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minolta X-1 後期型(前)と前期型(後) |
1970年ころ、当時のミノルタにはプロ用高級カメラメーカーというイメージは無かった。 少年時代の友達に SR-T101 を使っている奴が居たけど、プロ向けのカメラを作っているメーカーというよりはハイアマ向けのカメラメーカーという感じだった。 そんなミノルタから1973年にプロ向けカメラとして発売されたのが minolta X-1 だった。 よく入り浸っていた喫茶店のオヤジの話によると『知り合いのカメラマンが冬の屋外でX-1を使っていて動かなくなったそうで、ミノルタのサービスが来たそうだ。 やっぱり信頼性などはニコンに敵わない』と語っていたなぁ。
minilta X-1
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握り部の露出計スイッチ |
minolta X-1 はファインダーやスクリーンが交換式で電子制御式シャッターを採用し、AE Finder を装着すれば絞り優先AEが可能な最高級カメラとして開発された。
ボディーの右手で握る部分に露出計のスタートスイッチが配置されていて、カメラを構えれば露出計がオンになる工夫が組み込まれている。 この仕組みは個人的に『なるほどぉ!』と唸ったが、他のメーカーは追従しなかった。 ファインダーのアイピース脇にあるスイッチをONにしていなくても、握り部のスイッチが入っていれば露出計が働いてAE撮影が出来るので便利だ。 ただし、アイピース脇にあるスイッチがOFFで、握り部のスイッチに触らずにAEでレリーズするとカメラがミラーアップして止まってしまう落とし穴がある。 AE撮影では適切な測光時間を確保しないと露出オーバーになるので、メカ的にレリーズシーケンスが始まってしまう minolta X-1 では『露出がオーバーになる!』というクレームを避けたのだろう。 なお、当然ながらマニュアル露出撮影であれば問題なくレリーズ出来る。
交換式ファインダー
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交換式ファインダー |
ファインダーは交換式で、発売当初に
・AE Finder |
絞り優先AEファインダー |
・M Finder |
追針式マニュアルファインダー |
・P Finder |
プロフェッショナルファインダー |
・W Finder |
ウェストレベルファインダー |
・H Finder |
高倍率ファインダーファインダー |
絞り優先AE撮影が可能になる AE Finder を装着した minolta X-1 はデカくてゴツい感じだけど、露出計無しの P Finder を装着すれば「普通」のカメラ的な風情となる。
AE機能を持たない露出計だけを組み込んだ M Finder というのもあったけど、姿かたちは AE Finder と同じでシャッターダイヤル上に「AUTO」ポジションが無いだけだった...何でそんな無駄なものを商品化したのだろう?
minolta X-1 前期型
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minolta X-1 前期型 |
これは前期型の minolta X-1 で、後期型と比較するとマウント内上部の遮光板が可動式になっていたり、背蓋にメモホルダーがなかったり、底部の電池蓋がちょっと違っていたりする。 前期型用の AE Finder はCdSセンサーを使ったメーター式で、低輝度時にメーターの応答性が遅かった...というか、当時としてはこれが普通だった。
この AE Finder で特筆すべきはASA感度設定や露出補正やシャッター速度オートポジションに「ロック」という概念が無い事だ。 ロック解除操作なしでいつでも好きなように設定できる。 露出補正に至っては補正段数表示すらない無段階アナログ官能操作になっていて、指を離せばゼロ位置に戻る(補正の戻し忘れは無いが固定できない!)仕組みだった。 操作性に賛否はあるだろうけど、ロックが無いのは潔い仕様で僕としては好感がもてる。
この時代のAE機能を搭載したカメラにはAEロックという概念がなく、ロック解除とか元に戻すとかを意識する事なく、簡単に露出補正を行えるのは便利だったのだ。
ちなみに、1976年に発売された PENTAX K2DMD にはメモリーロック(AEロックみたいなもの)が搭載されていた。
minolta X-1 後期型(多分1975年8月以降)
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minolta X-1 後期型 |
これは後期型の minolta X-1 で、マウント内上部の遮光板が固定式になったり、背蓋にメモホルダー付けられたりした。 最も大きな違いは1976年に minolta X-1 Motor と同時に発売された AES Finder が利用できる様になった(X-1 Motorが発売される10ケ月前に後期型になっていた)事だろう。 また、やぼったい前期の AE Finder よりデザインは良くなったと思う。 なお、初期型の minolta X-1 に AES Finder を装着して「AUTO」撮影すると、ミラーアップして止まってしまうので注意が必要だ。
この AES Finder ではSPCセンサーを用いて応答性と低輝度性能が良くなり、ファインダー内シャッター速度表示もLEDを使った表示に変更された。 ただし、シャッター速度表示レンジが高速側と低速側の切換え式なのは頂けない。
1/30秒より低速になると▼LEDが表示されるので、ファインダー左脇のメカスイッチを操作して1/15秒~8秒の低速側表示に切り換える必要があり非常に面倒だ。
そして僕にとって最も改悪なのが各種ロックの採用だろう。 おそらく、『勝手にASA感度が変わっていた』とか『勝手にシャッター「AUTO」が外れていた』などのクレームがあったのだろう。 結局 AES Finder では他メーカーと同様にロック機構がある保守的な仕様になってしまった事は悲しい。
minolta X-1 AE Finder の表示
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minolta X-1 AE Finder の表示 |
minolta X-1 AE Finder の表示はファインダー上方に絞り値直読小窓があり、右にシャッター速度スケールがある。 絞り優先AE時にはシャッター速度スケールのメーター指針が差すシャッター速度でレリーズされ、マニュアル露出時は指針と追針が合致するように絞りリングやシャッターダイヤルで露出調整する一般的な仕様だ。 受光素子がCdSなので低輝度下での反応は遅いけど、アナログ感を堪能できる。
シャッター速度スケールは採光式なので被写体照明状況に依存しないが、採光窓の配置・工夫が悪く、入射光具合で明るさに大きなムラがでる。
minolta X-1 AES Finder の表示
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minolta X-1 AES Finder の高速輝度側表示 |
minolta X-1 AES Finder の表示はファインダー上方に絞り値直読小窓があるのは AE Finder と同じだが、右のシャッター速度指針がLEDに変更されている。 絞り優先AE時はLEDが点灯しているシャッター速度でレリーズされ判り易いが、マニュアル時はLEDが点灯しているシャッター速度になる様にシャッターダイヤルを回してシャッター速度を合わせる方式である。 シャッター速度制御値は右上小窓に表示されるんだけど視覚的・感覚的に使い難い仕様で、AEで撮影するのが基本になる。
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AES の低速側表示 |
シャッター速度の表示は1/2000秒~1/30秒までの高速側と1/15秒~8秒の低速側とに分かれていて、手動で切り換えなければならない。 1/60秒~1/8秒ほどの低照度被写体の場合はいちいち切り換えてられない。 更に困る事は、低速側に設定して表示不能のシャッター速度の場合は何も表示されない(高速側の1/2000秒以上の警告も出ない)という間抜けな仕様であった。 ただし悪い事ばかりではなく、低速側度表示にした場合はシャッター制御数値そのものがLEDによる透過照明により暗がりでもハッキリと数値が判る。 なお、絞り値とAマーク(或いは設定シャッター速度)は暗がりでは殆ど見えない...何だかなぁ...
前期と後期の違い
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前期型は可動式の遮光板だった |
minolta X-1 の前期と後期との外見上の違いは、マウント上部遮光板 / 底板 / 背蓋 に違いがみられる。 前期の遮光板は可動式だったが後期の遮光板は固定式になり、アップしたミラーは遮光板の後ろに隠れる様に変更された。 可動式だった前期型の遮光板の効能は良く判らない。 また、底板にも違いがあり「MADE IN JAPAN」の文字や電池蓋の赤点などである。 最も簡単に判るの違いが背蓋で、前期の背蓋にはメモホルダーがなく、後期の背蓋にはメモホルダーが備わっている。
目に見えない困った違いは前期型にAESファインダーを装着してAE撮影するとミラーアップして止まってしまう事だ。
ACCESSORY HOT SHOE
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ACCESSORY HOT SHOE |
Nikon F や Canon F-1 と同様、クリップオンストロボを使う場合は巻き戻し部にホットシューを装着しなければならない。 このアクセサリも巻き戻し操作などをする時は外す必要があり不便なものだ。
当時のストロボはシンクロ接点に高電圧が流れるストロボだったので、ファインダー内接点を介してホットシューまで持って行くのは無理だったのだろう。
あとがき
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minolta X-1 と MD ZOOM ROKKOR 40-80mm F2.8 |
僕はゲテモノが大好物なので RF ROKKOR 250mm F5.6 や、操作性が最悪の MD ZOOM ROKKOR 40-80mm F2.8 などは持っているが、多くのロッコールレンズを買い求める事はなかった。 少ない手持ちのロッコールの中で、大柄な minolta X-1 には似合わない MC W.ROKKOR 24mm F2.8 は好みの焦点距離だし思った以上に良いレンズだった。 また、MC ROKKOR-PG 58mm F1.2 は「鷹の眼ロッコール」という異名を持つレンズで、大きくて重厚な作りはデカイ minolta X-1 に良く似合うし、開放F1.2の明るいレンズは『バカ玉』と呼ばれるほど残存収差が目立つレンズが多いけど、このレンズのコマ収差は開放でも少ない方だと思う。
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