NIKON SP - 1957年発売

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NIKON SP
NIKON SP
 NIKON SP という名称の意味は『ニコンのスペシャルでプロフェッショナルなバージョン』ということらしい。 NIKON S2 に対してファインダーが大きく改良されているけど、時代的に一眼レフカメラへの移行期だったために、生産台数は22,348台だけだったらしい。

NIKON SP

 ファインダーは主副2つのファインダーがあり、倍率が等倍の主ファインダーはセレクターダイヤルによって 5cm、8.5cm、10.5cm、13.5cm の各レンズ用フレームが色違いで表示でき、パララックスも自動補正される。 副ファインダーの倍率は0.34倍で3.5cm用のフレームがあり、全視野が2.8cm相当になる。 ブライトフレームの採光窓が加わったため NIKONロゴが中央から巻き上げ側に移動し、ニコンのレンジファインダーカメラの中では独特のデザインとなっている。

カメラ正面

カメラ正面
カメラ正面
 正面向かって右側の大きな変形窓がファインダー窓で、その中に小さな広角用ファインダーと大きな主ファインダーが並んでいて、細くなった部分にブライトフレームの採光部がある。 レンズマウントを越えて左側に距離計用窓が配置されている。 レンズマウント左上方にあるイボの様なピンは無限遠ロック解除ピンで、外爪レンズを装着すると自動的に押しやられて無限遠ロックが無効になる。 向かって左下にあるのはセルフタイマーレバーで、レバーを反時計回りに回してセットする。 巻き戻し側の吊り環とファインダーの間にあるのはシンクロソケットである。
 レンズマウントは回転ヘリコイドになっていて、標準レンズはヘリコイド内の内爪に装着する。 マウント面にバネ状のレンズロック板が付いていて、レンズを挿入して反時計方向に回して装着すればレンズ側のピンがマウント側のバネを乗り越えてロックされる。 レンズを外す場合はバネのポッチ部を押してロックを解除して外す。 マウント自体が回転ヘリコイドなので、無限遠状態でない場合はロック板があらぬ方向を向いているのでアタフタしてしまう。 レンズ交換は回転ヘリコイドがロックされる無限遠状態で行うのが基本だ。
 標準レンズ以外は外爪に装着し、マウントのヘリコイドはレンズ側に覆われてしまうが、レンズ内で内爪が連動する様になっているので距離計が働く。 つまり、レンズ自体の繰り出し量とカメラヘリコイドの繰り出し量が異なるけど、撮影距離に応じた回転角は同じにする面倒な連動機構が備わっている。

カメラ上面

カメラ上面
カメラ上面
 右端のレバーが巻き上げレバーで、軸上にカバーが付いている。 そのカバー内にフィルムカウンターと装填フィルム駒数インジケータがある。 シャッターダイヤルは倍数系列で突き当て無しにぐるぐる回せる。 シャッターダイヤル軸の丸い小窓はチャージインジケータで、シャージされていればシャッター速度指標に並んでいるが、レリーズすると60度ほど回転する。 また、シャッターダイヤルの外周リングを持ち上げて回せばシンクロタイミングを選択できる。 シャッターダイヤルと巻き上げ軸の間にあるのがレリーズボタンで、スプロケットの動きに合わせてボタン自体がくるくる回る。 レリーズボタンの外周はAR切換えリングで、フィルムを巻き戻す場合はR(Rewind)に設定する。 カメラ上部の一段高くなった部分にアクセサリーシューがあり、その左側に巻き戻しクランクがある。
 巻き戻し軸の基部は大きなダイヤルになっていて、NIKON S2 ではシンクロセレクターだったが NIKON SP では主ファインダーの視野フレームセレクターになった。 主ファインダーの視野は 5cm用と8.5cm用と10.5cm用と13.5cm用とが選べ、各ポジションにはクリックがあるのだけれど何故か5cmポジションにはクリックが無く突き当てだけになっている。

レリーズボタン周り比較

カメラ右肩比較 NIKON F(上)と SP(下)
NIKON F(上)と SP(下)
 NIKON SP の一眼レフ版である NIKON F もそっくりで、使い難いレリーズボタンの位置も伝統の様だ。 レリーズボタンの前方にあるギヤはピント調節ダイヤルで、レンズの距離環を回さなくても右手人差し指でピント調節が出来る。 ピント調整ダイヤルの並んで出っ張っているピンは無限遠ロック解除ピンで、ダイヤル操作で指を載せれば自然とロック解除される。 これは便利な機能で、CONTAX コピー機としての遺伝子がここに現れている。 ただし、便利ではあるけど快適な操作とはいえず、レンズ側を回した方がスムースにピント合わせが出来る。

一体の背蓋と底蓋

背蓋と底蓋が一体で外れる
背蓋と底蓋が一体
 背蓋と底蓋が一体で外れるのも CONTAX と同じ仕様で、底蓋のみが外れるライカ系のとは異なっていた。 どちらが良いかは微妙だけど、僕は底蓋と背蓋が一体の CONTAX タイプの方がフィルム装填は楽だし確実だった。 だたし、両方式とも屋外撮影でフィルム交換するときに底蓋や背・底蓋を持ちながらのフィルム交換はやり難い。 トーゼンだけど、蝶番で背蓋が横に開く方式が最も使い易いと思う。 ちなみに、僕の NIKON SP はチタン幕シャッターにした個体である。

ファインダー視野

ファインダー視野(13.5cmの状態)
ファインダー視野(13.5cmの状態)
広角ファインダー視野
広角ファインダー視野
 セレクターダイヤルによって変化するフレームは、5cm用と8.5cm用が白...というか薄黄10.5cm用が朱13.5cm用が赤 とカラフルで、フレーム線の長さが変化しながら追加表示されていく。 13.5cmの状態にすると8.5cm用と10.5cm用のフレームはコーナーだけが表示されている。 楽しいので必要ないのにフレームを出して遊んでしまう。
 距離計がある主ファインダーは等倍で約60mmの基線長があるので、望遠レンズでも充分な測距精度を有している。 残念ながら僕の NIKON SP は距離計の蒸着が劣化してしまい、二重像がほとんど判らない状態だ。 また、広角用ファインダーも劣化が進んでいる。 気持ち良く使うには分解修理しないとだめだけど、僕は真空蒸着窯を持ってないし、業者で直せるかどうかも判らないので何年もほったらかしている...いつかは修理してあげたい。
 広角用の副ファインダーは倍率が0.34倍で、3.5cm用の黒いフレームがパララックスフレームと共に表示されていて、視野全体が2.8cmに対応している。 この様に2.8cmから13.5cmまで対応するユニバーサルファインダーを搭載したので、通常使う交換レンズなら外付けファインダーが不要になった。

標準レンズ

操作性がイマイチなコンタックスマウントレンズ
操作性がイマイチなコンタックスマウントレンズ
 コンタックスマウントは回転ヘリコイドになっているので、ピント調節を行うとレンズ鏡筒も回転してしまう。 そうすると、絞り環も回転しちゃうので絞り値の設定がとてもやり難い。 逆に、絞り環を回そうとするとヘリコイドも動いちゃうのでピントが変わってしまう。 また、ヘリコイドとカメラ上部のピントダイヤルとを連動させているので、グリスでしっとり滑らかなピント操作感は得られない。
 こんな仕様なので、直進ヘリコイドのライカ系の方が断然便利で、NIKON や CONTAX が高価な置物になってしまう原因だと思う。

NIKKOR-S 1:1.4 f=5cm

NIKKOR-S 1:1.4 f=5cm 絞り:F1.4(開放)
絞り F:1.4
IKKOR-S 1:1.4 f=5cm 絞り:F5.6
絞り F:5.6
IKKOR-S 1:1.4 f=5cm 絞り:F11
絞り F:11
IKKOR-S 1:1.4 f=5cm 絞り:1.4(開放)
絞り F:1.4
IKKOR-S 1:1.4 f=5cm 絞り:5.6
絞り F:5.6
IKKOR-S 1:1.4 f=5cm 距離環1mでの遠景点光源玉ボケ 絞り:1.4(開放)
絞り F:1.4
NIKKOR-S 1:1.4 f=5cm 絞り:F5.6
絞り F:5.6
NIKKOR-S 1:1.4 f=5cm 絞り:F1.4
絞り F:1.4
NIKKOR-S 1:1.4 f=5cm 絞り:F1.4
絞り F:1.4
NIKKOR-S 1:1.4 f=5cm 絞り:F5.6
絞り F:5.6
NIKKOR-S 1:1.4 f=5cm 絞り:F5.6
絞り F:5.6
NIKKOR-S 1:1.4 f=5cm は3群7枚構成のゾナータイプ
レンズ構成
 僕の NIKON SP に装着してある標準レンズは NIKKOR-S 1:1.4 f=5cm で、3群7枚構成のゾナータイプだ。 描写は本家の Carl Zeiss Sonnar 1:1.5 f=50mm や CANON LENS 50mm f:1.5 と同様で、絞り開放ではフレアーによりベールに包まれた感じだが、絞ればフレアーは消えてゆく。 でも、大き目の非点収差により周辺はちょっと残念な画質で、絞ってもなかなか改善しない。 詳しくみれば、本家の Sonnar 1:1.5 f=50mm より若干画質が悪い気がする。 夜景の玉ボケは明確なバブルボケになりバブルボケマニアは喜びそうだけど、二線ボケの傾向になる。 でも、画面周辺は本家の Sonnar 1:1.5 f=50mm みたいな「おむすび状」ではないので妙なボケ方はしない。
 『線の太さがニッコールらしい力強い描写』と妙な評価をする人もいるけど、裏返せば解像しないダメなレンズっていうことだ。 そもそも前身の NIKKOR-SC 1:1.5 f=5cm と「実は」全く同じ設計だったらしい。 とはいえ、粗が出ない様に工夫して撮影すればそれなりの表現が出来るレンズである。
 NIKON SP 発売と同じ1957年にキヤノンはダブルガウス型の 50mm f:1.4 を発売していて、ゾナー型の NIKKOR-S 1:1.4 f=5cm より良好な描写だったと思う。 なお、ニコンはオリンピックイヤーの1964年に拡張ダブルガウス型を採用した NIKKOR-S 1:1.4 f=50mm を NIKON S3 Black と共に限定生産したらしい。

あとがき

NIKON SP + W-NIKKOR・C 1:3.5 f=2.8cm
NIKON SP + W-NIKKOR・C 1:3.5 f=2.8cm
 だ~いぶ前に、共〇通信社内でニコン教団の後藤さんと会ったときに『NIKON SP を買っちゃったけど、素晴らしいカメラですねぇ』と冗談を言ったら、『偽物の方?』と尋ねられた。 どうやら教団内でも復刻版は偽物扱いだったらしい。 NIKON SP は名機だとは思うけど、冗談じゃなく使い易いカメラだったとは思えない。 使うならレンズも含めてM型ライカなどの方が使い易いと感じている。 キヤノンの28mm F3.5に対抗した W-NIKKOR・C 1:3.5 f=2.8cm もピント合わせで絞りが回転しちゃうし、前玉側から覗き込まないと設定絞りが判らない代物で、なかなか使う気にならないのだ。 ニコン教では使い難さも修行のひとつなので文句も言わずに使うしかなかったのだろう。

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