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| MINOLTA MC W.ROKKOR-SG 1:3.5 f=28mm |
ミノルタ初のレンズ交換式一眼レフカメラ SRシリーズ用に製品化された広角レンズで、本レンズは大柄な外観のまま開放測光に対応した製品である。
MINOLTA MC W.ROKKOR-SG 1:3.5 f=28mm - 1966年発売
この時代のロッコールレンズにはレンズ構成が表記されていて、このレンズは「HG」と表記されている。 最初のHはHexaの略で7群構成である事を意味していて、次のGはアルファベット7番目なので7枚構成である事を意味している。 群数の表現は以下の通り。
| 3群:Triple | 4群:Quadruple | 5群:Penta | |
| 6群:Hexa | 7群:Sept | 8群:Oct | 9群:Nona |
本レンズは AUTO ROKKOR 時代に製品化され、後にMC化されたレンズである。 1968年に光学系の構成が変更されて小型・軽量化され、同名の SG 1:3.5 f=28mm に置き換えられた。
レンズ構成
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| レンズ構成 |
レンズ構成は貼り合わせがない7群7枚のレトロフォーカス型で、本レンズはMC時代の最初のモデルであるMC-Ⅰ型だけど光学系はARC型と(多分)同じである。 エルノスター型のマスターレンズの前に長い空間を開けて、バックフォーカスを伸ばすための3枚構成の負パワーレンズ群を配している。 先頭の負パワー群とマスターレンズ群との空気間隔を大きく取る古典的なレトロフォーカス型である。 古典的なレンズ構成なのでクセのある描写になると想像される。
本レンズは1963年に発売された AUTO W.ROKKOR-SG 1:3.5 f=28 を開放測光に対応したMC型製品で、minolta SR-T 101 と同時に発売された。 後の1968年には同じ7群7枚構成で同名だけど、小型・軽量化化された新光学系のMC-Ⅱ型に置き換えられた。
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| 最短撮影距離は僅か0.6m |
最短撮影距離は約0.6mなので全然寄れないのが不満だけど、当時の古典的レトロフォーカス型レンズは近距離での非点収差・像面湾曲の悪化を嫌って、最短撮影距離が0.6m程度の製品が多かった。 非点収差・像面湾曲が悪化しても寄らないと撮れない表現もあるので、最短撮影距離を0.6mに留めたのは後ろ向きの仕様選択だったと感じる。 28mm広角なら、最短撮影距離は最低でも0.3mにするべきた。 「ついこの間」までは最短撮影距離が1m程度のレンジファインダー時代だったので、『ニコンも0.6mだし、充分だ』と考えていたのかも知れない。
先頭の負パワー群とマスターレンズ群との空気間隔が非常に長いので、必然的に前玉径が大きくなることからフィルター径がΦ67mmもあり、高級で立派な広角レンズの風貌になっている。 ところが、レンズの内部には大きな空洞があので、350gという重量は見た目より軽量に感じる。 このレンズの大きさ・仕様が示す様に、初期のミノルタ製一眼レフ用広角レンズは他社に後れを取っていたと思う。 ニコンは同スペックの広角レンズを1960年に製品化していて、フィルター径がΦ52mmでミノルタ製品よりコンパクトだった...最短は0.6mだったけどね。
ちなみに、このレンズはΦ67mmフィルターが固着した綺麗な中古品を格安で購入したんだけど、フィルターが斜め着けにより全く回らない状態だった。 ただ、片側が結構浮いていたので、フィルター枠をしっかり握って浮いているフィルター部分を外れる方向へ叩いてみたら簡単に外れた...ラッキィな中古品であった。
専用フード
D70KA には専用のフードケースがあるんだけど、ケースサイズがフードとぴったり過ぎて、出すのはイイけど仕舞う時に非常に入れ難い。 チャック式にしたのは間違いだったと思う。
なお、レンズのフロントキャップとしてコニカのΦ67mm用スリップオン式メタルキャップで代用している。 将来、コニカとミノルタが一緒になるとは誰も想像しなかっただろう。 この時代の製品でコラボしてあげた。
SG 1:3.5 f=28mm の変遷
W.ROKKOR-HG 1:2.8 f=35mm を大別すると ARC型・MC-Ⅰ型・MC-Ⅱ型・MC-X型 があり、本個体はARC型をMC型に改修した MC-Ⅰ型 である。 各タイプの特徴は以下の通り。
| Type | 発売年 | 各タイプの特徴 |
| ARC型 | 1963年 | フィルター径:Φ67mmで前面のみ銀色 絞り値範囲:F3.5~F16(8枚羽根) 絞り込み釦:あり(歯車型) 大きさ・重さ:Φ70×50mm 345g 備考・その他:大型7群7枚旧光学系 |
MC-Ⅰ型 (本レンズ) | 1966年 | フィルター径:Φ67mmで前面のみ銀色 絞り値範囲:F3.5~F16(6枚羽根) 絞り込み釦:あり(歯車型) 大きさ・重さ:Φ70×50mm 350g 備考・その他:大型7群7枚旧光学系 |
| MC-Ⅱ型 | 1968年 | フィルター径:Φ55mmの黒枠 絞り値範囲:F3.5~F16(6枚羽根) 絞り込み釦:あり(歯車型) 大きさ・重さ:Φ63×45mm 245g 備考・その他:小型7群7枚新光学系 |
| MC-X型 | 1973年 | フィルター径:Φ55mmの黒枠 絞り値範囲:F3.5~F16(6枚羽根) 絞り込み釦:なし 大きさ・重さ:Φ63.4×45mm 260g 備考・その他:ゴム巻き距離環に変更 |
この頃のミノルタ製レンズの名称には TELE ROKKOR など、レンズの種類が判る様になっていたけど、広角レンズは WIDE ROKKOR ではなく W.ROKKOR という記載で「W.」だけに省略されていて、略号規則は以下の様になっていた。
| 略号 | 英語記述 | レンズの種類 |
| W. | WIDE-ANGLE | 広角レンズ |
| (なし) | STANDARD | 標準レンズ |
| TELE | TELEPHOTO | 望遠レンズ |
| ZOOM | ZOOM | ズームレンズ |
| MACRO | MACRO | マクロレンズ |
絞り込み釦
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| 絞り込み釦 |
各絞り値(F3.5とF5.6の間を除いて)には0.5段ごとのクリックがある。 マウント基部の右下方に銀色の「歯車」があり、この「歯車」を押す(下側へ引く)と絞り羽根が設定値まで絞り込まれる。 minolta SR-T 101 からプレビュー機能が装備されたけど、販売済みのSRシリーズカメラにはプレビュー機能が無かったので、レンズ側に装備し続けたのだろう。 なお、「歯車」型の絞り込み釦は小型化された MC-Ⅱ型 でも付いていたけど、1973年発売の MC-X型 では省略された様だ。
AUTO ROKKOR 時代にはブラックボディーにはマウント外周リングまで黒塗りのレンズが用意されていたのに、MC型レンズでは全製品が絞り環まで銀色になってしまった。 その後の MC-X型レンズでは黒い絞り環に戻されるんだけどね。
Achromatic Coating
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| 緑のロッコール |
AUTO ROKKOR の時代からロッコールレンズには前玉に施された2層アクロマチックコーティングが見る角度によって綺麗な緑色に見える事から、『緑のロッコール』と呼ばれていて、カタログにも「緑のロッコール」と謳われていた。 ただし、2層アクロマチックコーティングは蒸着が弱いらしいので、雑に拭くとキズが付き易いと言われている。 このレンズでは第一レンズの裏面が2層アクロマチックコーティングの様で、レンズを分解清掃する際にはゴミを完全に除去してから、汚れを「優しく」拭いてあげるか、酷い汚れは中性洗剤を使って指で優しく洗うのが良いだろう。
1965年頃のロッコールレンズカタログには「緑のロッコール」と記述されているけど、それより前のカタログには「二層膜緑色コーティング」と記載しているだけで、ロッコールを代表する様な記述はなかったので、New SR-1 / New SR-7 の時に「緑のロッコール」という謳い文句を使い始めた様だ。
2層コーティング
2層コーティングは各層で異なる波長域の反射率を下げているので、単層コーティングより広い波長域で反射率を低減する感じだ。 ただし、中央波長域付近(緑色)に盛り上がりが出来てしまい、反射色が緑色に見えるのである。 また、膜数を増やすと反射率を低減できるけど、目標波長域外の反射率が急激に高くなる傾向にあるため、角度が急な反射光は赤色とか青色とか紫色が目立つ様になる。 これらがカラフルなゴースト・迷光として現れることがある。
なお、コーティングの材料として高屈折率な二酸化チタン(TiO₂)や三酸化アンチモン(Sb₂O₃)と低屈折率な二酸化ケイ素(SiO₂)やフッ化マグネシウム(MgF₂)を真空蒸着するんだけど、レンズエレメント基板の温度が低いと蒸着した膜の強度が低くなる。 ミノルタの真空蒸着窯は基板温度を上げられなかったのだろうか? 現代ではイオンアシスト蒸着やスパッタリング法により幕強度が高くなっている。 昔の蒸着膜を電子顕微鏡で見ると、想像以上にスカスカなのが判るだろう。
ミノルタの2層アクロマチックコーティングは基板(レンズエレメント)に三酸化アンチモン(Sb₂O₃)を蒸着し、その上にフッ化マグネシウム(MgF₂)を蒸着している様だ。 アンチモン酸化物は脆い物理特性があるらしいので剥離し易いのかも知れない。
描写特性
デジタルカメラのローパスフィルターやIRカットフィルターなど、フィルム時代には考慮されていない光学部材の影響で、気にする程じゃないけど本来の描写性能は出ていないと思います。
遠景描写
以下の写真は片ボケ調整したマウントアダプターを介して SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.1.01.06121 にて、ホワイトバランスを太陽光に設定し、Dレンジオプティマイザーはオフに設定して現像してあります。
絞り:F3.5
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絞り:F5.6 |
絞り:F8 |
絞り:F11 |
絞り:F16 |
遠景描写の絞り開放でも画面中央はなかなか良い描写だけど、画面周辺ほど非点収差が大きくなって眠くなる。 F5.6に絞れば画面中央付近は素晴らしい描写で、画面周辺の描写も深度が深くなって描写が向上する。 F8まで絞れば画面極四隅を除いて素晴らしい描写だ。 F11まで絞れば画面ほぼ全域で素晴らしい描写になる。 なお、F11より絞ると回折の影響で画面全体が少しボヤける。
絞り開放では素敵な周辺光量落ちがあり、F5.6に絞るとかなり改善してしまい、F8に絞ると解消してしまう。 折角の28mm広角レンズだけど、遠景や風景を撮影するには絞り込む必要があるの古典的レトロフォーカス型の鉄板特性だけど、古典的レトロフォーカス型としては性能が良い方だと思う。
夜景・点光源描写
以下の写真は片ボケ調整したマウントアダプターを介して SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像を、古~い現像アプリ DxO PhotoLab 3.3.0 Build 4391 にて、ホワイトバランスを蛍光灯に設定して現像してみました。 なお、色収差補正やディストーション補正や周辺光量補正などの光学補正は施していません。
絞り:F3.5 |
絞り:F5.6 |
絞り:F8 |
絞り:F11 |
絞り:F16 |
絞り:F3.5 |
絞り:F5.6 |
絞り:F8 |
絞りF3.5開放でも画面中央付近は少しソフトな描写で、画面周辺にゆくほどコマフレアーが扇状に発生する。 F5.6に絞ると画面中央付近は素晴らしい描写で、画面隅にかけてサジタルコマは急減して、メリディオナルコマが残っているけど、画面隅を除いて周辺でも点像が点像っぽくなる。 F8に絞ると画面隅でも点像が点像っぽい描写になる。 F11まで絞れば夜景として充分な描写になる。 大きな写真でなければF5.6に絞れば使えそうで、大きな写真ならF11まで絞った方が良い。
最短撮影距離が0.6mと遠いので、判るほど大きな玉ボケが得られない。 そこで、レンズは無限遠のままにしてLM-EA7を最大繰出し(0.24m相当)にして無理やり大きな玉ボケを作ってみた。 古典的レトロフォーカス型広角レンズらしく、玉ボケの周りにエッジが立つけど比較的目立たない方だろう。 画面周辺ではレモン型・半月状の玉ボケになり、内側の円弧にエッジが立ち、外側の円弧にはエッジが立たないのが嫌らしいけど、思ったほど酷くは無い。 F5.6に絞ればほぼ画面全域で6角形の玉ボケになり、立っていたエッジは消失する。
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