久しぶりに SONY α9Ⅲ(ILCE-9M3)で取材

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取材現場の SONY α9Ⅲ(ILCE-9M3)
取材現場の SONY α9Ⅲ(ILCE-9M3)
 半年間の休眠から覚めて、今シーズンのスケート取材を開始しました。 休眠中に ILCE-9M3 のパリ五輪向けファームウェアアップデートは行っていましたが、Ver.2.01を実戦投入するのは今回が初めてだ。
 また、ソニーさんのアプリ「Imaging Edge Desktop」に含まれる「Edit」を使って画像を開いて保存すると画像暗部のトーンが持ち上がるバグを修正してくれたらしいので、ポストプロセスのトリミング用に使えるだろう。

SONY ILCE-9M3 Ver. 2.01

 今年の1月に ILCE-9M3 を購入して取材に使った結果では問題が多々あると感じていた。 Ver.1.00での問題点・要望点は以下の通り。
  1. 撮影中にフリーズして再起動するバグを治して欲しい
  2. 被写体を掴むまで遅いバグを治して欲しい
  3. 簡単に背景へピントが持っていかれるバグを治して欲しい
  4. 通信なしレンズでも最高速を1/32000秒まで使わせて欲しい
  5. プリ撮影でもフリッカーレス機能を使えるようにして欲しい
  6. プリ撮影機能を頻繁に切り換えるので、プリ撮影機能状態アイコンを常時ファインダー内に表示するモードが欲しい
  7. Bv-10以下の低輝度AEが露出アンダーになるのを治して欲しい
  8. 消費電力が異常に多いのを治して欲しい
  9. などなどなど
FirmwareはVer.2.01
FirmwareはVer.2.01
 Ver.2.00もVer.2.01も実戦投入することなく、僕の ILCE-9M3 は長い休眠期間に入っていた。 再稼働にあたりVer.2.00とVer.2.01の修正内容を確認すると、上記の要望で期待できるのは 1と2と3と7 くらいかと思われる。 メーカーは具体的な不具合内容を記載すると不具合マニアが『本当だ!妙な事になる!』と喜んで再現させちゃうので、「機能と動作安定性の向上をおこないました」とか「動作安定性を改善しました」など、何を治したか判らない表現にしちゃうのだ。 なので、僕が困っているバグが治っているかは使ってみる事でしか確認できない。
 ちなみに、Ver.1.00で取材中にPCへのFTP転送が出来なくてアタフタする事が複数回あったけど「ネットワーク接続ができない場合がある事象を改善しました」というのが原因だったのだろうか?

撮影中にフリーズしないか?

 撮影中にカメラがフリーズするのは「画像消失」の次に恐ろしい問題だ。 幸い、今回の取材では撮影中にカメラがフリーズする事はなかった。 ただし、フリーズ現象の頻度は高くないので、複数回の取材を重ねないと『本当に治っている』とは断言できない。 『この選手の時にフリーズしたら...』とドキドキしながら撮影するのは精神的に宜しくない。

被写体トラッキング性能

トラッキング中に背景へAFが抜ける
トラッキング中に背景へAFが抜ける
 明確に比較は出来ないけどVer.1.00と比べて被写体(人物)トラッキングのミスは変わらない気がする。 気が付くと人物じゃなく背景を追っていて、慌てて再AFさせる必要がある。 フィギュアスケートの場合、トラッキング中に選手がくるくる回る事が多いので何度も顔を見失う事になる。 この時に背景に乗り移ってしまい、どんどんAFポイントが離れて行ってしまう。

被写体(人物)トラッキングトラッキングミスは変わってない気がする
被写体(人物)トラッキング特性
 また、選手の背景に沢山いるジャッジ達が「曲者」で、簡単にジャッジの顔に乗り移ってしまう。 設定で「フォーカス」→「被写体認識認識対象」→「人物」→「トラッキング乗り移り範囲」=「標準」を「狭い」に変更すればジャッジの顔へ飛び移る事は少なくなるけれど、選手の顔部分じゃない所へAFポイントが移ってしまった場合に選手の顔へ戻らなくなってしまうのが困りものだ。 現在のフォーカス位置より後ろ側の顔へはデフォーカス量に応じて乗り移り難くして貰いたい。
 なお、被写体認識・AF開始時の応答性は改善している様で、Ver.1.00で困らされた「びっくり」する様なモタツキは感じられなかった。

AF精度

動体に対するAF精度が ILCE-9 より優秀なのはv1.00から変わらない(1/800は少しブレる)
動体に対するAF精度は優秀なままだ(1/800は少しブレる)
 きちんと被写体をトラッキングできている限り動体に対するAF精度に問題は無い。 少なくとも ILCE-9 より優秀なのはVer.1.00から変わらない。 使用するレンズの「キレ」にもよるけど、ピントがヌルイと感じる撮影駒は殆ど無いので優秀といえるし、ILCE-9 には戻れない。 このAF精度でノイズレスの高画質で撮影できたら嬉しいんだけどねぇ。

高感度画質

 当然だけど相変わらず残念な高感度画質だ。 選手の首筋に髭の様に発生するノイズを減らせるように「ノイズリダクション:強い」という設定を追加して貰いたい。 ILCE-9M3 のノイズレベルだと自作アプリで対応出来るのはSNS写真までで、納品写真には歯が立たないので市販アプリを利用している。

高感度ノイズ特性 ILCE-9M3 ISO:10000 Topaz Photo AI(200%表示)
高感度特性 ILCE-9M3 ISO:10000 Topaz Photo AI(200%表示)
 僕が使っているノイズリダクション用市販アプリは「Topaz Photo AI v3.2.1」で、納品する写真のみ最終処理している。 このアプリはメジャーバージョンがアップされるとUIや設定などが新しくなっちゃうのが困りものだ。 自分に最適なパラメーターを新たに探さなければならないので、撮影シーズン中のアップデートは出来るだけ避けている。 昨シーズンは v2.x.x を使っていたけど、今シーズンに向けて v3.2.1 へアップデートして設定パラメーターを探っていた。 なお、Topaz社はバグなどに関するサポートのレスポンスは迅速だし、先方でバグの再現が出来たらアップデートされるのも早かった。

古い一眼レフによる写真をTopaz Photo AIで処理
Topaz Photo AIで処理
 SONY α9Ⅲ(ILCE-9M3)とは関係ないけど、その昔は「いちがんれふ」と呼ばれるクラシックなカメラで撮影していたので、オートフォーカスを顔に当て続けるのは到底無理だった。 大抵は胸辺りにフォーカスポイントが来るようにAFさせていたので、顔へのピントがちょっとヌルい写真も多々あった。 「Topaz Photo AI」だと顔部分の描写をリカバリーする機能があるので、古~い写真が現代でも充分に使える様になったりする。 一眼レフ時代に撮影した顔のピントがちょっとヌルい写真でも、最新機材で撮影した写真の様に生まれ変わる。 ただ「Photo AI」のシャープネス設定を最低の「1」にしても僕には強すぎると感じるので、もっと弱く掛けられる設定が欲しいと思う。

低輝度AE露出


Ver.1.00の低輝度AE露出

Ver.2.01の低輝度AE露出
 スポーツ撮影には関係ないけど、Ver.1.00ではBv-10以下の低輝度条件下でAE露出がアンダーになる不具合があった。 Ver.2.01で同様のテストをしてみるとBv-10以下の低輝度条件でもAE露出がアンダーにはならなかった。 ちなみに、Ver.2.01ではBv-10以下の低輝度にするとカメラが感じるBv値がリニアに低下するけど、Ver.1.00ではBv-10以下の低輝度条件ではカメラが感じるBv値がリニアじゃなく鈍く低下していた。 恐らく低輝度での測光結果を変換する部分などにバグがあったのだろう。 なお、上の写真は 星景撮影用に購入した LAOWA 15mm F2 Zero-D を絞り込んで撮影したものです。

Imaging Edge Desktop 3.7.02

Imaging Edge Desktop 3.7.02
Imaging Edge Desktop 3.7.02
 今シーズンの取材で、撮影から納品までのワークフロー環境を確認するため、使用する機材やアプリなどをチェックしていた。 使っている人は少ないと思うけど、僕は「Imaging Edge Desktop」の「Edit」を撮影画像のトリミング処理用にワークフローへ組み込みたいのだ。
Edit Ver.3.7.02.06210
Edit Ver.3.7.02.06210
 これまでの「Imaging Edge Desktop」の「Edit」には画像を開いて保存すると暗部のトーンが微妙に持ち上がってしまうバグがあり、前から指摘していたけど、ようやく修正したらしい。 バグを修正したらしい最新版(3.7.02)で試してみたところ...治ってませんでした。

 真っ黒画像を読み込ませて保存したら真っ黒のままなので、治ったと思っていたけど、通常の画像だと治っていない事が判った。 ソニーさんへ「Edit」で保存前後のサンプル写真まで付けて修正のお願いをしたんだけどなぁ。 以下は取材前に確認したサンプル画像。

Edit 3.7.02.06210 で保存した結果(写真は以前にILCE-9で撮影したもの)

 上のサンプルで「Edit」で開いて保存した画像は暗部(髪の毛や背景暗部)のトーンが微妙に持ち上がっている事が判ると思う。 暗部のトーンが持ち上がる事で金髪は別として、黒髪が汚い印象になってしまうのが非常に困る。 「Photoshop」など他のアプリでトリミングしても良いのだけれど、「Edit」だとExif情報がキチンと保持されるので後で何かと重宝するのだ。
 暗部のトーンが持ち上がる現象はソニーの「Edit」特有のもので、「Photoshop」や「自作アプリ」で保存する場合に暗部のトーンが持ち上がるなんて事は絶対にない。 なお、不思議な事に「Edit」で画像を開いて保存しても真っ黒部は真っ黒部のままなのに、1カウントでも真っ黒じゃないと持ち上がってしまうのだ。 例えば、RGB=(0,0,0)なら(0,0,0)のままだけど、RGB=(1,1,1)なら(5,5,5)になり、RGB=(10,10,10)なら(18,18,18)に持ち上がってしまう。 このバグは僕が物心ついた頃から存在してるけど、何故ソニーさんはこのバグを放置したまま治せないんだろう? 一応、治ってないことをソニーさんに伝えて貰ったけど、頂いた修正連絡は何を修正した連絡だったのだろう...

あとがき

 これまで取材で使う機材は故障対応として同じカメラを2台持ち込んでいたのだけれど、ILCE-9M3 に関しては高感度特性に不安があったので、1台のみ下取り購入して ILCE-9 と併用している。 そのため、新旧ファームウェアの明確な比較が出来ないのが残念だ。 軽快なカメラ動作やAF精度などの面で、古い ILCE-9 には戻れないけど、「強力なノイズリダクションが搭載されない限り」ILCE-9M3 を追加購入する気にはならないなぁ。

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