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| CANON LENS 50mm f:1.5 L39 |
この時代のレンジファインダーカメラ用高速標準レンズは、1932年に Zeiss社が Sonnar 50mm F1.5 を製品化していて、技術が無かった Leitz社は Schneider社からライセンスを受けて、1936年に拡張ダブルガウス型の XENON 50mm F1.5(でも、Taylor-Hobson社の特許に抵触)を製品化した。 日本メーカーは1950年代になってから 50mm F1.5 という仕様に追従し、ドイツ勢に遅れをとっていた。
CANON LENS 50mm f:1.5 L39 - 1952年発売
当時のキヤノンはダブルガウス型で SERENAR 50mm 1:1.9(沈胴)や SERENAR 50mm 1:1.8 などの明るいレンズを設計していたが、F1.5という明るいレンズは達成できないでいた。 1950年代になると、F1.5の明るい日本製レンズが登場する事になる。
レンズ構成
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| レンズ構成 |
キヤノンは『
Carl Zeiss Sonnar 1:1.5 f=50mm を手本にした』と公言している通り、3群7枚構成の典型的なゾナー型である。 コーティング技術が進歩する前では、空気境界面が少ない3枚張り合わせレンズは有効だった。 多分、1940年代にはゾナー型を研究し尽くしていただろうから、Zeiss社の特許権が切れたので、日本で調達可能な硝材を使って直ちに製品化出来たのだろう。 結局、ダブルガウス型の 50mm F1.4 は1957年まで製品化されなかった。
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| フード装着 |
絞り環はF1.5からF16までの不等間隔絞りで、各絞り値にクリックがあるが、F11とF16は間隔が狭くて設定し難い。 また、絞り羽根は13枚で、絞っても多角形さが少なく「円形っぽく」保持される。
距離計連動カメラ用レンズなので、最短撮影距離は1mと遠く、寄って撮影することは出来ない。 フィルター径はΦ40mmで、超薄枠のキヤノン純正フィルターが用意されていた。 超薄枠フィルターは広角28mmレンズなどでもケラレない様に配慮した結果だったのだろう。
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| SERIES VI フィルター |
フードはΦ40mmネジ込み式とカブセ締め付け式の2種類のフードがあり、超薄枠のフィルターを装着した場合はカブセ締め付け式フードじゃないと装着出来ない。 また、フードは基部と傘部に分かれていて、間に SERIES VI フィルターを挟むことが可能だった。 モノクロームの時代だったので、Green / Yellow / Orange / Red などの SERIES VI フィルターが発売されていた。 フィルターケースはスタック出来き、まとめて保管できる構造でだった。 また、フードケースにはフィルターを1枚収納可能だ。
なお、SERENAR 50mm f:1.5 が発売された1952年には SERENAR 85mm f:1.5 も製品化されていて、85mm f:1.5 はゾナー型の前群とガウス型の後群を組み合わせた4群7枚のハイブリット構成のレンズだった。
コラム
キヤノン初期のレンズブランド名は SERENAR という名称だった。 ラテン語の「澄んだ」という意味を表すセレーヌス(serēnus)に由来し、澄み切った美しい描写力を目指す願いが込められていた。 ただ、進駐軍の将兵から『レンズ名はSERENARで、カメラ名はCanonで、メーカー名は精機光学と、それぞれの名前がバラバラで覚えにくい』と指摘され、1947年にメーカー名を「キヤノン(Canon)」に変更し、1953年にはレンズ名も「CANON LENS」に統一したらしい。 ちなみに、本レンズの生産開始時は SERENAR ブランド生産され、1955年?以降は本個体の様に CANON LENS ブランドに変更されている。
描写特性
今回は
TECHART LM-EA7 を介して SONY ILCE-9 にて、オートフォーカスも使用して撮影してみた。 Leitz GmbH Wetzlar Summicron f=5cm 1:2 沈胴 と同様に画面周辺でもオートフォーカスが可能で、速くないけどマニュアルフォーカスより確実にピントを合わせられる印象だった。 恐らく、射出瞳距離や瞳径などがオートフォーカス可能な範囲内なのだろう。
なお、明るいレンズなので、デジタルカメラのローパスフィルターやIRカットフィルターなど、フィルム時代には考慮されていない光学部材の影響で本来の描写性能(特に画面周辺)は出ていないと思います。
遠景描写
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスは太陽光に設定し、Dレンジオプティマイザーはオフに設定して現像してあります。
絞り:F1.5 |
絞り:2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F4 |
絞り:F5.6 |
絞り:F8 |
絞り開放では全体にフレアがかっていて、画面隅ではボヤけている。 F2にすると中央はシャキッとした描写になり、画面周辺のフレア感も低減されるが、周辺のボヤケた感じはそのままだ。 F2.8に絞ると画面周辺でもフレアが消えるが、非点収差の影響で周辺の解像感がなかなか向上しないのはゾナーの特性だろう。
夜景描写
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスは白色蛍光灯に設定し、Dレンジオプティマイザーはオンに設定して現像してあります。
絞り:F1.5 |
絞り:2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F4 |
絞り:5.6 |
絞り:F8 |
絞り:F1.5 |
絞り:2.8 |
絞り:F4 |
絞り開放では全体に収差フレアにより輝点が大きく広がっていて、解像感の低い描写だ。 画面周辺から隅では「カモメの飛翔」の様な見事なコマ収差が発生している。 F2.8に絞れば画面中央付近は見違えるほど改善し、画面周辺のコマ収差も改善するが、画面周辺から隅は非点収差の影響で解像感がなかなか改善しない。 F8かF11まで絞れば画面周辺から隅でも良い描写になる。 円形絞りではないので、絞り込むと輝点の周りに26本の光芒が発生する。
距離環を最短距離の3.5feet(1m)に設定して撮影した玉ボケは、リング状のバブルボケ風になり、画面周辺では本家ゾナーと同様に「おむすび」状のクセのある形状になる。 収差もボケ味も本家ゾナーの描写特徴が良く再現されている。
一般撮影
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスをオートに設定し、Dレンジオプティマイザーもオンに設定して現像してあります。 なお、記載の絞り値は撮影時の記憶に頼っているので、間違っているかも知れません。m(_ _)m
絞り:F1.5 |
絞り:F1.5 |
絞り:F1.5 |
絞り:F1.5 |
絞り:F2.8 |
絞り:F1.5 |
絞り:F1.5 |
絞り:F1.5 |
絞り:F4 |
絞り:F8 |
絞り:F8 |
絞り:F1.5 |
絞り:F1.5 |
絞り:F1.5 |
絞り:F1.5 |
絞り:F1.5 |
絞り:F1.5 |
絞り:F1.5 |
絞り開放では画面周辺から隅にかけて描写が悪いので、立体的な被写体なら像高5~6割付近にまでに配置し、他はボカしてしまえば周辺から隅にかけての描写の悪さは目立たない。 また、オールドレンズらしいクセのあるボケ味を楽しんでも良いし、溶けて判らなくなるほど大きくボカすのも良い。
F2.8に絞れば、画面中央付近に配置した被写体ならすこぶるシャープな描写になるが、遠景ではF8からF11まで絞らないと画面四隅の描写が改善しないけど、4:3のプリントならF5.6でも充分かもしれない。
本家のゾナーよりクセは弱めとはいえ、50mm f:1.8 の方が素直な描写で使い易い。 ただし、明るいF1.5なので室内撮影や暗所撮影では手振れの影響が少なくなるのは確かで、絞り開放での描写性能の低さは『ブレブレ写真よりマシ』とポジティブに考えよう。 F1.5の明るさが必須でないとしても、オールドレンズらしいクセのある描写を楽しむなら良い選択肢だろう。
あとがき
ニコンは1950年に NIKKOR-S 1:1.5 f=5cm という仕様でツァイス社のゾナーコピー型レンズを商品化した。 一方、キヤノンは1952年にZeiss社の
Carl Zeiss Sonnar 1:1.5 f=50mm を模倣したと言う通り、ゾナー型の SERENAR 50mm f:1.5 を商品化した。 その後、ニコンは
NIKKOR-S 1:1.4 f=5cm へ仕様変更したが、実際の光学系は NIKKOR-S 1:1.5 f=5cm と同じだったとも噂されている。 恐らく『誤差範囲内でも他社より優位になるF1.4を謳う』と判断して再設計したのだろうけど、実際の明るさは「ほぼ」F1.5だったらしく、ツァイス社から「誇大広告だ」とクレームをつけられたらしい。
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