FDの中望遠レンズとして比較的安価なレンズだった。 SレンズやRレンズには 100mm F2 が存在したが、FDシリーズ用の 100mm は F2.8 だけで F2 は発売されなかった。
上記写真で前枠が汚れているのは純正フードの樹脂カスで、あえて清掃しないで掲載した。 FDレンズの純正フードは装着溝内の樹脂が削れてスカスカになるし、ゴミを生じさせる困ったフードだ。 ちなみに、プラ製のフード以外に金属製のフードもあったが、溝内の樹脂が削れるのは同じでスカスカになってしまう。
レンズ構成
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レンズ構成 |
5群5枚構成のクセノター型で、第2第3レンズが貼り合わせではなく分離されているので変形クセノター型と言うのかも知れない。 個人的にクセノター型が映し出す描写が好きで、クセノターが付いたカメラやレンズを買っていた。
本レンズは開放値がF2.8だけれど、開放値がF2だったらエルノスター型かダブルガウス型を採用していただろう。
最短撮影距離は1mでこの時の撮影倍率は0.13倍である。 寄れない訳ではないけど、もう少し寄りたいと感じる事が多い。 重量は360gで軽過ぎない存在感があり、サイズがΦ67mm×57mmと比較的コンパクトで、ちょっと長めの標準レンズみたいな容姿だ。 なお、このレンズの絞りクリックは他のFDレンズと異なり「ガチッガチッ」と硬すぎる...個体差かも知れないけど、操作感に個体差があるのは嫌だなぁ。
描写特性
遠景描写
以下の遠景描写の写真はRAW現像時にホワイトバランスを6000°Kに設定し、Dレンジオプティマイザーをオフにして現像しています。
絞り:F2.8 |
絞り:F4 |
絞り:F5.6 |
絞り:F8 |
絞り:F11 |
絞り:F16 |
若干ソフトだけど絞り開放から画面全域で良い描写で、解像感も良い。 F4に絞れば画面全域で充分な描写だ。 素晴らしい描写なので、絞りをF8より絞り込むと回折の影響で少しずつボヤけ始めるのが判ってしまう。
素周辺光量落ちがあるので効果として使えるけど、絞り開放以外では効果が少なく、絞りF5.6で完全に解消される。
夜景描写
以下の遠景描写の写真はRAW現像時にホワイトバランスを白色蛍光灯に設定して、Dレンジオプティマイザーをオンにして現像しています。
(どん曇りの夜なので空が明るいです)
絞り開放では少しコマフレアが発生してソフトな描写で、画面周辺はビネッティングにより中央よりフレア感が少ない。 F4に絞ると画面全域がスッキリした描写になり、夜景撮影でも充分な描写になる。 F5.6まで絞れば更に素晴らしい描写になる。
玉ボケ描写
以下の玉ボケ描写の写真は距離環を2mに設定して、RAW現像時にホワイトバランスを白色蛍光灯に設定し、Dレンジオプティマイザーをオンにして現像しています。
(どん曇りの夜なので空が明るいです)
絞り開放でも玉ボケの周りのエッジは目立たない方で、画面周辺は綺麗なレモン型のボケになる。 F4に絞ると画面周辺のレモンボケは消失して全域で形の揃った玉ボケとなる。 F5.6まで絞ると8角形の多角形感がでてしまうが、あまり気にならない。
一般撮影
以下の遠景描写の写真はRAW現像時にオートホワイトバランスに設定し、Dレンジオプティマイザーをオフにして現像しています。
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F5.6 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り開放では少しソフトな感じだけどフレア感は少ない。 ピントを合わせた部分の解像感はそこそこあるし、最短撮影距離でもあまり低下しないのはクセノター型の特徴なのかも知れない。 また、少し絞れば更にシャープ感も増して画面周辺でも素晴らしい描写になる。
ボケ味は悪くなく、前ボケも後ボケもスムースにボケてくれるので、背景ボケに気を使う必要は少ない。 また、前後ボケの周囲に発生する紫や緑の「色ボケ」は絞り開放では発生するけど、異常に目立つほどではない。 なお、明るい背景に黒い物がある場合は画面周辺でパープルフリンジが気になる場合がある。
カメラのオートホワイトバランス性能にもよるけど、発色は悪くないし他のFDレンズ(FD 35mm F2 アトムを除く)とも発色に差異は無いので、FDレンズ群を使う人はレンズごとの発色差を気にする必要は無いと思う。
開放がF2.8と無理のない仕様なので、絞り開放でも充分に使える描写だけど、拡大して観察すると若干だけど色収差が気になる場合がある。 少し絞れば色収差感もなくなり、画面周辺までスッキリとしたシャープな描写が得られる優れたレンズである。
あとがき
マクロレンズではないので最短撮影距離が1mだし、口径比がF2.8と平凡な仕様の中望遠レンズだけど、絞り開放から非凡な描写性能を発揮する優秀なレンズだ。 ちなみに、タムロンの
TAMRON 105mm F2.5(CT-105)は教科書に載っている様な典型的なエルノスター型構成で、キヤノンより小さいΦ64.5mm×52mmだったけど、最短撮影距離が1.3mなので光学性能の不満よりも寄れない事が最大の不満だった。
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