LENS 500mm 1:8 - 1980年発売
キヤノンの反射望遠レンズは1978年発売の FD REFLEX LENS 500mm 1:8 S.S.C. が最初である...多分。 本レンズはマウントをNewFD化して1980年に発売されたものだ。 ニコンではかなり早くから反射望遠レンズを市場投入していたが、キヤノンはニコンに20年近く遅れていた。 恐らく望遠鏡製作経験が無かったのと、小型・軽量というメリットより二線ボケ・リングボケの描写を嫌っていたのだろう。
ところが、1986年にニコンから 更にコンパクトで、マクロ並みに1.5m(撮影倍率は0.4倍)まで寄れて、周辺ボケまで◎を維持する傑作レンズ New Reflex-Nikkor 500mm F8 を発売されてしまった。
レンズ構成
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| レンズ構成 |
3群6枚構成の反射望遠レンズで、屈折レンズと組み合わせたカタディオプトリック式反射望遠レンズである。 主ミラーに加工が面倒な穴あけは行わず、蒸着していない部分を光学ガラスとして利用している。 前玉有効径は約80mmほどなので、F6.3相当になるけど、中央遮蔽を差し引いてF8という事になっている。 従って被写界深度はF6.3なので、F8より薄い焦点深度となっている。
フォーカシングは副鏡を含む前群をヘリコイドで繰り出す方式で、最短撮影距離は4m(撮影倍率は0.14倍)である。 なお、フォーカス敏感度が高いので、距離環を少し触っただけでもピントがズレてしまうので、息を止めてピントを合わせたら距離環を動かさない様に注意が必要だ。
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| 34mm Drop In Filter |
フィルターはリア差込み式で、34mmフィルターホルダーを交換する。 標準で「REGULAR 1x」が装着されていて、可変絞りが無いので高輝度時の光量調節にはNDフィルターが必要である。 このフィルターは FD 300mm 1:2.8 S.S.C. FLUORITE などと共通のもので、34mm Drop In Filter として REGULAR 1x / UV 1x / Y3 2x / R1 6x / ND 4x などがあったらしい。 フィルター枠中央の銀ボタンを押しながら、フィルター枠の両端を摘まんで持ち上げればフィルターを外す事が出来る。
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| マウント部回転ボタン |
重量は710gなので FD 80-200mm F4 S.S.C. とほぼ同じで、全長は146mmなので FD 200mm F4 S.S.C. より少し長い程度である。 固定式三脚座が装備されていて、三脚座上方の鏡筒横にある銀色ボタンを押せば、マウント部のみを左右90度に回転させられる。 手持ち撮影でも三脚座が手の平に納まってフォーカシングし易いので、手持ちでの縦位置撮影時も三脚座を回転した方が使い易い。
なお、フードは内面が植毛風の内蔵式で、引き出して「ひねれば」ロックされるのは素晴らしい機能だ。 フードは深さが少ないので効果はさほど高くなさそうだけど、陽光が鏡筒内を照らして迷光が発生するのを少しは防いでくれる。 付属品で困るのは、Φ83mmP0.75仕様の金属製フロントキャップで、イライラするほど脱着し難い。
エクステンダー対応
焦点距離を伸ばすエクステンダーに対応していて、FD 2X-A を装着すれば 1000mm F16 とり、FD 1.4X-A を装着すれば 700mm F11 となり焦点距離を伸ばせるが、手振れや画質が気になって使った事が無い。 なお、キヤノンのFDレンズ用エクステンダー(テレコンバーター)は4種類存在する。
- EXTENDER FD 2x 5群5枚構成 1975年発売 ¥29,000円
FD 300mm F2.8 S.S.C. 専用 - EXTENDER FD 2x-A 4群6枚構成 1978年発売 ¥35,000円
300mm以上、ズームはテレ側が300mm以上。(※FD 300mm F2.8 を除く) - EXTENDER FD 2x-B 5群7枚構成 1980年発売 ¥45,000円
300mm未満、ズームはテレ側が300mm未満。(※FD 300mm F2.8 を含む) - EXTENDER FD 1.4x-A 3群4枚構成 1981年発売 ¥40,000円
300mm以上のレンズ
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| FD 2x-A なら◎になる |
という4種類で、対応するマスターレンズが判り難く、『アレ?2x-Aだったけ、2x-Bだったっけ?』てな事になる。 EXTENDER FD 2x-A と EXTENDER FD 2x-B と EXTENDER FD 1.4x-A を持っているけど、殆ど使った記憶が無い。
ちなみに、FD 1.4x-A では画面周辺の輝点ボケ像は「C」のままだけど、FD 2x-A を使えば画面隅まで輝点ボケ像が◎になってくれるという利点はある。 もっとも、マスターレンズの◎になる範囲だけ拡大しているので、トリミングするのと同じ効果だと思う。
描写特性
以下の遠景描写の写真はRAW現像時にオートホワイトバランスに設定し、Dレンジオプティマイザーをオフにして現像しています。
絞り:F8 |
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散歩レンズには適さない焦点距離なので撮る物を探すのに苦労するけど、周りの人から超望遠レンズを構えてる様には見られないし、描写性能も反射望遠レンズとしては悪くない。 ただし、遠距離に比べて近距離ほどシャープ感が低下するし、被写界深度が劇薄になるけど、絞り込めないのが辛いところだ。 また、絞りがF8固定なので、天気が悪い日はシャッター速度が遅くなるので更に辛くなる。
通常、反射望遠レンズはコントラストが低下し易いのだけど、このレンズはそんな心配は無い。 鏡筒内部や遮光バッフルの反射迷光対策がしっかりしている様で、画像のコントラストは意外と高い。 ただ、フォーカス敏感度が高めなので、ピントピークの位置に合わせるのに神経を使うけど、合焦部分は結構シャープでコントラストもある。 また、焦点深度は 500mm F6.3相当なので、遠距離でもピントが合っている範囲は狭いし、焦点距離の割に超軽量なので安易にレリーズるとブレ写真になり易い。
反射望遠レンズなので色収差は全く感じないが、中央遮蔽の影響でボケ像がリングボケ・二線ボケになるので、独特のボケ描写となる。 背景ボケなどは避けられないので、リングボケを積極的に使うのもアリだろう。 なお、リングボケになるのは仕方ないけど、画面周辺では視力検査のランドルフ環みたいな「C」状になってしまうのが惜しい。 背景に沢山の輝点を入れたりすると周辺のボケが気になる場合がある。 周辺までリングであれば『綺麗』と感じるられるのに残念だ。
画面周辺の輝点ボケが「C」状になるので、当然ながら周辺光量落ちもあるけど、ドラマチックな効果ほどではない。 また、糸巻型の歪曲収差があるけど、さほど目立たないので気にならないだろう。
太目でコロンとしたレンズだけど、見た目ほど重くないので取り回しは良い。 『機材を減らしたいけど500mmを持って行きたい』という場合に良い選択肢になるだろう。 登山などでは登山道から踏み出せない事も多いので、ニコン並みに1.5mまで寄れたら超望遠マクロレンズの代用にもなったんだけどなぁ...手持ちではブレやピントなどが厳しいけど、沢山撮れば当たり駒がある。
あとがき
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| モスクワでの水凹先生 |
実はこのレンズ、僕が買った個体じゃないのである。 NewFDマウントをEFマウントに改造した僕のレンズを水凹先生が見て『オレのレンズも改造してよ』というので改造してあげたのだけれど、両方のレンズを比べて『そっちのレンズの方が距離環が軽くてイイなぁ』と言うので(こっちの距離環も充分軽いけど)、取り換えっこしたレンズなのだ。 その後、EOSでの使用を終えてFDマウントに戻したけど、水凹先生記念レンズとして大切に取っておいた。 先生も自分のレンズの製造番号なんて覚えてないだろうなぁ。 僕も自分のレンズの製造番号がなんて覚えてない。
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