 |
| Rolleiflex 2.8C型 |
その昔に Xenotar 80mm F2.8 を使いたくて手に入れたカメラだ。 10枚羽根絞りを搭載した最後の
Rolleiflexなので、
Rolleicord V初期型 と共に二眼レフ愛好家は入手すべきカメラだと思う。
Rolleiflex 2.8C 型
Rolleiflex 2.8C型 は製造番号によりType 1(1260250~1285999)・Type 2(1292000~1292999)・Type 3(1400000~1475405)に分けられるらしいけど、何が違うのかは知らない。 僕が持っている Rolleiflex 2.8C型 は製造番号から Type 1 と Type 3 の様だ。 使用感が微妙に違うけど、クラシックカメラなので個体差なのか経年劣化なのか判らない。
ちなみに、1954年以降に発売されたローライ二眼レフのピントフードには「Rollei F&H」のはカッコ良いロゴがあるのに、Rolleiflex 2.8C型 にはソレが無いのは物足りない。
撮影レンズ:Xenotar 80mm F2.8
 |
| レンズ構成 |
Rolleiflex 2.8C型 は1952年に生産が開始され、当初の撮影用レンズは Schneider-Kreuznach 製 Xenotar 80mm F2.8 付きのみだったらしく、1954年頃から Carl Zeiss 製 Planar 80mm F2.8 付きも加わった様だ。 どちらも優れたレンズだけど、Planar は「柔らかで妖艶な描写」なのに対し、Xenotar は「繊細でシャープな描写」だと言われていた。
僕の個体に付いているレンズは大好きな Xenotar 80mm F2.8 で、モチロン4群5枚構成のクセノター型レンズで、ガウス型の前群とトポゴン型の後群を組み合わせたハイブリット構成である。 シャープで抜けの良い優れた描写のレンズだと思う。 ちなみに、Planar 80mm F2.8 も4群5枚構成だけど、クセノター型と異なり前群の貼り合わせレンズを先頭側に配置した構成になっている。 なお、Rolleiflex 2.8C型 のビューレンズは3群3枚構成の Heidosmat 80mm F2.8 が装着されている。
また、Rolleiflex 2.8C型 は絞りが10枚羽根で、絞った場合でも丸い玉ボケが得られるカメラだったけど、Rolleiflex 2.8D型 から(多分)シャッターメーカーのコストダウンのために絞り枚数が5枚に減らされてしまった。 Rolleiflex 2.8C型 は最後の10枚羽根絞りを搭載したRolleiflexなので、二眼レフ愛好家は入手すべきカメラだと思う。
絞り・シャッターは独立設定
 |
| 絞り・シャッターは独立設定 |
Rolleiflex 2.8C はライトバリュー連動式じゃないので、絞りもシャッター速度も個別に変更できるカメラである。 シャッターダイヤルと絞りダイヤルは「ひょうたん」のくびれ部にあるけど、表示はビューレンズの上側にあるので、普通にカメラを構えたまま操作・確認できる。 後継の
Rolleiflex 2.8D型 ではライトバリュー連動式になり、露出計が指すライトバリュー値を絞りレバーで選択すれば、シャッター速度を変更してもライトバリューが同一となる様に絞り値が連動して変わってくれる。 ところがこれが余計なお世話で、ライトバリュー指示じゃない露出計を使う場合、絞り値を設定してからシャッター速度を変更すると、勝手に絞り値が変わってしまう。 ライトバリューを使わないなら、絞り値もシャッター速度値も自由に変更できる方式の方が便利なのだ。
 |
| ガード付きダイヤル |
絞りダイヤルとシャッターダイヤルにはガードが設けられていて、ガードを押しながらでないと設定値を変更できないので若干うっとおしい。 ただし、慣れれば自然に指の腹がロック解除するので問題なく操作できる....ので、要らない機能だと思うし、後継機では無くなっている。 ロックするのはやり過ぎだと思うけど、『勝手に設定値が変わる事がある!』とクレームでもあったのだろう。
 |
| レリーズロックノブ |
シャッターボタン周囲にはプラスチック製のレリーズロックノブがあり、レリーズ出来ない様にロックする事も出来るし、バルブで長時間露光する際にレリーズボタンを押した状態にロックする事も出来る。 反対側にはシンクロターミナルがあり、そのロックノブもプラスチック製だ。 これらのノブがプラスチック製なので、ぶつけたり劣化等により破損・欠落してしまうのが残念だ。 後継機種では金属製のレバーに変更されている...前機種も金属レバーだった様な気がする。
フォーカスノブ
 |
| フォーカスノブ |
左側面中央前方にある大きなノブがフォーカスノブで、これを回すと前板が前後してピント合わせが行われる。 最短撮影距離は3.5フィート(約1メートル)と遠いので、ググッと近寄って撮影することは出来ない。 フォーカスノブの刻印はフィート表示の他に、日本人が馴染みやすいメートル表示のカメラもある。 なお、露出計は搭載されていないけどフォーカスノブ内側に備忘用としてフィルム情報を設定しておける。 内側のノブを時計回りに回せばフィルム感度を設定でき、反時計回りに回せばフィルムの種類を設定できる。
背面の露出ガイド表
 |
| 露出設定ガイド表 |
カメラの背面にはシーンに応じた露出設定ガイド表が貼ってある。 ドイツ語なので判り難いけど、ASA100とASA50にて5月から8月の9時~15時までという条件で、各絞り値に応じたシーンごとのシャッター速度表になっている。 シーンは以下の6種類が記載されている。
- ビーチや山岳地帯
- スポーツシーン
明るい通りや広場
屋外 - 前景のある風景
街並み
屋外に居る人 - 日陰に居る人
- 明るい建物に居る人
- 明るい部屋にいる人
更に「3月4月9月10月または太陽無しなら2倍の露出量」と記載されている。 多分、ドイツの地理的条件で記載してあるのだろう。 そうそう、フォーカスノブがメートル表示のカメラは英語版の露出設定ガイド表が貼られている。
巻き上げクランク
 |
| 巻き上げクランク |
右側面中央にあるクランクレバーがフィルム巻き上げクランクで、収納状態から180度反転させれば巻き上げ用のノブが現れて、スタンバイ状態になる。 時計方向に回してフィルムを巻き上げ、1駒分を巻き上げたら巻き止めされる。 巻き止めされた状態からクランクを反時計方向に止まるまで(収納位置まで)回せばレリーズ可能になる。 レリーズすると巻き止めが解除されてフィルムを巻き上げられる。
 |
| フィルムカウンター |
また、クランクの右上方の丸い小窓がフィルムカウンターである。 12駒撮影した後は巻き止めがフリーになるので、クランクを時計方向にグルグル回してフィルムを最後まで巻き取れば良い。
なお、多重露光機能も備わっていて、シャッターを切った後に、巻き上げクランク基部のギザギザを反時計方向にちょっとズラせば、フィルムを巻き上げなくてもクランクを反時計回りに1回転させられ、シャッターのみ再チャージ出来る。
オートマット式フィルム送り
 |
| オートマット方式 |
フィルム送りはオートマット方式なのでフィルム装填時にスタートマーク合わせは必要ない。 フィルム装填時にリーダーペーパーをローラーの下をくぐらせて、巻き上げスプールにペーパーがちゃんとセットされた事を確認したら裏蓋を閉め、巻き上げクランクが止まるまで時計方向にグルグル回せばカウンターが「1」で止まる。 続いて巻き上げクランクを反時計方向に収納位置まで回してストップしたら1駒目の撮影準備完了である。 なお、フィルムの1駒分のクランク巻き上げ角度は駒ごとに変化し、最初の1駒目は225度ほどクランクを回転させるが、最後の12駒目は180度程度に少なくなる。 巻き取り径が増加するので当たり前の動作だけど、『ちゃんとフィルム送り量を制御しているなぁ』と感動してしまう。
135フィルムアダプタ:Rolleikin
 |
| Rolleikin |
ローライの二眼レフには Rolleikin という135フィルムを使用して24×36mm(ライカ)判で撮影できるアダプタが用意されていた。 135フィルムで撮影する場合は焦点距離80mmの中望遠になるし、縦位置なのでポートレイト撮影には丁度良いのかも知れないが、横位置で撮影する場合は途方に暮れる。 一度も使ったことが無いアクセサリだけど、ヘンテコ好きの僕としては嫌いじゃない。
Rolleikin を使うには、カメラの一部パーツを交換する必要があるが、Rolleiflex 2.8C型 は最初から Rolleikin 対応のパーツが標準装備されていた。 左側面の後方上側にあるノブは Rolleikin 使用時のフィルムカウンターにもなっていて、これまでは Rolleikin を購入したら工具(ドライバー等)を使ってスプールホールドノブをRolleikin対応カウンターに交換する必要があった。 Rolleikin の販売が好調だったので標準装備にしたのだろうか?
ちなみに僕の Rolleikin セットにはカウンターが欠品していた。 パーツを交換したカメラ本体とアクセサリとが泣き別れで販売される事が多く、中古市場の Rolleikin にはカウンターが欠品していたり、カメラ側のホールドノブが入っている事がよくある。 カウンター装着が必要なカメラに使う場合は、カウンターが入っているか確認してから購入しよう。
 |
| Rolleikinを装着 |
Rolleikinを使うには裏蓋のフィルム圧板を24x36版側にズラさなければ裏蓋が閉まらない。 120フィルムと同様にクランクで巻き上げてからクランク収納位置へ戻せばレリーズ可能になる。 次の駒へフィルムを巻き上げるには、カウンターノブの中央を押すと駒数を示す赤点付きリング(赤点が視認し難い:左写真では27駒目を指している)が一齣分移動し、巻き止めが解除されるので普通に巻き上げれば良い。 なお、Rolleikin使用時はパトローネ側のノブにフォークを付けてあるので、カウンターノブの中央を押しながら、パトローネ側のノブを回して撮影済みフィルムを巻き戻す。
一応、Rolleikinは持ってはいるけど、横位置写真を撮りたい時に途方に暮れるので使った事が無い。 135カメラや中望遠レンズなら売るほど持ってるしね。
フォーカシングフード
 |
| フォーカシングフード |
カメラ上面の蓋がフォーカシングフードになっていて、フード後方を引き上げて、上方からフォーカシングスクリーンを覗いてピント合わせを行う。
フォーカシングフードを引き上げてから、蓋の裏側にある拡大レンズ根元の銀色バーを「グイッ」と引けば拡大レンズが跳ね上がる。 拡大レンズには上下に動くアームがあるので、自分の視度に合う位置に調整する。 使い終わった拡大レンズは蓋の裏側に「グイッ」と押し込めば収納状態になる。 残念ながら合わせた視度位置は拡大レンズを収納したらリセットされる。 なお、決して明るいファインダーじゃないし、周りから光が入ってくるのでファインダーの映像は見易いとは言えないが、視度を合わせられるのだけは嬉しい機能だ。
 |
| アイレベル状態 |
拡大レンズを跳ね上げた状態で、蓋の中央部分を押し込むと斜めにロックされる。 この状態でフォーカシングフード後方の四角い穴から覗けば、素通しのスピードファインダーになる。 また、フォーカシングフード後方の丸レンズを覗けばピント板中央付近だけだけど上下左右が反転・拡大したアイレベルファインダーとなる。 丸窓でピント確認して四角窓で構図確認という感じだろう。 なお、この状態で上に位置する拡大レンズのアーム脇をちょっと押せば、斜めになった蓋の中央部分は元気よく元の状態に戻る。
フォーカシングスクリーン
 |
| スクリーン比較 |
オリジナルのフォーカシングスクリーンは普通の摺りガラスタイプなので、暗くて被写体を見難いしピントの山も掴み難くて楽しめない。 スクリーンは交換式じゃないけど、フォーカシングフードを外して入れ換える事は可能である。
ファインダーの明るさも重要だけど、腐った僕の眼にはピント合わせが大きな問題なのだ。 そこで、一台は中央に斜めスプリットプリズムを配したフレネル付きの(中華製?)明るいスクリーンに交換してある。 フレネルが荒めだし周辺のフレネル角度が合っていない感じだけど、画面周辺が明るくなり、老眼でも快適に使える様になった。 少年の頃に Rolleicord II型 のオリジナル摺りガラスでピントを合わせられた事が信じがたい。 ただ、斜めスプリットは縦線でも横線でもピントを合わせられるけど、ピント合わせ精度が良くないし斜めスプリットは心が落ち着かない。
 |
| 水平スプリットスクリーン |
そこで、水平スプリットとフレネルが付いたスクリーンを組み込もうと思い、随分前に中華製のスクリーンを取り寄せた。 2.8C型のスクリーンサイズは 56mm(横)x 64mm(縦)x 1.3mm(厚み)だけど、購入したスクリーンサイズは 64mm(横)x 68mm(縦)なので、周囲をカットしないと組込めない。 『そのうち切り出そう』と思ってるうちに、銀塩はほぼ絶滅してしまった。 ちなみに、スクリーンの厚みが異なる場合はスペーサーなどを使って調整するか、ビューレンズ位置で調整する必要がある。
Rolleicord V型 のフォーカシングスクリーン交換に使った品物は方眼線もあるしフレネルで周辺が明るくなるけど、四隅が汚らしくてイマイチだったのだ。
フード
 |
| BAY Ⅲ フード |
フードは BAY Ⅲ(レンズアクセサリ用バヨネットサイズ)の外爪に装着する。 ビューレンズ枠と干渉するのでフードのバヨネット枠に切り欠きが設けられていて、位置を合わせて少しひねるだけで装着できる。 フードの大きさは充分じゃないけど、大きく・長くするとビューレンズがケラレるので致し方ない。 ...にしても、昔のローライの外箱は、お宝の様なゴージャス感が漂うものだったけど、その後はグレイに黒文字で、そっけない外箱になってしまった。 また、サードパーティー製で内爪に装着する樹脂製の安価なフードも存在する。 表面仕上げなどは一切施されていないので、内側に艶消し黒塗装を施し、装着位相が判り易い様に赤マークでも付ければ、普段使いのフードとしては充分だ。
ストラップ
 |
| 専用ストラップ |
カメラ本体に直付けする専用ストラップを装着すれば、首からぶら下げられる。 ただ、大昔のストラップは革紐が劣化していて不安なので、新しい革ストラップに(リベット止めが厄介だけど)取り換えた方が安心だ。
ちなみに、専用ストラップはなかなか見つからないので、汎用のストラップをカメラのストラップガイド溝に着ける事もでき、それを前提としたストラップも販売されている様だ。 専用ストラップは外れ易いので、ガイド溝に括り付けた方が安心かもしれないけど、強度的に不安がある。
接写アクセサリー:Rolleinar
 |
| Rolleinar を装着 |
二眼レフは撮影光学系の上にファインダー光学系があるので、被写体に対して上下の視差が生じる。 無限付近の被写体なら問題ないけど近距離だと撮影範囲の視差が無視できなくなるので、ファインダーには視差補正機構が内蔵されている。 残念ながら、カメラの最短撮影距離は約3フィート(約0.9メートル)と遠いし、単純にクロースアップレンズを装着しただけではクローズアップ撮影で大きくズレる視差は補正されない。
そこで活躍するのが専用のクローズアップレンズセットの Rolleinar だ。 Rolleinar はクローズアップレンズとレンズ付き視差補正プリズムが1セットになっている。 クローズアップレンズを 撮影光学系のBAY Ⅲ(レンズアクセサリ用バヨネットサイズ)内爪に装着し、ファインダー光学系に視差補正プリズムの赤●が上になる様に正しい向きで装着すれば、視差が補正されつつクローズアップ撮影が可能になる。 いちいち装着したり外したりするのが手間だけど、寄れない二眼レフを散歩に持って行く場合はポケットに忍ばせておくべきアクセサリーだと思う。
Rolleinar には接写倍率が異なる Rolleinar 1/2/3 の3種が用意されていて、そこそこ寄れる Rolleinar 2 がお勧めだ。 なお、Rolleiflex 2.8C のレンズアタッチメントは BAY Ⅲ なので、BAYサイズを間違えると装着できません。 また、撮影レンズ側にRolleinarレンズをを装着してから、外爪を利用する純正フードを装着出来る。 ファインダー側のアタッチメントはフードを装着してあってもビューレンズの内爪に取り付けられる様に、干渉部がカットされている。
ちなみに、中古のRolleinar にはプリズムの向きが狂っている品物があるので良く確認してから購入するか、自分で修正してから使いましょう。 補正プリズムの赤●を上にして縦線被写体をプリズム通して目視で観た時に縦線がプリズム内外で横にズレてるなら修正が必要です。 分解してプリズム面の洗浄ついでに修正しておくと良いだろう。
あとがき
 |
| Rolleiflex と Rolleicord |
僕の父親もカメラ好きで、
Rolleicord II型(1936年製)が形見となった。 中学生の頃に片道8Kmの自転車通学では必ず Rolleicord II型 を持って登校し、帰宅時などに撮影を楽しんでいた。 最初に Rolleicord II型 で撮影してみてトリプレットレンズの光学性能に驚いた...画面周辺の酷さにね。 それ以来、F2.8で優秀な描写をするレンズが装着された二眼レフ欲しくて10枚絞りの Rolleiflex 2.8C 型を探して手に入れたのだった。 でも、Rolleiflexはピント合わせ・レリーズ・巻き上げなどの一連の操作で、カメラを右手・左手に持ち換える必要があり、カメラの操作性としては持ち換える必要が無い
Rolleicord V型が好きなのだ。
Sponsored Link
0 件のコメント :
コメントを投稿