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Canon FTb-N |
1970年代は今と違ってラヂオを聴いている人も多く、製品コマーシャルはラヂオから入ってきた人も多かった。 Canon FTb のキャッチフレーズは『若者の一眼レフ』だったけど、ラヂオのコマーシャルは『おぎゃ~・ボヨ~ン・ガツン・ポオ~』みたいな妙なコマーシャルだったことを思い出した。 そんな妙なコマーシャルで若者は買ってくれたのだろうか?
キヤノンって昔からコマーシャルが下手糞だったよなぁ...
Canon FTb-N
1971年に
Canon F-1 と 同時に発売された Canon FTb は
Canon F-1 の量販機種という位置づけである。 「b」の名前が示す通り、基本部分は Canon FT QL であったが、FDレンズによる開放測光対応と共にCATシステムへの対応なども行われた。
Canon FTb-N は Canon FTb のマイナーチェンジ機で、改良点は ファインダー内のシャッター速度表示 / 巻き上げレバーのプラ指当て / 絞り込みレバーの形状変更 / シャッターボタンの大型化 / シンクロ接点カバー などが挙げられるが、他にも細かな改良が加えられたらしい。
なお、Canon FT QL まではフィルムローディング機構の QL(Quick Loading)を製品名に冠していたが、FTb からは省略された。
「b」とか「N」とか「改」とか
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Canon IV Sb改型 (RAPID WINDER付き) |
Canon FTb-N の意味は Canon FT の後継機(b)で、更にその改良機(-N)ということらしい。 1940年代のレンジファインダー機の頃からキヤノンの製品名には「S」とか「b」とか「改」などを付ける風習がある。 なので、例えば「Canon IV型」と言っても、 Canon IV型 / IV S型 / IV Sb型 / IV Sb改型 とあり、『俺のカメラは何型?』ってな事になる。 中古屋でも平気で間違ってたりするので注意が必要だ。
開放測光に対応したFDマウント
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開放測光に対応したFDマウント |
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露出計スイッチ |
Canon F-1 や FTb から、FDレンズ利用で開放測光に対応するためマウント内側に従来の絞り込みレバーに加えて開放F値伝達ピンや絞り設定伝達レバーなどが追加されている。 開放値伝達手段はメカ連動タイプで、電気的に処理するシステムにはなっていない。
露出計のスイッチは FT QL と同じで軍艦部のフィルム巻き戻しクランク横にあり、ON / OFF / C の3ポジションある。 「C」はバッテリーシェックポジションで、スイッチから指を離せば「OFF」に戻る。 「OFF」位置には稲妻マークがあり、CATシステムを使う場合はOFFにする。
測光光学系
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測光系光路図(説明書から) |
Canon F-1 や FTb 系の測光方式はちょっと変わっている。 ピント板の上に置かれるコンデンサーレンズを分割し、中央をハーフミラーとして測光センサーに光を導く方式を採用している。 キヤノンではこれを「代理焦点面測光」と呼んでいて、ラヂオコマーシャルでも『焦点面測光の確かな手応え!』と謳っていた。
どれだけ優れていたのか判らないが、分割したコンデンサーレンズに蒸着面を形成してから高精度に張り合わせるのは非常に手間とコストが掛かるハズだ。
Canon-F1 になら良いけど量販機には厳しかっただろうと想像する。
ファインダー内表示
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Canon FTb-N のファインダー内表示 |
ファインダー内にシャッター速度が表示される様に改良されたのは良いが、メーターと反対側だし「暫定対策」って感じで視度が全然合ってない。 上の写真ではシャッター速度が読めるけど、肉眼で覗くとシャッター速度表示はボケボケ状態で、老眼には判別不能だ。
年寄りに不親切なのは『若者の一眼レフ』だから仕方ないと割り切るしかない。
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F5.6での追針位置の差 |
追針の位置で絞り値を予想する方法もあるが、装着レンズにより追針のオフセットが変わるので混乱してしまう。
追針のオフセット位置をレンズの絞り環をF5.6に設定した時で比較すると、左が開放F1.4のレンズ装着時で、右が開放F2.8のレンズ装着時である。
FD28mm F3.5 S.C. と FDM50mm F3.5 S.S.C. と FD135mm F3.5 S.S.C. で広角から望遠まで揃えれば追針位置想像方式でも使えるかも知れないが現実的じゃない。
絞り込みレバー
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絞り込みレバー |
絞り込みレバーはセルフタイマーレバーと兼ねている。 レンズマウント側に倒せば絞り込み動作となり、逆(反時計回り)に回せばセルフタイマーのセットになる。
絞り込みレバーにはロック設定レバーがあり、絞り込んだ状態でロックレバーを「L」位置にセットすれば絞り込み状態が保持される。 更にロックレバーを「M」位置にセットすればミラーアップも可能である。
なお、カメラやレンズを壊す原因になるので、絞り込んだ状態でレンズ交換をしてはいけない。
シンクロ接点カバー
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シンクロ接点カバー |
Canon FTb には無かったシンクロ接点カバーが設けられた。 これを標準装備にした経緯は知らないが、当時僕が使っていた NIKON F のシンクロ接点はストラップ環横にあり、ガンカプラーにストロボを装着してシンクロ接点にカバーを付けていないと感電する事があった。
当時のストロボは接点に高電圧が出ていて、シンクロ接点にも高電圧が出て来るのである。
NIKON F や
Canon F-1 も共にシンクロ接点キャップ方式だったので無くしてしまう事が多く、そのままストロボ撮影すると『ビリリッ』と感電する事故が良くあった。 ちょくちょくシンクロキャップを購入していたので、Canon FTb N の脱落しないカバー方式は親切である。
CATシステム
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CATシステム |
CATシステムとは Canon Auto Tuning System の略で、SPEEDLIGHT 133D と組み合わせてフラッシュ撮影の露出調節を簡便化してくれるシステムである。 良く理解していないライターが書いたWeb記事などでは『自動調光してくれる』という記載を見かけるけど、FTb や F-1 などのマニュアル露出カメラでは自動的に露出調整されない事に注意して欲しいのと、いわゆるフラッシュマチックなので「調光」という言葉を使って良いのか微妙である。
CATシステムの使い方は、
- FDレンズ前枠に距離情報リングを装着して SPEEDLIGHT 133D とコード接続する。
- シャッター速度を1/60秒(シンクロ速度)にする。
- 主被写体にピントを合わせる。(ピント位置が適正露出になる)
- ストロボ経由で距離位置に応じた信号が測光値の様にカメラに伝えられてメーター指針が振れる。
- 追針が指針と合う様に絞りを操作すれば適正露出になる。
SPEEDLIGHT 133D からカメラに伝えられる信号は充電状態も反映しているので、SPEEDLIGHT 133D の充電量に応じた発光バラツキも考慮される事になる。
なお、
Canon EF のAEモードと組み合わせればメーター指針の絞り値で撮影されるので、手順5が不要でフラッシュ撮影でも自動露出撮影が可能になる。
いづれにしてもフラッシュの発光量に対して絞りで適正露出にするフラッシュマチックなので、真っ暗闇で撮影しない限り露出補正が必要になる前時代的なシステムである。
外光式オートストロボの方が環境光の影響が考慮されるのでそちらの方が良さそうだし、1975年発売の OLYMPUS OM-2 に搭載されたTTLオート調光方式が主流になるのである。
CATシステムは距離情報リングを装着する必要があるし、使用出来るレンズが限られていたり、環境光の影響が考慮されなかったりで、開発陣には申し訳ないが全く評価できないシステムだった。
あとがき
その昔、キヤノンにするかニコンにするか随分と悩んだ。 結局、ニコンに入信して熱心な信者となったが、後に棄教・背教して俗世間に戻ってこれた。
だが、棄教・背教した当初はキヤノン機を使おうとすると...
- レンズ着脱方法が全然違うのでアセる
- 絞り環の回転方向が逆なのでついつい逆に回す
- 距離環の回転方向が逆なのでついつい逆に回す
などなど、宗教的作法が異なるので慣れるまでかなりの時間を要した。 そんなとき、レンズ着脱回転方向だけが異なるペンタックスがクッション役になってくれた。
今ではニコン機を使うとレンズ着脱時に反対方向へ回して壊しそうになるほど俗人に戻っている。 昨今ではニコン信者も激減し、新興宗教へ入信する人が多い様だ。
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