 |
| TOPCON RE, Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm |
このレンズは世界初のTTL開放測光一眼レフカメラで歴史的名機「
TOPCON RE Super」と共に発売された超広角レンズである。 前玉が大きく、レンズ先端ほど広がった鏡筒デザインは銘玉に相応しい威風堂々とした感じだ。 マニアの間では『このレンズの写りは非常に立体感があり、全トプコール中でもこの点では筆頭に位置する』と言われている。
TOPCON RE, Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm - 1963年発売
レンズ構成
 |
| レンズ構成 |
1963年にカメラと同時発売された7群7枚構成のレンズで、負パワーレンズと正パワーレンズとの間隔を大きく空けた古典的レトロフォーカス型の発展形式と言える。 形式的には4群4枚のワイドコンバーター(黄色)の後ろに3群3枚のトリプレット形マスターレンズ(水色)が配置されていて、1953年発売の Angenieux 28mm F3.5 の発展型である。 アンジェニューは先頭負レンズ群が凸凹の2枚構成だったのを、トプコンは凹凸凹の3枚構成にしている。 一方、見方を変えると、1970年代に沢山製品化された2群型ズームレンズのワイド端状態だとも言えるだろう。
レンズの特徴
 |
| レンズの特徴 |
発売当初は f=2.5cm というセンチメートル表記だった様だけど、僕の個体は f=25mm とミリメートル表記に変更された後期品である。 なお、専用フードは 2.5cm 表記のままだった。 前期品は距離・絞り指標が●だったりレンズ側マウント下部に TOPCON R 互換用凹部分が成型されていたけど、後期品では距離・絞り指標が●となり、TOPCON R の脱着レバーとの干渉を避ける凹部分が無い。 生産されたレンズは殆どがクローム鏡筒で、カタログには載らない程の極少数だけブラック鏡筒が存在するらしい。
専用フード
 |
| 専用フードを装着 |
レンズ先端にはフィルターネジが無く、レンズ後部にバヨネット式の小さな専用フィルターを装着する。 また、締め付け式の専用フードを装着すれば、フード内に Series 9 フィルターを挟むことができるけど、広角レンズで使いたくなる偏光フィルタは利用し難い。
 |
| CONTAX METAL HOOD 1 |
超広角レンズでは指写り防止のためにもフードは有効なのだけれど、このレンズは距離環より前枠が大きいので、指が写り込む心配は少なかったので、撮影時にフードを使っていない。 とはいえ、前玉への接触などによる傷防止にフードを付けた方が良いだろう。
後述する自作ネジフィルターアダプターを装着しておけばフード代わりになるし、ワンタッチキャップの使用も可能になる。 また、フード効果を高めるならばΦ82→86mmステップアップリングを介して CONTAX METAL HOOD 1 を装着すれば更に安心だ。ちなみに、METAL HOOD 2 だと画面四隅がケラれてしまう。
絞り環の操作性
 |
| 金属製の連動鎖 |
絞り羽根は6枚で、絞り範囲はF3.5からF22までである。 等間隔絞り環で0.5段ごとにクリックが設けられている。 レンズ単体では絞り込み方向も開放方向も同じ回転トルクの絞り環だけど、レンズをカメラに装着すると、絞り込み方向と開放方向とで絞り環の回転トルクが結構ちがう。 これは、開放測光用にボディー側と連動しているカプラーのテンションが大きいためである。 TOPCON RE Super のミラーメーター・システムはフィルム感度・シャッター速度ダイアルと絞り連動爪とを金属の鎖で繋ぎ、プーリーを介してアナログメーター自体を回転させていて、この鎖のテンションが結構強いからだ。
近距離撮影能力
 |
| LM-EA7併用の最短撮影状態 |
特筆すべきは最短撮影距離が0.16メートル
と短いことで、近距離補正機構などは搭載していないが、クォーターマクロ並みに被写体へグイグイグイッと寄って撮影できる。 現代の広角レンズでもここまで寄れるレンズは滅多になく、このレンズならではの表現が可能だけど、被写体にカメラ・レンズの影が出てしまうのが難点だ。 更に
TECHART LM-EA7 を利用すれば0.12mほどまで寄れて、ハーフマクロに迫る0.4倍の撮影倍率が得られるが、レンズ先端から数センチの近距離になるので、被写体の照明具合を考える必要がある。
ちなみに、近接能力が高いレンズだからといって、寄り過ぎると LM-EA7 を使ったオートフォーカスの効きや精度が悪くなる。 繰り出すことによって、F3.5だった光束がF4.5~F4.9ほどになるので、オートフォーカスに使える瞳径が小さくなり過ぎるのだろう。
リアフィルターを外すと...
 |
| リアフィルターを外すと... |
フロント側にフィルターを装着しても、リアフィルターを外してはイケない。 RE, Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm はリアフィルターの光路長を考慮した設計になっているので、リアフィルターを外すと距離環を無限端に突き当てても無限遠にピントが合わなくなる。 中古のレンズを購入する場合はリアフィルター(UV等)が付いている事を確認しよう。 リアフィルターが無い場合は分解して無限遠調整する必要がある。 なお、
RE Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm 専用の四角い革ケースにはレンズ本体と専用フードと天井裏に専用リアフィルター9枚を収納できる。
偏光フィルターの使用
 |
| 自作アダプター |
偏光フィルターを手軽に使える様に、他社製フードの締め付け部にステップアップリングをエポキシで接着してフィルター装着アダプターを作ってみた。 偏光フィルターを手で持ったまま撮影するには三脚が必要だけど、このアダプターを使えば偏光フィルターをレンズ前面に装着して片手でグルグル回せるので手軽に利用できる。
僕の手持ちフィルターセットである口径Φ82mmのフィルターを装着できる様にした。 締め付け式アダプターはレンズ側に傷が付くのが気になるので、金属製の締め付けリングに薄い樹脂シートを張り付けておいた。
描写特性
デジタルカメラのローパスフィルターやIRカットフィルターなど、フィルム時代には考慮されていない光学部材の影響で本来の描写性能は出ていないと思います。
遠景描写
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.1.01.06121 にて、ホワイトバランスを太陽光に設定し、Dレンジオプティマイザーはオフに設定して現像してあります。
絞り:F3.5 |
絞り:F5.6 |
絞り:F8 |
絞り11 |
絞り:F16 |
絞り:F22 |
絞り開放ではソフトな描写で、画面中央付近でもハイライト部にはフレアが判り、
画面周辺から隅にかけてはボヤけている。 F5.6に絞ると画面中央付近は素晴らしい描写になるが、画面隅にかけてはボヤけたままだけど、六切りなどの長手方向がカットされる銀塩プリントなら我慢できるかも知れない。 画面隅のボヤけは絞れば少しづつ解消し、F11に絞ると極四隅以外は概ね良い描写になる。 ただし、F11以上に絞ると回折の影響で画面中央付近はボヤけ始めてしまう。
画面周辺から隅にかけての描写は「古典的レトロフォーカス型のオールドレンズ」然としている。 素敵な周辺光量落ちがあるけど、F5.6に絞ると随分と解消してしまい、F8に絞るとほとんど判らなくなる。
夜景・点光源描写
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像を古~い現像アプリ DxO PhotoLab 3.3.0 Build 4391 にて、ホワイトバランスを蛍光灯に設定して現像してみました。 なお、色収差補正やディストーション補正や周辺光量補正などは施していません。
絞り:F3.5 |
絞り:F5.6 |
絞り:F8 |
絞り11 |
絞り:F16 |
絞り:F22 |
絞り開放では画面中央でもソフトな描写で、画面周辺に行くほど収差フレアが大きくなってボヤケてしまう。 画面隅ではサジタルコマフレアの広がりが大きい。 F5.6に絞ると画面中央はスッキリした描写になり、画面周辺から隅のサジタルコマフレアは激減するけど、硬めの収差フレアはそのままなので、ボヤケは残っている。 F8に絞れば画面隅の収差フレアが小さくなるけど解像感は高くない。 なお、6枚絞りなので、絞り込むと点光源に6本の光芒が現れる。
玉ボケ描写
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像を古~い現像アプリ DxO PhotoLab 3.3.0 Build 4391 にて、ホワイトバランスを蛍光灯に設定して現像してみました。 なお、色収差補正やディストーション補正や周辺光量補正などは施していません。
距離環を0.2mに設定して玉ボケを撮影してみた。 画面周辺ではレモン型の玉ボケになり、画面隅では半月っぽい形になる。 また、エッジが立ち気味になるので、シーンによっては喧しいボケになるかも知れないが、古典的レトロフォーカス型レンズとしてはおとなしい玉ボケだと思う。 なお、絞ると玉ボケが6角形になるり、F8で画面全域で6角形ボケになる。
一般撮影
あとがき
RE.Auto-Topcor 1:3.5 f=25mm は RE.Auto-Topcor 1:1.4 f=58mm と並ぶ銘玉と称されたレンズである。 国産一眼レフカメラ用「超」広角交換レンズとしては初めてのレトロフォーカス型らしい...あくまでも「超」広角としてね。 色乗りも良いし画面中央付近のピント面はシャープだし、最短撮影距離が0.16mと異常に短いのでグググっと寄れる楽しいレンズだ。 オールド超広角レンズの中では最も魅力的な銘玉で、中古市場でチョット高値で取引されている理由が判るレンズである。
コメントを投稿