CANON FD 35mm F2 - 凹面先行設計の銘玉

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CANON FD 35mm 1:2
CANON FD 35mm 1:2
 このレンズは近距離撮影時における像の劣化を防ぐフローティングシステム(近距離補正機構)が組み込まれているので、無限遠から最短撮影距離まで画面周辺の劣化が少ない...らしい。

CANON FD 35mm 1:2 - 1971年発売

 CANON CAMERA MUSEUM によると FD 35mm 1:2 には S.S.C. を除いても(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の3種類が存在するらしく、(Ⅰ)型の鏡筒画像は載っているけど(Ⅱ)(Ⅲ)型の画像は載っていない。 (Ⅱ)型に至っては発売時期すら不明だ。 銘板には(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の記載がないので、自分が使っているレンズがどれなのかすら判らないのが実情だ。 僕の個体は距離環外径がΦ67mmなので(Ⅱ)型か(Ⅲ)型だと思われる。 なお、古いFDレンズなので絞り環AE指標刻印は「」ではなく「」になっていて、この個体にはAEロック釦も付いていない世代だ。
 当時、(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)を意識した記憶は無いけど、1973年に鏡筒が50gほど軽量化されると共にコーティングがS.S.C.化されたのは覚えている。

レンズ構成

CANON FD 35mm 1:2 初期型 レンズ構成
レンズ構成
 レンズ構成は8群9枚のレトロフォーカス型で、第一レンズが弱い凸メニスカスになっていて入射面に凹面向けた配置が珍しかった。 なので、凹面を意味する「CONCAVE」レンズと呼ばれたりもしていた。 レトロフォーカス型レンズの先行負パワー群を凸凹の2枚で構成する例はあったけど、入射面に凹面を向けた構成は珍しかった。 また、フローティングシステム(近距離補正機構)が組み込まれていて、鏡筒の繰り出し量に応じて第1~4レンズと第5レンズとの間隔が繰り出すほ(0.65mmほど)ど狭くなるダブルヘリコイド設計となっている。 また、最短撮影距離は0.3mで最大撮影倍率が0.194倍なので、そこそこ寄ることができる。

 この時期のFDレンズは鏡筒には真鍮が多用されているので重量は420gと重めで、フード装着爪を持つ銀色のフィルターリングがアクセントになっている。 また、レンズをカメラマウントに接触さるとスピゴットマウントの締め付けリングが自動的にスルっと回って喰いつく仕組みが組込まれる前のレンズなので、レンズ交換の際は落下させない様に充分に注意する必要がある。

 1971年時点では「Spectra Coating」や「Super Spectra Coating」という謳い文句がキヤノン社内に無かったのか、銘板に S.C. の文字は無いけどコーティングは Spectra Coating 仕様である。 ちなみに、1979年頃に発売されたFDレンズ最終期から表記に S.S.C. とか S.C. というコーティング仕様の文言が再び消えている。

後玉側から紫外線を照射して黄変対策を実施
紫外線照射
 なお、このレンズは後群に酸化トリウム含有硝材が使われているので黄変してしまうのが難点だ。 紫外線照射による対策を行わないと透過光が黄色く...イヤ茶色く色付いてしまう。 紫外線照射は後玉を取り出して実施するのが効果的だけど、分解しないで後玉側から紫外線照射することでも対策できる。 実写の発色が酷かったので、分解しないで後玉側から3日間ほど紫外線再照射を施しておいた...撮影後だけど。💦

CATシステム対応

CANON FD 35mm 1:2 はCATシステムに対応している
CATシステムを装着
 距離環の先頭に SPEEDLITE 133D を使って CANON F-1/FTb/EF で露光調整させるための距離環連動ピンが付いている。レンズ先端のバヨネット部に FLASH-AUTO RING を装着し、レンズの距離環情報をSPEEDLITE 133D に伝達することが出来る。 この露光調整はCATシステムと呼ばれ、距離環の位置に応じて露出メーターが振れるので、絞り環を操作して追針を合わせれば適正露出になるシステムだった。 便利そうではあるけど、所謂フラッシュマチック方式なので、外光量は考慮されないし、フル発光で眩しいし、使用可能レンズは限定されるし、距離環が至近端まで回らなくなるし、装着が面倒だし...などで使えるシステムとは言い難かった。 CATシステムを買うやつはバカだね...僕だけど...

描写特性

遠景描写

 以下の遠景描写の写真はRAW現像時にホワイトバランスを6000°Kに設定し、Dレンジオプティマイザーをオフにして現像しています。
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
絞り:F2
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2.8
絞り:F2.8
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F4
絞り:F4
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F5.6
絞り:F5.6
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F8
絞り:F8
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F11
絞り:F11
 絞り開放ではソフトな描写で、画面周辺は収差フレアが目立つ。 F2.8に絞ると中央付近はスッキリした描写になるけど画面周辺では流れた様な描写だ。 F4に絞ると画面四隅を除いて画面周辺も良い描写となる。 F5.6なら画面四隅も良い描写となる。
 充分な周辺光量落ちがあるので効果として使えるだろう。 周辺光量落ちはF5.8で殆ど判らなくなる。
 発色はかなり偏っていて、アトムレンズらしさ全開だ。 黄色と言うより茶色フィルターを通した写りで、逆にオールドレンズらしいとも言える。 現状では 5200°K M5 で現像すればマシになる

一般撮影

 以下の遠景描写の写真はRAW現像時にオートホワイトバランスに設定し、Dレンジオプティマイザーをオンにして現像しています。
>CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
絞り:F2
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
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CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
絞り:F2
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
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CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
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CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
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CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
絞り:F2
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
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CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
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CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
絞り:F2
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
絞り:F2
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
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CANON FD 35mm 1:2 絞り:F16
絞り:F16
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F4
絞り:F4
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
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CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
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CANON FD 35mm 1:2 絞り:F5.6
絞り:F5.6
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
絞り:F2
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
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CANON FD 35mm 1:2 絞り:F5.6
絞り:F5.6
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
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CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
絞り:F2
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2
絞り:F2
CANON FD 35mm 1:2 絞り:F2 現像:5200°K M+5
絞り:F2 別現像設定
 絞り開放では画面全域でコントラストが低めでフレアっぽい描写だ。 ただし、画面中央の解像感は悪くないし画面周辺の破綻も酷くはないので、小さな写真なら充分使えるだろう。 F2に絞るとコントラストが向上し、F5.6で画面周辺も充分な画質になる。
 ボケ味は悪くなく、背景が嫌味なくボケてくれるし、玉ボケ具合も穏やかだ。 大ボケは綺麗でも小ボケが汚いレンズは多いけど、このレンズは小ボケでも汚くならない。

 太陽を画面に入れ込まなくても陽光を前玉が拾う条件だとアンバー系のゴースト・フレアが発生する。 絞り込むと8角形のゴーストになるが、絞りを開けると広範囲に広がった逆光フレアーとなる。 有効なフードを装着した方が良いだろう。

 風景などの遠景ではF5.6以上に絞らないと画面四隅の描写がイマイチだけど、主被写体以外はボケる様なシーンでは開放から使えるし、少し絞れば充分な描写が得られる。 このレンズには黄変があるのでオートホワイトバランスがコケるシーンが多く、発色がイマイチになる場合があった。 仕方ないので、撮影後に3日間ほど紫外線を照射を施して黄変の改善を施したので、数年間は普通に使えるだろう。 黄変対策を施せば発色は悪くなかったと思う。

あとがき

 当時の明るい広角レンズとしては高性能だけど、それが凹面先行だから高性能という訳ではない。 高性能になるなら凹面先行の広角レンズが沢山製品化されるハズで、凹面先行という珍しさから『凹面先行の』銘玉と呼ばれるのだろう。
 一眼カメラのファインダーを覗いていて35mmという焦点距離は楽しく感じる。 同じ1971年発売で1段明るいF1.4レンズだった Nikon NIKKOR-N・C Auto 1:1.4 f=35mm と比べると、開放で楽しめるクセ玉としてNIKKORの方が勝ると思う。
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