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| CANON FL 35mm 1:2.5(カメラは Canon PELLIX) |
1964年に発売されたFシリーズ一眼レフである CANON FX / FP に合わせて、レンズもFLレンズシリーズに切り換わった。 FL 35mm 1:2.5 は
FL 58mm 1:1.2 と共に最初に発売されたFLレンズシリーズの一本である。
FLレンズは、先代の失敗作であるRレンズで採用した SUPER-CANOMATIC という自動絞りシステムを、ワンレバーによる絞り込み/開放動作に改めたものである。 しかしながら、レンズの絞り環設定をカメラへ伝達する手段を持たないため、開放測光への対応には更に7年後のFDレンズまで待たされた。
CANON FL 35mm 1:2.5 - 1964年発売
個人的に、古典的レトロフォーカス型レンズには良い印象が無いんだけど、『キヤノンの古典的レトロフォーカス型レンズってどうよ?』と思い立ち、中古品をポチってしまった。 ちなみに、トップ写真では Canon PELLIX に装着しているけど、絞り開放でも『絞り込んでたか?』と思うほどファインダーが暗い。
レンズ構成
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| レンズ構成 |
レンズ構成は5群7枚構成のレトロフォーカス型で、アンジェニュー社の古典的レトロフォーカス型と同様に、3群4枚のテッサー型マスターレンズ(水色)の前方に2群3枚の凹レンズと凸レンズから成るワイドコンバーター(黄色)を装着した構成になっている。
ワイドコンバーターの先頭負パワーレンズが、貼り合わせレンズになっている所がアンジェニュー社と異なるけど、負パワーのレンズと正パワーのレンズとの間隔を大きく空ける事で主点位置を後ろ側へ移動させて、ワイドレンズなのに一眼レフでも使えるバックフォーカスを確保している。
先頭の負パワーレンズを凸凹貼り合わせにしたのは色収差などの補正の為と思われ、「コンバーター」側で発生する収差を極力少なくしているのだろう。 また、張り合わせなので、ゴースト・フレアの増大も抑えられる設計だと思う。
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| プリセット絞り機能 |
自動絞りレンズだけどプリセット絞りも可能で、絞り環の隣にプリセットリングが設けられている。 プリセットリングの白点が鏡筒先頭側の白点と同じ位置にあれば絞り環を操作しても露光中でなければ開放のままだけど、絞り値を選択した後にプリセットリングを左へ回せば選択絞り値まで絞られる。 なお、プリセット操作後に、例えばF5.6→F18へと絞り環を操作しても絞り羽根はF5.6のままで、プリセットリングを更に回す必要があり、ちょっと使い難い。 個人的にはプリセット方式ではなく、普通にA/M切換え方式の方が良かったが、変更される事は無かった。 なお、絞りは6枚羽根である。
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| R 35mm 1:2.5 用フード装着 |
フィルター径:Φ58mm / 絞り羽根:6枚 / 重量:352g / 最短撮影距離:0.4m/ 価格:¥20,700円で、古典的レトロフォーカス型は近距離で収差が劣化し易いので、最短撮影距離が遠いレンズもあるけど、本レンズは0.4mまで寄れる仕様になっている。 距離環敏感度が高めなので、クイックなピント合わせが出来るけど、遠距離でピントピークに距離環を置くのが少し難しい。
フロントインターフェイスは SUPER-CANOMATIC LENS R 35mm 1:2.5 と同じに見えるので、R 35mm 1:2.5 用締め付け式フードを装着してみたけど画面極四隅がケラれぎみだ。 現代カメラで撮影する場合に、ボディー内手振れ防止が働くとケラれが目立つので、CONTAX METAL HOOD 2 を使う事にしたけど、R 35mm 1:2.5 は本当にケラれなかったのかなぁ?
なお、レンズ側の絞り駆動レバー部ガードが出っ張っているので、マウントアダプターの絞り込みレバー(ネジ込まれた丸棒のレバー)を撤去しないと装着出来ないアダプターもある。 絞り込みレバーを撤去しても、絞りをプリセットすれば実絞り撮影には使えるけど、僕は
マウントアダプターを改造して装着出来る様にしてある。 プリセットって間違い易くて好きじゃないんだよねぇ。
ヘリコイドグリス交換
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| 分解・グリス交換作業開始 |
ポチったレンズの状態は悪くないんだけど、ヘリコイドグリスが抜け気味で、距離環にトルクムラがあったり少しガタつきが感じられる。 気持ち良く使うために分解してヘリコイドグリスを入れ換える事にした。
FL 58mm 1:1.2 Type-1 の分解では痛い目にあったので、慎重に後部レンズガード板を外してみた...けど、FL 58mm 1:1.2 Type-1 の様な「はるさめ」や硬球ベアリングなどは入ってなかった。 後玉径が小さくて周囲に余裕があるので、絞り駆動レバーを回転運動にする必要は無かったのだろう。
後部レンズガード板を外してから、後玉の外周にある締め付け環をカニ目で外し、ヘリコイド部と鏡筒内筒とを分離した。 ヘリコイドの回転規制板を外し、ヘリコイドを抜いて清掃・グリスアップしたので、ガタがなく適度なトルクがあるスムースな操作感が復活した。 ちなみに、ヘリコイド分解時にメス筒とオス筒が外れる位置を赤ペンでマーキングしたんだけど、ヘリコイド筒をベンジンで清掃する時に消えてしまい、ヘリコイドが嵌る正規位置を探すのに少し手間取った。💦 傷を付けてマーキングするのは好きじゃないんです。
FD → LEICA M アダプター
今回は FD → LEICA M アダプターを介して
TECHART LM-EA7 にて、SONY ILCE-9 でオートフォーカスを使ってみた。 アマゾンで¥4,000円で買った K&F CONCEPT のマウントアダプターを使用したが、このアダプターの絞り込みレバーは平棒になっていて、レンズ裏カバーが擦るけど装着可能だった。
LM-EA7 では画面隅でオートフォーカスが出来ないけど、意外に広い範囲でオートフォーカスが可能だった。 また、レンズの最短撮影距離は0.4mだけど、LM-EA7の最大繰出し量4.5mmと合わせると、計算上は0.25mほどまで寄ることができるので、ググっと近づいて背景を大きくボカす事が可能になる。
描写特性
以下の写真は FD → LEICA M アダプター を介して SONY ILCE-9 で撮影してある。 なお、デジタルカメラのローパスフィルターやIRカットフィルターなど、フィルム時代には考慮されていない光学部材の影響で、気にする程じゃないけど本来の描写性能は出ていないと思います。
遠景描写
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.1.01.06121 にて、ホワイトバランスを太陽光に設定し、Dレンジオプティマイザーはオフに設定して現像してあります。
絞り:F2.5 |
絞り:F4 |
絞り:F5.6 |
絞り:F8 |
絞り:F11 |
絞り:F16 |
絞り開放の画面中央付近は霞がかったソフトな描写で、画面周辺ほどボヤけている。 F4に絞ると画面中央はとても良い描写になり、画面周辺のボヤけも少し良くなる。 F5.6に絞ると画面中央は素晴らしい描写になり、画面周辺のボヤけもかなり改善する。
さすがにF16まで絞れば画面周辺でも充分な描写になるけど、画面中央はF8より絞り込むと回折の影響で少しづつボヤけ始めてしまう。
効果として使える周辺光量落ちがあり、絞りF5.6で四隅以外は判らなくなり、F8だとほぼ解消される。
夜景描写・玉ボケ描写
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をLuminar Neo 1.27.1(17225)にて現像してみました。 なお、色収差補正やディストーション補正や周辺光量補正などは施していません。
絞り:F2.5 |
絞り:F4 |
絞り:5.6 |
絞り:F8 |
絞り:F11 |
絞り:F16 |
絞り:F2.5 |
絞り:F4 |
絞り:F5.6 |
絞り開放では画面中央以外は収差フレアが多く、画面周辺ほどコマフレアが酷くなる。 画面隅ではサジタルコマフレアに加えてメリディナル方向へも伸びているので、非点較差が大きいらしく輝点がメルセデスの「スリーアロー」の様な形になっている。
F4に絞ると画面中央付近は」良い描写になるけど、画面周辺から隅ではフレアの出方が「硬い」ので、ボヤけたままだし「スリーアロー」のままだ。 F5.6まで絞ると画面中央付近は更に良くなり、画面周辺の「スリーアロー」風の収差は無くなるけど、点像の広がりが「硬い」ので解像感が不足している。 更に絞れば画面周辺の点像がジワジワと小さくなる。 なお、絞りは6枚羽根なので、絞り込むと輝点に6本の光芒が現れる。
絞り開放での玉ボケは輪郭にエッジが立ち、バブルボケ風になる。 画面周辺では半月上になり、片側だけにエッジが立つ特徴的な玉ボケだ。 レンジファインダー用のゾナー型標準レンズみたいな玉ボケ具合なので、画面周辺の後ボケは騒々しいボケ方をするだろう。 F4やF5.6に絞れば落ち着いたボケ具合になるけど、6枚羽根絞りなので6角形ボケになる。
一般撮影描写
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像を、IE Edit Ver.4.1.01.06121 にてホワイトバランスをオートに設定し、Dレンジオプティマイザーもオンに設定して現像してあります。
レンズの最短撮影距離は0.4mだけど、LM-EA7の最大繰出し量4.5mmと合わせると、計算上は0.25mほどまで寄ることができるので、ググっと近づいて背景を大きくボカす事が可能になる。 なお、記載の絞り値はボケ老人の「記憶」に頼っているので間違っているかも知れません。m(_ _)m
絞り:F2.5 |
絞り:F2.5 |
絞り:F2.5 |
絞り:F2.5 |
絞り:F2.5 |
絞り:F2.5 |
絞り:F2.5 |
絞り:F2.5 |
絞り:F8 |
絞り:F2.5 |
絞り:F5.6 |
絞り:F2.5 |
絞り:F2.5 |
絞り:F2.5 |
絞り:F8 |
絞り:F2.5 |
絞り:F2.5 |
絞り:F5.6 |
絞り:F2.5 |
絞り:F2.5 |
絞り:F2.5 |
古典的レトロフォーカス型のレンズには良い印象がないんだけど、このレンズも似た様な描写特性だ。 主題を画面中央付近に配すれば、絞り開放からなかなか良く写るけど、遠景などの風景ではかなり絞り込まないと画面隅の描写がイマイチだ。 画面中央付近は比較的繊細な描写だけど、画面周辺では「骨太?」な描写なので、「ワイドコンバーターを付けてるから、画面周辺はゴメン」という感じの写りになる。 良く言えば、被写体を画面中央付近に配置すれば、立体感のある描写になる。
距離環敏感度が高いので、マニュアルフォーカスでピントピークに距離環を合わせるのに難儀する。 一方、LM-EA7 でオートフォーカスさせると随分と楽に撮影できる様になる。
FL 35mm 1:2.5 は絞り開放での後ボケが古典的レトロフォーカス型らしいボケ味を示すので、近距離で主題を中央付近に配すれば、クセの効いた写真を楽しめる。 当然だけど、近代的レトロフォーカス型である
FD 35mm 1:2 Type-2/3 の方が安心して撮影できる描写性能である。
あとがき
現代のレンズではあり得ない描写特性だけど、背景をボカす様な日の丸写真なら、撮っていて楽しくなるボケ特性を持ったオールドレンズだ。 SUPER-CANOMATIC LENS R 35mm 1:2.5 は中古市場で玉数が少ない様だけど、FL 35mm 1:2.5 は球数も多いので2千円台でも状態の良いレンズが入手できる。 古典的レトロフォーカスのオールド広角レンズを楽しみたい人にはお勧め...かも知れない。
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