PRTRI V6 II - 1970年発売

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PRTRI V6 II

 このカメラは1965年に発売された PETRI V6(V VI) のマイナーチェンジ機で、ペンタ部にホットシューが追加されている。 ペトリカメラは PETRI V6に代表されるカメラメーカーで、その独創的で斬新なデザインとペンタ部に刻まれた「V」の花文字が小学生だった僕でもカッコイイと感じ、いつもカメラ屋のショウウィンドウに張り付いていた。

 その価格が破格で NIKON F 50mm F2 の¥59,000円 とか TOPCON RE Super 50mm F1.8 の¥54,000円に対して PETRI V6 55mm F1.8 は¥25,000円と他社高級モデルの半額以下の価格設定だった。 更に 55mm F2付きは「ペトリ V6 F2」と銘打って激安の¥21,600円(ケース付きで¥23,800円)だったのだ。

PRTRI V6 II

 PETRI V6 のカタログには秋山庄太郎先生の言葉として『一眼レフで二三、八00円、この価格には全く、驚くと同時にまいったと思った。しかも性能、デザインとも申し分ない。かねがね一眼レフが手軽に買え、だれもが持てるようにと思っていた。生産者の企業努力に敬意を表したい。』とある。 残念ながら、この安さが仇となり「安物」というイメージが定着してしまったのは悲しい事実である。

 さて、1970年発売の PETRI V6 II は発売時価格がF1.8付きで¥27,200円であった。 PETRI V6 / V6 II のブラックボディは¥1,000~¥2,000円高かったことから、安いカメラを求めるユーザー層が多いペトリではブラックボディの生産台数は少なかった様だ。 ちなみに、経済成長が著しい時代だったのでインフレ率も高く、新版のカメラカタログを開く度に値上がりしていた記憶がある。

カメラの特徴

取説でのカメラの構え方
取説での構え方

 カメラの操作性で特徴的なのはレリーズの操作で、現代の一般的な一眼レフとは異なりシャッターボタンがボディー右手側前面に付いている。 この時代の一眼レフは機能の過渡期にあり、様々な操作性のカメラが存在していた。 ペトリの取説写真では人差し指でシャッターボタンを押しているけど、僕の使い方は中指でレリーズするのが基本で、人差し指(と親指)はシャッターダイヤル操作に専念させていた。 この方がカメラをホールディングし易いと感じている。

フィルムカウンタ
フィルムカウンター

 また、フィルムカウンターが巻き戻しクランク側にあり、フィルム巻き上げ操作とは連動していない。 なんと、シャッター走行後にミラーがダウンするタイミングでフィルムカウンターをカウントアップする仕組みなのだ。 つまり、カウンターが表示している駒数は「常に」撮影が終わった駒数という事になるので、フィルム装填時はカウンター駒数を1まで進めてしまうと先頭駒を無駄にする。 それにしても駒数指標は無意味に大きいのに肝心な駒数字は老眼には判別不能なほどが小さい。 セルロイドの様な薄っぺらな透明シートがカウンター窓に貼っているけど凸レンズを付けてもらいたかった。

機嫌が悪いスローシャッター

ガバナー部に注油
ガバナー部に注油

 僕の PETRI V6 II は高速シャッターでは問題がないけどスローシャッターの機嫌が悪く、先幕走行後にレリーズボタンを離さないとスローガバナーが動作しない病気を発症している。 上カバーを外してインジェクターでちょっとだけ注油してやったら治癒した。 スローガバナーがシャッターダイヤル下部にあるので上カバーを外せばチェックなどは簡単だ。 また、ペンタプリズムも外して押さえてるモルトも交換すべきだけど、面倒なのと当面は大丈夫そうなで放置することにした。

ペトリレンズの描写

 ペトリマウントの交換レンズを SONY ILCE-9 に装着して撮影してみた。 なお、記載が無い写真は全て絞り開放で撮影してトリミングはしていない。

 C.C Auto Petri 1:1.8 f=55mm 
C.C Auto Petri 1:1.8 f=55mm C.C Auto Petri 1:1.8 f=55mm C.C Auto Petri 1:1.8 f=55mm
 このレンズは4群6枚構成のガウスタイプでそれなりに写ってくれる。 絞り開放ではフレアぎみの描写だけど解像はしている感じで、一段絞れば画面全体にコントラストが向上する。 後ボケが二線ボケ傾向なのでシーンによっては背景がちょっと煩くなる。 同時代の他社同クラス標準レンズと遜色ない感じだ。
 
 C.C Auto Petri 1:3.8 f=135mm 
C.C Auto Petri 1:3.8 f=135mm C.C Auto Petri 1:3.8 f=135mm C.C Auto Petri 1:3.8 f=135mm
 凸凹凸の3群3枚構成によるトリプレットタイプの望遠レンズである。 たった3枚のレンズしか使ってないのでちゃんと写るか心配になるけど、Elmar 90mm f4 Triplet や Nikkor-T 10.5cm F4(マウンテンニッコール)もトリプレットタイプなので、F4程度の望遠レンズにはトリプレットでも充分なのかもしれない。 テレフォトタイプじゃないので焦点距離と同程度の長さがあり、細身でコンパクトな金属鏡筒はそんなに安っぽい感じはしない。 フォーカシングは絞りを残してレンズ3枚が回転ヘリコイドで繰り出される方式で、最短撮影距離が2.5mと全く寄れない。 画質は遠景ならそこそこ写ってくれるけど近距離ほど描写が甘くなる...っていうか、解像が悪くてピントの山も掴みにくい。 なお、巷の噂では「マウント側にUVカットガラスがある」らしいけど、この個体を分解してもその様なガラス板は無かった。
 
 EE Auto C.C Petri 1:2.8/35 
EE Auto C.C Petri 1:2.8/35 EE Auto C.C Petri 1:2.8/35 EE Auto C.C Petri 1:2.8/35
 このレンズは旧モデルの C.C Auto Petri 1:2.8 f=35mm に対して小型になったレンズで、レンズ構成は5群6枚のレトロフォーカスタイプである。 描写はオールド広角レンズらしく、周辺画質が甘い。 非点隔差は少なそうだけど負の像面湾曲があるので遠景や平面被写体では絞り込まないと周辺画質は改善しない。 室内撮影とか奥行きのある場所を撮るとシャープに写せるシーンもあるけど、この個体には片ボケがある様だ。 旧モデルより開放での周辺描写が改善されたらしいが、旧モデルを知らないので実感できない。 レンズのモデル名称に「EE」が付いている様に開放測光シャッター速度優先AEに対応したレンズである。 PETRI FT までのレンズは自動絞り用のレバーがあるだけで、開放測光やシャッター速度優先AEには対応していないレンズだったが、「EE」レンズにはカメラへの開放F値伝達ピンやカメラから絞り値を制御するピンが追加され、絞りリングの回転方向が逆になっている。 PETRI FTEE や PETRI FTE と組み合わせると開放測光シャッター優先AEが可能になる。
 
 EE Auto C.C Petri 1:4/200 
EE Auto C.C Petri 1:4/200 EE Auto C.C Petri 1:4/200 EE Auto C.C Petri 1:4/200
 このレンズは4群5枚構成だけど、明確なテレフォトタイプではない(テレ比を稼いでない)ので邪魔なほど細長い容姿に頼りなさを感じてしまう。 レンズ構成は初期型から変わってないと思うけど開放測光やシャッター速度優先AEに対応した「EE」モデルである。 このレンズで写真を撮ってみると、見た目の頼りなさを裏切るシャープ感は高級機メーカーの200mm望遠レンズに迫る写りだ。 霞がかった描写がオールドレンズっぽいけど、レンズ面のコーティング(第2レンズはノンコート?)と内筒の反射対策を真面目に施してあればスカッと抜けの良い写真が撮れるレンズになるハズだ。 なお、PETRI PENTA V ~ PETRI V6 には新たに追加されたピンがミラーボックスに干渉して装着できないが、PETRI V6 のマイナーチェンジ機である PETRI V6 II には「EE」レンズ用の切り欠きがあるので装着可能となっている。

 ペトリのレンズは普通にちゃんと写るレンズもあるけど、外装部品が樹脂化された終末期のレンズにはちゃんと写らないレンズもある様だ。 ペトリレンズで銘玉と言えるのは C.C Auto Petri 1:1.4 f=55mm だけかなぁ。

あとがき

 ペトリマウントの一眼レフには超広角21mmから超望遠1000mmまで用意されていたし、PETRI Color 35 などのデザイン性・操作性・携帯性に優れたカメラがあった。 しかしながらペトリのカメラは PETRI V6 に代表される破格の安さで知られたため「安物」という悪いイメージが定着してしまった。 ペトリのカメラは確かに安かったけど、決して「安かろう悪かろう」という訳ではなく「安かろうそれなり」というだけ(プロ使用には耐えられない)なのだ。 1970年代には電子化の遅れもあり同業他社との競合に負けて衰退し、労働争議によって生産も滞り1977年10月に倒産した。

 ちなみに「ペトリ V6 F2」の発売当初に標準装着された C.C Auto Petri 1:2 f=55mm は光学系は C.C Auto Petri 1:1.8 f=55mm と同じで、売価を下げるためにわざわざ光量制限してスペックを落としていたらしい。

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