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| CANON LENS 100mm f:3.5 Type-2 L39 |
1932年に発売された登山や旅行用途を想定した、ライカの軽量な望遠レンズ Elmar f=10.5cm 1:6.3 が「マウンテン・エルマー」とか「アルペン・エルマー」とか「山岳・エルマー」というニックネームを冠して伝説になっていた。 このElmar は210gと軽量で、最短撮影距離は2.6mと遠景撮影に徹していた。 時は流れて戦後の1948年に SERENAR 100mm f:4 が発売されたが、459gと重いので「マウンテン」ではなかった。
CANON LENS 100mm f:3.5 Type-2 L39 - 1958年発売
1953年に SERENAR 100mm f:3.5 Type-1 が205gという軽さで発売され、「マウンテン」と呼べる重量になっていたけど、「マウンテン・セレナー」あるいは「マウンテン・キヤノン」とは誰も呼んでくれなかった。 本レンズは Type-2 だけど、Type-1 と同じレンズ構成のままで184gまで軽量化されている。 ぱっと見では Type-1/2 の区別が付かない。 ちなみに、Type-1 は SERENAR として発売されたが、途中で CANON LENS に名称変更されている。
レンズ構成
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| レンズ構成図 |
本レンズは4群5枚構成で、設計思想を知らないので明確には判らないけど、凸凹凸のトリプレット型を基本に、第1レンズは貼り合わせ色消しレンズとし、凸凹の間に球面収差補正用の薄いメニスカスレンズを挟んだ様な雰囲気で、同クラスのレンズとしては贅沢なレンズ構成だと思う。 一応、テレフォト型とされているけど、最後部に凹レンズ配置して全長を極端に短くするテレフォト型より弱くなっている。
最短撮影距離は1mなので一眼レフレンズ並みに寄れる。 マウントアダプター LM-EA7 を最大繰出し(4.5mm)すれば最短撮影距離が少し短縮できる。 また、このレンズは光学ユニット部とヘリコイド部とを分割出来る構造で、光学ユニット部と組み合わせるアクセサリーがあったのかも知れない。
なお、悩ましいのはヘリコイド部で、コスト削減・軽量化のために回転ヘリコイドになっている事だ。 ピント調節により光学ユニット部が回転してしまうので、絞り環が定位置に固定されない。 そのため、絞り環には180度反対側にも絞り値が刻印されていて、ピント調節により見易い方を使う様になっている。
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| 専用フードを装着 |
絞りはF3.5からF22までの不等間隔絞り環で、各絞り値にクリックはない。 クリックを数えてブラインドで絞り値を設定できないのが少し不便だ。 絞り羽根は15枚もあり、絞っても綺麗な円形が保持される。 フィルター径はΦ34mmで、SERIES IV フィルターを挟める内径Φ36mmの締め付け式フードアダプター(Φ34mmネジ込み式もあったと思う)を介して専用黒塗りフード傘部を装着する。
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| 逆付け収納できるフード |
フード傘部の内側にフェルトが貼ってあり、フードを逆付けすればピタリと収納できるので携行に便利なフードだけど、逆付け収納した場合のキャップをどうするかが悩ましい。 Φ34mmネジ込み式のアダプター部なら、Φ34mmメスネジのキャップがあったと思う。
僕のフードアダプターはΦ36mm締め付け式なので、フードを逆付け収納した場合のキャップが悩みだけど、現代のΦ34mm汎用ワンタッチ式キャップなら本体フィルター枠にも装着できるし、逆付けしたフードのアダプター枠内に嵌めこむこともできて丁度良い。
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| Canon IV Sb改 に装着 |
Type-2 の発売時は既に脱バルナック型の第三世代カメラ世代の時代だったけど、レンズ外観の意匠は Type-1 とほぼ同じ白黒ツートンで、第二世代と第三世代の中間といった感じだ。 銀塩カメラと組み合わせるなら、第二世代カメラにも良くマッチする。 また、明るいレンズじゃないし、小型・軽量化に主眼を置いているので、前玉側が窄まっていて力強さは感じられないので、フードを装着した方が精悍な感じになる。 Type-3 では第三世代カメラにマッチする意匠へ変更され、等間隔絞りになったが絞り羽根は10枚に減っている。
第二世代機にはファインダーにフレーム枠が無かったので『写る範囲はこの辺り』とかなりアバウトな感じだったので、外付けファインダーが有用だった。 でも、焦点距離が100mmだとパララックスも無視できないので、チマチマと外付けファインダーのパララックス補正設定するのは面倒だ。 なので、パララックス自動補正のファインダーを搭載したカメラで撮影するべきだろう。 Type-2 と同じ年に発売された Canon VI L や Canon P とかはアルバタ式の100mmフレーム枠があったし、後の Canon 7 なら見易いブライトフレーム枠のパララックス自動補正ファインダーだった。
描写特性
今回も修理した
TECHART LM-EA7 を介して SONY ILCE-9 にて、オートフォーカスも使用して撮影してみた。 CANON LENS 50mm F1.5 L39 などと違って、画面周辺ではオートフォーカスが効かない。 画面左右方向に対しては中央1/3程までで、上下は8割ほどまでがAF可能だ。 恐らく、射出瞳距離や瞳径などがオートフォーカス可能な範囲と大きく異なるのだろう。 また、必要な繰り出し量が大きいので、LM-EA7 だけでは合焦範囲が非常に狭いので、レンズ距離環操作との併用が必須になる。
遠景描写
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスは太陽光に設定し、Dレンジオプティマイザーはオフに設定して現像してあります。
絞り:F3.5 |
絞り:4 |
絞り:F5.6 |
絞り:F8 |
絞り:F11 |
絞り:F16 |
絞り開放でも画面中央付近はとても良い描写で、画面周辺も充分な描写だ。 F5.6に絞ると画面中央は素晴らしい描写になり、画面隅でも良い描写だ。 F8まで絞ると画面全域で素晴らしい描写となる。 なお、画面隅では倍率色収差感が認められるが、気になるほどではない。
素敵な周辺光量落ちがあり、1段絞るごとに改善し、F8でほぼ判らなくなる。 Dレンジオプティマイザーがオフならγ補正が立っている辺りなので周辺光量落ちが判り易いけど、Dレンジオプティマイザーをオンにすると判り難くなってしまう。
夜景描写
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像を古~い現像アプリ DxO PhotoLab 3.3.0 Build 4391 にて、ホワイトバランスは蛍光灯に設定して現像してみました。 なお、色収差補正やディストーション補正や周辺光量補正などは施していません。 DxO PhotoLab 3.3.0 で現像したのは、SONYの IE Edit では輝点ノイズ除去されないからで、古い DxO PhotoLab 3.3.0 の方がマシだからだ。 他に最新のアプリもあるけど、仕上がりが綺麗過ぎてレンズの基本的な描写性能が判らなくなってしまうので、この様な記事には使えない。
絞り:F3.5 |
絞り:5.6 |
絞り:F8 |
絞り:F3.5 |
絞り:5.6 |
絞り:F8 |
絞り開放の画面中央は少しフレアっぽいけど良い描写で、下面周辺でも充分に良い描写だ。 F4に絞ると画面中央のフレアっぽさは消えてシャープな描写になる。 F5.6に絞れば画面全域で素晴らしい描写になる。 明るくないレンズだけど、色収差が殆ど感じられない優れた描写だと思う。
玉ボケ描写では、距離環を2.5mに繰り出した状態です撮影してあります。 玉ボケに妙な波面の乱れがあるのはバルサムのムラ(キヤノンのオールドレンズには散見される)だと思うけど、エッジが立つ事もなく、後ボケは滑らかそうな感じだ。 画面周辺ではラグビーボール状になるけど、酷くいびつな感じにはならない。 絞りF5.6に絞ると画面極四隅以外は、概ね形の良い丸い玉ボケになる。 F8まで絞れば極四隅でも丸い玉ボケとなる。 絞っても玉ボケが多角形にならないのは絞り羽根が15枚もあるおかげだ。
一般撮影
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスをオート(月夜とビルは白色蛍光灯)に設定し、Dレンジオプティマイザーもオンに設定して現像してあります。 なお、記載の絞り値は撮影時の記憶に頼っているので、間違っているかも知れません。m(_ _)m
絞り:F3.5 |
絞り:F3.5 |
絞り:F3.5 |
絞り:F3.5 |
絞り:F3.5 |
絞り:F5.6 |
絞り:F3.5 |
絞り:F3.5 |
絞り:F3.5 |
絞り:F3.5 |
絞り:F3.5 |
絞り:F5.6 |
絞り:F3.5 |
絞り:F3.5 |
絞り:F5.6 |
絞り:F3.5 |
絞り:F3.5 |
絞り:F3.5 |
絞り:F3.5 |
絞り:F3.5 |
絞り:F3.5 |
梅雨時期の曇り空なので陽ざしが無かったので、特性が判り難い撮影条件です。 絞り開放での描写性能が悪くないので、開放のまま撮る事が多くなる。 絞り開放でも充分な描写だけど、F5.6に絞れば画面全域で素晴らしい描写だ。 困るのは、絞り環にクリックが無いので、開放のつもりだったけど少し絞られていたりする事だ。
絞り開放では画面周辺の輝点ボケがラグビーボール形になるけど、F5.6に絞ればほぼ円形の玉ボケになる。 15枚の絞り羽根を有効に使うならF5.6がお勧めだ。 若干の糸巻型ディストーションがあるけど方眼的なものを写さなければ気にならない。 また、発色はニュートラルで、色乗りも悪くないと思う。
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| 絞り前後に光る壁がある |
逆光フレアーにより画面のコントラストが少し低下するシーンがある。 画面外に明るい空や白壁があり、狙った被写体が暗い条件だと、黒浮きした写りになる。 非常に厳しい状況だけど、原因は絞りユニット前後の壁に光る部分がある事が大きな要因だと思う。 特に、絞りの後ろ側は艶消しされていない。 なお、F5.6以上に絞れば改善する。
また、ゴーストは少ないレンズだと思うけど、LED等の超高輝度を画面に入れると対角線ゴーストが認められる。 多分、デジタルカメラのセンサー面による影響で、銀塩フィルム時代なら判らない程度かも知れない。
レンジファインダーシステムなので最短撮影距離は1mまでだけど、焦点距離が100mmなので、そこそこ寄れる感じだ。 描写にクセのないオールドレンズなので面白みに欠けるけど、描写性能が優れたオールドレンズなので、散歩レンズとして充分に楽しく使えるレンズである。 何かの記事で伊藤宏氏が愛用するレンズだったらしいが、小さくて軽いのでポケットにも入れられるし、マウンテン向きな銘レンズだと思う。
古代のマウンテン・エルマーは使った事が無いけど CANON LENS 100mm F3.5 の方が明るいし、周辺光量落ちはあるけど同時代の Leitz Elmar f=9cm 1:4 と比べても優秀な描写を示すレンズだと思う。
実は...
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| SERENAR f:2 85mm |
実は昔に CANON SERENAR f:2 85mm L39 を持っていたけど、回転ヘリコイドなのでピント調節により絞り環も回転してしまう。 それが嫌で随分昔に手放してしまった(ミラーレス一眼デジカメが存在したら手放さなかった)けど、ちょっと後悔していた。
今回の CANON LENS 100mm f:3.5 Type-2 L39 も回転ヘリコイドだけど『やっぱり中望遠は欲しい』と思って買ったレンズなのである。 安価なレンズ(とはいえ、発売当時の大卒初任給で比べると75万円相当の高額商品)だけど、なかなかシャープな描写で素晴らしいレンズだと思う。 このレンズ構成の 100mm F3.5 は SERENAR f:3.5 100mm に始まり R 100mm 1:3.5 や FL 100mm 1:3.5 まで、レンジファインダーから一眼レフまでシステムを越えて製造された。
あとがき
日本光学は1953年に NIKKOR-P 1:2.5 f=10.5cm という口径が大き目の中望遠レンズを製品化していたが、一眼レフの時代になった1960年に NIKON S カメラ用に3群3枚構成で重量260gほどの NIKKOR-T 1:4 f=10.5cm を発売(NIKON F マウント用も発売された)して「マウンテン・ニッコール」と呼ばれる様になった。 後から発売されたNIKKORは「マウンテン」と呼ばれたけど、先行していたのにCANONはマウンテンとは呼ばれなかった。 当時はニコン教全盛の時代で、信者たちが戦前のライカに倣って「マウンテン・ニッコール」と呼び始めたのだろう。
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