巨大化した NIKON F5 に対し、小型軽量化した NIKON F5 としての位置付けだったので、F5ジュニアと呼ばれたりした。 NIKON F5 の操作性を継承し、一部の操作ボタンを大型化してさらに快適な操作性を実現した。 「小型軽量化された」とは言っても、手巻きマニュアルフォーカスカメラと比べると豊満なボディラインで、約785gの体重はメタボだと思う。 充分に現代的なカメラだけど、前世紀のカメラなのでぎりぎり Vintage とした。
NIKON F100
仕事の関係で NIKON F5 を少し触った事があるけど、個人的に買いたいカメラではなかった。 とはいえ、所有するニッコールレンズを活かしたいのでF5ジュニアである NIKON F100 ならと思って「中古」で F100 を購入してあった。 カメラの仕様を良く調べてなかったので、Ai化される前のニッコールレンズは装着出来ない(カメラの絞り連動レバーを壊す)事が判り愕然とした。 しかも、NIKON F5 の様な「絞り連動レバー改造」も用意されて無いのであった。 更に、旧レンズをAF可能にするコンバーター TC-16 を買ってみたら...ナント、NIKON F100 はこれにも対応していなかったのである...本当かよぉ! これらの様に NIKON F100 は過去を切り捨てたカメラだったのだ。
本体正面
レンズマウントは当然 NIKON F マウント で、AI連動爪は可倒できない固定式であり可倒改造も用意されていなかった。 カメラを使っているうちにAI連動爪の回転渋くなる場合があり、開放絞りにしているのに連動爪がF5.6あたりで止まっている場合がある。 こうなるとマウント部の分解清掃が必要となる。
向かってマウント左側に絞り込みボタンがあり、大昔のカメラとは異なり電気スイッチになっていて、アクチュエータで絞り駆動レバーが動作する。 当然だが、電池が無ければ絞り込みは出来ない。
向かってマウント右側にレンズ脱着釦があり、その下側にAF動作セレクターレバーがある。 S:Single Servo AF / C:Continuous Servo AF の事で、僕は殆ど「C」から変えた事がない。 MはManual Focus で、マウントから出ているAFカプラーを引っ込めてメカ的なAF駆動系を断ち切る。 これは AF Nikkor 180mm F2.8D など、マニュアルフォーカスなのにレンズ側AFカプラーが回転しちゃうレンズの為にあり、ボディー側のAF駆動系が無理に回されない工夫だ。
レンズ脱着釦の上方にはシンクロターミナルと10ピンのリモコンターミナルがあり、リモコン以外にパソコンとのシリアル通信にも利用する。
本体上面
本体上面 |
本体左肩には オートブラケッティングボタン / シンクロモードボタン / ISO感度ボタン があり、それらの基部に 給送モードセレクトダイヤル がある。 給送モードの変更はロックボタンを押しながら変更する。
本体右肩には サブダイヤル / シャッターボタン / 電源スイッチ / 露出モードボタン / 露出補正ボタン / 液晶表示パネル があり、ペンタ斜面に 測光モードセレクトダイヤル があり、必要なものが全て揃っている感じではある。 なお、電源スイッチをONから更に回せば液晶パネルが所定時間照明される。
本体背面
背面左側に カスタムセッティングボタン / コマンドロックボタン があり、本体右側には AE/AFロックボタン / AF作動ボタン / メインダイヤル がある。
背蓋には フィルム確認窓 / AFエリアモードセレクトダイヤル / フォーカスエリアセレクター / フォーカスエリアセレクターロックレバー が配置されている。 なお、アイピース右横にあるのは老人には必須の 視度調整ノブ である。 話は逸れるが、視度補正機構を始めて搭載した Minolta XD-S の「S」は、老眼鏡使用のSenior層を主ターゲットとしたネーミングらしい。
ちなみに、NIKON F100 の裏蓋はゴム調になっているんだけど、これが加水分解によりベタベタになってしまう。 無水エタノールで根気よく拭けば対処できるけど、プラパーツの塗装が弱いので印刷まで消えてしまうので注意が必要である。 僕の F100 はAFエリア印刷がちょっと消えてしまった。 なお、無水エタノールで拭いてからしばらく経つけどベタベタは再発していない。
使用電池
このカメラはフィルム給送やオートフォーカスなどすべてが単三乾電池4本で動作する。 単三電池ホルダーの代わりにリチウム電池ホルダー MS-13 を使えばリチウム電池CR123Aを2本で動作させる事も可能だ。 この時代のカメラはリチウム電池が標準だったけど、普通に単三乾電池が使える NIKON F100 には好感がもてる。
ニコンはカメラの電源対応に熱心で、マルチパワーバッテリーパック MB-15 を装着すれば単三電池6本かニッケル水素電池 MN-15 を利用できる。 MB-15 を装着すれば縦位置撮影でのホールディングやレリーズが便利になるけど、ただでさえ大きく感じる NIKON F100 には必要性を感じないし、大きく重くするくらいなら NIKON F5 を選択すべきだ。
ファインダー内表示
NIKON F100 の情報表示は全てデジタル式に表示される。 従って、CPU非搭載のレンズを装着すると絞り値が表示されない。 一方、兄貴の NIKON F5 には光学式直読絞り表示が装備されているのでCPU非搭載レンズでも絞り設定値が確認できる。 CPU非搭載レンズを使う人にとっては NIKON F100 はとても残念な仕様だった。
AFフレームがちょっと邪魔なのは仕方ないとして、見え具合はなかなか良い。 ただ、僕の腐った眼ではマニュアルフォーカスでジャスピンに合わせる自信はない。 『合焦ランプが有るからイイじゃん』とも言えるが、ピントを合わせる場所と違うところに視線を逸らすのが嫌なのと、僕の CANON EOS 5D Mark II にはスプリットプリズムスクリーンを組み込むほど、マニュアルフォーカスではスプリットプリズムに頼っているのだ。
スクリーンをスプリットに交換したい
中華製のフォーカシングスクリーン |
スクリーン交換 |
ただし、純正スクリーンにはツマミ部があるのだけれど、この中華製スクリーンにはツマミがなく、ツマミ部分に黒点がマーキングされているので間違える事はないけど、交換に神経を使ってしまう。
中華製フォーカシングスクリーンの見え具合
ボカした状態 |
それにしても、スクリーンの製造は結構難しいんだけど、今の中国の光学技術はかなり高いレベルにあることを実感した。
Aiレンズの通信対応
スプリットプリズム付きのスクリーンに交換したので格段にマニュアルフォーカスし易くなった。 残念なのはCPUを搭載していない Ai Nikkor や Ai-S Nikkor などを装着すると NIKON F100 ではファインダー内に絞り値が表示されないことだ。
そこで、非CPU搭載レンズを通信対応にする、通称「タンポポチップ」を TAMRON ADAPTALL 2 マウント に装着して TAMRON SP 90mm F/2.5 Model 52BB を Ai-P 化してみた。 詳しくは NIKON用 ADAPTALL 2 マウントの Ai-P化 を参照して欲しい。 これで通信非対応のタムロンレンズでも絞り設定値がファインダー内にデジタル表示されるので、カメラをでんぐり返さなくてもファインダー内で絞り設定が可能になる。 そのうち Ai Nikkor 105mm F1.8S も Ai-P化 しようと考えている。
非Aiレンズ装着を実現したい
憎き固定式Ai連動爪 |
NIKON F5 には非Aiレンズに対応するメーカー改造サービスが用意されていたが、NIKON F100 にはその様なサービスは無かった。 前世紀、僕は非AiレンズをAi改造するのは嫌だったので、手持ちの古いレンズは非Aiのままであり、このままでは NIKON F100 では使えないのである。 NIKON F100 のAI連動爪を可倒改造する記事は見たことがないので、自力で考えるしかない。 失敗するとカメラがジャンクと化すので、残念ながらコレは未だに実現できていない。
あとがき
今となっては大きくて重い事が難点の NIKON F100 |
銀塩写真を楽しむには NIKON F100 は大きいし重いので、Ai以前の旧型レンズもあるならAI連動爪が可倒式の NIKON FE の方が圧倒的に使い易いだろう。 Ai以降のレンズしかないのであれば高性能な NIKON FE2 がお勧めだ。
ちなみに、先頭写真で装着している Ai AF-S Zoom Nikkor ED 17-35mm F2.8D(IF) は超音波モーターに「鳴き」が発症していてキィキィうるさいし、位相フレネルレンズを使った500mmレンズなどは対環境試験で性能がガタ落ちして元に戻らなかったりするので、20世紀末以降からニコンの新技術には妙な妥協がある気がする。
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