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Super Ikonta 531 IV(左)と 531 III(右) |
Super Ikonta は ZEISS IKON 社の スプリングカメラで、ドレイカイル式連動距離計を装備した戦前のドイツを代表するカメラである。 また、距離計を搭載していない低価格な「Ikonta」というモデルもあり、こちらは目測によるピント調節なので開放F値が暗いレンズが装着されていた。
ZEISS IKON Super Ikonta 531
ヨーロッパでの通称は 6x4.5cm版を「Super Ikonta 53x」、6x6cm版が「Super Ikonta 53x/16」、6x9cm版が「Super Ikonta 53x/2」と呼んでいて、日本での通称は 6x4.5cm版を「スーパーセミイコンタ」、6x6cm版を「スーパーイコンタシックス」、6x9cm版を「スーパーイコンタ」と称していた。 日本では6×4.5cm判の「スーパーセミイコンタ」が人気だった様だけど、ここではヨーロッパの通称である「Super Ikonta 53x」と記載する。
Super Ikonta シリーズはマイナーチェンジが多く「Super Ikonta 53x」を調べてみると、おおまかに6世代に別けられるらしい。
発売年 |
世代 |
モデル |
レリーズ |
二重防止 |
赤窓 |
シンクロ |
搭載レンズ |
1934年 |
I |
530 |
レンズ側 |
なし |
2個 |
なし |
1:3.5 f=7cm Carl Zeiss Jena Tessar
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1935年 |
Ia |
530 |
カメラ側 |
なし |
2個 |
なし |
1:3.5 f=7cm Carl Zeiss Jena Tessar |
1936年 |
II |
531 |
カメラ側 |
あり |
2個 |
なし |
1:3.5 f=7cm Carl Zeiss Jena Tessar |
1937年 |
III |
531 |
カメラ側 |
あり |
1個 |
なし |
1:3.5 f=7.5cm Carl Zeiss Jena Tessar / Xenar / Novar |
1948年 |
IV |
531 |
カメラ側 |
あり |
1個 |
X Sync |
1:3.5 f=75mm T Zeiss-Opton Tessar |
1951年 |
V |
531 |
カメラ側 |
あり |
1個 |
MX Sync |
1:3.5 f=75mm T Zeiss-Opton Tessar |
V |
531 |
カメラ側 |
あり |
1個 |
MX Sync |
1:3.5 f=75mm Carl Zeiss Tessar |
上記以外にも細かなマイナーチェンジがあった様だけど、戦後のレンズにはコーティングが施されているのにモデル名は「531」のままだ。 モデル名にはレンズの仕様変更には関係ない様だ。 僕が持っている Super Ikonta に搭載されたレンズの製造番号から推測すると、古い方は1942年製造レンズなので戦中の Super Ikonta 531 III で、新しい方は戦後製造レンズなので Super Ikonta 531 IV らしい...確か、Super Ikonta 531 II も持っていたと記憶しているけど発掘できていない。 なお、6x6cm版の Super Ikonta 53x/16 はセレン露出計を搭載したモデルなどもあり、1956年に発売された Super Ikonta 534/16 まで進化していった。
ちなみに、戦後は東西ドイツに分かれたので、東ドイツの「Carl Zeiss Jena」に対して西ドイツの「Carl Zeiss Oberkochen」は❝Carl Zeiss Jena❞を使えないので、自社を❝OPTON❞と呼んでいたらしい。 なので、戦後の過渡期の製品には「Zeiss-Opton」という呼称が存在する。 そのうち、Jena 抜きの「Carl Zeiss」が呼称として定着したようだ。
カメラの操作
Super Ikonta 531 III も Super Ikonta 531 IV もカメラの操作は同じなので、Super Ikonta 531 IVで記載する。
カメラのセットアップ
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カメラのセットアップ |
スプリングカメラは文字通りスプリングの力で収納されたレンズが飛び出して撮影準備が整うカメラで、Super Ikonta 53x ではカメラ上面のボタンを押すと、ファインダーが起立すると共に前蓋が展開して撮影レンズが「弱く」飛び出す。 大抵はアームが伸びきらないので、前蓋をしっかり90度まで展開させれば『カチンッ』と固定される。 更に、レンズ部のドレイカイル部を手で180度引き起こせば距離計の準備が整う。 なので、ワンタッチで撮影準備完了とはならない。 なお、Super Ikonta 531 IV は「ZEISS IKON」の金属製銘版が省略されて革型押しタイプに戻されてコストダウンされている。
フィルム装填
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フィルム装填 |
先ずはカメラの持ち手に隠れている開閉ノブをスライドして裏蓋を開ける。 強力なバネ圧の軸押さえを(指の爪を剥がさない様に)引っ張って取りスプールを左の巻き上げ側にセットし、ブローニーフィルムの裏紙が巻き取りスプールを一周ちょっとまで
巻き付けてから背蓋を閉める。 赤窓を開けてから赤窓の中央に1が出るまで巻き上げダイヤルをグルグル回す。 赤窓に1が出たら準備完了なので赤窓を閉めましょう。 裏紙が巻き取りスプールへ「ちゃんと」巻き付いていないと、巻き上げても赤窓の景色が変わらないので最初からやり直しましょう。
ちなみに、フィルムメーカーによっては駒数文字が薄い物もあるので、よ~く確認する必要がある。 特に暗がりでは確認困難な場合もあり、このカメラはオートマット/巻き止め方式じゃないので駒位置の確認が大変である。
フィルム巻き上げ
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フィルム巻き上げ |
背面の赤窓を開けてから巻き上げダイヤルを時計方向に回せばフィルムが巻き上げられると共に、カメラ上面のインジケータが白⇒赤に変化すれば二重撮影防止が解除され『カチッ』と音がする。 だが、二重撮影防止が解除されただけで巻き上げは完了していないので、背面の赤窓に次のコマ数が出るまでそのまま巻き上げる。 巻き止め装置は装備されていないので、巻き上げ過ぎない様に注意しよう。 次のコマが赤窓中央に来たら巻き上げ完了なので赤窓を閉じましょう。 なお、巻き上げダイヤル上には一対のツマミがあるので、どちらかのツマミを引き起こせば巻き上げし易くなる。
シャッターチャージ
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シャッターチャージ |
セルフコッキングではないので、フィルムを巻き上げただけではレンズシャッターの準備ができていない。
レンズ側面のシャッターチャージレバーを上へ引き上げてシャッターをチャージする必要がある。 チャージレバーは B・1~1/250秒なら軽くチャージできるが、1/500秒のチャージはとても重くなる。 あるいはチャージ後に1/500秒を選択する場合にシャッター速度リングが非常に重くなるけど故障ではない。
ビューファインダー
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ビューファインダー |
ビューファインダーにはアルバタ式フレームが見えるけど、見やすいとはいえない。 立ち上がったファインダーレンズ周りは遮光されていない「オープンエアー」なので、埃や塵がつきまくる。 また、斜光線が当たると見難くなるけど、手で覆ったりするとアルバタフレームが薄くなり撮影範囲が判り難くなってしまう。 なお、ビューファインダーは撮影レンズとは関係なく畳むことができるし、再起立させる事もできる。
ピント調節
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ピント調節 |
ドレイカイル腕を回して持ち上げると距離計が使えるようになる。 ドレイカイル側のギアかレンズ先端の距離環を回せばヘリコイドが回転してピントが変化するので、二重像が一致する様に調節する。 フードを装着した場合などはドレイカイル側のギアでピント調節を行うが、レンズヘリコイドが重くなっていると回転させるのが難くなる。 分解メンテナンスの際はレンズヘリコイドのグリスに重いグリスを使ってはいけない。
この写真ではレンズのピント位置の違いによってドレイカイルを通して見える距離計窓が移動している事が判る。
レリーズ
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構え方 |
レリーズボタンはカメラボディー左上面にあり、巻き上げダイヤル傍にあるので、左手でレリーズしなければならない。 取扱説明書によるカメラの構え方は、構図が横位置(カメラは縦)の場合は左手で前蓋付近をホールドして左手親指でレリーズするのが正しい構え方だ。 また、構図が縦位置(カメラは横)の場合は両手でカメラをホールドして左手人差し指でレリーズするのが正しい構え方となっている。 いづれにしても違和感がある構え方になる。
なお、取扱説明書の写真ではビューファインダーを覗きながら右手中指でドレイカイルギヤを操作しているけど、距離計を覗いている訳じゃないので意味がない...多分。 取扱説明書には右手中指でピント調節する様に書かれているけど、実際には大変やり難い。
革ケース
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純正革ケース |
Super Ikonta にはストラップ環が無いので、カメラをぶら下げる場合は革ケースが必要となる。 古いタイプの革ケースは後ろ留めホック式だったけど、新しいタイプの革ケースは前留めホック式になっている。 写真の革ケースは 531 IV 用で前留めホック式でカメラを入れていなくてもホックを留められるが、531 III 用の革ケースは後ろ留めホック式なのでカメラを入れていないとホックを留められない。
純正革ケースは劣化して使えなくなっている物が多いので、カメラ用の革ケースを作ってくれる業者に依頼して、自分だけのカスタム革ケースに入れるのも良いだろう。
描写性能
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T Zeiss-Opton Tessar 75/3.5 |
T Zeiss-Opton Tessar 1:3.5 f=75mm は戦後のコーティングされたレンズなので抜け感はとても良い。 そもそも中版カメラは135カメラより相対的にフィルムベースが薄いので、135カメラより抜けの良い写真が撮れる。 最短撮影距離が1.2メートルもあるので近接出来ないのがちょっと残念だけど、近距離での画質低下が大きい前玉繰り出し式なので仕方なかったのかも知れない...パララックス補正も無いしね。 |
ILFORD XP2 super 400 |
引き出しから2005年に期限が切れた古いモノクロフィルムが出てきたので、久しぶりにSuper Ikonta 531 IV で撮影してみる事にした。 この ILFORD XP2 super 400 はカラー現像できるモノクロネガフィルムで、一般的なカラーネガフィルムと同様に即日現像などにも対応している。 コントラストが弱めの弱いフィルムだけど、中版で使うなら135フィルムよりコントラストの低下は少ない。T Zeiss-Opton Tessar 1:3.5 f=75mm
絞り F:8
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絞り F:3.5
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絞り F:8
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絞り F:3.5
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絞り F:8
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レンズ構成
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開放絞りでも画面中央の解像はなかなか良いけど、周辺の解像はそれなりに低下している。 F5.6に絞れば中央は充分シャープになり、F8まで絞れば周辺画質も改善するけど、4隅は劇的な改善が見られないのは非点隔差と負の像面湾曲が影響している様だ。 絞り開放でのボケは素直でザワツクことなく滑らかで、周辺光量低下も少ないので安心して使える。
古い時代のレンズだけど、思った以上に良く写るレンズという印象だ。 恐らく同じテッサー型でも当時の日本より有用な硝材が使えたドイツ製の方が優れた設計が出来たのだろう。
今回の実写で使用したフィルムはコントラストが低くて粒子が荒いXP2フィルムだし、2005年に賞味期限が切れた常温保管のフィルムなので、アプリでレベル補正などを行っている事を差し引いても良く写るオールドレンズだと思う。
あとがき
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Mamiya-6 Automat(左)と Super Ikonta 531 IV(右) |
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MAMIYA-6 AUTO-UP |
6x4.5cm版は1本のフィルムに撮影出来る駒数が多いのが利点だけど、カメラの縦横構図を変えるのが面倒くさい。 カメラのホールディングが変わらない画面が正方形の6x6cm版の方が使い易い。 そんなこともあり、スプリングカメラを使うなら大きくて重いけど軽快に使える
Mamiya-6 Automat が一番だと思っている。 Mamiya-6 Automat には近接撮影アダプターがあり、その点でも有利(説明書にはF4.5より小絞りにしろと書いてあるけど)なのだ。
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