TECHART LM-EA7 の修理

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TECHART LM-EA7 に装着した M-ROKKOR 1:2 f=40mm
TECHART LM-EA7 に装着した M-ROKKOR 1:2 f=40mm
  TECHART LM-EA7 はデジタル一眼カメラ SONY α シリーズ用のライカMマウントAFアダプターである。 単なるマウントアダプターと異なるのはAF駆動機構が搭載されている事で、マニュアルフォーカス用のライカMマウントレンズをAF可能にするアダプターだ。  なお、この製品は新型にモデルチェンジされているので、いま購入するなら新型の LM-EA9 がお勧めだろう。

TECHART LM-EA7 の故障状況

最大繰り出し状態のまま動かない
最大繰り出しのまま動かない
 LM-EA7 は高価なマウントアダプターなので、数年前に中古を探し “動作未確認です。上記の理由によりジャンクとし部品とりや修理用にお願いいたします” という品物を購入した。 普通はジャンク品なら高くても¥4,000円がイイところだけど、この商品は¥18,180円と高額なので『実際には正常に動作するのでは?』と思って、賭けに出たのだ。
スマホとのBluetooth通信などには問題ない
Bluetooth通信は可能
 この中古の LM-EA7 をカメラに装着してみると...至近ポジションのまま動かない....多分、本当にジャンクだと判ってるのに「動作未確認」として高額値付けで販売したのだろう。 なお、スマホとのBluetooth通信などには問題はなく、ちゃんと焦点距離設定を書き込むことも出来るので、駆動制御関係が壊れている様だ。
 そこで、前カバーを外し手動で内部ギアを動かして無限端ポジションにしてからカメラに装着すると.....モーターが至近端ポジションまで回りきって止まってしまう。 従って、動かない訳ではなくモーターが至近駆動しか出来ない状態の「本当の」ジャンク品だと結論付けて「お蔵入り」状態になっていた。

TECHART LM-EA7 の修理

 隠居生活中の僕には売るほど時間があるので、LM-EA7 を修理してみることにした。 LM-EA7 のカバーを開けてみると、電子回路にショートや焼損トランジスタなどは見当たらないし、焼けた様な匂いもしないので、恐らくモータの不良だろうと判断した。

新しい減速ギアは使わないで、モーターのみ交換した
LM-EA7の修理
 モーターユニットは精密減速ギアが付いたN10型DCモーターなので、同型モーターを中国から¥2,881円で(2024年に)取り寄せた。 届いたモーターユニットには故障している LM-EA7 と同じ減速ギアが付いた商品だったけど、減速ギアの出力軸仕様が少し異なる。 減速ギアは組み合わされた状態のままが良いだろうけど、減速ギア出力をラックへ伝達するピニオンギアが新しい減速ギア軸に入るかどうか判らないので、減速ギアは古いギアをそのまま利用する事にした。

動作不良の原因はモーターのブラシが破損したからだった
破損してるモーターのブラシ
 先ずは、半田ごてでモーター電力線を外して、減速ギアが付いたモーターユニットを取り出した。 新品モーターに古い減速ギアを取り付け、電力線を半田付けして組み戻したら LM-EA7 が正常に動作する様になった。 めでたしめでたし🤪
 動作不良なモーターを開けてみると、片側の三つ割れブラシが摩耗・破損している事を確認できた。 このため、片方向にしか回転しない状態になった様だ。 このマウントアダプタに使われているモーターはブラシの耐久性が低い様なので、モーターを交換しても再発の不安は残るし、これまでに沢山の故障・修理があったと推測される。

LM-EA7の使用方法

 LM-EA7を使う場合はカメラの露出モードを絞り優先に設定して使うのが基本だ。 また、レンズ側の絞り設定値に係わらず、カメラ側の絞り設定は常にF2に設定して使う。 これは、LM-EA7がカメラに対して「開放F2のレンズが付いている」と伝達しているからで、カメラ側でF5.6とかに設定してしまうと、カメラはレリーズ時にレンズが2段絞られる事を前提とした露出設定を行ってしまうからである。 実際には実絞り撮影なので、絞りは露出決定時(レリーズの直前)から変化しないので、2段分の露出オーバーになってしまうだろう。

 また、レンズにもよるけど画面内でAFが有効な範囲はかなり限られる。 横位置撮影なら左右それぞれ1/3の範囲はAF出来ないレンズが殆どだと思う。 一方、上下方向に関しては画面上下の端付近でもAF出来る事が多い。 これは、カメラが左右の位相差検出を行っているからで、画面上下方向ではAF用の左右瞳光量は等しく低下するけど、画面左右周辺に行くとAF用の左右瞳光量がアンバランスになるからだ。 通信で補正値を送れば正しく動作するけど、装着されるレンズが不定なので補正値は決められない。

焦点距離設定

 LM-EA7に装着レンズの焦点距離を記憶させておけば、撮影画像のExif情報に焦点距離が記録されるので、レンズを換えながら撮影した後の確認に役立つ。 また、カメラの手振れ防止機能を使う場合に、LM-EA7から焦点距離が送られるので適切なIBIS制御が行われる。 焦点距離の設定はカメラの絞り設定を以下の様に設定して一度レリーズし、カメラの絞り設定をF2に戻して普通に撮影すれば良い。
絞り値焦点距離MF ParkingAfter Shoot
F1115mminfinityAF
F1318mminfinityAF
F1421mminfinityAF
F1624mminfinityAF
F1825mminfinityAF
F2028mminfinityAF
F2235mminfinityAF
F2550mminfinityAF
F2990mminfinityAF
F32135mminfinityMF
 装着レンズの焦点距離が合っていないと、IBISが正しく動作しないので注意しよう。 なお、残念ながら40mmとか75mmは一覧表に無いが、TECHARTホームページのAndroidスマホ用LM-EA7-CONFIGアプリを使って(最新OSではインストール出来ないかも...)カスタマイズが可能だ。

LM-EA7のMFモード

 LM-EA7 を利用したMFモードは3種類あり、フォルトでは「フォーカスロックモード」となっていて、LM-EA7 のフォーカス位置でMFモードになる。 絞りF36でレリーズしてからカメラをMFモードにすれば「無限MFモード」に切り換わり、距離環が無限端に駆動して停止しする。 LM-EA7 の最大繰り出し状態である「マクロMFモード」に設定するには、絞りをF40でレリーズしてからカメラをMFモードに切り換えれば LM-EA7 が最大繰り出し状態になり、レンズの至近距離以上に近寄る事が出来る。 なお、「フォーカスロックモード」に戻すには絞りF45でレリーズすればよい。

修理した LM-EA7 でAF撮影

 以下の写真は SONY ILCE-9 に LM-EA7 を装着し、レンズは M-ROKKOR 1:2 f=40mm を使ってオートフォーカスで撮影しています。 また、カメラのホワイトバランスをオートホワイトバランスに設定し、Luminar Neo Ver.1.26.0 で現像してみました。
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F4
絞り:F4
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F4
絞り:F4
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F11
絞り:F11
 AFの駆動速度は遅いけど、AF精度はまずまずだと思う。 レンズの距離環を至近状態にしてAFさせればレンズの至近距離より近づいた撮影も可能になる。 ただし、LM-EA7の繰り出し量が4mmしかないので望遠レンズでは効果が薄いけど、広角レンズなら効果が高くなりグイグイ寄れる。 距離計連動式カメラの近接能力は低いので、レンズの至近端も気が遠くなる程遠い。 LM-EA7 を利用すれば近接能力が向上するのでオールドレンズ遊びの楽しみが増す。

 LM-EA7 はライカMマウント⇒SONY αのAFマウントアダプターだけど、一眼レフ用レンズをMマウントに変換するアダプターと併用すれば一眼レフ用レンズでもSONY αでAFさせられる。 フォーカシングはヘリコイドではなく、2本のシャフト軸に沿ってマウントが付いたスライダーが移動する方式なので、50mm F1.4 程度なら問題ないけど、重量のあるレンズを装着してAFさせるのは無理があるだろう。

あとがき

 “動作未確認のジャンク品”なのに、妙に価格が高い品物には手を出さない方が良い。 『動作未確認なだけで、ちゃんと動くのでは?』という期待を抱かせる手口だ。 修理に余計な出費と手間が掛かってしまうので、賭けない方が賢明だ。
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