Depth of Field | 被写界深度

SONY ILCE-9 SIGMA 85mm F1.4 EX DG HSM + MC-11 F:2
SONY ILCE-9 SIGMA 85mm F1.4 EX DG HSM + MC-11 F:2

被写界深度

撮影機材が SONY ILCE-9 + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS で撮影する様になって写真が平面的になってしまった...と感じている。 これまでは EOS-1DX Mk II + EF400mm F2.8L IS II USM で撮影していたんだけど、仕上がる写真が明らかに違う。 勿論、SONY の色味は妙なので 私のEOSカスタムピクチャースタイルとは比べ様もないけど、色味じゃなくて SONY ILCE-9 + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS で撮影した写真は立体感に欠ける。



SONY ILCE-9 FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS F5.6 足元トリミング
良く考えてみたら、EF400mm F2.8L IS II USM での撮影でもF2.8の開放で撮影してましたが、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS での撮影ではF5.6なので、その差が2段もある。 F2.8だと低ISO感度で撮影できるという有利な面はあるけど、それ以上に写真の立体感に差が出てくる。

EOS-1DX Mark II EF400mm F2.8L IS II USM F2.8 足元トリミング
スポーツをピント許容幅が狭いF2.8で撮影するのはリスクがあるけど、EOS-1DX Mark II でなら何とか対応できていた。 SONYには 400mm F2.8 というレンズが存在しないので比較は出来ないけど、SONY ILCE-9ではF5.6でもぬるピンが多い事からF2.8でのスポーツ撮影はかなり厳しいと思う。

被写界深度と焦点深度

さて、被写界深度はどの位なら立体感が出るのかっていうのは難しい問題だけど、ちょっと考えてみた。 まず、焦点深度から考えなけりゃならない。 大昔から焦点深度の定義は...
 焦点深度 = ±δF
  δ:許容錯乱円径(点像がボケてもボケていると感じない直径)
  F:レンズの絞り値
...と定義されている。

δは焦点面でのボケが判別できない最小のサイズで、写真を鑑賞する環境から逆算されたものである。 写真の鑑賞環境とはキャビネ写真を250mmの明視距離で普通の眼の分解能(角度の秒)を持った人が鑑賞する場合にという事が前提になっています。
眼の分解能は0.01666度なので、キャビネ写真上の分解距離は 250mm × tan(0.01666度) = 0.07272mm という事になる。

分解能と違ってボケの認識はざっくりと分解能の2倍とすると、明視距離で 2 × 0.07272mm = φ0.145mm となる。 この値に、キャビネサイズ(130mm×180mm)と135フィルムサイズ(24mm×36mm)の対角線長比率 0.19489倍 かけると焦点面の許容錯乱円径として...
  δ = 0.145×0.19489 = φ0.0283mm
...が導き出される。
焦点深度が判れば被写界深度は昔の人なら学校で習った 1/f = 1/a + 1/b を使って簡易的に計算出来る。

昔のズームレンズで検証

昔の直進ズームには被写界深度目盛り線があった
昔のズームレンズに刻印されていた被写界深度目盛りをみると、焦点距離が70mmで距離を2mに合わせてF32に絞ると被写界深度は約1.5mから3mの範囲が深度内という事が判る。
これから読み解いてみると、F32の焦点深度は±0.96mm(途中の簡易計算は書かないけど)だと推測できる。 つまり、絞り値32の δF = 0.96mm なので δ = 0.96 / F から、“この”メーカーはδをおおよそφ0.03mmに設定している事が判る。 これは先ほど計算した最小錯乱円径 φ0.0283mm とほぼ一致する。

F2.8レンズの被写界深度は?

現在のデジタル写真では簡単にピクセル等倍で観察できるので、キャビネサイズを明視距離で鑑賞するという意味が無くなりつつあるけど、写真を明視距離で鑑賞するのは今でも同じはずだ。

キャビネサイズの明視距離は 250mm だったけど、A3サイズの様に大きな写真の明視距離は 579mm になるので、素晴らしい写真だと『おおぅ、どれどれ』と、近づいて鑑賞したりするので焦点深度は浅くなると考えてイイだろう。

現代の鑑賞環境であるモニターで、拡大するのと似たような感じだけど、ピクセル等倍で観るのは鑑賞じゃなく観察である。 背景のボケ具合っていうのもあるけど、合焦している主被写体の微妙な被写界深度幅が広いか狭いかで写真の立体感に差が出てくるんだろうと思う。

F2.8の焦点深度は δF から ±0.084mm となるので、焦点距離が400mmのレンズで40m先の被写体を撮影する場合を想定すると、被写界深度は遠い側は 40.84m で近い側は 39.19m になる。
『おおぅ、どれどれ』を考慮して、その半分程度と想定すると 40m 先の被写体に対して ±0.4m が被写界深度と考えて良さそうだ。 つまり人体の幅を過ぎるとボケ始めるっていうのが僕がこれまで慣れ親しんだ被写界深度という事で、「なんとなく」感覚にマッチする。 これがF5.6になると選手二人分になってしまうので平面的な写真と感じちゃうんだと思う。

まとめ

焦点距離が400mmで話をしたけど、下の作例写真みたいに撮影距離が焦点距離の100倍程度での話です。 FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS での撮影では、立体感不足とか余計な背景が見えて来るといった欠点はあるけど、軽くて携行し易いレンズなので便利ではある。

ところで、F2.8とF5.6との2段の差を感じていたけど、F4ならどうなんだろう?
そこで、F2.8の写真とF4の写真を比較してみた。 やはりF2.8で撮影した写真の立体感はさすがで、F4の写真もなかなかだ。 F2.8だとAF精度があやしいカメラで撮影する場合は厳しいけど、やはり大口径レンズで撮影したいと思うこの頃だ。

じゃ、APS-CサイズとかM4/3サイズはどうなんだろうと思って計算して見た。 同じ撮影現場でフルサイズの EOS-1DX + EF400/2.8L と同じ様に撮影するには M4/3機 なら200mmレンズで撮影する事になる。 被写体距離が40mで被写界深度を±0.4mに揃えると、立体感を生む焦点深度は±0.01mmとなる。 MFT機はフルサイズ機に対してセンサーサイズは半分なので、『おおぅ、どれどれ』な許容錯乱円径も半分の δ = φ0.015 / 2 = φ0.0075mm となる。 焦点深度 = ±δF にあてはめて、撮影すべきF値を求めると F = 焦点深度 / δ なので、F = 0.01 / φ0.0075 = 1.33 というトンデモナイ開放F値のレンズで撮影しなきゃならない。 M4/3用レンズであっても 200mm F1.4 っていうスペックだと超ド迫力のレンズになる。

M4/3機は小型でイイとはいってもフルサイズと同じ写真が撮れる訳じゃない。 でも、空バックで撮る鳥写真などなら立体感もへったくれも無いのでM4/3機の方が絶対便利だろう。 お金があればTPOに合せた機材セットを揃えられるんだけどねぇ。

F2.8の例とF4の例

異なる試合で会場は違うけどDOレンズを試してみたので同じ選手の写真があった。 EF400/2.8L IS II USMに対して旧EF400/4DOレンズはAFが遅くて困った。 新しいEF400/4DOレンズなら気持ちよく撮影できるんだろうなぁ。
EOS-1DX EF400mm F2.8L IS II USM F:2.8
EOS-1DX EF400mm F2.8L IS II USM F:2.8

EOS-1DX EF400mm F4 DO IS USM F:4
EOS-1DX EF400mm F4 DO IS USM F:4


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