Canon VI L - 1958年発売

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Canon VI L型
Canon VI L型
 Canon VI型はトリガー巻き上げ式と上部レバー巻き上げ式の両仕様のカメラが同時発売された。 Canon VI L型は上部レバー巻き上げ式モデルで、トリガー式に対して全高が5mm低く携帯性や操作性などから Canon VI T型 より多く生産販売されたそうだ。

Canon VI L

 第三世代のレンジファインダーカメラは第二世代機とは随分と趣の異なる容姿になり、似ているのはマウントと八角形のカタチくらいだ。 このモデルでようやく1軸不回転式のシャッターダイアルが採用され、上部レバー巻き上げ式で丁番開閉式背蓋になったこともあり、快適に使えるカメラになった。 モチロン、お家芸の変倍ファインダーも健在である。

カメラ正面

カメラ正面
カメラ正面
 向かって右側上部にビューファインダー窓があり、中央上部に丸い測距窓がある。 中央開口がカメラマウントでマウント内上方に距離計連動コロが見える。 左側のレバーは第三世代から搭載されたセルフタイマーで、レバーを反時計方向に回してセットし、レリーズボタンでスタートする。 第二世代機に対してファインダー光学系が更新され大きくなった事から背丈が IV Sb改 の72.2mmから76mmへと育ったが、ちょっと出っ張ったCanonロゴ部がアクセントになってバランスは悪くないと思う。

カメラ上面

カメラ上面
カメラ上面
 レリーズボタン基部のダイヤルはA(Advance)R(Rewind)切換えダイヤルで、巻き戻しの時はRに設定する。 シャッターダイヤルは倍数系列で突き当てなしに自由に回せる。 アクセサリシュー内前方にパララックス補正ピンがあり、対応ファインダーを装着すれば外付けファインダーでもパララックスが自動補正される。 アクセサリシュー左側にファインダー視野インジケータがあり、視野選択状況が 35 / 50 / Mg を指す指標で判る。 左端は巻き戻しクランクで、収納すればカメラの上面に出っ張る事が無い。 また、巻き戻しクランク中央にはフィルム送りが確認できるオレンジ色の回転インジケータもある。

カメラ背面

カメラ背面
カメラ背面
 左上の丸い部分がファインダー接眼部で、第二世代機より見口が大きくて覗き易くなった。 接眼部右側のギヤはファインダーの視野変更ダイヤルで、35 / 50 / Mg を切り換えられる。 背蓋には色分けされたフィルムインジケータが装備されているが、このインジケータは生産途中でコストダウンされ、銀色のみの単なるフィルム「感度」インジケータになった様だ。

カメラ左側面

カメラ左側面
カメラ左側面
 左側面上部にシンクロターミナルがあり、その外側にはロック用のバヨネット爪が装備されている。 また、側面最下部の爪は背蓋開放爪で、カメラ底面のロックツマミを回してロック解除すれば開閉爪が操作可能となり、開閉爪を下へ引けば背蓋を開ける事が出来る。 底面のロックツマミとの二重操作は余計なお世話で面倒なだけで、側面の爪か底面のツマミかのどちらかで充分だ。

ファインダー

ファインダー視野(3段階切換え)
ファインダー視野(3段階切換え)
 Canon VI L型 では第二世代機と同じ様に、3段階に視野倍率を切り換えられる回転式逆ガリレオビューファインダーが採用されていて、接眼部横のギヤを回すと 30mm / 50mm / Mg が切り換えられる。
 切換え位置   ファインダー倍率   ファインダー視野   有効基線長 
35 0.65倍 35mm 28mm
50 1倍 50mm 43mm
Mg 1.55倍 拡大用 65.5mm
 第二世代機ではファインダー内の光学ブロックが水平に回転していたけど第三世代機では垂直に回転する。 ファインダー視野には50mmと100mm(50mm時)のパララックス自動補正対応アルバタ式フレーム枠がある。 Canon P型(Populaire)以降は変倍ファインダーも捨て去られてしまったので、最後の変倍ファインダー搭載機ということになる。 残念ながら僕のカメラは年々フレーム枠蒸着が劣化して、今ではフレームの存在を視認できない。
 アクセサリシューに外付けビューファインダー用のパララックス補正ピンがあり、対応ファインダーであればパララックスが自動補正されるのは気が利いている。 確か、対応ファインダーはデフォルトで1m先を向いて「おじぎ」していて、無限遠に向かってカメラがファインダーを持ち上げて行く方式だった。

外付け露出計

露出計を装着した Canon VI L型
露出計を装着した Canon VI L型
露出計の装着操作
露出計の装着操作
 カメラのアクセサリーシューに装着する外付け露出計が用意されていた。 露出計のシャッターダイヤルを持ち上げて爪を退避させてから、カメラと露出計のシャッター速度位置を合わせたうえで後方からスライドして装着する。 アクセサリシューに装着したら露出計のシャッターダイヤルを下ろして、カメラのシャッターダイヤルと連動させる。 爪がカメラのシャッターダイヤルと噛合うことで露出計がアクセサリーシューからずり落ちない。
 露出計は低感度と高感度を切り換えられ、低感度用か高感度用の絞り値をメーター針から読み取ってレンズの絞りを決定する。 また、センサー受光部に乳白版を装着すれば入射光式露出計として使用できる。

標準レンズ

CANON LENS 50mm f:1.2
CANON LENS 50mm f:1.2
 第三世代機向けの標準レンズは 50/1.8 と 50/1.4 と 50/1.2 を持っているけど、図体が大きい Canon VI L型 には鏡筒が太い 50/1.2 が良く似合う。 それと、Canon 7型 は変倍ファインダーが装備されていないので、F1.2のピント合わせには Canon VI L型の方が優れていると信じているからだ。 ただし、このレンズは曇り癖があり、曇りを長期間放置するとレンズ表面がダメージを受けて綺麗に曇りが取れなくなる。 僕のレンズも前回の曇り清掃から7年放置したら、再び真っ白に曇っていて清掃しても前回同様に薄く曇ったままだ。 最後の手段は絞り直後の張り合わせ中玉を交換するしかなさそうだ。
以下のサンプル写真は SONY ILCE-7M2 や ILCE-9 に装着して撮影したものである。

CANON LENS 50mm f:1.2

CANON LENS 50mm f:1.2 絞り:F1.2
絞り F:1.2
CANON LENS 50mm f:1.2 絞り:F1.2
絞り F:1.2
CANON LENS 50mm f:1.2 絞り:F1.2
絞り F:1.2
CANON LENS 50mm f:1.2 絞り:F1.2
絞り F:1.2
CANON LENS 50mm f:1.2 絞り:F2.8
絞り F:2.8
CANON LENS 50mm f:1.2 絞り:F1.2
絞り F:1.2
CANON LENS 50mm f:1.2 絞り:F1.2
絞り F:1.2
CANON LENS 50mm f:1.2 絞り:F1.2
絞り F:1.2
CANON LENS 50mm f:1.2 構成図(赤面が曇っている)
レンズ構成
 1956年に発売された5群7枚構成の拡張ダブルガウス型で前群に凸メニスカスを1枚追加している。  絞り開放ではホワホワの描写で、中央は良く解像しているけど周辺が解像しないので遠景を俯瞰で撮影するとジオラマ風の写真になっちゃう。 F2に絞ると中央はシャキっとクリアになり、周辺のサジタルコマフレアもかなり消えるがメリディオナルは残っている。 さらに絞るとサジタルコマフレアはほぼ消えるけど、メリディオナルはなかなか収まらない。 F5.6まで絞ると四隅以外は同じレンズとは思えないほど実用的な画質になる。 絞り込めばシャープな描写となるレンズだけど、このレンズは「開放付近で遊ぶ」べきレンズだろう。 描写の性格は 50/1.8 や 50/1.4 の方が断然素直で使い易いけど、近中距離撮影ならピント面が極薄の 50/1.2暴れ玉 の方が『じぇじぇじぇっ!?』という予期せぬ描写になったりするので面白い。 すっきりはっきりクリアに撮りたいなら別のレンズを使うべきだ...F11くらいに絞ってもイイけど。
 なお、僕の個体は中玉が曇っていて「ソフトフォーカス」が増長しているので、本来の描写特性は曇り分を差し引いて考えないといけない。
50/1.2の後玉はマウントぎりぎり
50/1.2の後玉
 このレンズのマウント側を見ると判る様に、距離計連動リング内側の締め付けリング内径ぎりぎりまで後玉が埋まっている。 遠景玉ボケ画像の周辺玉ボケの形を見ると、画面外側の玉ボケR(前玉ケラレ)は大径Rだけど内側の玉ボケR(後玉ケラレ)は小径Rなので、前玉を大きくして周辺光量を稼いでいるらしい事が判る。 酷いアンバランスではないので、ボケ方に大きな影響はなさそうだけど、玉ボケの半分しかエッジが立たないので明確なバブルボケとも呼べず、シーンによっては奇妙なボケ方になる。 ちなみに、50/1.4は50/1.2とは逆に前玉より後玉の方で周辺光量を稼いでいる様だ。 確か、一眼レフ用の RE Topcor 58/1.4 も前玉で光量を稼いでいるタイプだったと思う。

あとがき

Canon VI L型 と Canon 7型
Canon VI L型 と Canon 7型
 本機発売の翌年に発売された低価格機 Canon P型(Populaire)がヒット製品となり、コストダウンが進んで行く。 第三世代機は肥大化した事もあって高級感が薄れたと感じるけど、好みのデザインだし Canon 7型 よりは高級機っぽさが残っていると思っている。
 さて、見えなくなってしまった僕の Canon VI L型 のアルバタフレームはどうやったら復元出来るのだろう。

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