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LEITZ WETZLAR ELMARIT-R 1:2.8/180 |
LEICAFLEX用レンズシリーズには、21mm、35mm、50mm、90mm、135mmの焦点距離のレンズがラインナップされていて、本製品は6本目のレンズだった。 当初はのカムは1つだけだったが、1968年の LEICAFLEX SL の発売とともに2つ目のカムが追加され、1976年の LEICA R3 の発売とともに3つ目のカムが追加された。
LEITZ WETZLAR ELMARIT-R 1:2.8/180 - 1967年発売
1966年のフォトキナで発表され、1967年に発売された。 この個体は1970年製造で露出計用のカムが2カムタイプだったけど、3カムタイプに改修されている。 古い LEICAFLEX 用レンズで1カムタイプや2カムタイプのままで改修されずに販売時のままの製品も見かける。
レンズ構成
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レンズ構成 |
4群5枚構成のエルノスター型である。 フォーカシングは全体繰り出しなのでレンズ重量が重いので、鏡筒を上や下へ向けた場合の操作性は良いとは言えない。 また、135mm F2.8 の最小絞りはF22まであったのに 180mm F2.8 の最小絞りはF16までなのは不思議だけど、回折の影響が顕著だったのかも知れない。 なお、ELMARIT-R 180mm F2.8 の3年後に発売された NIKKOR-P Auto 180mm F2.8 も同じエルノスター型を採用していたが445gも軽くなっていた。
最短撮影距離が2mなので、ちょっと寄り足りない感がある。 絞りは8枚絞りで絞っても多角形感が比較的少なくて良好だけど、手振れが気になるので開放絞りで使う事が多くなるだろう。 また、鏡筒の作りは大変良いけど、レンズ重量が1,325gというのは他社同仕様レンズと比較しても群を抜いて重たい。 以下は同時代に近い競合製品を比べた表である。
メーカー | レンズ名称 | 発売年 | レンズ構成 | 重量 |
LEICA | ELMARIT-R 1:2.8/180 Type I | 1967年 | 4群5枚 | 1,325g |
NIKON | NIKKOR-P Auto 1:2.8 f=180mm | 1970年 | 4群5枚 | 880g |
OLYMPUS | ZUIKO AUTO-T 1:2.8 f=180mm | 1978年 | 5群5枚 | 700g |
Carl Zeiss | Carl Zeiss Sonnar 2.8/180 T* | 1979年 | 5群6枚 | 985g |
LEICA | ELMARIT-R 1:2.8/180 Type II | 1980年 | 4群5枚 | 825g |
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三脚座と500円硬貨 |
重量が重いこともあって、レンズには500円硬貨と同程度の底面積を持った三脚座が固定装備されている。 残念ながら回転しない三脚座なので、三脚に装着した場合は縦横の構図変更を三脚側で行う必要がある。 また、レンズ先端部に引き出しタイプのフードが内蔵されていて、フィルターはΦ72mmが利用できる。 ただし、フード先端の収納制限リングを外してからでないとフィルターを装着出来ない。 収納制限リングを外した状態では繰り出し状態時にフードが距離環側へ落ちてしまうので、フィルターを装着した後は収納制限リングを元に戻すべきだ。
1980年に発売された2型では鏡筒構造変更と光学系も修正されて825gへ軽量化され、1998年には5群7枚構成でアポクロマート補正かつインナーフォーカス式となった APO-ELMARIT-R 1:2.8/180 が発売された。
カムって何?
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レンズのカム |
ところで、ライカ一眼レフの「カム」って何かというと、絞り環の情報をメカ的にボディーに伝達する手段で、1965年に発売された測光が外側式だった LEICAFLEX 用の絞り伝達傾斜カムが「1-CAM」で、絞り値の絶対値を伝達している。 1968年こ発売されたTTL開放測光方式になった LEICAFLEX SL 用の絞り伝達傾斜カムが「2-CAM」で、開放測光用としてレンズの開放F値を基準とした相対絞り値を伝達している。 1976に発売されたTTL開放測光方式である LEICA R3 用の絞り伝達カムが「3-CAM」で、「2-CAM」同様にレンズの相対絞り値を伝達しているが、伝達方法が傾斜カムによる深さ伝達から回転量による伝達方式へ変更された。 ちなみに、「3-CAM」を採用した LEICA R3 以降のボディに「1-CAM」や「2-CAM」のレンズを装着するとレンズが外れなくなったり、故障する事があるらしい。
この様に測光方式や伝達方式の変遷によりカムが追加されていったが、後に「1-CAM」と「2-CAM」を廃して「3-CAM」だけを搭載する様になり、これを「R-Only」と呼んでいる。 更に1996年に発売された LEICA R8 では「R-Only」に加えて電子接点による電子情報を伝達する「ROM」接点が追加された。
描写特性
遠景描写
高温・多湿で遠くが霞んでいるのと陽炎ユラユラで本来の描写性能ではないと思います。 なお、今回はRAW現像時にDレンジオプティマイザーをオフにしてオートホワイトバランスで現像しています。
絞り:F2.8 |
絞り:F4 |
絞り:F5.6 |
絞り:F2.8 |
絞り:F4 |
絞り:F5.6 |
F2.8開放では若干ソフトな描写で色収差によるパープルな色付きも感じるけど、さほと気にならないし画面中央から画面隅に渡って均質な描写だ。 この時代の明るい望遠レンズの開放描写としては解像感があり、細部描写もなかなか良い思う。 F4に絞るとソフト感が消えて画面全域で充分な描写になり、F5.6に絞ると画面全域で素晴らしい描写となる。 ただし、画面周辺では倍率色収差によるパープルフリンジが少し感じられる。 周辺光量落ちは少ない方で、F4で気が付かなくなりF5.6で解消する。
ちなみに、街の遠景では手前の家屋などはデジタルカメラの焦点深度に入らないので少し前ボケなのを注意して観察する必要はあるけど、この年代の明るい非アポクロマート望遠レンズとしては優秀なレンズだと思う。
一般撮影
記載の絞り値は記憶に頼っているので間違っているかも知れません。 今回はRAW現像時にDレンジオプティマイザーをオフにしてオートホワイトバランスで現像しています。
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F11 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F11 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2.8 |
F2.8開放でもフレア感が少なくてコントラストも良くてシャープな描写をしてくれるけど、高輝度部の縁に色収差によるパープルフリンジが気になるシーンもある。 また、発色はニュートラルで派手な色乗りじゃないので見たままの仕上がりという印象である。
ボケ味はなかなか良くて、後ボケが汚く見える事は殆ど無い。 また、玉ボケにもクセが少なくて綺麗なので、背景が玉ボケになるシーンを探すのが楽しいレンズだ。 なお、高輝度部の前後ボケの周りに色が付く「色ボケ」は比較的少ない方だと思う。
画面に太陽を入れ込むとゴーストが発生するけど、比較的ゴーストも逆光フレアも少ないと思う。 ただし、入れ込む場所を探すと太い円弧状のゴーストが発生するポジションがある。
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