Leitz minolta CL - 1973年発売

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Leitz minolta CL
Leitz minolta CL
 このカメラはエルンスト・ライツ社とミノルタが協業したレンズ交換式小型レンジファインダーカメラである。 レンズマウントはライカMマウントなので、一部制限はあるけど様々なレンズを利用できる。 製造はミノルタが担当し、日本での製品名称は「LEITZ minolta CL」だけど、海外向け製品名称は「LEICA CL」となっていた。 なお、「CL」とは「Compact Leica」の意味らしい。

Leitz minolta CL

 ライカとミノルタの提携が発表されたのは1971年だったけど、既にエルンスト・ライツ社では「CL」の試作機が完成していて、ミノルタが生産を受託したらしい。 なので、このカメラ用の交換レンズである 40mm F2 や 90mm F4 はエルンスト・ライツ社で設計済みだった。
ライセンス・原産国表示
ライセンス・原産国表示
 40mm F2 は「ほぼ」ミノルタで生産されたが、90mm F4 はエルンスト・ライツ社で生産されていたそうだ。 それにしても日本市場だけ「Leitz minolta CL」となっているのは、ライツ社が日本市場だけはミノルタのブランド付けを「許可」したからなのだろうか? ライツ社は経営的に傾きかけていた頃だけど、minolta名が入った日本市場品だけ背面の目立つ場所に「LICENSED BY LEITZ WETZLAR」って刻ませ、「LEICA CL」には目立たない様にカメラの底に「MFD. IN JAPAN FOR LEITZ WETZLAR」と刻んでいるのも見下している感じがする。 結局、ライツは生き残ってミノルタは消えて無くなってしまったけどねぇ。

カメラ正面

カメラ正面
カメラ正面
 向かって右側からファインダー窓 / ブライトフレーム採光窓 / 距離計窓 があり、左端にフィルム感度設定兼シャッターダイヤルがあり、右手人差し指で簡単にシャッター速度を変えられる。
 当然マウントはライカMマウントで、マウント内上部に距離計連動コロが見える。 マウント横の赤〇が付いたボタンはレンズロック解除ボタンで、ボタンを押しながらレンズを回せば外せる。 ライカMマウントには連動距離計があるので爪部を大きく回転させられなかったためか脱着回転角が異常に小さいので心配になるが、手早くレンズの脱着が行える。 また、見えないけど向かってマウント右側爪の裏に視野枠切換ピンがあり、レンズ側の爪の長さで自動的に視野枠が切り換わる。
 正面向かって右下にある小さなボタンはバッテリーチェックボタンで、ASA100 で 1/60秒に設定した上でこのボタンを押した時にメーター針が定点まで振れれば電池電圧はOKという事になる。

フィルム装填

フィルム装填
フィルム装填
 フィルム装填はちょっと変わった仕様になっていて、軍艦部より下側の外装蓋を「スカートを脱がす様に」下へ抜き取ってからフィルムを装填する。 外装蓋を抜いたら内部本体に付いている圧板を跳ね下げ、レール面を出してからフィルムをセットして圧板を跳ね上げて元に戻す。 最後に外装蓋を下からスライドして装着・ロックしてから一駒目まで空送りすれば装填完了だ。 なお、小型化のため巻き戻しクランクは外装蓋側底面に付いている。

露出計用電池

露出計用電池
露出計用電池
 露出計用電池はM-R型水銀電池を1個使うタイプなので、今ではSR-44酸化銀電池をアダプターに装着して利用する。
 電池の交換は外装蓋を外して巻き上げ軸下部の露出計電池スペースに差し込んで装着するので、フィルムを装填しちゃったら電池交換はできない。 不便と言えば不便だけど、フィルムが残っている時に電池切れになる確率は低いだろうし、いきなり電池切れにはならないので早めに交換すれば済むことだ。 小型化のためならこんな事は問題にはならない。

布幕縦走りシャッター

布幕縦走りシャッター
布幕縦走りシャッター
 カメラの横幅を小さく抑えるためなのか、シャッターは布幕縦走り方式になっていて、先幕はゴム面がレンズ側で後幕は布面がレンズ側と、それぞれ逆にセットされている。 布幕で縦走りシャッターというのは非常に珍しいと思う。
 この時代には金属膜縦走りのコパルスクエアシャッターを採用するカメラが多くなっていたが、コパルスクエアは上下にシャッター羽根の逃げスペースが必要だし、チャージ部も大きいので「CL」サイズの小型カメラには収まらなかったのだろう...コパルは音も大きいしね。

測光システム

飛び出す測光センサー
飛び出す測光センサー
 シャッター幕の直前にCdSを配置して測光する方式で、プロ・ハイアマ好みのスポット測光となる。 フィルムに露光する時はCdSが邪魔になるので、シャッターの走行に先立って測光センサーが退避する様になっている。 退避した測光センサーはフィルム巻き上げ・シャッターチャージにより画面中央に出て来る。 従って、巻き上げ・シャッターチャージしてないと測光は出来ない。 可動する測光センサーがあるので装着できるレンズに制限があり、沈胴レンズを沈胴させてはイケナイらしい。
 また、測光センサーの退避があるのでレリーズボタンを押してから実際に撮影されるまでのタイムラグが長いという指摘もあるらしいけど、このカメラでスポーツ写真を撮る訳じゃなにので全然気にならない。 なお、巻き上げレバーを引き出せば測光センサーが露出していなくても露出計のスイッチがオンになるので、電池が消耗して液漏れの原因になるので気を付けよう。

ストラップ環

ストラップ環
ストラップ環
 ストラップ環はカメラ左側の上下にあり、カメラを縦にぶら下げる事になる。 1971に発売されていた LEICA M5 初期型 と同じ方式で、個人的に好きになれない。 しかも、上側ストラップ環はボディー本体に付いているけど下側ストラップ環は外装蓋に付いているので、外装蓋を外してフィルム装填後に外装蓋を再装着する時に不用意に外装蓋をひっくり返したりするとストラップがネジレてしまう。 『あぁ面倒臭い!』って事になるので、ちゃんと確認してから外装蓋を再装着しよう。

ファインダー視野

ファインダー視野
ファインダー視野
 ファインダー視野中央に二重像合致式距離計があり、ライカらしく視認し易くエッジが明確で気持ち良い。 視野上部にはシャッター速度インジケーターがありファインダーから眼を離さなくてもシャッター速度の確認・変更操作が出来る。 視野右側に露出計メーターがあり、メーター針が定点に来るようにシャッター速度と絞り値を調節すれば適正露出になる。 1/60秒にすると右上に黒棒が表示され、Bulbにすると定点部にが表示されメーターが定点に固定される。
 装着レンズのフレームは40mmと50mmと90mmのブライトフレームが用意され、40mmのフレームは常に表示されている。 90mmレンズを装着すると50mmフレームが消えて90mmフレームが現れる。 フレームを越えたファインダー視野全域が35mm視野に相当するらしいが、かな~りアバウトだろう。 なお、パララックス補正ではメーター系以外のシャッター速度インジケーターとブライトフレーム全体が距離計に連動して斜めに移動する。
 ファインダーの倍率が0.6倍と低めであり、基線長が31.5mmなので有効基線長は19mm程度しかないけど 40mm F2 のピント合わせには困らない。

標準レンズ

M-ROKKOR 1:2 f=40mm
M-ROKKOR 1:2 f=40mm
傾斜カムと平行カム
傾斜カムと平行カム
 標準レンズは M-ROKKOR 1:2 f=40mm で、レンズシャッター式コンパクトカメラの様な焦点距離が採用された。 このレンズはエルンスト・ライツ社で設計されてミノルタで生産された。 海外向けの「LEICA CL」には SUMMICRON-C 1:2/40 が装着されていて、ドイツで生産された様だ。 M-ROKKOR 1:2 f=40mm と SUMMICRON-C 1:2/40 とは銘版が異なるだけでなく、M-ROKKOR のフィルター径は40.5mmなのに対して SUMMICRON-C は39mmのライカ規格となっている。 なお、絞りのクリックは0.5段単位で、非常に心地よいクリック感である。
 また、距離計カムはコストが安い傾斜カム式であるため、距離計が調整(コロ位置が左右に移動している)されたM型ライカに装着した場合は距離計が若干ズレてしまう懸念がある。 CL用レンズではないMマウント用のライツ社レンズは、レンズの繰り出し用と距離計用とに異なる移動量を備えたダブルヘリコイド式(コストが高い)の平行カムになっているのだ。 このため、ライツ社では M-ROKKOR や SUMMICRON-C をM型ライカ非互換としていた。
 その後1981年に発売された「ミノルタ純正」の minolta CLE 用標準レンズは同じ M-ROKKOR 1:2 f=40mm という名称だけど、ミノルタの設計に変わると共に平行カム式へ変更されている。 同じく minolta CLE 用 M-ROKKOR 1:2.8 f=28mm も平行カムである。

M-ROKKOR 1:2 f=40mm

M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2.8
絞り:F2.8
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F4
絞り:F4
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2.8
絞り:F2.8
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F5.6
絞り:F5.6
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F8
絞り:F8
M-ROKKOR 1:2 f=40mm 絞り:F2
絞り:F2
M-ROKKOR 1:2 f=40mm レンズ構成
レンズ構成
 4群6枚構成のダブルガウス型で、Leitz minolta CL に似合うコンパクトなレンズである。 絞り開放の中心は解像感はあるけどちょっとフレアっぽい描写で周辺ほどコマフレアが大きく眠い描写になる。 F2.8でスキッとしたコントラストの高い描写になり、F4で周辺の描写も充分良くなり、F5.6なら四隅を含む画面全体がシャープで素晴らしい描写になる。 絞り開放ではオールドレンズっぽさもあるけど発色・コントラスト共に素晴らしく、繊細というより力強い感じの描写は さすが「SUMMICRON-C」だなぁと感じる。
 それはそうと、ミノルタの潤滑油も怪しいらしく絞り直後の第三レンズ凹面が薄っすらと曇ってしまい、清掃しても綺麗に元には戻らない。 急激に曇る訳ではなく、年々少~しづつ曇ってくるので分解・清掃のタイミングを逸してしまう。 なお、サンプル写真はレンズを分解・清掃したうえで SONY ILCE-9 にマウントアダプタを介して撮影したものである。

ソリッドなフードが好き
ソリッドなフードが好き
 そういえば、ゴム製の純正フードをカメラに装着して、すぼめて保管しているうちに変形癖が付いてしまい、ずいぶん昔に捨ててしまった...今となって悔やまれる。 その後は金属製フードを使っているのだけれど、絞り環がフィルター枠ギリギリなのでフィルターを装着した方が絞り環を操作し易い。 『フードは要らない』って言う人もいるけど、僕はハレ切り以外に指の写り込み防止対策としてフードが必要なのよぉ。

あとがき

21mm広角レンズとファインダーを装着
21mm広角レンズを装着
 ライカには標準レンズや広角レンズを装着するのが粋な使い方だ。 広角レンズで撮影するためには外付けファインダーのお世話になるんだけど、カメラの内蔵ファインダーでピント合わせをすると、ついついそのフレーミングでレリーズしてしまう。 『あっ、広角レンズだった』とアセったりしていたのは僕だけか。
 その昔、毎月ヨーロッパへ行っていた姉に『ドイツで LEICA CL を買ってきて』って頼んだのだけど、買ってきて貰えなかった。 姉に理由を尋ねたら、ドイツのカメラ屋で『ライカより日本のカメラの方がイイよ』と言われたそうだ。 まっ、そうかも知れないけど僕は「LEICA CL」が欲しかったんだよねぇ。 という事で、日本で「Leitz minolta CL」を買ったのであった。

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