Leitz Elmar 9cm F4(4枚玉)Type-5 - 現代でも通用する優れた描写

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Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type-5 を装着したLEICA Ⅲg型
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type-5 を装着したLEICA Ⅲg型
 Elmar f=9cm 1:4 は1931年に発売され、デザイン変更や光学系変更やマウント変更などを経て、1968年まで長く製造された中望遠レンズである。

Leitz Elmar f=9cm 1:4(4枚玉)Type-5 - 1959年発売

L39マウントの Elmar f=9cm 1:4 は長く作られたのでバリエーションが多く、
  • Type-1:1931年~ 鏡筒が太くてダルマ型と呼ばれる
  • Type-2:1933年~ 鏡筒が細くなり1948年まで製造された戦前タイプ
  • Type-3:1948年~ クローム鏡筒で根元が黒革巻きになった戦後タイプ
  • Type-4:1954年~ 新種硝材を使って再設計された新エルマー
  • Type-5:1959年~ Mマウント製品をL39マウントで少数製造された
などなど、累計11万本以上のL39マウント製品が製造された。 なお、1964年に3群3枚構成の ELMAR 1:4 / 90 L39 が543本だけ(Mマウント製品は5,000本以上)製造され、希少な「カミソリ・エルマー」として高額で取引されている。

レンズ構成

Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type-5 レンズ構成
レンズ構成
 レンズ構成は3群4枚のいわゆるTessar型だけど、Type-1 から Type-3 まではCarl Zeiss が持つ特許を回避するために、絞りは第1凸レンズと第2凹レンズの間に配置されていた。
 1948年頃に新硝材を使って光学系が再設計された Elmar f=9cm 1:4 Type-4 となり、第2凹レンズの直後に絞りが配置され、普通のTessar型に変更された。 絞りを凹レンズの後ろ側に配置したので、絞り前後のパワー対称性が良くなり、諸収差を補正し易くなったハズだ。

Type-5 の銘板は生産途中で Elmar f=9cm 1:4(左)から ELMAR 1:4 / 90(右)へ記載が変更された
異なる銘板の Type-5
 Elmar f=9cm 1:4 Type-5 は1954年に登場した Leica M3 向けに製造されたMマウント用レンズを、1959年にL39マウントでも製造されたレンズで、Leica IIIg 向けとも言えるレンズである。 製造本数は少ないらしく、中古市場でもMマウント用レンズはあってもL39マウントレンズはあまり見かけない。 なので、Type-5 の存在を知らない人も居るかもしれない。 なお、Elmar f=9cm 1:4 Type-5 は1959年の生産途中で、銘板が Elmar f=9cm 1:4 から ELMAR 1:4 / 90 という記載に変更された様だ。 個人的には新しい銘板より変更前の銘板の方がクラシックな感じで好きだ。

単純な構成なので分解は難しくない
分解は難しくない
 Type-4 以降のレンズは曇りが発生し易い(特に絞り前後のレンズ面)ので、メンテナンスが必要な場合がある。 僕の Type-5 は2本とも薄曇りが発生したので分解清掃してある。 全バラするのは面倒なので、レンズ後群を抜いて絞り前後の面を清掃しただけで使えるレベルにはなるけど、元のクリアーな状態には戻らない。
 ちなみに、前玉押さえ環を外すと、迷光防止・締めキズ防止の薄い黒リングが乗せてあり、手間を掛けた設計である事が伺える。 なお、絞り機構周りに手を出すと絞り羽根が外れて痛い目に合うので止した方が良いし、前方内筒ネジの接着がアセトンを染み込ませてもなかなか緩まない。

 最短撮影距離は1mまでなので少しもの足りないが、標準レンズや広角レンズよりはず~とマシである。 これは当時のレンジファインダーシステムの制約なので仕方ない。 また、ヘリコイド部とレンズヘッド(光学ユニット)とはネジ込みで結合していて、レンズヘッドを外してビゾフレックスで使用出来るらしい。 また、ヘリコイド部は回転ヘリコイド式なので、ピント操作で絞り環やフィルター枠も回転してしまうし、『絞りが開放状態かな?』と絞り環を触るとヘリコイドが回ってしまう事がある。 ヘリコイドグリスは重めにした方が良いだろう。

不等間隔の絞り環 180度反対側にも絞り値刻印がある
不等間隔の絞り環
 絞りはF4からF32までの不等間隔絞りで、各絞り値にクリックは無い。 先に記述した通り回転ヘリコイド式なので、ピント操作によりレンズヘッドごと絞り環も回転してしまう。 そこで、絞り環には180度反対側にも絞り値刻印があり、ピント操作で回転しても見易い場所の絞り値が使える様になっている。 絞り羽根は15枚もあり、絞っても円形が保持される。
 Type-4 まではフィルター径がΦ36mmだったが、Type-5 ではΦ39mmへ拡大した。 これに伴い適合フードも FIKUS(12530)から IUFOO(12575)へ変更されている。 IUFOOは逆付け収納できるので携行するには便利だけど、逆付けした状態では専用レンズ革ケースに収まらないし、逆付け用のキャップが必要だ。 なお、専用ケースは、フード無しでキャップを装着して無限遠状態でないと収納出来ないけど、フード逆付けで収納できるケースがあったのかは知らない。

描写特性

 今回は TECHART LM-EA7 を介して SONY ILCE-9 にて、オートフォーカスを使用して撮影してみたけど、画面上下方向は充分な領域までオートフォーカスが出来るけど、画面左右方向はでオートフォーカス可能な範囲は中央付近に限られるので、オートフォーカスの使い勝手は良くない。

遠景描写

 以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスは太陽光に設定し、Dレンジオプティマイザーはオフに設定して現像してあります。 
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type-5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type-5 絞り:F5.6
絞り:F5.6
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type-5 絞り:F8
絞り:F8
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type-5 絞り:F11
絞り:F11
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type-5 絞り:F16
絞り:F16
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type-5 絞り:F22
絞り:F22
 絞り開放から画面中央付近は充分に良い描写で、画面四隅は少し低下する。 F8まで絞れば画面極四隅を除いて全域で素晴らしい描写になる。 絞り込んでも回折によるボヤけが軽微なのは、陽炎の影響で判り難くなっているからだろう。

画面極隅で急激なケラレが発生し、玉ボケが半月状になる
玉ボケで判るケラレ具合
 周辺光量が豊富レンズで、ななだらかな周辺光量落ちがある程度だけど、SONY Eマウントでは画面極四隅で「マウントケラレ」が発生するのが困りものだ。 SONY E マウントは開口径が小さいのにフランジバックが短く、古典的な望遠レンズの様な射出瞳距離が長いレンズには適合できない為である。 F22まで絞れば「マウントケラレ」はほぼ解消する。 右の写真の様に画面周辺はラグビーボール状にはなるけど、極隅になると急激に半状月になる。
 例えば、CANON LENS 100mm F3.5 などは射出瞳距離が短くなるレンズ構成なので、マウントによるケラレは殆ど発生しないけど、光学系の光路長が長めになるので、周辺光量落ちが多くなる傾向がある。

夜景描写

 以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像を古~い現像アプリ DxO PhotoLab 3.3.0 Build 4391 にて、ホワイトバランスは蛍光灯に設定して現像してみました。 なお、色収差補正やディストーション補正や周辺光量補正などは施していません。 DxO PhotoLab 3.3.0 で現像したのは、SONYの IE Edit では輝点ノイズ除去されないからで、古い DxO PhotoLab 3.3.0 の方がマシだからです。
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F5.6
絞り:5.6
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F8
絞り:F8
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F5.6
絞り:5.6
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F8
絞り:F8
 絞り開放から画面中央付近は充分に良い描写で、画面周辺で描写性能が少し低下する。 画面隅では非点収差により点像が放射方向へ伸びるのが気になる。 F5.6に絞れば画面周辺の描写も良くなるが、画面隅の非点収差に変化は無い。 F8まで絞れば画面極四隅を除いて充分な夜景描写になる。

 玉ボケ描写は、距離環を1mに繰り出した状態です撮影してあります。 玉ボケにエッジが立つ事もなく滑らかそうな感じだ。 画面隅ではラグビーボール状になるけど、かなり光量は豊富だと思う。 F5.6に絞ると画面周辺でも、概ね形の良い丸い玉ボケになる。 F8まで絞れば四隅でも丸い玉ボケとなり、絞っても玉ボケが多角形にならないのは絞り羽根が15枚もあるおかげだ。

一般撮影

 以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスをオートに設定し、Dレンジオプティマイザーもオンに設定して現像してあります。 また、夜の街は DxO PhotoLab 3.3.0 Build 4391 にて、ホワイトバランスは撮影時設定(オート)で高感度ノイズを低減して現像してみました。
 レンズの最短撮影距離が1mなので、LM-EA7 の最大繰出し量4.5mmと合わせると、合成の最短撮影距離が0.75m近くまで寄れる計算になり、撮影倍率も約0.16倍になるので、不都合なく使えた。 なお、記載の絞り値は撮影時の記憶に頼っているので、間違っているかも知れません。m(_ _)m
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
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Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
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Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
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Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
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Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F8
絞り:F8
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F6.3(高速シンクロ)
絞り:F6.3(高速シンクロ)
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
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Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
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Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type 5 絞り:F4
絞り:F4
 現代の高性能レンズの様な切れるシャープさじゃないけど、絞り開放から良く写るレンズだ。 また、テッサー型にしては背景ボケも悪くないけど、小デフォーカスによる画面周辺の前後小ボケは、非点収差の影響でザワザワするシーンがある。 前ボケが2線ボケ傾向なので画面中央付近でも小デフォーカスによるボケが騒々しくなる場合がある。 後ボケ重視で球面収差補正を施した光学設計なのだろう。

 立体物を画面中央付近に配置すれば絞り開放でも良い描写だし、F8まで絞ればで遠景の画面周辺でも充分な描写になる。

 明るくないので背景を溶かすのは得意じゃないけど、かなり寄って撮影すれば背景も大きくボカせる。 90mmという焦点距離は街中での刹那的な撮影に向いているし、70年を経た現在でも充分な描写性能・表現力があるレンズだと思う。

 ところで、現代の一眼デジカメなら高速シャッターで日中シンクロが可能なので、『太陽の向きが逆光だなぁ』と思っても、絞りを開け気味にしながら高速シャッターで日中シンクロ出来るのが便利だよねぇ。

あとがき

Leica III ブラックペイント機に装着すると違和感がたっぷりだ
Leica III に装着
 90年前のカメラである Leica III(日本での呼び名は Leica D III型)のブラックペイント機に装着すると違和感がありすぎる。 ブラックペイントの Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type-2 なら似合いそうだ。 Leitz Elmar f=9cm 1:4 Type-1 から数えると95年も経つが、67年前の Elmar f=9cm 1:4 Type-5 は現代でも充分な描写で、当時からライカを代表する望遠レンズだった事が判る。
 今回の撮影では LM-EA7 でオートフォーカスも使ってみたところ、オートフォーカスが随分と遅いけど、オートフォーカス可能な画面範囲なら精度的な問題はなかった。

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