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| PETRI C.C Auto Petri 1:1.4 f=55mm(PETRI V6 II が高級機に見える) |
大好きな PETRI C.C Auto Petri 1:1.4 f=55mm だけど、
以前の記事では PETRI → LEICA M → ヘリコイド付き SONY E というアダプターの組み合わせだったので、マウントケラレにより、四隅がエラく暗くなっていたので、
自作のマウントアダプターによる遠景撮影を行い、
修理した TECHART LM-EA7 によるオートフォーカスで一般撮影も行ってみた。
PETRI C.C Auto Petri 1:1.4 f=55mm - 1967年発売
ミラーレス一眼時代になってマウントアダプターが利用できる様になり、手軽にペトリレンズを使える様になった。 昔はペトリレンズはペトリカメラでしか使えなかったので人気にはならなかったけど、PETRI C.C Auto Petri 1:1.4 f=55mm だけは銘玉だったと思う。 ただ、ミラーレス一眼時代になっても、ペトリマウントアダプターは一般的じゃないのて認知度は低いままの様だ。
レンズ構成
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| レンズ構成 |
レンズ構成は5群7枚構成の拡張ダブルガウス型で、NIKKOR-S・C Auto 1:1.4 f=50mm などと同様に、典型的なダブルガウス型では1枚の最終凸レンズを、2枚の凸レンズで構成されている。 本レンズには小型にしようという意図はあまり感じられないし、焦点距離が55mmなので余裕のあるレンズ配置だと感じる。 レンズ白書では CANON FD 50mm F1.4 S.S.C. と並んで高い評価だったらしい。
絞りはF1.4からF16までの等間隔絞り環で、各絞り値にクリックが無いレンズとクリックが有るレンズ(クリック無し版の方が多いらしい)とが存在する。 クリックが無いのは、1967年に絞り込み測光方式の PETRI FT と同時発売された際に、「PETRI FT の絞り込み兼測光レバーを押しながら絞り環を操作し易い様にクリックが無い」という事らしいけど、どんな操作なのか想像できない。 なお、絞りクリックの有無は外観を見ただけでは判別不能なので、中古品を購入する際は実際に絞り環を操作して確認しよう。
ちなみに、クリック無し版のレンズを分解清掃した際に、『クリックを付けよう』と思ったけど、絞り環の裏側にクリック用の溝すら刻まれてないので諦めた。 なお、自動絞り駆動レバー周りにはボールベアリング等は用いられてないので、絞り羽根に油が付着していなくても、絞り駆動系の潤滑油劣化や駆動部材の歪みなどで、絞り駆動が粘り易い。
光学シミュレーション
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| スポットダイヤグラム |
実製品と同じデータとは限らないし、硝材データも微妙に異なるけど、絞り開放でのスポットダイヤグラムを計算させてみると、軸上では優しいフレアが広がり、画面隅ではサジタルコマフレアが優しく広がる事が判る。 画面中央から画面周辺まで薄いベールに包まれた様な素敵な描写が期待できる。 画面周辺でメリディナルの硬い広がりが少ないし、F2.8まで絞れば収差フレアが劇的に改善する事が判る。
画面中央付近はシャープだけど画面周辺はボケボケ...みたいなレンズは使い難いけど、各絞り値で画面全域で均質な描写を示すレンズはとても使い易い。 なお、記憶に無いけど、カメラ毎日1967年12月号や1971年版レンズ白書でも当時としては最高レベルの評価だったらしい。 また、1974年カメラレンズ白書でも CANON FD 50mm F1.4 S.S.C. と並び「素晴らしいレンズ」と評されるほどの銘レンズだったのだ。
コーティングの変更
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| 後玉コートの差 |
製造番号が5桁のレンズと製造番号が6桁のレンズの C.C Auto Petri 1:1.4 f=55mm を持っているけど、両レンズのコーティングを比較すると、後玉コーティングの色味がちょっと違う事が判る。 製造番号が5桁の方はアンバー系コート(左)で、製造番号が6桁の方はシアン系コート(右)になっている。 5桁の方が古い製造のレンズで、「ハレーション対策」としてコーティングを変更したと言われている。
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| フードの効果 |
なお、前玉が画面外の強い光を拾うとエモい?フレアが発生し易いレンズなだけど、コーティング変更はそれらの迷光系フレアを軽減する効果は少ない様だ。 迷光フレアはフードによる対策が有効で、僕は画面隅がギリッギリまでケラレないフードを装着している。 ミノルタの MD 75-200mm F4.5 用メタルフードなら四隅がケラレることなく、内面が植毛風になっているので充分な効果がある。
ペトリの開放測光
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| 絞り環が逆回転になった |
「C.C Auto」レンズは、TTL絞り込み測光にしか対応していないが、後にTTL開放測光シャッター速度優先の自動露出に対応し、大胆にも絞り環回転方向を逆にした「EE Auto」レンズへ変更されている。 ただし、レンズの設定絞りをカメラへ伝達する手段を持たないので、マニュアル露出の場合はTTL絞り込み測光になってしまう。 また、ペトリのTTL測光システムは装着レンズの開放値伝達が F1.4~F2 / F2.8 / F3.5~F4.5 の3段階しかなく、シャッター速度優先自動露出の制御絞り値表示が随分とアバウトなシステムだった。
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| 追加されたピンやタブ |
なお、「EE Auto」で絞り環の回転方向を逆にしたのは、絞り環をEEポジションに設定したらMA切換えリングを強制的に「A」ポジションにする必要があるけど、MA切換えリングはメカ的に絞り駆動レバーを絞り込み状態にしているので、絞り環の回転方向を逆にして「A」ポジションへ強制的に切り換える必要があったからだ。 ペトリマウントレンズは途中で絞り環回転方向を1回変更していたので、最初の回転方向に戻った事になる。
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| ミラーボックスの切り欠き |
さて、ペトリは「EE Auto」レンズで、露出制御に関する情報伝達を深さ方向のストロークの違いで実現していた。 このため、レンズに新たに設けられた絞り込み量制御ピンは大丈夫だけど、暗いレンズの開放値伝達タブは、古いカメラボディーと干渉してしまうので注意が必要だ。
PETRI V6 II ならミラーボックス部に切り欠きが有るので干渉しないが、旧機種の PETRI V6 だと干渉する「EE Auto」レンズがある。 なお、「EE Auto」レンズになっても絞り環の設定をカメラに伝達する手段を持たない(つまり、マニュアル露出は絞り込み測光)ので、東京光学の特許に抵触する事は無い...ハズだ。 ちなみに、EE Auto Petri 1:1.4 f=55mm は1975年発売のペトリマウント最終機である PETRI FA-1 用として少数だけ生産されたらしい。
描写特性
以下の画像は自作のマウントアダプターに装着してマニュアルフォーカス撮影する以外に、PETRI → LEICA M → LM-EA7 経由でオートフォーカス撮影も試してみた。 ただし、メルカリで購入した PETRI → LEICA M アダプターはマウント平行度が悪く、左右で0.2mmほどの差(傾き)が有る不良品なので暫定対策を施して使用してあります。
なお、明るいレンズなので、デジタルカメラのローパスフィルターやIRカットフィルターなど、フィルム時代には考慮されていない光学部材の影響で、気にする程じゃないけど本来の描写性能は出ていないと思います。
遠景描写
以下の写真は自作のマウントアダプターを利用して SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスは太陽光に設定し、Dレンジオプティマイザーはオフに設定して現像してあります。
絞り:F1.4 |
絞り:2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F4 |
絞り:F5.6 |
絞り:F8 |
絞り開放では画面中央から周辺まで解像感がありつつ薄いベール越しの様な、素敵な収差フレアに包まれた描写となる。 F2に絞ると更に薄いベール越しの様になり、少しソフトな描写という感じになる。 F2.8に絞ると画面中央付近はスッキリとした良い描写になり、画面周辺から隅にかけては少し描写が低下する。 低下と言っても悪くない描写だ。 F4に絞ると、画面隅以外は素晴らしい描写になり、 F5.6まで絞ると画面全域で素晴らしい描写になる。 F8だと画面極四隅の描写が更に向上する。
素敵な周辺光量落ちがあり、1段絞るごとに改善し、F4でほぼ判らなくなり、F5.6で解消する。 Dレンジオプティマイザーがオフならγ補正が立っている辺りなので周辺光量落ちが判り易いけど、Dレンジオプティマイザーをオンにすると判り難くなってしまう。
遠景比較(対 CANON FD)
カメラレンズ白書で CANON FD 50mm F1.4 S.S.C. と並んで「素晴らしいレンズ」と評されていたので、実際に CANON FD 50mm F1.4 S.S.C. と比較してみた。
開放描写比較 PETRI 55mm F1.4 vs FD 50mm F1.4 Av:F1.4 WB:太陽光 (ダブルクリックで拡大)
両レンズとも似た様な描写特性で、絞り開放で素敵な描写をする優れたレンズだと判る。 また、キヤノンよりペトリの方が寒色系の発色で、キヤノンの発色の方が僕好みではある。 ただし、どちらも色乗りは悪くないので、オートホワイトバランスで撮影すると差が判らなくなる。
夜景描写
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像を 古~い現像アプリ DxO PhotoLab 3.3.0 Build 4391 にて、ホワイトバランスを4500°Kに設定して現像してみました。 なお、色収差補正やディストーション補正や周辺光量補正などは施していません。
絞り:F1.4 |
絞り:2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F4 |
絞り:5.6 |
絞り:F8 |
絞り:F1.4 |
絞り:F2.8 |
絞り:4 |
絞り開放の画面中央でも輝点周りにフレアが発生し、画面周辺にゆくほどサジタルコマフレアが目立つ様になる。 F2に絞ると画面中央付近のフレアは減るまだまだ残っていて、画面隅は絞り開放と変わらない。 F2.8に絞ると画面中央はスッキリした描写になり、画面隅にサジタルコマが少し残っている。 F4に絞ると概ね画面全域で夜景に使える描写になり、F5.6まで絞れば画面隅でも充分な夜景描写になる。 6枚絞りなので、絞り込むと輝点に6本の光芒が現れる。
ちなみに、絞り込んだ場合の光芒はペトリの光芒よりキヤノンの光芒の方がキツい出方をする様だ。 キヤノンの絞りは8枚だけど絞った場合に直線的な形状で、ペトリは6枚絞りだけど円弧が残っているからだ。 光芒を効果として使うならキヤノンの方が向いているかも知れない。
玉ボケ描写では、距離環を1mに繰り出した状態です撮影してあります。 玉ボケのエッジが僅かに立ち気味だけど、後ボケは滑らかそうな感じだ。 画面周辺では玉ボケがラグビーボール状になるけど、いびつな感じにはならない。 F4まで絞ると画面隅まで概ね6角形の玉ボケになる。
点光源比較(対 CANON FD)
カメラレンズ白書で CANON FD 50mm F1.4 S.S.C. と並んで「素晴らしいレンズ」と評されていたので、実際に CANON FD 50mm F1.4 S.S.C. と点光源描写を比較してみた。
開放描写比較 PETRI 55mm F1.4 vs FD 50mm F1.4 Av:F1.4 WB:4500°K (ダブルクリックで拡大)
両レンズとも収差の発生具合は非常に似た特性で、同じメーカーのレンズだと言ったら信じてしまうだろう。 なお、ペトリの画面隅のサジタルコマフレアは、概ねスポットダイヤグラム通りの発生具合になっていることが判る。 両者をよ~く比較すると、ペトリの方がフレアが柔らかい気もするけど、トワイライト時の撮影時刻の違いによる露光時間の差が出ているかも知れない。
ホワイトバランスを4500°Kに設定して現像してみたけど、両レンズの色味が随分と異なる。 日中での遠景撮影でもペトリはキヤノンより寒色系の発色だったけど、点光源撮影ではトワイライト時間帯だったので、撮影時刻の差(約6分間)による空の青み変化が大きく影響している可能性がある。 薄明が終わってから撮影すれば良いのだけど、遅い時間だとビルの照明看板が消灯しちゃうんだよねぇ。 冬場なら同じ時刻でも薄明が終わっている。
一般撮影
以下の写真は PETRI → LEICA M → LM-EA7 経由でオートフォーカスを利用して、SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスをオートに設定し、Dレンジオプティマイザーもオンに設定して現像してあります。
レンズの最短撮影距離が0.6mなので、LM-EA7 の最大繰出し量4.5mmと合わせると、合成の最短撮影距離が0.4m近くまで寄れる計算になるので、概ね不都合なく使えた。 なお、記載の絞り値は撮影時の記憶に頼っているので、間違っているかも知れません。m(_ _)m
絞り:F1.4 |
絞り:F2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F1.4 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F1.4 |
絞り:F2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F1.4 |
絞り:F1.4 |
絞り:F1.4 |
絞り:F1.4 |
絞り:F1.4 |
絞り:F1.4 |
絞り:F1.4 |
絞り:F1.4 |
絞り:F1.4 |
絞り:F2.8 |
絞り:F1.4 |
絞り:F4.5 |
絞り:F1.4 |
絞り:F2.8 |
絞り:F4 |
絞り:F1.4 |
絞り:F2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F1.4 |
絞り:F1.4 |
絞り:F1.4 |
絞り:F1.4 フード無し |
絞り:F1.4 フード無し |
絞り:F1.4 フード無し |
絞り開放からF2にかけての繊細で優しいフレアが素敵なので、ついつい開放付近で撮ってしまうけど、ピントを合わせた部分にハイライトが無ければ殆どフレアを感じないシーンもある。 開放付近の描写はポートレートに使えば素敵な描写を見せてくれそうだし、F2.8以上に絞ればスッキリしたクリアーな描写に変化し、画面全域で描写特性が同じ感じなのが良い。 なお、F1.4では焦点深度が浅いので、オートフォーカスでも立体物の撮影ではピント合わせに神経を使う。
画面内に太陽を入れたりすると、ダブルガウス型らしいゴーストが発生してくれる。 また、フードを外して前玉に陽光を拾えば前玉系のコバ部からの迷光フレアも発生してくれるので、効果として使えるかも知れないけど、派手には発生してくれないし、絞ったりフードを装着すれば迷光フレアは消えてしまう。
色乗りは悪くないけど若干控えめで、前ボケ周辺には紫色で後ボケ周辺には緑色の色が付く「色ボケ」が少し認められる。 気にするほど酷くはないし、CANON FD 50mm F1.4 S.S.C. と同じ程度だと思う。 現代のレンズでも、合焦面はとてもシャープなのに「色ボケ」が気になるレンズがあるけど、それよりはマシだ。
風景や遠景などにフレアは不要な事が多いのでF2.8以上に絞った方が良いけど、寄って撮るシーンでは優しいフレアを纏った描写が、優れたソフトフォーカスレンズの様に魅力的だ。 被写体を画面のどこへ配しても思い通りの描写で、開けて良し・絞って良しの銘レンズだと思う。
あとがき
C.C Auto Petri 1:1.4 f=55mm は素敵な銘レンズだと思うけど、これ以外で使いたいペトリのレンズはないのが残念だ。 量産まで進んだけど、実際に発売されたのか不明な C.C Auto Petri 1:1.8 f=85mm や C.C Auto Petri 1:2.8 f=100mm は気になるけど、市場で見た事が無い。 「オールドレンズらしさ」でチョイスするなら、古典的レトロフォーカス型の C.C Auto Petri 1:2.8 f=35mm 旧型 や C.C Auto Petri 1:3.5 f=28mm 旧型 などは面白いかも知れないけど、手持ちのペトリ広角レンズが好みの描写じゃなかったので興味が湧かない。
噂話と妄想と昔の記憶
C.C Auto Petri 1:1.8 f=85mm や C.C Auto Petri 1:2.8 f=100mm が発売されなかったのは、恐らく労働組合との労働争議などにより、売れ筋じゃないレンズの市場投入を見送ったのだろう。 ペトリの労働争議は酷かったらしいけど、当時の栗林敏夫社長のサインが刻印されたコンパクトカメラ Petri Color 35 が150台ほど生産されたそうで、社長が栗林繁代から栗林敏夫へ引き継いだ記念らしいけど、そんな事してちゃ労働争議も紛糾するよねぇ。
その昔、田舎のカメラ屋のウィンドウにも NIKON CANON と並んで、花文字がカッコいい PETRI V6 II が飾ってあったけど、ペトリは1977年に倒産した。 ペトリカメラの「顔」だった秋山正太郎先生が、1970年代にフォトサークル指導で北海道へ来たときは、ペトリ機材じゃなくキヤノン機材を使っていた...と記憶している。
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