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CANON FD 55mm 1:1.2 S.S.C. |
キヤノンの一眼レフ用標準レンズでF1.2の明るさを持つものは1962年に CANONFLEX RM とほぼ同時に発売された SUPER-CANOMATIC LENS R 58mm 1:1.2 が最初だった。
CANON FD 55mm 1:1.2 S.S.C. - 1973年発売
1971年にCANON F-1 などと共に FD 55mm F1.2 が発売され、それを S.S.C.(Super Spectra Coating)化したのが本レンズである。
レンズ構成
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レンズ構成 |
5群7枚構成の拡張ダブルガウス型で、メーカーによると『光学性能は
FD 50mm f/1.4 S.S.C.と同等ですが、より明るいレンズのため、より進化しています』という事らしい。 バックフォーカスを確保するためか焦点距離は55mmと長めで、フィルター径もΦ58mmと大きめになっている。 レンズ構成として第2第3レンズを分離する方式もあったと思うけど、キヤノンの F1.2レンズシリーズには分離されたレンズは無かったと思う。
重量は510gでS.S.C.になる前の565gよりは軽くなっているけど鏡筒の変更だけなのか光学系も変更されているのかは知らない。 ずっしりとした重みがあり鏡筒の作りは大変良く、特に大柄なカメラに装着した場合の操作感も良いし、外観デザイン的にも威風堂々としていてカッコ良い。 なお、最短撮影距離が0.6m(撮影倍率:0.1倍)までなのでイマイチ寄り足りないのが残念だ。
描写特性
遠景描写
以下の遠景描写の写真はRAW現像時にホワイトバランスを6000°Kに設定し、Dレンジオプティマイザーをオフにして現像しています。
絞り:F1.2 |
絞り:F2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F4 |
絞り:F5.6 |
絞り:F8 |
絞り開放ではベール越しの様な描写で、「夢見心地」の様な雰囲気がある。 F2に絞ると中央はスッキリした描写になり、画面周辺にフレアが残っている。 F2.8に絞ると画面四隅を除いて良い描写となり、F5.6まで絞れば画面四隅でも充分な描写となる。 風景撮影ならF5.6まで絞れば大丈夫だ。
素敵な周辺光量落ちがあるので効果として使えるけど、やや落ち込みが急なのが気になる。 また、画面極四隅の周辺光量落ちは絞りF5.6まで徐々に改善されてゆく。
夜景描写
以下の遠景描写の写真はRAW現像時にホワイトバランスを白色蛍光灯に設定して、Dレンジオプティマイザーをオンにして現像しています。
絞り:F1.2 |
絞り:F2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F4 |
絞り:F5.6 |
絞り:F8 |
絞り開放ではコマフレアによりベール越しに様な描写で、画面周辺ではサジタルコマフレアによる「カモメが飛んだ」が発生している。 F2に絞ると中央はスッキリするが、画面周辺のコマフレアは沢山残っている。 F2.8まで絞ると画面周辺の描写が格段に改善し、画面四隅のコマフレアだけが少し残っている。 F4まで絞れば画面四隅でも夜景として我慢できる描写になり、F5.6なら安心して撮影できる充分な描写になる。
玉ボケ描写
以下の玉ボケ描写の写真は距離環を1mに設定して、RAW現像時にホワイトバランスを白色蛍光灯に設定し、Dレンジオプティマイザーをオンにして現像しています。
絞り開放ではバブルボケ風になるけど、太いエッジにはならない。 また、画面周辺のボケは半月状で、細くはならないのでグルグルボケは目立たないだろう。 F2に絞るとバブルボケ風は消えて無くなり、画面四隅に半月状のボケ形状が残る。 F2.8に絞ると8角形が目立ってくるが、画面四隅以外は形が揃った8角形ボケ形状になる。
一般撮影
以下の遠景描写の写真はRAW現像時にオートホワイトバランスに設定し、Dレンジオプティマイザーをオンにして現像しています。
絞り:F1.2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F1.2 |
絞り:F1.2 |
絞り:F1.2 |
絞り:F1.2 |
絞り:F1.2 |
絞り:F1.2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F1.2 |
絞り:F1.2 |
絞り:F1.2 |
絞り:F1.2 |
絞り:F5.6 |
絞り:F1.2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F1.2 |
絞り:F1.2 |
絞り開放ではソフトフォーカスレンズで撮影した様な素敵な描写になるが、シーンによっては気にならない場合もある。 標準レンズとしては焦点距離が50mmに対して10%長いだけだけど、深度が浅い事から中望遠ソフトフォーカスレンズで撮っている様に感じる。
ただし、開放ではフレアが多いのでピントピークの位置が判りけど、適切なピントに出来ればエラく良い感じで撮れる。 また、開放では深度が非常に狭いので、狙った場所以外はボケることと周辺光量落ちによりミニチュア写真風になったりする。
ボケ味は意外に悪くなく、『こりゃ酷い!』というシーンはあまり無いのは良い点だし、前後ボケの輪郭に色が付く「色ボケ」も酷くないのでカラー写真で問題になる事はあまりない。 ビネッティングの影響による「周辺グルグル」も殆ど感じないバランスの良いレンズで、決して「暴れ玉」ではない。
カメラのオートホワイトバランス性能にもよるけど、発色は悪くないし他のFDレンズ(FD 35mm F2 アトムを除く)とも発色に差異は無いので、FDレンズ群を使う人はレンズごとの発色差を気にする必要は無いと思う。
絞り開放ではソフトな描写だけど、F2.8に絞れば結構シャープな描写になり、F5.6まで絞れば遠景・風景でも画面隅まで充分な描写となる。 『もうちょっと寄れたらなぁ』と感じる事もあるけど、絞り開放での素敵なソフト描写も良いし、ボケ味も悪くないし、絞ればシャープに写る良いレンズだと思う。
FD 55mm F1.2 S.S.C. のメーカー説明には『This is an improved version of the FD 50mm f/1.4 lens and one of the fastest of the FD lenses. The superior image characteristics of the 50mm f/1.4 lens have been preserved. Even spherical aberrations and coma are compensated for in this lens despite its f/1.2 speed.』と記述されている。 確かにその通りで、描写特性は
FD 50mm F1.4 S.S.C. とよく似ているが、FD 50mm F1.4 S.S.C. の方が描写性能が少し良いと思う。
あとがき
研削非球面レンズを採用した FD 55mm 1:1.2 AL や FD 55mm 1:1.2 S.S.C. AL が発売されていたけど、高額過ぎてとても入手できなかった。 中古市場でも滅多に見かけないし、異常に高額なのはレンズの性能より希少性から高額なのだろう。 中古のFDレンズも全般的に高額になっているのはオールドレンズ遊びが流行って、作りが良くて物欲を満たしてくれる古いレンズに人気があるらしく、NewFDレンズよりFDレンズの方が喜ばれる様だ。
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Canon F-1N + FD 55mm F1.2 |
某有名スポーツカメラマンに僕の
Canon F-1N に装着した FD 55mm F1.2 を持って頂き、取材現場で記念撮影。 師は軽くて細身の FD 400mm F4.5 を多用していたそうだ。 プレスルームで、ヨーロッパ撮影ツアーの話 や 試作の FD 400mm F2.8L を真っ二つに壊した話 や コマーシャル撮影現場の話 などなど大昔の撮影秘話を楽しく聞かせて頂いた。 また、トリミング指示などを書き込んだ実物コンタクトプリントを見せて頂き、作品としての考え方なども学ばせてもらい、僕の写真撮影にも大いに影響している。
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