OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm F6.5 - 望遠鏡

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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5
 OM-SYSTEMの屈折型望遠レンズでは1000mmに次いで焦点距離が長いレンズで、OLYMPUS-M1 のキャッチコピーである『宇宙からバクテリアまで』を具現化するレンズだろう。 でも、実際には天体写真撮影にはお勧めできないレンズである。m(_ _)m

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 - 1972年発表

 このレンズも F.ZUIKO AUTO-T 1:6.5 f=600mm → ZUIKO MC AUTO-T 600mm 1:6.5 → ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 と、製品名の変遷がある。 本レンズには構成枚数を表す「F.」もマルチコートを表す「MC」も記載されなくなったマルチコート化された最終モデルである。
 フォーカシングが望遠鏡タイプのラック&ピニオン式のレンズで、専用のアルミケース付きである。 三脚に据えてフードを伸ばすとまるで望遠鏡の様だし、外装色が白かったら天体望遠鏡と言えるほどだ。 なお、レンズ・ケースが大きいので保管場所が面倒だけど、間違っても押し入れで保管してはイケナイ。

レンズ構成

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 レンズ構成
レンズ構成
 4群6枚構成のテレフォト型で、600mmの焦点距離なのに短く仕上げている。 とはいえ、全長は377mmもあるので、コンパクトと言える程ではないし、口径が大きな前玉系に4枚のレンズがあるのでF6.5と暗いけど重量は2800gもある。
 インナーフォーカスがメジャーになる前の製品なので、フォーカシングが全体繰り出し(ボディ移動と言うべきか)式なこともあり、最短撮影距離が11mもあるので近くにいる小鳥を写せない。 6mくらいまで寄れたら不満は少なかっただろうけど、倍以上の繰出し量が必要なので現実的じゃない。 なお、フォーカシングが望遠鏡タイプのラック&ピニオン式になっている。

ラック&ピニオン式のフォーカスノブ(左側)と三脚座締め付けノブ(右側)
フォーカスノブと三脚座
 レンズには回転式の三脚座があり、レンズ全体を回転させる事で縦横の構図を変更させられる。 残念ながら鏡筒全体が回転するので、フォーカシング用のラック&ピニオン操作ノブも回転してしまうので操作性が良いとは言えない。 重量的に手持ち撮影には適さないが、レンズをしっかりと持ってフォーカスノブの操作をするにはカメラを支える腕がもう一本欲しくなる。 また、重い機材なのにレンズ側にストラップ環が無いので、フィールドで持ち運ぶときにぶら下げられないので難儀する。 フィールドで持ち運ぶならショルダーベルトが付いたクッションソフトケースなどを用意した方が良いだろう。

内蔵フードを引き出して伸ばした状態
内蔵フード伸ばした状態
 スライド式の内蔵フードは出し入れに適度な❝圧❞があり勝手にズレたりしないし、充分な深さがあって有効に働くフードである。 なお、フロントレンズキャップはΦ100mmの金属製ネジ込み式で、脱着が面倒だし「キュルキュル」とうるさく鳴くのがイマイチだ。 また、一般的には正面に大きくメーカーロゴを入れてアピールするハズだけど、オリンパスのキャップは裏側に小さくメーカー名が入っているだけだ。 なお、オプションで正面に大きく「OLYMPUS」ロゴが入った黒いレザーキャップがあったと記憶している。

描写特性

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F6.5
絞り:F6.5
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F8
絞り:F8
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F11
絞り:F11
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F16
絞り:F16
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F22
絞り:F22
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F32
絞り:F32
 気温と湿度が高く陽炎ユラユラで評価に向かない環境だったこともあり、遠景の絞り開放では少しフレアっぽい描写で、ハイライト部の周囲に色収差によるパープルフリンジが発生している。 アクロマート仕様の超望遠レンズとしては色収差は少ないレベルだと思う。 絞って行くと描写が少し向上して軸状色収差も減少するけど倍率色収差は残ったままだ。 また、F16より絞り込むと回折の影響で描写がボヤけ始める。

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F6.5
絞り:F6.5
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F6.5
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F6.5
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F6.5
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F6.5
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F6.5
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OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F6.5
絞り:F6.5
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F6.5
絞り:F6.5
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F6.5
絞り:F6.5
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F6.5
絞り:F6.5
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F11(太陽撮影用シートフィルタ使用)
絞り:F11 太陽光球面
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F11
絞り:F11 月面
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F11
絞り:F11 月面
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F11
絞り:F11 月面
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm 1:6.5 絞り:F6.5(部分月食中の月面)
絞り:F6.5 部分月食中
 600mmの屈折型超望遠だと街中で手軽に使えるレンズじゃないし、三脚や一脚を使わないと腕力が持たないので気軽に持ち出せない。 また、最短撮影距離が11mもあるので写せる被写体が少ないのも困りものだし、ピントのピークが判り難くてピントを合わせに難儀する。

 季節柄昼間の遠景は陽炎が酷くて高層ビルや上空の旅客機もグニャグニャになるし、加えて遠方の高層ビルは霞により見通しが悪い。 鉄橋を通過する電車も陽炎でユラユラしてボヤけるけど、近くまで来ると比較的影響は少なくなる。 また、40~50m先の電柱なら陽炎の影響は少なそうだけど、開放絞りでは描写にはキレが無く甘い描写だ。
 なお、600mmで草花を撮るのは『何だかなぁ』という感じだけど、11mの最短撮影距離では自由度が無さすぎる。 小鳥を大きく写すのは無理だけど、大型の鳥類を撮影するなら良いかも知れない。

 OLYMPUS-M1 のキャッチコピーのひとつである「宇宙」関連として、太陽光球面と月面を撮ってみたけど焦点距離が600mmだと短いので1200mmは欲しいところだ。 残存収差が殆ど無い光学系なら原理的に絞り開放が最も解像度が高いけど、残存収差がある光学系は少し絞らないと収差の影響で解像度が低い。 このレンズも少し絞った方がシャープに写る。
 空のシーイングにもよるけどF11設定(皆既中の月面は暗いので絞り開放で撮影)なので月面のクレーターはΦ55mmクラス望遠鏡に対して解像不足でシャープさを欠く描写だと思う。 また、太陽光面に点在する多数の黒点もちゃんと写るけど白斑・粒状斑など含めて鮮明さに欠けると思う。 なお、太陽の撮影は非常に危険なので良い子はマネしないでください。

あとがき

 ズイコーレンズとしては描写にキレが無く、特殊低分散ガラスも使っていないので色収差が気になってしまう。 OLYMPUS-M1 のキャッチコピーである『宇宙からバクテリアまで』のバクテリアは顕微鏡を作っていたので範疇だけど、天体望遠鏡は作っていないので宇宙を担うのは超望遠レンズでだろうけど、せいぜい月面写真撮影程度だろう。 深宇宙の星雲などを撮るなら高性能な望遠鏡(アストログラフ)を使った方が断然良い結果が得られるので、このレンズの宇宙への出番はない。
取材現場の SONY α9Ⅲ(ILCE-9M3)
FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS

 現代では600mm超望遠は200-600mmクラスのズームレンズを使うのが一般的になった。 しかも、手振れ防止機能が付いたオートフォーカスレンズが主流で、古い OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-T 600mm F6.5 より軽いし綺麗に撮れる。 今更こんなに大きくて重い単焦点オールド超望遠レンズで遊ぼうとは思わない。
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