MAMIYA-SEKOR F.C. 58mm F1.7 - 潔い画面周辺フレアー

0

MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm
 マミヤ初の135版レンズ交換式一眼レフである MAMIYA Prismat CLP 発売時に登場したレンズで、日本では1961年に MAMIYA Prismat NP の標準レンズとして発売された。 マミヤの自社工場を法人化した世田谷光機で製造されたレンズである。

MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm - 1960年発売

レンズ構成

MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm レンズ構成
レンズ構成
 光学系を分解してみたところ、4群6枚構成の古典的なダブルガウス型で、これといった特徴は無い気がする。 標準レンズとしては焦点距離を長めの58mmとすることで、一眼レフとしてのバックフォーカスを確保している。 焦点距離を長くするのはトプコンの Auto-Topcor 1:1.8 f=5.8cm や NIKKOR-S Auto 1:1.4 f=5.8cm などと同じ手法だ。
 最短撮影距離は0.5mなので少しは寄れる感じで、58mmの焦点距離に応じてヘリコイドストロークも長めなので、レンズ面先端は鏡筒先端より少し奥に配置されている。 レンズ面が奥まっているけど、フードは使った方が良いだろう。 フィルター径がΦ52mmなので、逆付け収納出来るニコンの標準レンズ用フード HS-1 が使えて、純正フード・キャップより便利だ。

エキザクタ マウント
エキザクタ マウント
 マミヤはエキザクタマウントを採用して製品化したが、1962年にはマウントを変更しちゃったので、マミヤ製のエキザクタマウント仕様の交換レンズは製造本数が多くない様だ。 中古市場でも MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 以外の交換レンズはあまり見かけない。 なお、製品名に付いている F.C. は「Fully Coated」の略で、レンズのコーティングが普及した時代に冠された名称で、MAMIYA-SEKOR Football Club じゃありません。

自動プリセット絞り方式

自動プリセット絞り方式
自動プリセット絞り方式
 絞りは TOPCON R 用の Auto-Topcor と同様な自動プリセット(半自動)絞り方式で、レンズにプリチャージレバーがあり、バネを手動でチャージしておけばレリーズ時に瞬間絞り込みが行われる。 なお、レリーズ後にバネを再チャージするまでは絞り込まれたままである。
 鏡筒から飛び出たアームに絞り込み駆動ピンがあり、レリーズする時にカメラがアームの駆動ピンを押す様になっていて、レリーズ時に設定絞り値まで瞬時に絞られる。 絞りは9枚羽根で、絞り環の段数設定間隔が不等間隔の古いタイプである。 絞り設定にはクリックに加えて小絞り方向へのロックが付いているが、クリックだけで充分に機能(絞り込み用のバネが開放される反動で絞り環が少し動いてしまう)すると思うんだけどなぁ。
 ちなみに、プリチャージレバーでバネをチャージしなくても、絞り環を小絞り側から開放まで回し切るとチャージ・開放ロックされるので、その後に所望の絞りにセットすればレリーズ時に瞬間絞り込みが動作する。

マウント互換性

受けピンが邪魔で装着できない
ピンが邪魔で装着できない
 エキザクタマウントのカメラは、各社が自動プリセット絞りや自動絞りの方式を工夫して搭載したため、互換があるのは脱着マウント部だけだ。 プリセットアームの有無・位置や機能が各社バラバラなので、実質的に互換はないと言える。 MAMIYA-SEKOR F.C. 58mm F1.7 はアームに付いた出っ張りのある絞り込み駆動ピン受け部品が邪魔で、トプコン製のエキザクタマウントのカメラには装着出来ないし、僕の エキザクタ→SONY E マウントアダプターにも装着出来ない。

出っ張ている駆動ピン受け部品外せば装着できる
駆動ピン受け部品を外した
 ただし、MAMIYA-SEKOR F.C. 58mm F1.7 の駆動ピン受け部品を外せば装着は可能になる。 パーツを外した穴に適切な厚みの物を入れておかないと、絞り駆動リンク板が引っ掛かる場合がある。 僕は、ワッシャーを数枚入れて、裏からセロテープで押さえている。
 逆に、トプコン製の Auto-Topcor や RE, Auto-Topcor 等のエキザクタマウントレンズは MAMIYA Prismat NP に装着する事が出来る。 また、レンズに着いているマウントロックピンが MAMIYA-SEKOR F.C. 58mm F1.7 は太い様で、駆動ピン受け部品を外して他のカメラやマウントアダプターに装着できる様にしても、ちゃんとロックされない。 この状態で使用すると、ピント操作などでマウント部が回転してしまうので安心して使えない。

描写特性

遠景描写

 以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像を IE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスはオートに設定し、Dレンジオプティマイザーはオフに設定して現像してあります。
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F2
絞り:F2
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F2.8
絞り:F2.8
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F4
絞り:F4
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F8
絞り:F8
 絞り開放での画面中央付近はフレアも少なくて良く解像しているが、画面周辺ほど収差フレアが盛大に発生しているが、像が流れてボケているのではなく素敵なフレアに包まれている。 画面周辺ではフレアが盛大だけどピントの芯はあるので、ザイデルの3次収差は良く補正されていて、高次のコマフレアがベールの様に優しく包んでいる感じだ。 なお、風景を撮影するならF5.6まで絞れば画面隅でもシャープに写る。
 素敵な周辺光量落ちがあるので絞り開放では演出に使えるけど、F4で殆ど判らなくなりF5.6で解消されてしまう。 また、カラー写真が普及する前のレンズだけど、発色は悪くないし、フレアに妙な色が着くことも無い。

夜景描写

 以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像を IE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスを昼白色蛍光灯に設定し、Dレンジオプティマイザーはオンに設定して現像してあります。
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F2.8
絞り:F2.8
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6
 コマフレアの出方を確認するために点光源を撮影してみた。 画面中央には殆どフレアは認められないけど、画面周辺に行くほどコマフレアが発生している。 近代のレンズはメリディオナルコマフレアは少なくて、サジタルコマフレアが発生していたが、このレンズはサジタルコマフレアとメリディオナルコマフレアもそれなりに発生している。 ただし、点光源の芯はしっかり点になっているので、3次収差は補正されていて、高次のコマフレアが発生している感じで、フレアの発生させ方(?)が独特だと思う。
 絞りF4では画面隅にフレアが残っているけど、F5.6まで絞れば画面の隅々まで夜景撮影でも分な描写となる。

玉ぼけ描写

 以下の写真は距離環を0.7mに設定して SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像を IE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスを昼白色蛍光灯に設定し、Dレンジオプティマイザーはオンに設定して現像してあります。
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F2.8
絞り:F2.8
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F4
絞り:F4
 絞り開放での玉ボケはフルコレクションっぽい特性で、輪郭にエッジが認められるけど、そんなに目立つ程ではない。 玉ボケ形状は画面周辺でレモン型になるけど、対象な形なので嫌味は感じない。 絞りF2.8だと9角形になるけど、画面周辺でも丸に近い玉ボケになる。 絞りF4だと画面周辺まで揃った形の玉ボケになる。

一般描写

 以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像を IE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスはオート(一部カスタム設定)に設定し、Dレンジオプティマイザーはオフに設定して現像してあります。 なお、記載の絞り値はボケ老人の「記憶」に頼っているので間違っているかも知れません。
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7(ほぼ至近端)
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F2(ほぼ至近端)
絞り:F2
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F2.8(ほぼ至近端)
絞り:F2.8
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F4(ほぼ至近端)
絞り:F4
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7(カスタムWB)
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7(カスタムWB)
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F2.8
絞り:F2.8
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7
絞り:F1.7
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6(DROオン)
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7
絞り:F1.7(DROオン)
MAMIYA-SEKOR F.C. 1:1.7 f=58mm 絞り:F1.7
絞り:F1.7(DROオン)
 絞り開放では画面中央付近は解像感があってなかなか良い描写だけど、画面周辺ほど盛大な収差フレアにより面白い写真になる。 画面周辺でもピントの芯はあるので、ピンボケではなくソフトフォーカスになっている感じだ。 街を俯瞰撮影するとジオラマ写真風に写るのが面白い。 なお、絞りをF5.6まで絞れば画面隅まで普通に良く写るレンズになる。
 絞り開放での後ボケには二線ボケの傾向があるので背景がザワつく場合があるけど、ぐるぐるボケにはならないし、前ボケはとても滑らかだ。 なお、白黒写真が多かった時代のレンズだけど発色は悪くないので、カラーで撮影しても問題ないし、逆光ゴーストや逆光フレアも思ったより酷くないと思う。

 ハイライトが無いシーンで立体物を中心付近に配置すれば、フレアを感じさせずに驚くような描写を見せる場合もある。 このレンズの描写のクセを積極的に活用すれば楽しい写真が撮れる...かも知れない。

あとがき

 本レンズは一般的な硝材を使って設計されていて、画面周辺の盛大な収差フレアに潔さすら感じてしまう。 後の1964年に発売された MAMIYA Prismat CP(M42マウント)用の MAMIYA-SEKOR 1:1.7 f=58mm は同じ4群6枚構成のダブルガウス型だけど、酸化トリウム含有硝材を使った新設計レンズで、本レンズより光学性能が優れていたらしい。
Sponsored Link
Sponsored Link 1228

0 件のコメント :

コメントを投稿

Sponsored Link