Canon 7 - 1961年発売

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Canon 7 + CANON LENS 50mm 1:1.4 II
Canon 7 + CANON LENS 50mm 1:1.4 II
 カメラの型式名がアラビア数字の「7」に変更され、シャッター速度に連動する露出計が搭載された。 また「夢の超大口径」50mm F0.95レンズを装着するために、マウントに締め付け式の外爪が追加されている。

Canon 7

 キヤノンのレンジファインダーカメラは、独自マウントの第一世代と、ライカスクリューマウントになった第二世代と、脱バルナック型となる第三世代に別けられる。 第三世代の Canon 7 はコストダウンが進み、露出計という新機能を搭載しつつ価格はグッと下げられた。 お家芸の変倍ファインダーは棄ててしまった代わりにライカM型と同様の採光式ブライトフレームファインダーを搭載し、35 mm / 50 mm / 85・100 mm / 135 mm の4種類のフレーム枠を切換えできて使い勝手が非常に良いカメラとなった。

カメラ正面

カメラ正面
カメラ正面
 向かって左から 測光センサー採光窓 / ブライトフレーム採光窓 / ビューファインダー窓 が並んでいて、測光センサー窓の中に小さな距離計窓がある。 ファインダー窓は視野を確保するためにとても大きく、カメラの背丈が CANON VI L型 より5mmも高い81mmまで育った。
 セレン式露出計の採光窓が顔つきのアクセントになり、個人的に Canon 7s よりカッコイイと思っている。 なお、カメラを構えると右手中指でセンサー採光窓を覆ってしまい露出計の測光に影響するので注意が必要だ。
 L39マウント内の上方に見えているのが距離計連動用のコロで、距離計プリズムの回転やパララックス補正に連動している。 マウント外側には 50mm F0.95 装着用の外爪がある。

カメラ上面

カメラ上面
カメラ上面
 レリーズボタン基部のダイヤルはA(Advance)R(Rewind)切換えダイヤルで、巻き戻しの時はRに設定する。
 シャッターダイヤルは倍数系列で1/1000とXは突き当てになってしまい乗り越えられないのは連動露出計のためだ。
 中央に露出計メーターが配置され、メーター内の絞り板はシャッターダイヤルと連動して回転する。 絞り表示板は高感度用と低感度用の二種類が白文字と朱文字で印刷されていて、露出計の感度設定に応じてどちらかを読み取る。 このカメラから開放F値0.95の世界最速レンズを装着でき、露出計の絞り表示板にも「.95」が印刷されている。
 ファインダー接眼部の上方に視野切換えダイヤルがあり、選択したブライトフレームの焦点距離が小窓に現れる。

カメラ背面

カメラ背面
カメラ背面
 左上の丸い部分がファインダー接眼部で、見口が大きくて覗き易い。
 接眼部右側の小さなダイヤルは露出計の高感度・低感度切換えダイヤルで、撮影シーンの明るさに応じて切り換えて使う。
 シャッターダイヤル部の下にある小さなボタンはフィルム感度ロック解除ボタンで、シャッターダイヤル内のフィルム感度を変更する時に、このボタンを押しながらシャッターダイヤルを回すことでフィルム感度がASA6~400の範囲で設定できる。 感度設定範囲が随分と低感度なのが昔のカメラだと実感させる。 ちなみに、露出計を搭載しているので Canon VI L型 にはあった背面のィルムインジケータは省略されている。

カメラ左側面

カメラ左側面
カメラ左側面
 シンクロターミナル部にはロック用のバヨネット爪が装備されていて、シンクロコードやフラッシュの他にアクセサリシューアダプターを装着できる。
 側面最下部の爪は背蓋開放爪で、カメラ底面のロックツマミを回してロック解除すれば開閉爪が操作可能となり、背蓋を開ける事が出来る。 ロックツマミと開放爪のダブルな仕様は余計なお世話で面倒なだけだけだ。 『背蓋が開いてフィルムをダメにした!』というクレーム対策なのだろうけど、『背蓋が開いたんじゃなく、開けたんでしょ』と突っぱねる信念が無かったのだろう。

ACCESSORY COUPLER

ACCESSORY COUPLER
ACCESSORY COUPLER
 Canon 7 はアクセサリーシューが省略されてしまったので、外付けビューファインダーなどを使うときに困ってしまう。 そんな時のために ACCESSORY COUPLER が用意されていた。 シンクロターミナル部のロック用バヨネット爪を用いて ACCESSORY COUPLER を装着するのだけれど、異常にうっとしいアクセサリーである。 どう考えてもボディー本体からアクセサリシューを省略したのは失敗としか思えない。 しかも、このアクセサリーの商品名は「ACCESSORY COUPLER」なのに、商品箱には「ACCESSRY COUPLER」と記載されていて、何かの冗談かと思ってしまった。
 ちなみに、シンクローターミナルに直接装着出来る閃光電球式のフラッシュ装置が用意されていたけど、それを装着しちゃうと ACCESSORY COUPLER が使えないのだ。

ファインダー

ファインダー視野(はめ込み合成)
ファインダー視野(はめ込み合成)
 Canon 7 のファインダーは倍率固定で、パララックス自動補正付きの採光式ブライトフレーム切換えタイプとなり、ダイヤル操作でフレーム枠を 35mm / 50mm / 85・100mm / 135mm を選択出来る。(スマホで上手く撮影出来なかったので、ファインダー視野画像は実機のファインダーを覗きながら書き加えたはめ込み合成です)
 ファインダー倍率が0.8倍なので等倍の Canon P型 の方が良さそうに思えるが、視野枠が採光式ブライトフレームなのでファインダーの見えが良いし、35mmのフレーム枠もちゃんとあり、有効基線長は47.2mmを確保している。 アルバタ式フレームの見難さに比べて安定したフレーム枠表示には感動してしまった。
 NIKON SP では焦点距離ごとにフレームの色を変えていたが、CANON 7 では白色だけなので華やかさに欠けるけど不都合は一切ない。 NIKON SP はテレに向かって表示フレームが増えて行く方式なので色を付けたのだろうけど、CANON 7 は切換えた枠のみが表示されるので視野はスッキリしている。
 視野中央の二重像合致式距離計の視認性も良好で快適にピントを合わせられるが、距離計はM型ライカの様な実像式じゃないので縁がぼやけて上下像合致式としては使えない。

交換レンズ

50/1.4 35/2 50/1.8
50/1.4 35/2 50/1.8
 僕は 50mm F1.2 は有効基線長を上げられる Canon VI L型に任せて、Canon 7 には 50mm F1.4 を装着していた。 ちなみに、50mm F0.95は高価過ぎて持っていないし、暴れ玉はF1.2で充分だ。 次のサンプル写真は SONY ILCE-9 に装着して撮影したものである。

CANON LENS 50mm 1:1.4 II

 1959年に発売された4群6枚構成のダブルガウス型である。 1957年に 50mm 1:1.4 I型 が¥25,000円で発売され、その二年後にこのII型が¥18,500円で発売されている。 「Canon Camera Museum」では両方とも4群6枚構成になっているけど、25%もの低価格化はど~も怪しい。 50mm 1:1.4 I型 を入手して確かめたいのだけれど、中古市場でなかなか見当たらない...生産数が極端に少なかったのだろうか。
CANON LENS 50mm 1:1.4 II 絞り:F1.4
絞り F1.4
CANON LENS 50mm 1:1.4 II 絞り:F5.6
絞り F5.6
CANON LENS 50mm 1:1.4 II 絞り:F1.4
絞り F1.4
CANON LENS 50mm 1:1.4 II 絞り:F1.4
絞り F1.4
CANON LENS 50mm 1:1.4 II 絞り:F1.4
絞り F1.4
CANON LENS 50mm 1:1.4 II 構成図
レンズ構成
 絞り開放だとフレアっぽいけど、F2にするとフレアっぽさは消える。 F2.8にすると周辺でも実用的な画質になり、F4で充分な画質になる。 発色は50/1.8IIとほぼ同じで色乗りも悪くない。 画面周辺では50/1.8IIより1段絞らないと同等画質にならないけど、絞りを開けて立体的な描写を求めるなら50/1.4の方が向いている。 ボケ味は思ったより滑らかでイイ感じだと思う。
Canon AUTO UP 450
AUTO UP 450
 第三世代用レンズにも近接撮影アダプター「Canon AUTO-UP」があり、52~39cmの範囲でピントが合う AUTO UP 450 と 100cm~55cmの範囲でピントが合う AUTO UP 900 の2種類が用意されていた。 アタッチメントサイズが 42mm / 50mm / 57mm の3サイズがあり、それぞれ 50/1.8 50/1.4 50/1.2 に適合する。 古い AUTO UP はファインダー視野の上半分しかカバーしていなかっだけど、新しい AUTO UP は補正レンズが大きくなりカバーできるファインダー視野範囲が広くなった。 ただし、ファインダー視界の右下が装着レンズの鏡筒でケラレてしまうのは構造上しかたない。

CANON LENS 50mm 1:1.8 II

 CANON LENS 50mm 1:1.8 I型
CANON LENS 50mm f:1.8 I 絞り:F1.8
絞り F1.8
CANON LENS 50mm f:1.8 I 絞り:F2.8
絞り F2.8
CANON LENS 50mm f:1.8 I 絞り:F4
絞り F4
 CANON LENS 50mm 1:1.8 Ⅱ型
CANON LENS 50mm 1:1.8 II 絞り:F1.8
絞り F1.8
CANON LENS 50mm 1:1.8 II 絞り:F2.8
絞り F2.8
CANON LENS 50mm 1:1.8 II 絞り:F4
絞り F4
 1956年に発売された4群6枚構成のダブルガウス型で、50/1.8自体は1951年に SERENAR としてI型が発売されていた。 いままで比較した事がなかったので新旧両レンズの描写を比べてみた。 どちらも殆ど同じ描写だけど、II型はI型より黄色味が抑えられニュートラルになっていて、ヌケも少しだけど良くなっていると感じる。 こんな比較をする気になるのはデジタル時代だからだ。
 そういえば、1956年に発売されたII型は¥27,000円だったが1958年に発売されたIII型は¥20,000円で、こちらも約25%の値下げである...あれ?50/1.8より50/1.4の方が安かった??? この時代の製品は価格変動が激しすぎて全く追えない。
CANON LENS 50mm 1:1.8 II 絞り:F5.6
絞り F5.6
CANON LENS 50mm 1:1.8 II 絞り:F1.8
絞り F1.8
CANON LENS 50mm 1:1.8 II 絞り:F1.8
絞り F1.8
CANON LENS 50mm 1:1.8 II 絞り:F1.8
絞り F1.8
CANON LENS 50mm 1:1.8 II 絞り:F1.8
絞り F1.8
CANON LENS 50mm 1:1.8 構成図
レンズ構成
 絞り開放では画面周辺にゆくほどコマフレアが発生するけど良く抑えられていて、解像感はしっかりしている。 F2.8に絞ると周辺コマも少なくなり画面全体でヌケの良い描写になる。 夜の街燈周りの大きなハロがオールドレンズらしい。 キヤノンの 50mm F1.8 は SERENAR 時代に発売され、ダブルガウス型でコマフレアを抑える事に成功した名作レンズと言われるだけあって、素直な描写が特徴のレンズだと思う。
 II型になってI型の10枚羽根円形絞りから9枚羽根非円形絞りにスペックダウンし、鏡筒も安っぽくなったのが惜しまれるけど、CANON LENS 50mm 1:1.8 は安く入手できる名作レンズなのでオールドレンズ沼への入門用にお勧めの1本だと思う。

CANON LENS 35mm 1:2 I

 1962年に発売された4群7枚構成の変形ダブルガウス型で、同じ7枚玉なので海外では「Japanese Summicron」と呼ばれる事もあるらしい。 コンパクトなレンズなので図体が大きい Canon 7 に装着すると情けない容姿になってしまう。 なお、このレンズには邪魔に感じる事もある無限遠ストッパーが付いていないので、レンズの脱着時はマウント基部のギザギザを使ってしっかり装着する必要がある。
CANON LENS 35mm 1:2 I 絞り:F2
絞り F2
CANON LENS 35mm 1:2 I 絞り:F2
絞り F2
CANON LENS 35mm 1:2 I 絞り:F2
絞り F2
CANON LENS 35mm 1:2 I 絞り:F5.6
絞り F5.6
CANON LENS 35mm 1:2 I 絞り:F2
絞り F2
CANON LENS 35mm 1:2 I 絞り:F5.6
絞り F5.6
CANON LENS 35mm 1:2 I 絞り:F2
絞り F2
CANON LENS 35mm 1:2 I 絞り:F4
絞り F4
CANON LENS 35mm 1:2 I 構成図
レンズ構成
 絞り開放でも中心はコントラストも解像感も高くて素晴らしい描写だけど、周辺では盛大に優しいコマフレアが発生する。 「優しいコマフレア」という表現は曖昧だけど、くっきりしたコマフレアではなく淡いベールの様なコマフレアなので、シーンによっては全く気にならない場合もある。 F4まで絞ると周辺でも実用的な画質になり、F5.6で画面全体がシャープな描写となり夜景でも使えそうになる。 コマフレアの出方が優しいのでフレアっぽくても嫌味がない描写だけど、後ボケが二線ボケ傾向なので「さんざめく」背景ボケになる場合がある。 近接した場合の描写もなかなかイイ感じだし、このレンズは総合的に優秀なレンズだと思う。
 ちなみに、『フードは要らない』って言う人もいるけど、僕はハレ切り以外に指の写り込み対策として富士写真のΦ40mm広角用金属フードを装着している。 一眼レフじゃないので、指の写り込みに気が付かない事が多々あるのよぉ。

あとがき

1961年発売の Canon 7 と 1959年発売の NIKON F
1961年発売の Canon 7 と 1959年発売の NIKON F
 既に一眼レフの時代に移行していたけど、キヤノンはレンジファインダーカメラの開発とコストダウンに熱心だった。 露出計を搭載したのに普及クラスの名機である Canon P型(Populaire)に外付け露出計を追加した価格より低価格で Canon 7 を発売したことで、国産レンズ交換式レンジファインダーカメラはキヤノンの独擅場となった...というか、他社はさっさと見切りを付けていた。

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