CONTAX RTS III - 1990年発売

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CONTAX RTS III + Distagon 35mm F1.4
CONTAX RTS III + Distagon 35mm F1.4
 カメラの生産を打ち切ったカールツァイスがヤシカと提携して1975年に発売されたのがポルシェデザインの CONTAX RTS で、CONTAXブランドが復活した。 そんな新CONTAXブランドで発売されたカメラのうち最高級機シリーズが RTS で、そのシリーズ最終機が1990年発売の CONTAX RTS III でした。
 なお、ヤシカは過大投資や横領事件や社長親族の麻薬事件や景気悪化などにより、1975年には事実上経営破綻した。 カメラの生産は続けたけど新製品の開発が困難になり、1983年に京セラに吸収合併されたのである。 その後、2005年に京セラはコンタックス事業の終了を発表し CONTAX ブランドの終焉となった。

CONTAX RTS III

 CONTAX はカールツァイスのレンズが使える事が最大の魅力で、愛用したカメラマンもそれなりに居たハズだ。 『写真はレンズ描写決まる』と言っても過言ではないけど、映像を完璧にフィルムへ写し止められる信頼性が高いカメラも必要だ。 そんな要求に応えるのが CONTAX RTS III で、各種の最新技術が導入されたカメラであった。
・秒間5コマ連写のモータードライブを内蔵
・フィルムを圧板に吸着させて平面性を確保するRTVシステム
・プレフラッシュTTLスポット測光
・コマ間デート写し込み
・視野率は100%で倍率は0.74倍
・最高速シャッター速度は1/8000秒
・外装素材にマグネシウムやチタンを採用
・電源は2CR5か単三6本
一方、CONTAX RTS や CONTAX RTS II よりサイズと重さも飛躍的に増大した。 ボディ本体はアルミダイカスト製だけど軍艦部にはマグネシウム合金を使い底ケースはチタン合金なので軽量化は考慮している様だ。 けけど、ボディーだけで1.2Kgを超えるカメラでは持つのも辛くて楽しめなくなったのも事実だ。

軍艦部右肩まわり

軍艦部右肩まわり
軍艦部右肩まわり
 レリーズボタンの周りにメインスイッチがあり、ONポジションに加えてAEロックポジションが用意されている。 レリーズボタンは半押し全押のストロークもトルク感も適切で『ここで切れる』という感触が判る。
フィルム給送モードダイヤルは持ち上げて設定する。 多重露光ポジションは1回のレリーズでSに戻る。 フィルム給送モードダイヤルの基部にストロボプリ発光レバーがあり、接続されたストロボを発光・スポット測光してデータをファインダー内に表示する。
露出補正ダイヤルにはロックは無く、1/3段ごとにクリックがあり、ゼロポジションのクリックは少し重くなっている。 また、露出補正ダイヤルを持ち上げればISO感度設定ができ、DX設定ポジションも用意されている。 個人的には露出補正ゼロポジションのクリックをもっと重くして欲しかった。
カメラ右側面
カメラ右側面
 露出補正ダイヤルの基部がブラケットコントロールレバーになっていて、ブラケット量が±0.5段か±1.0段かを選択できる。 僕の個体はブラケットコントロールレバーが重く、操作すると露出補正も動かしてしまうのが難点だ。
上面液晶表示の枠中にフィルムカウンターが表示され、枠外の上下部にバッテリー情報とフィルム給送状況が表示される。
カメラの右側面下にも縦位置用にレリーズボタンがあり、このボタンを使うかどうかのレバーがある。 残念なのは、このレバーにはAEロックポジションが無いし、あったとしても上面レバーと競合してしまう。 つまり、AEロックは縦位置でも横位置でも有効になる様に別ボタン方式にすべきなのである。
側面レリーズボタンの上にあるソケットはバルブ専用のレリーズソケットで、側面レリーズボタンの後ろ側には巻き戻しスイッチレバーがある。

軍艦部左肩まわり

軍艦部左肩まわり
軍艦部左肩まわり
カメラ左側面
カメラ左側面
 シャッター速度ダイヤルのクリック感は適切で高級感がある。 中央にロックボタンがあるけど、ロックされるのは X125 だけである。
シャッター速度ダイヤルの基部に露出モード選択レバーがあり、背面側のロック解除ボタンを押しながら操作する。
背面側の左端にリモートレリーズソケットがあり、左側面にシンクロソケットがある。
ボディーの左側面中央に背蓋開放つまみがあり、つまみを起こして回せば背蓋が開く。
ペンタブ左壁に視度調整ノブがあり、引き上げて視度調整してから元に押し戻せば視度調整が固定される。

カメラ正面

カメラ正面
カメラ正面
 主ミラーはしゃくり上げ方式で、大きなミラーを採用して望遠レンズのミラー切れを低減している。 また、通常は見えないが主ミラーの裏にサブミラーがあり、AF一眼レフの様な光路でスポット測光用センサーに光を導いている。
絞り込みレバーや絞り値伝達レバーはマウント内に配置されているが、ボディー本体の個体差や装着レンズの個体差によっては絞り値伝達ズレが気になる場合がある。 ピント調節のためにマウントに回転方向の力が加わるとF11がF9.5に変化したりする。 初代RTSの様なアナログスケールだったら気にならないのだけど、デジタル表示になると凄く気になってしまう。 なお、グリップ下部に付いているのはセルフタイマーのLEDで、セルフタイマーが動作中に点滅して知らせてくれる。

マウント右側

マウント右側
マウント右側
 マウントの右側で正面に向いた大きなボタンは測光開始スイッチである。 大抵はシャッターボタン半押しで対応しているので、このボタンを使ったことは無い。
エプロン側に付いているボタンはレンズ着脱ロックボタンで、その周りに付いているレバーはミラーアップレバーである。 どっかのメーカーと違ってレバーを上げればミラーもアップし、レバーを下げればミラーがダウンする。
なお、CONTAX RTS / RTS II まではミラーアップレバーはマウント左側エプロン部に付いていた。
 

マウント左側

マウント左側
マウント左側
 エプロン部に付いているボタンは絞り込みボタンで、単なるスイッチになっている。 実際の絞り込みは電動方式なので、電池を入れないと何も反応しない。
ボタン周りのレバーは測光方式切換えレバーで、中央重点測光とスポット測光とを切り換える。 なお、中央重点測光センサーはペンタプリズムのアイピース上部にあり、スポット測光センサーはミラーボックス下部にあり、サブミラーを介して光が届けられる。 スポット測光の為にかなりコストが掛かっているので、スポット測光をメインに使ってあげよう。

カメラ背面

カメラ背面
カメラ背面
 アイピース右にアイピースシャッターレバーがある。 アイピースシャッターには赤丸があるので設定状態が良く判る。
背蓋中央の液晶と縦に並んだスイッチは駒間写し込みの設定に使われ、ネジ止めされた蓋は駒間写し込み用時計ICに使う電池室蓋である。 なお、背蓋の出っ張り部内にバキュームメカがはいっている。

フィルム圧板

フィルム圧板
フィルム圧板
 これがセラミック製フィルム圧板で、3本のスリット部がフィルムを圧板に吸着して平面性を確保する仕組みになっている。 このシステムをRTV(Real Time Vacuum)と呼ばれ、レリーズ直前からシャッター後幕走行完了までフィルムを圧板に吸着して平面性を確保する。 なお、バルブ撮影の時は吸着されない。 また、背蓋には3本ものローラーが設置され、これだけでもフィルム平面性に気を使っている事がうかがえる。 ただし、このバキューム圧板が組み込まれた背蓋は結構な重量があるので、その効果を考えるとバキューム無しの軽量な背蓋も用意して欲しかったなぁ。

底蓋・電池室

底蓋・電池室
底蓋・電池室
 底蓋はチタン製で軽いのだけれど、使っていると最初に底蓋の塗装がハゲてくる。 恐らくチタン合金への塗装は難しいのだろう。 電池は単三電池6本か2CR5リチウム電池1個を使う。 コンビニで入手できる単三電池を普通に使えるのは有難いが、単三6本は重い。 6Vの2CR5で動作するなら、単三4本でも動作可能にして欲しかった。

ファインダー表示

ファインダー表示
ファインダー表示
 ファインダー内の情報表示は液晶表示になっていて青いバックライト照明に白文字で表示される。 ファインダー視野外下には各種情報表示があり、左からフィルムカウンター / ストロボメーター / 充完表示 / 絞り表示 / 露出モード / 露出補正警告 / 測光モード である。 ファインダー視野外右にはシャッター速度表示があり、マニュアル露出の際は制御値が点灯して適正値が点滅するので点灯と点滅が重なる様にすれば良いのだけど直感的に判り難い。 AEロック機能があるので絞り優先が僕の基本的な使い方だ。
ファインダーの視野率は100%になったのだけど倍率が0.74倍なので大きいとは言えない。 そのためかピントが合ってるかどうか判断し難いのと、情報表示文字が小さく感じる。

カール・ツァイスのレンズ

カール・ツァイスのレンズ
カール・ツァイスのレンズ
 CONTAX の魅力は Carl Zeiss のレンズが使える事だ。 僕も何本か持っていて、一般撮影ではとても魅力的な描写だと思うけど、天体写真撮影などでは点像が大きめだったり色収差が大きめだったりしてピント合わせに苦労した。 Macro-Planar 60mm F2.8 に至っては「寄れるポートレートレンズ」といった感じで、一般的な解像力重視の接写レンズとは全く違う描写だった。 それまで使っていた日本製レンズを「サムライ」としたら、カールツァイスのレンズは「フロイライン」と表現できるかもしれない。

あとがき

YASHICA FR + Planar 50mm F1.7
YASHICA FR + Planar 50mm F1.7
 実は、カールツァイスがヤシカと提携する前、旭光学にもカメラ事業の提携を持ち掛けていた。 旭光学が提携を受け入れていたら、今の PENTAX K マウントが 新CONTAX マウントになっていたのかも知れない。 また、この頃に旭光学から発売された広角レンズのいくつかはディスタゴンそっくりのレンズ構成になっていて、確かに光学関連の提携があったであろう事が想像できる。 今となってはヤシカも旭光学も消滅してしまった。
若い人は知らないだろうけど、原宿から明治通りを渋谷方面に下って行くとヤシカビル(現、京セラ原宿ビル)がある。 その資産だけでも京セラがヤシカを引き取るメリットがあったと思うなぁ。

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