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| TOPCON UV TOPCOR 1:2 f=50mm |
1969年に
TOPCON UNIREX の発売時に用意された標準レンズが UV TOPCOR 1:2 f=50mm である。 1982年の写真工業別冊で『UV TOPCOR 50mm F2 の解像力は SUMMICRON-R 50mm F2 に匹敵する』と評された事から『ズミクロン殺し』と呼ばれる様になったらしい。
TOPCON UV TOPCOR 1:2 f=50mm - 1969年発売
UV TOPCOR レンズ
UVマウントは1963年発売の WINK MIRROR S が始まりで、交換レンズは 35mm F3.5 / 53mm F2 / 100mm F4 が揃えられ、翌1964年に 135mm F4 / 200mm F4 が追加された。 35mmと53mmと100mmレンズは似た様な作りで、距離目盛は薄いアルミ板に指標がプリントしてあり、そのアルミ板を距離環にネジ止めしてあり安っぽさは否めなかった。 また、135mmレンズには前期型と後期型があり、後期型は最大径を小さくして引き出し式フードを内蔵している。 1969年に UNIREX 発売時に 28mm F4 と 50mm F2 が追加されたが、この2本は鏡筒デザインが改められて高級感のある容姿になった。
ちなみに、UV TOPCOR という名前の「UV」とはUltraViolet(紫外線)の事で、レンズの張り合わせ接着に紫外線吸収効果を持たせた接着剤を用いたレンズを意味するものらしい。 ところが、UV TOPCOR 28mm F4 は6群6枚だし UV TOPCOR 100mm F4 も5群5枚なので張り合わせが無いことから、本来なら「UV TOPCOR」ではないと思うのは僕だけか?
レンズ構成
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| レンズ構成 |
光学系は旧型の53mmレンズと同じ4群6枚構成の典型的なダブルガウス型だけど、後群レンズに
高屈折率ガラスを使ってバックフォーカスを確保しつつ焦点距離を短くしたと思われる。 なお、焦点距離表記が50mmになったけど、実際の焦点距離はライカ風の51.6mmに近いらしい。 また、最短撮影距離が0.6mなので、寄り足りないと感じるシーンも多かった。
UNIシリーズはビハインドシャッターシステムであるため後玉径を大きく出来ない事から周辺光量は前玉側で稼いでいる様で、前群と後群との口径サイズがとてもアンバランスなレンズ構成だ。 この傾向はマウント径が小さめな
RE,Auto-Topcor 5.8cm F1.4 にも言える。
冒頭で「ズミクロン殺し」の逸話を書いたけど、個人的にはそれほど高性能なレンズだった印象が無い。 写真工業のテストで高評価になった原因が謎だけど、テストレンズがチャンピオンレンズだったのではないかと想像している。 一般的な市販品でチャンピオンレンズに当たる確率はかなり低いだろうけどね。
酸化トリウム硝材を使用
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| 紫外線で蛍光発光する |
このレンズで採用した高屈折率ガラスの硝材が酸化トリウム含有硝材で、高屈折率低分散なので色収差を含めて収差補正にとても有効だけど、放射線の影響によりレンズが黄変してしまう。 酷く黄変した個体はデジカメのAWBがコケるシーンもあるので、後群に紫外線を照射して黄変症状を緩和させてから使用すべきだ。 なお、このレンズの放射線量は
アトムレンズの線量率測定記事に掲載してあります。
ちなみに、紫外線を照射するとガラスが珊瑚の様に黄緑色に怪しく蛍光発光して綺麗だったりする。 酸化トリウム含有硝材は紫外線で極々弱く青色に蛍光発光するハズだし、発光しているのは最終レンズじゃないし、酸化トリウム含有硝材を使っていない前群レンズも黄緑色に蛍光発光する。 この現象は前群・後群にある貼り合わせレンズの接着に使った UV TOPCOR という名称の由来である紫外線硬化樹脂が紫外線で強く黄緑色に蛍光発光しているのだと思われる。 2本ある UV TOPCOR 1:2 f=50mm で蛍光発光強度が異なるので、紫外線硬化樹脂の厚みが個体差で異なるのだろう。 なお、紫外線照射により鏡筒の赤い刻印塗料がオレンジ色に蛍光発光(放射性物質じゃないと思う)するのは意図した仕様なのかは判らない。 まぁ、普通は紫外線照明下で見る事はないので気が付かないだろう。
なお、紫外線硬化樹脂が照射した紫外線に反応して蛍光発光するという事は、樹脂含有物質が励起されているハズなので、余計な紫外線を照射すると悪影響がありそうだ。 張り合わせレンズ側にも放射線の影響が出ているけど、後群を分解して黄変が酷い最終レンズだけに紫外線照射した方が良いだろう。
レンズフード
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| 専用フードを装着 |
レンズ先端のΦ49mmフィルターネジとは別に距離環先端にΦ55mmネジが切ってある。 異常に軽いアルミ製シルバー色フードは距離環先端にネジ込む様になっていて、レンズ距離環と一体になるデザインで、黒枠フィルターを装着しても隠すことができる。 フードを装着した容姿も美しくて高級感があり普及機の域を超えている。 なお、フードの内側には反射防止とフード逆付け収納時のキズ防止とを兼ねた植毛材が貼ってあり、TOPCON UNIREX の外観は細部に渡って拘りが感じられる。
ただし、薄いアルミ製フードなので触ると安っぽさが伝わってしまう。 また、フード先端にある二本の飾り溝のエッジが鋭角で、指が擦れると皮膚が切れるのは困った欠点である。 フード脱着の際は気を付けた方が良い。
マウントアダプターの製作
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| 自作マウントアダプター |
レンズの最短撮影距離が0.6mなので全然寄れなくて、『あぁ、ここまでしか寄れない』と思う事が多い。 カメラに固定されているビハインドシャッター開口径が小さいため、繰り出し量に制限があるので仕方ないけど、ヘリコイドアダプターを利用してデジカメで撮影できればマクロ的な接写撮影も出来る。 UV TOPCOR は鏡筒側に絞り羽根があるけど、絞り操作環がなくボディー側にあるので、レンズ単体で絞りの操作が出来ない。 つまりマウントアダプターを自作する場合は連動機構を含めてカメラボディー部品を流用する必要がある。
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| 取り付けネジ穴加工 |
2台ある UNIREX のうち、シャッターがジャムっているジャンクカメラから マウント・絞り環・絞り伝達レバー などのユニットを取り外して交換用台座に取り付ける事にした。 台座は Φ55→52 / Φ52→55 / Φ55→37 の3個のステップリングを組合せ、厚みのあるΦ55→37リングにマウント取り付けネジ穴をΦ1.5mmで掘削してからタップを切ってみた。 この台座にUVマウントユニットをネジ止めし、ヘリコイド式マウントアダプターに装着すれば無限遠から接写まで使えるUVマウントアダプターになる。
なお、Φ55→37リングは内径を0.3mmほど削って穴径を拡大しないと、UVマウントユニットがキッチリと入らなかった。 ただし、広げ過ぎるとUVマウント固定用のネジ穴を侵食してしまうので、ガタ無くピッタリになる様に広げる必要がある。 また、UVマウントユニットには絞り環クリック用シーソーレバーの出っ張りがあるので、Φ55→37リングに出っ張りが収まる凹みを作らないと、絞り環付きマウントユニットが台座と正しく嵌合しない。
今回のマウントアダプターも
ペトリレンズ用マウントアダプターの製作時 と同じで、ステップリングの組み合わせ式だけど、0.85mmほどオーバーインフになったので距離環を3mまで繰り出さないと無限遠にならないのが少し悔しい。
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| 3点ネジ止めだけでは不安... |
遊び終わったらマウント部をカメラに戻すことも考えて、接着はしないでネジ止め対応(安全のため1サイズ大きな止めネジを使用)だけにしてある。 取り合えず、これで絞り設定も行えるし接写も可能になるので楽しく使える様になったけど、受け部材がヤワなΦ55→37アルミリングなのでネジ止めだけでは非常に不安だけど、適合するナットが無いので補強も難しい。 なお、アダプターに利用するジャンクカメラはUVマウントカメラなら WINK MIRROR S でも UNI でも UNIREX でも IC-1 でも問題なく使えるハズで、シャッターユニットは無いので後玉径が大きくなった HI TOPCOR 55mm F1.8 レンズでも使用できる...と思う。
簡単に済ませたい人は、わざわざジャンクカメラからパーツを取り出して自作しなくても、ネットで探せばマウントアダプターが見つかる(結構な値段だけど)だろう。
描写特性
このレンズが「ズミクロン殺し」と呼ばれた事に少々疑問を感じるけど、SUMMICRON-R 50mm F2 を持ってないので、具体的な差異は語れない。 通常のオールドレンズと同じ様にデジタル一眼(SONY ILCE-9)でデジタル時代での描写特性を確認してみよう。
遠景描写
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスは5800°Kに設定し、Dレンジオプティマイザーはオフに設定して現像してあります。
絞り:F2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F4 |
絞り:F5.6 |
絞り:F8 |
絞り:F11 |
画面中央付近は少しソフトな描写で、画面周辺にゆくほどフレアがかった描写になる。 ただし、高輝度じゃない部分は画面周辺でも意外に解像感がある。 ただし、この個体は画面左側中間部が妙にボヤケている。 片ボケという感じじゃないけど妙な欠陥だ。
F2.8に絞るとスッキリとした描写になり、中央付近は「ズミクロンかも知れない」と感じるし、画面隅以外では意外に頑張っている。 なお、画面左側中間部はボヤケが残っている。
F4に絞ると画面全域で充分な描写になり、画面左側中間部のボヤケもかなり改善している。 F5.6に絞ると画面全域で素晴らしい描写になる。
後玉径が小く制限されている割に絞り開放でも素敵な周辺光量落ちに踏み留まっているのは良い特性だ。 F2.8に絞ると周辺光量落ちが随分と改善されてしまい、F5.6まで絞れば周辺光量落ちが判らなくなり、F8で完全に解消される。
普及クラスの標準レンズとしては素晴らしい描写性能のレンズだと言えるだろう。 ただし、この個体は画面左側中間部のボヤケが残念だ。
夜景描写
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスは昼光色蛍光灯に設定し、Dレンジオプティマイザーはオフに設定して現像してあります。
絞り:F2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F4 |
絞り:F5.6 |
絞り:F8 |
絞り:F11 |
画面中央付近もフレアっぽく、画面周辺ではサジタル・メリディナルコマフレアでベール越しの様な感じだ。 ただし、強い輝点部分でなければそこそこ解像している様に見える。
F2.8に絞るとフレアが激減してかなりスッキリした描写に変わるけど、画面隅ではコマフレアが残っている。 F4に絞ると画面隅でも充分な描写になり、夜景撮影ならF4まで絞るのが良さそうだ。 F5.6まで絞れば画面隅でも点光源が点像に写る様になり、周辺光量低下も判らなくなる。
なお、日中遠景描写で目立った画面左側中間部のボヤケは夜景撮影では目立たなかった...というか判り難かった。 また、絞り羽根が5枚なので、絞り込んだ場合に回折による10本の光芒が発生する。 光芒の出方や本数は好みが別れるところだろう。
一般撮影
以下の写真は SONY ILCE-9 で撮影したRAW画像をIE Edit Ver.4.0.00.10311 にて、ホワイトバランスをオートに設定し、Dレンジオプティマイザーもオートに設定して現像してあります。
絞り:F2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F5.6 |
絞り:F2 |
絞り:F2 |
絞り:F2 |
絞り:F2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F5.6 |
絞り:F2 |
絞り:F5.6 |
絞り:F2 |
絞り:F2 |
絞り:F2 |
絞り:F5.6(接写) |
絞り:F2 |
絞り:F2 |
絞り:F8 |
絞り:F5.6 |
絞り:F2 |
絞り:F2 |
絞り:F2.8 |
絞り:F2 |
絞り:F5.6 |
絞り開放で輝度差がある被写体ではフレアが目立つけど、画面中央付近の解像感は悪くないし、画面周辺でもコマフレアが多いけど意外に堪えている。 絞ればシャープに写るレンズで、F5.6まで絞れば素晴らしい描写を見せてくれる。 後ボケに二線ボケの傾向があり、近距離ほど背景の輝点がリングっぽくなるけど、酷く煩い感じではない。
ヘリコイドアダプターなので繰り出してグイグイと接写してみると、深度も含めてF5.6に絞れば申し分ない描写が得られ、オリジナルが0.6mまでしか寄れないのが惜しまれる。
前ボケと後ボケの縁に色が付く「色ボケ」が認められるけど、目くじら立てるほどの量ではない。 また、紫外線浴でブラウニング対策も施してあるので、オートホワイトバランスでの発色は悪くない印象で、「ズミクロン殺し」なのかは判らないけど、左中間部のボヤケを除けば優秀なレンズだと思う。
左中間部がボヤケるのは何故?
概ね良好な描写特性だけど、絞りを開け気味で撮影すると、画面左側中間部のボヤケるのが惜しまれる。 この原因はレンズを覗き込んでみても判らないけど、前群の貼り合わせレンズ面に問題があるのではないかと想像している。
なお、もう一本の UV TOPCOR 50mm F2 は右上方向の片ボケが酷いレンズなので、製品の品質にはかなりのバラツキがあると思われる。
個体比較 絞り:F2 WB:5800K DRO:OFF(ダブルクリックで拡大)
少し天気が悪かったけど、2本の UV TOPCOR 50mm F2 を比較してみた。 左のSample-1が今回のレンズで、右のSample-2がもう一本のレンズです。 Sample-2は画面右のビルがかなりボヤケているのが判るだろう。 一方、画面左中間部付近はSample-2の方が良い描写だし、両者の焦点距離は微妙に異なる様なので、UV TOPCOR 50mm F2 は個体バラツキが大きいレンズだったと言える。 また、画面中央でピント合わせを行う場合、Sample-1よりSample-2の方がピントピークが良く判るので、画面中央はSample-2の方が高性能だ。
ちなみに、Sample-2にはブラウニング対策をちゃんと施していないので、同一現像条件だと茶色く濁っている事が判る。
あとがき
SUMMICRON-R 50mm F2 を使った事が無いので「ズミクロン殺し」かどうかは判らないけど、製造誤差・個体差が少なければ普及クラスのレンズとしては優秀なレンズだと思う。 わざわざマウントアダプターを作ってはみたけど、ペトリレンズと同様に使ってみたくなる楽しそうな UV TOPCOR は見当たらないのが残念だ。
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| TOPCON UNIREX |
TOPCON UNIREX はボディーもレンズもシルバー製品は全シルバーで、ブラック製品は全ブラックにするなど、外観に拘った製品だった。 この UV TOPCOR 50mm F2 と同様に鏡筒・フードともシルバー仕上げの UV TOPCOR 28mm F4 が発売されていて、開放値がF4と暗いけど意外と高い描写性能だったらしい。 シルバーの TOPCON UNIREX とセットでコレクションしたいレンズだけど、シルバーの UV TOPCOR 28mm F4 は滅多に見かけない。
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