Mamiya-6 Automat Repair - 1955年発売

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Mamiya-6 Automat
Mamiya-6 Automat
このカメラは随分前に購入した中古カメラである。 ファインダーが曇り気味で撮影レンズにカビが発生していたけど、外観は比較的綺麗でシャッターを含めたメカ機構は問題なさそうだった。 そのうちリペアして名機を使ってみようと思ったまま我が家で長い眠りについていたのだ。 コロナ騒動で自宅に籠りっきりなので、天体写真撮影機材の再起動をやったり、古いカメラの点検に着手して発掘されたのだ。

Mamiya-6 Automat は1955年に発売されたカメラで、僕のカメラには巻止解除レバーが付いていないので後期型の様だ。 僕より年上のおばあちゃんカメラだけど、銘玉 D.Zuiko F.C. 1:3.5 f=7.5cm と 最新のメカ機構を搭載した美人ちゃんだったのだ...当時は...

Mamiya-6 Automat の特徴

ピント調節ダイヤル
ピント調節ダイヤル
フィルム面が前後移動
フィルム面が前後移動
このカメラのピント調節は普通のカメラと違ってレンズを繰り出すのではなく、ボディー側にピント調節機構がある。 ボディー右側にピント調節ダイヤルがあり、ピント調節はフィルム面の前後移動で行われる。 左の写真上は無限遠状態で下は至近状態で、フィルム面が変化している事が判る。

このバックフォーカシング方式を採用した近代のカメラとしては135mmフィルムのマニュアルフォーカスシステムをAF化させた CONTAX AX が有名だ。 僕も持っているけど、135mmカメラとは思えないほど大きなカメラである。

また、フィルムの巻き上げと同時にシャッターをチャージし、フィルムを適正量だけ巻き上げて止めるセルフコッキング機構も特筆される。 20世紀初頭のカメラ業界の雄であったドイツのツァイスですら中版スプリングカメラに組込むことを諦めたメカ機構なのである。

その他の特徴としては、操作系がすべてカメラ上面に配置されているけど、レンズのシャッターチャージ駆動やレリーズ動作はシャフトとリンケージカム等を介して底面側からレンズに伝えるという複雑なメカ機構になっている。 今のカメラ技術者は知能が低下しているので、こんなカラクリ設計は出来ないだろうし、設計出来たとしても承認できる上司は居ないだろう。

さて、カメラの状態を確認し、修理・リペアする部分は
  • 撮影レンズのカビ清掃
  • ファインダー曇り清掃
  • 距離計の合致ズレ修正
  • 外観サビのリペア
  • 黒ペイント傷のリペア
  • 合成皮革の再接着
  • 距離目盛窓の清掃
  • 革ケースのリペア
といったところだ。
セイコー社のレンズシャッターは低速秒時もちゃんと(高速側は判らんが)しているし、チャージ機構も問題なさそうなので、分解は最低限で済みそうだ。

修理作業

撮影レンズのカビ清掃

前玉系レンズは反時計方向にネジれば簡単に外せるし、後玉系もカニ目を反時計方向に回せば外せる。
後玉のカビ状況
後玉のカビ状況
カビを除去した後玉
カビを除去した後玉
外からの目視では後玉にカビが発生している様だけど、前玉系も含めて分解してみた。 やはりカビは後玉の内側にも外側にもあったので、アルコール清掃してみた。

だた、前玉の最前面と後玉の再後面には前オーナーが汚れをシコシコと拭いたと思われる拭き傷があるし、コ-ティングにも経年劣化が認められる。

D.Zuikoレンズを搭載したマミヤシックスは白内障が発症したレンズが多いのだけれど、このカメラのレンズはカビだけで曇りは無い様だ。 とりあえずレンズに関しては清掃した結果、スッキリ・サッパリしたので、銘玉 D.Zuiko の写りを楽しめるだろう。

ファインダー曇り清掃

上カバーを外すネジ
上カバーを外すネジ
ファインダーは我慢して使えるレベルだけど、曇りとカビがあって気持ち良くないので清掃したい。
ファインダーを清掃するには上カバーを外さなければならないけど、カメラの上カバーを外す手順は各カメラによって様々なので、サービスマニュアルがないクラシックカメラを分解する時は未知との遭遇である。

スプール軸を押さえて外す
スプール軸を押さえて外す
Mamiya-6 Automat では巻き上げダイヤルを外さないと上カバーが外れない。 まず巻き上げスプール側の軸を押さえながら巻き上げダイヤルを反時計方向(巻き上げとは逆)に捻ればダイヤルが外れる。 次にフィルムカウンター復元バネのにテンションを与えている押さえ蓋を外し、バネもフリーにしてあげる。 更に距離目盛窓を外せば上カバーを押さえているネジがあるので、このネジと巻き上げダイヤル横のネジ2本を外せば上カバーを取り外せる。

なお、上カバーの距離目盛窓下にあるネジは、距離計の左右(ピント)調整を行う場合に精密ドライバーを突っ込む穴を隠す飾りネジである。

カバーを外した状態
カバーを外した状態
上カバーに付いている前後のプロテクト窓板を含めて 逆ガリレオファインダーの凹対物レンズも凸アイピースレンズも45度ハーフミラーも 塵と曇りとカビがあるので綺麗に清掃した。 ファインダーに目を近づければ気にならないレベルだけど、ハーフミラーには蒸着抜けの斑点が少しある。 蒸着の劣化が進行しているので将来に不安がある。
なお、接眼凸レンズはレンズ押さえ金具に加えて接着剤も使われているので、アセトンなどで接着剤を溶かしてから爪でレンズコバを優しく引いてあげれば取り外せる。

距離計の合致ズレ修正

調整ポイント
調整ポイント
距離計のピント調節は問題無さそうだけど、二重像が上下に微妙にズレているので、ピント合わせが気持ち悪い。 今回は清掃のためにファインダー光学ユニットも外したので、ピント位置も含めて二重像の再調整を実施する事にした。
二重像の上下調整は①の穴にドライバーを突っ込んで前後に捻る事で距離計副鏡の向きを上下に回転させる事で調整できる。
二重像の左右調整は②のネジを回して梃子棒とカムとの当たり具合を変化させれば良い。 二重像の左右調整がピント調節になるんだけど、上カバーを付けた後からでも飾りネジ穴から調整が可能だ。

外観サビのリペア

底板周りの錆が酷い
底板周りの錆が酷い
昔のカメラは高級品だったので、革製のカバーに入れて保管・使用するのが当たり前だった。 これが問題で、高温多湿の日本では金属部分の錆を誘発してしまう。
しかも、Mamiya-6 Automat のカメラ本体にはストラップ環が無いので、ケースに入れないとぶら下げられないので必ずケースが必要になる。

錆が出た底板は再メッキすれば綺麗で素晴らしい見栄えになるんだけど、そこまで手間と金を掛けられないので、錆取り還元クリーム剤で腐ったメッキを落としただけにした。 塗膜が丈夫な2液式ウレタンスプレー塗料は小さな塗装面積であっても使い切らないといけないので、そのうち気が向いたら再塗装してみようと思う。

黒ペイント傷のリペア

先の写真で判る様に、ぶつけた時に出来たと思われるペイント落ちがある。 アルコール清掃したうえで艶あり黒塗料でレタッチすれば目立たなくなる。
熱風乾燥させた方が塗料の強度が強い気がするけど、今回は常温乾燥だけにした。

合成皮革の再接着

合成皮革の清掃にアセトンを使ってはいけません
合成皮革の清掃にアセトンを使ってはいけません
Mamiya-6 Automat の合成皮革は薄いビニールっぽい感じなので、アセトンなどの溶剤で清掃するのは禁物だ。 多分、アセトンを使えば溶けてしまうだろう。
カメラ修理店でもアセトンで清掃する輩がいるので、下手な修理店い出したら合成皮革の質感が損なわれてしまう。 無水アルコールでしっかりと清掃・脱脂した上で、接着しましょう。 なお、合成皮革を剝いた本体側はアセトンで清掃しても大丈夫だ。
僕は革の接着にスプレーのりを使っている。 大きな面に吹き付けて貼るだけなので簡単なのだ。

距離目盛窓の清掃

傷・劣化・変色した距離目盛窓
傷・劣化・変色した距離目盛窓
Mamiya-6 Automat フィル面を前後させてピント調節する方式で、カメラの右上に距離表示窓があり、深度目盛が読める様になっている。
この距離目盛窓の透明樹脂が傷・劣化・変色していて距離目盛が読み難くなっている。 綺麗な透明樹脂を切り出して交換すれば良いのだろうけど、距離目盛を頼りにする機会は少ないので清掃するだけとした。
スッキリと復活した距離目盛窓
スッキリと復活した距離目盛窓
清掃するために距離目盛窓の透明樹脂板を外してみたところ、樹脂板はドーナツ状の丸い板で、日に当たる部分だけに傷・劣化・変色があるという事が判った。

...という事で、綺麗な面に付着していた接着剤を無水アルコールで除去し、180度回して綺麗な面が窓になる様にしただけで新品級の距離目盛窓となった。 いやぁ、実に気持ちが良い。

革ケースのリペア

ベロ革がちぎれた上ケース
ベロ革がちぎれた上ケース
痛みが酷いストラップ革
痛みが酷いストラップ革
革ケースも痛みが酷い。
特に上ケースはホックが付いたベロ革がちぎれてベロア布だけでつながっているし、天井のベロアも無くなっている。
ちぎれた革の再接続をどうするか思案中である。
また、本体側のケースはそのまま使えるけどストラップ革はいつちぎれるかわからない。 ストラップはストックしてあった同色系の現代の物に交換する事とした。

修理結果

撮影レンズが綺麗になったので、往年の写りを楽しめる様になった。 また、ファインダーの見えがスッキリして二重像のズレも無くなったので、ピントを合わせる時も実に気持ちいが良い。

Mamiya-6 Automat は日本のカメラの名機で、僕の知る限り初めてセルフコッキング(自動巻き止め)を搭載した中版スプリングカメラである。 また、発売当時に高い評価を得ていた D.Zuiko の写りも楽しみだ。

21年物の Velvia RVP 120
クラシックカメラだから使い難いのは当然だけど、レンズシャッター部の絞り値やシャッター速度値の数字が小さいのが困りもの。 老眼だとシャッター速度や絞り値を設定するのに難儀しながら写真を撮ってみた。 このカメラで撮影していると懐かしい気分にさせてくれるカメラである。
冷蔵庫から発掘した21年物の Velvia RVP 120 で撮影したけど大丈夫だろうか?

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