Canon F-1 - 1971年発売

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Canon F-1 - この個体は1976年発売のモントリオール五輪記念モデル
Canon F-1 - この個体は1976年発売のモントリオール五輪記念モデル
 Canon F-1(旧F-1)は1960年代に写真家から絶大な支持を得ていた NIKON F の牙城を崩すべく1971年に発売された。  NIKON F が確固たる地位を築いてしまった1965年に「打倒ニコン」を目指して開発に着手し、5年の歳月を掛けて開発されたカメラである。 また、カメラ本体だけでなく、絞り込み測光方式だったFLマウントから開放測光対応のFDマウントに変更され、プロ用カメラとしての完成度は非常に高かった。
 システムの基本性能が良かったのでフリーランス写真家へのセールスはある程度成功したが、報道系の牙城を崩せたとは言えなかったと思う。

Canon F-1

 僕は NIKON F にするか Canon F-1 にするか随分と悩んだものだ。 このカメラの大きな特徴は、ファインダー交換式でありながらTTL露出計が本体ボディーに内蔵されている事である。 ニコンではTTL露出計を使いたければ Photomic ファインダーの一択しか無かったけど、Canon F-1 ではどの型式のファインダーに交換してもTTL露出計が使えるのである。 ただし『向こう10年間は不変です』と開発放棄宣言して発売されたので、欲しい機能や改善すべき機能の実装は長~く待たされる事になった。

交換ファインダー

ファインダーは交換式
ファインダーは交換式
 ファインダーは交換式で EYE LEVEL FINDER の他に 暗所測光用の BOOSTER T FINDER や 自動露出を実現する SERVO EE FINDER や アイポイントが長大な SPORTS FINDER などが用意されていた。 ファインダーの左右両脇にある着脱ボタンを押しながら後ろ側へ引き抜けばファインダーを外す事ができる。 ファインダーを外すと精密機械らしいピカピカのレール面が現れる。
 その昔に SPORTS FINDER を購入した事もあったけど、スポーツ撮影では背蓋に顔を密着させて手振れを防ぎつつ被写体を追尾する必要があり、全く役に立たないので直ぐに手放した。

フォーカシングスクリーン

フォーカシングスクリーンも交換可能
フォーカシングスクリーンも交換可能
ファインダー光路図
ファインダー光路図
 交換フォーカシングスクリーンはマイクロプリズム(A型)/スプリットイメージ(B型)/全面マット(C型)/方眼マット(D型) の4種類が用意されていたっが、最終的に9種類まで増やされた。
 フォーカシングスクリーンにはコンデンサーレンズがあり、このコンデンサーを分割カットして中央12×8mm部分をハーフミラー化して測光センサーに光を導いている。 従って測光分布はこの中央12×8mmの部分測光となる。 また、ハーフミラーを用いてる関係から、偏光フィルターを利用する場合は円偏光フィルターを使う必要がある。
なお、フォーカシングスクリーンを交換する際は「型式が記載された辺」をレンズ側に向けて装着しないと測光出来なくなるので注意が必要だ。

ファインダー表示

ファインダー内表示
ファインダー内表示
 Canon F-1 は標準のアイレベルファインダーのままで視野外右側に露出計メーターとシャッター速度が表示されるが、設定絞り値表示が無いのはとても残念だ。 大きく動くメーター指針・追針に加えて赤い範囲外警告表示がオシャレだったけど、MR9水銀電池1個で動く露出計はCdS素子を使っているので「ジワッ」と動く鈍い指針の反応が古さを感じさせる。
Canon F-1 は装着するレンズの開放絞り値によって追針が上下にオフセット移動して開放F値を補正する方式なので、絞り値スケールまで表示する事が難しかったのだろう。 この欠点の解消は Canon New F-1 まで待つしかなかった。 なお、1973年発売の CANON EF では追針が省かれているが、オフセット移動する絞り値スケールが表示される様になっていたので『やれば出来る』程度の難易度だと考えられる。

巻き上げレバーまわり

巻き上げレバーまわり
巻き上げレバーまわり
 Canon F-1 の巻き上げレバーは予備角+巻き上げ角が15度+180度もあり巻き上げ操作し難いのがちょっと難点だ。 改良機である Canon F-1N は予備角+巻き上げ角が30度+139度に変更され操作し易くなったけど、巻き上げ操作中の感触は旧型 Canon F-1 の方が滑らかだったと思う。 ちなみに Canon New F-1 の巻き上げ操作感は『ゴリゴリ・ガックン・チョ』といった感じで最高級機感が全くない。
 シャッターボタンやシャッターダイヤルや巻き上げレバーなどの操作部材はオーソドックスな一眼レフの配置で、シャッターボタンが変な位置にある NIKON F より使い易い。
シャッター速度の並びはライカタイプでニコンとは逆並びになっていて、距離環・絞り環・レンズ着脱ともニコンとキヤノンは逆で、文化の違いが良く判る。 また、フィルム感度の設定はシャッターダイヤル外周部を持ち上げて行い、ASA25からASA2000まで設定できる。

露出計スイッチまわり

露出計スイッチまわり
露出計スイッチまわり
 露出計のスイッチは左肩にあり、ONにしないと露出計は動かない。 これが困りもので、たいていはOFFにするのを忘れちゃうので電池の消耗が早い。 シャッターボタンを半押したり巻き上げレバーを引き出したらメーターがオンになれば便利なのだが、ストロボ側がメーターを動かす仕組みの CAT(Canon Auto Tuning)システムの存在が足かせになっていたのだろう。 また、バッテリーチェックポジションにした後に自動的にOFF位置に戻らないので、バッテリーチェック後も戻し忘れに注意しよう。

開放測光に対応したFDマウント

開放測光に対応したFDマウント
開放測光に対応したFDマウント
 Canon F-1 と Canon FTb から、FDレンズ利用で開放測光に対応するため、マウント内側に従来の絞り込みレバーに加えて開放F値伝達ピンや絞り設定伝達レバーなどが追加されている。 レンズの開放値によって開放F値伝達ピンの押し具合が異なり、ファインダー内の追針オフセット量が変化する完全メカ連動タイプで、電気的に指針を補正する様にはなっていなかった。

セルフタイマーレバーまわり

セルフタイマーレバーまわり 左:通常状態 右:絞り込み&ミラーアップ状態
セルフタイマーレバーまわり  左:通常状態  右:絞り込み&ミラーアップ状態
 この時代の一般的な仕様通り「F-1」ロゴの下にセルフタイマーレバーが配置されている。 キヤノン独自の仕様としては、セルフタイマーレバーが絞り込みレバーと兼用になっている事で、レバーをレンズマウント側に倒せば絞り込み動作となり、逆(反時計回り)に回せばセルフタイマーのセットになる。
 また、大きなレバー下に小さなロック設定レバーがあり、絞り込んだ状態でロックレバーを「L」位置にセットすれば絞り込み状態が保持される。 更にロックレバーを「M」位置にセットすればミラーアップも可能である。 良く考えられた仕様で Canon FTb N や Canon EF などにも採用されたが、カメラを構えると右手の薬指などがレバーに引っかかるので邪魔に感じる事がある。 なお、カメラやレンズを壊す原因になるので、絞り込んだ状態でレンズ交換してはいけない。

カメラ背面

カメラ背面
カメラ背面
 Canon F-1 の背蓋には「Canon F-1 JAPAN」と刻まれたプラスチックのプレートが付いているが、安っぽくて貧相なので無い方が良いと感じてしまう。 初期型の Canon F-1 にはプレートは無かったと記憶していたけど、勘違いだった様だ。  なお、改良機である Canon F-1N の背蓋には貧相なプレートに加えてフィルムメモホルダーが追加されている。

カメラ底面

カメラ底面
カメラ底面
 Canon F-1 では電池室蓋を外すとカメラの底板が外せる構造になっている。 底板を外すとモータードライブ用の巻き上げカプラーやシャッター信号接点などが露出する。 
なお、モータードライブを使う場合、底板を外した状態で露出計電池を入れて電池蓋を装着し、底板の代わりにモータードライブを装着・ネジ止めして組み立てる。 なので、底板を紛失しない様に注意しなければならない。

モータードライブ MF

Canon F-1 with Canon Motor Drive MF
Canon F-1 with Canon Motor Drive MF
 このモータードライブは Canon F-1 発売から2年後に登場した Motor Drive MF である。 Canon F-1 発売当初のモータードライブは Motor Drive MD と呼ばれるモデルで、手でカメラをホールドして使う事は想定されていない代物であり、短命でディスコンとなった。
 Canon F-1 のモータードライブはカメラの底板を外してモータードライブを装着しなければならない。 底板と背蓋が一体だった NIKON F のシステムよりは良いけど、メリットが感じられない底板交換式は頂けない。
 また、グリップ部に単三乾電池が10本も必要なのでフル装備にすると非常に重いシステムになるが「プロっぽさを演出する」には良いアイテムだった。 Canon F-1 の巻き上げ角は180度もあって操作し難いので、モーターで巻き上げして欲しいだけならワインダーで充分だ。

あとがき

キヤノン旧FDレンズの一部
キヤノン旧FDレンズの一部
 このカメラは1976年のモントリオールオリンピック公式カメラ認定記念として、大会ロゴが刻印された特別モデルである。 装着しているアイレベルファインダーはネットで探して、激安の$14.8ドルで買った綺麗なファインダーを載せてある。 その商品説明には「露出計NG」の記載ががあったけど、このファインダーに露出計は無いのだ。(普通に露出計を視認できるし...)
 ついでに、レンズのオークション価格をチェックしてみたら旧FDのビンテージ銘玉価格がべらぼうな落札価格になっている事に驚いた。 使い勝手が不便なスピゴットマウントだけど、安っぽい New FD と違って所有欲を満たす重厚な作りがオールドレンズとして人気なのだろう。
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3 件のコメント :

  1. 懐かしいカメラです。 New F1が好きだったな

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  2. レンズ描写は旧FDとnewFDとの違いはどうだったんでしょうか?

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  3. NewFDは殆ど持ってないので判りませんねぇ。

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