OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4 - 優秀な標準レンズ

0

M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm(左) と OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4(右)
M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S(左) と OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S(右)
 1972年に発売された OM-SYSTEM(当時は M-SYSTEM )の 50mm F1.4 は、製品名・光学設計が何度か変更されている様だ。 このレンズはオリンパスを代表する標準レンズで、銘玉と賞する人も多い。

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4

 M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm を持っているんだけど、特許公報に載っている様な光学性能ではないのが購入当初から気になっていた。 勿論、特許上の性能と実製品の性能とには乖離があるのは当然だし、製品評価を行う雑誌社などには選別された出来の良い製品を提供するのが常識だったので、評価結果が一般市販品と同じなのかは疑わしい。 ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4 は硝材変更や設計修正・変更が施されていることから『後期タイプの 50mm F1.4 はもっと高性能になっていたのでは?』と思い、後期型の中古レンズをポチってしまった。
モデル名称(銘板記載名)前枠コーティング備考
M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm銀縁モノ初期型 アトム玉
OM-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm銀縁モノ前期型 設計修正
OM-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1,4 f=50mm黒縁モノ&マルチ後期型 設計変更
OM-SYSTEM ZUIKO MC AUTO-S 1:1,4 f=50mm黒縁マルチ
OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1,4黒縁マルチ後期最終モデル
 上記分類は個人的な想像です。 なお、本レンズには構成枚数を表す「G.」もマルチコートを表す「MC」も記載されなくなった最終モデルである。 なお、黒枠の「G.ZUIKO」レンズから後期型としたが、持ってないのでネット上の外観写真で判断したので、違うかも知れない。

レンズ構成比較

OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 レンズ構成
レンズ構成
 OM-SYSTEM の 50mm F1.4 は最初から最後まで6群7枚の拡張ダブルガウス型だったが、途中で何度か設計変更されている。 「M-SYSTEM G.ZUIKO」の初期型には第1レンズに酸化トリウム含有硝材(構成図の黄色いレンズ)が使われていて黄変する。 その後に「OM-SYSTEM G.ZUIKO」で(途中からかも知れない)第1レンズの酸化トリウム硝材を黄変しない別の硝材に変更したらしく、微妙な設計修正を施した前期型になっている。 更に、マルチコートを用いる様になっ頃に光学系を設計変更して後期型となり、フィルター枠が黒枠になった様だ。 光学的には前玉の凸面曲率がキツくなっていて、絞りより後ろ側の貼り合わせレンズ面曲率が平面に近くなっている。

初期型(左)より最終モデル(右)の方がフィルター枠が長い
外観比較
 最終モデルはフィルター枠が黒枠である以外は初期モデルとほぼ同じ容姿で、絞り環を操作すると距離環を触れてしまい易い欠点も同じである。 最短撮影距離は0.45mのままなのでそこそこ寄る事ができ、絞り羽根も8枚のままで絞っても比較的多角形感が出ない。 ただし、レンズ全長が1mmほど長くなっている。 多分、後期型は第一面の曲率がキツくなり出っ張っているのでフィルター枠を長くしたのだろう。 また、マウント側のガード板付き遮光リングが2本の角付きモールド遮光リングに変更されていて、内部のメカ構造も結構変わっている。

逆付け可能な金属フード
フード装着
 この様に、最終モデルは1972年発売時のレンズとは明らかに異なり、1983年頃までには後期型へ切り換わっていたと想像している。 設計変更して光学性能を改善しることはあっても、改悪する事は無いだろうから、初期型より高性能化されている可能性がある。 なお、フードは OLYMPUS M-1 発売時からある標準レンズ用メタルフードが使えて、フードの逆付け収納も可能だ。 このメタルフードは銀ピカ部分がアクセントになっていてカッコ良いと思う。 なお、フードの「OLYMPUS」ロゴを真上にすると締め付けツマミが邪魔にならない角度にくる。

描写特性

遠景描写比較

 遠景を初期型と後期型の最終モデルとで比較してみた。 ホワイトバランスをDayLightに固定してDレンジオプティマイザーはオフにして現像している。
初期型
OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm 絞り:F1.4
初期型 絞り:F1.4
OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm 絞り:F2
初期型 絞り:F2
OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm 絞り:F2.8
初期型 絞り:F2.8
OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm 絞り:F4
初期型 絞り:F4
OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm 絞り:F5.6
初期型 絞り:F5.6
OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm 絞り:F8
初期型 絞り:F8

最終モデル
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F1.4
最終モデル 絞り:F1.4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F2
最終モデル 絞り:F2
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F2.8
最終モデル 絞り:F2.8
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F4
最終モデル 絞り:F4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F5.6
最終モデル 絞り:F5.6
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F8
最終モデル 絞り:F8
 ZUIKO AUTO-S 50mm F1.4 は球面収差がフルコレクション型に近いと思われ、概ね補正不足だけど、絞り開放付近では大きく補正過剰になっている様だ。 このため絞り開放ではかなりフレアっぽい描写だけど最終モデル初期型ほどは酷くない。

 F2に絞るとフレア感は激減するが、やはり最終モデルの方がフレアっぽさが少ないし、画面周辺にゆくほど両者の差が大きくなる。 F2.8に絞れスッキリした描写となるが、画面四隅ではまだフレアっぽい描写だ。 F4まで絞れば両レンズ共良い描写となるけど、最終モデルの方がコントラストが高い感じだ。

 周辺光量落ち具合は初期型より最終モデルの方が大きいのは意外で、初期型はF4で周辺光量落ちが解消されるが、最終モデルが解消されるにはF5.6まで絞る必要がある。 前玉を比較してみると最終モデルの銘板遮光環の有効径が小さくなっている。 なぜ周辺光量をケチったのかは不明だ。

 両レンズの写真を並べて比べると初期型より最終モデルの方がほんの少し赤みが強い発色で、最終モデルの方が僕好みだ。 初期型はアトム玉なので黄色くなるハズだけど、紫外線照射対策を施してあるので明確な影響は表れていない様だ。 両レンズの発色の差は硝材以外にコーティングの差なども加わっているだろう。 なお、F11以上に絞ると初期型では画面中央に紫色のカブリが目立つ。 最終モデルでは発生しないので、マルチコーティングが有効に働いているのだろう。
最終モデル 絞り:F16
初期型 絞り:F16
画面中央部の紫カブリ比較 絞り:F16

夜景描写比較

 夜景を初期型と後期型の最終モデルとで比較してみた。 ホワイトバランスを白色蛍光灯に設定してDレンジオプティマイザーをオンにして現像している。
初期型
OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm(初期型) 絞り:F1.4
初期型  絞り:F1.4
OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm(初期型) 絞り:F2.8
初期型 絞り:F2.8
OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm(初期型) 絞り:F4
初期型 絞り:F4

最終モデル
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4(最終モデル) 絞り:F1.4
最終モデル 絞り:F1.4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4(最終モデル) 絞り:F2.8
最終モデル 絞り:F2.8
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4(最終モデル) 絞り:F4
最終モデル 絞り:F4
 夜景の絞り開放では画面中央付近の収差フレアが最終モデルの方が明らかに少なく、画面周辺のコマフレアも最終モデルの方が程度が良い。 とはいえ、F2.8まで絞らないと夜景描写としては厳しいし、F4まで絞らないと画面隅は夜景として満足できる描写にならない。

玉ボケ描写比較

 夜景の玉ボケを初期型と後期型の最終モデルとで比較してみた。 ホワイトバランスを白色蛍光灯に設定してDレンジオプティマイザーをオンにして現像している。 なお、距離環は1mに設定してある。
初期型
OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm(初期型) 絞り:F1.4
初期型  絞り:F1.4
OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm(初期型) 絞り:F2
初期型 絞り:F2
OLYMPUS M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm(初期型) 絞り:F2.8
初期型 絞り:F2.8

最終モデル
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4(最終モデル) 絞り:F1.4
最終モデル 絞り:F1.4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4(最終モデル) 絞り:F2
最終モデル 絞り:F2
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4(最終モデル) 絞り:F2.8
最終モデル 絞り:F2.8
 夜景の玉ボケでは点光源のボケ像が瞳の形を表すので、ビネッティングの影響で画面周辺ほど円形からレモン型へと変化したいびつな形になるのは同種レンズの常だ。

 画面中間部の玉ボケ(後ボケ)は後玉によるケラレ側のエッジが立って非常に目立つけど、逆に前玉によるケラレ側のエッジが立つことはない。 中間画角で後玉の周辺を通る光線がオーバー補正になる様で、後玉の周辺を通過する画面中間付近の玉ボケ像の光る半円エッジの影響で汚らしいボケになると考えられる。 また、中間付近の玉ボケ形状がレモン型というより❝おむすび❞っぽくなるので余計に汚く感じるのだろう。

 初期型も最終モデルも似た様な玉ボケ描写だけど、初期型の方が半円エッジ強く立っている。 いっそ全周のエッジが立てばバブルボケとしてクセのある描写を楽しめたかも知れない。

一般撮影(最終モデル)

 最終モデルだけ一般撮影してみた。 オートホワイトバランスを使ってDレンジオプティマイザーはオフにして現像している。 なお、記載の絞り値は記憶違いがあるかも知れません。
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F2.8
絞り:F2.8
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F2.8
絞り:F2.8
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F4
絞り:F4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F2.8
絞り:F2.8
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F2.8
絞り:F2.8
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F2.8
絞り:F2.8
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F5.6
絞り:F5.6
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F16
絞り:F16
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F2
絞り:F2
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F2.8
絞り:F2.8
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F1.4
絞り:F1.4
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F2.8
絞り:F2.8
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F4(15mmヘリコイドアダプター併用で接写)
絞り:F4(接写)
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F1.4(15mmヘリコイドアダプター併用で接写)
絞り:F1.4(接写)
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F2.8(15mmヘリコイドアダプター併用で接写)
絞り:F2.8(接写)
OLYMPUS OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4 絞り:F5.6(15mmヘリコイドアダプター併用で接写)
絞り:F5.6(接写)
 開放では薄いベール越しの様にフレアっぽい描写だ。 開放での画面周辺のボケ味はあまり綺麗ではなく、F2.8くらいに絞ればスムースな後ボケになってくれるしピント面がシャープだ。 発色は派手ではないけどイイ感じの色乗りで僕的に好印象だ。

 ハイライト部分の前ボケ周りに紫の色が付き、後ボケ周りに緑の色が付く「色ボケ」はあるけど、あまり目立つ方ではないと思う。 白文字看板では色ボケが判るけど、それ以外では気にならない程度だ。

 太陽を画面内に入れ込むとダブルガウス型らしいゴーストが発生してくれるので、眩しさの表現として効果的に使えるだろう。 なお、レンズ内が少し汚れているので、分解清掃すれば逆光フレアはもう少し抑えられるかも知れない。

 ヘリコイドアダプターを利用して本体の最短撮影距離以上に接写してみると、絞り開放ではホワホワな描写で画面周辺のボケもフレアまみれだ。 F2.8まで絞ると画面周辺のボケが綺麗になるがピント面のフレア感は残っていて、F5.6まで絞ると接写でも非常にシャープなピント面になる。

 開放ではフレアっぽい描写だけど、絞ればシャープで素晴らしい描写になる優秀な標準レンズである。 開放での画面周辺ボケが綺麗じゃないのが惜しまれ、いっそクセのある開放描写だったら楽しめるオールドレンズだったかも知れない。

あとがき

 50mm F1.4 の初期モデルである「M-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 1:1.4 f=50mm」と最終モデルである「OM-SYSTEM ZUIKO AUTO-S 50mm 1:1.4」との描写を比較してみたが、最終モデルの方が開放でのフレアが減っているし、コントラストも最終モデルの方が高い。 光学系の設計変更にはもっと大きな違いを期待したけど、コーティングによる改善を加えても撮り比べたら判る程度の違いだった。
Sponsored Link
Sponsored Link

0 件のコメント :

コメントを投稿

Sponsored Link