OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 - 撒き餌レンズ

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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8
 OM-SYSTEMの普及クラスの標準レンズで、カメラとのセットレンズとする事で「最初の一眼レフカメラ」として安価に購入させる「撒き餌レンズ」だと言える。 ちなみに、1984年の価格は¥20,000円で、特殊レンズを除いてOM用ズイコーの中で最も安価なレンズだった。

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 - 1972年発売

 娘が OM-2N と 50mm F2 Macro を持って行ったので寂しい思いをしていた夜に、ついつい 50mm F1.8 をポチってしまった。
モデル名称(銘板記載名)前枠コーティング構成
M-SYSTEM F.ZUIKO AUTO-S 1:1.8 f=50mm銀縁モノ5群6枚
OM-SYSTEM F.ZUIKO AUTO-S 1:1.8 f=50mm銀縁モノ5群6枚
OM-SYSTEM F.ZUIKO AUTO-S 1:1,8 f=50mm黒縁モノ&マルチ5群6枚
OM-SYSTEM ZUIKO MC AUTO-S 1:1,8 f=50mm黒縁マルチ4群6枚
OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1,8黒縁マルチ4群6枚
 1972年に発売されたOMシステムの 50mm F1.8 は商品名が何度か変更されていて、このレンズは構成枚数を表す「F.」もマルチコートを表す「MC」も記載されなくなった最終モデルで、1972年発売時のレンズ構成とは次の様に明確に異なる。

レンズ構成

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 レンズ構成
レンズ構成
 OM-SYSTEM の 50mm F1.8 は途中で設計変更されている。 「F.ZUIKO」と記載されていた前期型までは5群6枚の拡張ダブルガウス型だったが、「ZUIKO」と記載変更された後期型からは4群6枚の典型的なダブルガウス型になった様だ。 鏡筒の内部構造も変化しているけど前期型同様にコンパクトに設計されていてパンケーキに迫る薄型で、0.45mの最短撮影距離や6枚の絞り羽根などの主要なスペックに変更はみられない。
 なお、第2第3レンズを分離するのはコマ収差の補正に有効なハズだけど、後期型で貼り合わせにしたのは収差補正に有効な新硝材が安価に使える様になったからかも知れない。 また、後期型では前群3枚を❝はめ殺し❞構造にしてコストダウンされているが、中のレンズ面にクモリやカビが発生したら分解・清掃は困難を極める。 以上の様に、本レンズは1972年発売時のレンズとは明確に異なり、1983年頃には切り換わっていたと想像している。

ちょっと窮屈だけどフードを逆付け収納できる
フードは逆付け収納可能
 フードは OLYMPUS M-1 発売時からある標準レンズ用メタルフードが使えて、フードの逆付け収納も可能だ。 通常のカブセ式フードは落とし込み制限ガードがあって逆付け出来ないのだけど、OMレンズの鏡筒先頭に制限ガードがあるのでフード自体は無制限なのだ。 従ってOMレンズのカブセ式フードを他社レンズに装着すると位置合わせが不安定だ。
 なお、M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm に比べて逆付け収納が少し窮屈だ。 おそらく距離環のゴムリングが厚くなって外径が少し増したのだろう。 純正のフロントキャップは両脇から摘まむタイプなので何かと不便なだけど、サードパーティーの中央付近を摘まむタイプのフロントキャップなら、フードを装着した状態でも簡単にフィルター枠にキャップを脱着できる。

絞り駆動系の分解清掃

粘っていた摺動レバー周り
分解・清掃
 絞り込み動作は高速に動作するけど、開放に戻る動作が粘り気味みだった。 外から観察する限り絞り羽根に油は滲みていないので、絞り羽根を駆動させる何処かが粘っている様だ。
 マウントを外してみると、M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm ではマウント裏面にバネ圧がかかった摺動レバーがあったけど、50mm F1.8 の最終モデルでは鏡筒本体側にあり、その摺動レバーの駆動系(黒色リング)がスペーサー(銀色のリング)に対して粘っていた。 マウントを外しただけで絞りがスムースに開閉するのを確認したので、スペーサーに付着している粘った油を清掃してマウントを戻したら、快調な絞り駆動に復活してくれた。

描写特性

遠景描写

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F1.8
絞り:F1.8
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F2.8
絞り:F2.8
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F4
絞り:F4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F5.6
絞り:F5.6
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F8
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F11
絞り:F11
 絞り開放ではフレアっぽくて画面周辺ほど甘い描写になるのはこの時代のお決まりと言って良い。 F2.8に絞ると画面中央はスッキリした描写になるけど、画面四隅は周辺光量以外の描写は開放とさほど変わらない。 F4に絞ると極四隅を除いて画面周辺でも充分な描写となり、F5.6だと画面全域で素晴らしい描写となる。

 なだらかに落ちるタイプの周辺光量落ちがイイ感じだけど、F2.8に絞ると目立たなくなってしまい、F4まで絞るとほとんど判らなくなる。

一般撮影

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F1.8
絞り:F1.8
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F2.8
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F1.8
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F1.8
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F16
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F1.8
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F1.8
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F1.8
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F2.8
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F1.8
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F1.8
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F4
絞り:F4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F1.8
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F1.8
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F5.6
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F1.8
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F1.8
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F1.8
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.8 絞り:F1.8
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 開放では現代のレンズの様なキレキレな描写ではないけれど、平面撮影とか遠景撮影とかでなければ画面周辺のアラは目立たない。 後ボケには二線ボケの傾向があるけどボケ味は悪くないし、そこそこ寄れるので大きな背景ボケも楽しめる。 ハイライト部の後ボケと前ボケの周りに色が付く「色ボケ」はとても少なくて良好だ。 また、太陽を画面内に入れ込むとダブルガウス型らしいゴーストが出るので、効果的に利用出来るだろう。

 長辺が切られる四つ切プリント等ならF4まで絞れば充分な描写が得られるだろう。 5群6枚構成だった頃の F.ZUIKO の描写を知らないけど、4群6枚構成になった ZUIKO は絞り開放ではフレアっぽいけど安価でちゃんと写るオールド標準レンズだけど、個性が少ないオールドレンズだとも言える。 中古市場には玉数も多いし、クセのあるオールドレンズが喜ばれるので人気は無い様だ。

あとがき

 OM-SYSTEM には「F2シリーズ」のレンズ群があり、HEXANON AR 40mm F1.8 のレンズ構成を真似た様な OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 40mm 1:2 が中古市場で高値で取引されている。 でも、ZUIKO AUTO-S 40mm 1:2 は鏡筒を薄くしたパンケーキレンズゆえ、絞り環がフィルター枠になっていて絞り操作をしずらいので、充分コンパクトな OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 の方が安くて良いレンズだと思うけどなぁ...ZUIKO 40mmを持ってないので知らんけど。 ちなみに、当時の OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 が¥20,000円で、OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 40mm F2 が¥22,000円だったので、40mm F2 は安価なレンズの部類だったのだ。
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