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KOMURA KOMURANON f=28mm 1:2.5(CANON F-1Nに装着) |
コムラーレンズの末期に発売された KOMURANON 28mm F2.5 は同クラスのレンズとしてはアメ車の様に大きくて重い。 大柄な一眼レフに装着した容姿はカッコ良いけど、使用感も描写感もちょっとクセのあるレンズだ。
KOMURA LENS MFG. LTD KOMURANON f=28mm 1:2.5
コムラーレンズの歴史(引用:Wikipediaなど)
1927年 |
レンズ研磨工場として島司製作所を設立。 |
1951年 |
三協光機研究所を設立。 三協とは、技術・営業・資本の三部門の協力と均衡を保つという意味らしい。 |
1955年 |
三協光機株式会社に改組。 ブランドを決めることになり、社長の小島満と専務の稲村から文字を取ってコムラー(Komura 、またはKomura- )とした。 |
1957年? |
一眼レフ用レンズ市場に進出。(固定マウント式) |
1964年 |
テレコンバーター 「TELEMORE」を発売。 |
1967年 |
プリセット絞りの UNI マウント式交換レンズ群を発売。 テレコンバーター 「TELEMORE 95」を発売。 距離計に連動するライカM用テレコンも発売された。 |
1969年 |
株式会社コムラーレンズ(Komura Lens MFG. Ltd. )に社名変更。 |
1970年? |
自動絞りの UNI AUTO マウント交換式レンズ群を発売。 |
1974年? |
自動絞り開放測光対応の KOMURANON マウント交換式レンズ群を発売。 |
1980年 |
倒産 |
三協光機/コムラーの歴史は不明な点も多く、各製品の発売時期も良く判らない。 なので、上記の年代も間違っているかもしれない。 同社は普及価格帯のレンズの他に 85mm F1.4 などの意欲的なレンズも発売していた。 ちなみに、本レンズは1974年頃に発売されたらしい。 なお、KOMURANONの開放F2.5シリーズには 24mm / 28mm / 35mm / 100mm / 135mm があった様だ。
レンズ諸元比較
他社の同クラスレンズと比べると大きくて重い鏡筒は高級&高性能レンズの様な風格がある。 試しに70年代の同仕様レンズと比較してみたのが下の表である。
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KOMURANON |
TAMRON 02B |
FD 28mm F2 |
発売年 |
1974年? |
1979年 |
1975年 |
焦点距離 |
28mm |
28mm |
28mm |
開放F値 |
F2.5 |
F2.5 |
F2 |
レンズ構成 |
7群9枚 |
7群7枚 |
8群9枚 |
絞り羽根 |
6枚 |
5枚 |
8枚 |
最短撮影距離 |
0.3m |
0.25m |
0.3m |
大きさ |
Φ67x80mm |
Φ64.5x33mm |
Φ66x61mm |
フィルタ径 |
58mm |
49mm |
55mm |
重量 |
490g (マウント不明) |
180g (NIKONマウント) |
343g |
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レンズ構成図 |
コムラノンより明るいキヤノンの FD 28mm F2 と比較してもコムラノンレンズの方が大きく重い。 一方、タムロンのマウント交換式アダプトールレンズが如何に小型・軽量なのかが判る。 ただし、カメラに装着した容姿はコムラノンレンズが断然カッコ良い。 フィルター径が58mmもあるので、大型のカメラに装着しても威風堂々としている...組合わせると結構重いけどね。 レンズ構成は7群9枚のレトロフォーカス型で、前群の大きな3枚が重さの原因だろう。 これに似たレンズ構成を何処かで観た覚えがあるけど...思い出せない。
距離環にクリック!
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3mと1.5mにクリック |
距離環を回してみて『壊れてるじゃん!』と勘違いしたのが距離環クリックだ。 このレンズは距離環の3mと1.5mにクリックが設定されている。 3mの位置で絞りをF8にすれば無限遠から1.5mまでピントが合い、1.5mの位置で絞りをF16にすれば無限遠から0.8mまでピントが合うという意味合い(銀塩サービスサイズで)なのだろうけど、距離環を回している時に「カチッ」とクリックに嵌っちゃう。 1.5mも3mも頻繁に使う距離域なのに、スムースな距離環操作とはかけ離れた仕様は好きになれない。 クリックをオフに出来ないのが惜しまれる。
交換式マウント
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マウントが交換可能 |
先々代のレンズ群は UNI マウント(現存するTマウントみたいなもの)だったので、自動絞りなどには対応していなかった。 その後、UNI AUTO マウントとなり自動絞りに対応したが、測光には未対応だったりもした。 最後の KOMURANON マウントは絞り環を含めたマウント部を交換する方式になり、自動絞りと測光にも対応した。
ただし、 KOMURANON マウントは絞り環を含めた交換方式なので、開放F値が同じマウント部を使わないと意図した絞りを設定出来ないのがタムロンのアダプトールより大きく劣るシステムであった。 また、レンズ本体と交換式マウントの接続部はFDマウントの様なスピゴット式で、締め付けるだけでロックが無い。 その後にビス止めが追加されたが、ほぼ固定マウントと変わらなくなってしまった。
更に『やっぱ壊れてるじゃん!』と疑ったのが絞り環のクリックだ。 距離環にクリックがある事にたまげたけど、
絞り環にクリックが無い事にも驚いた。 知らぬ間に絞り設定値が変わってしまうし、設定絞り値も曖昧なので使い難いったらありゃしない。 距離環クリックは要らないけど絞り環クリックは欲しかったなぁ。 このレンズ以外で自動絞り式一眼レフ用交換レンズで絞り環のクリックが無い製品は
PETRI FT 用の C.C Auto Petri 55mm F1.4 くらいだったろう。 PETRI FT では測光レバーを押しながら絞りを操作させる利便性(???)のために絞り環にクリックを付けていなかったらしい。
さて、このレンズは開放F2.5なので、開放F2.5の KOMURANON 24mm / 28mm / 35mm / 100mm / 135mm とはマウントの互換がある。 しかし、それ以外の KOMURANON ズームレンズなど開放F値が異なるレンズとはマウントの互換が無い。
描写特性
絞り開放ではベール越しの様なフレアっぽい描写でピント合わせのピークが判り難く、先に書いた「距離環クリック」と併せてピントを合わせに難儀する。 なお、素敵な周辺光量低下がノスタルジックな写真を演出してくれるし、画面周辺がボケボケという訳でもない。 極四隅を除いてピントを合わせた部分では何が写っているかちゃんと判別可能だ。
このレンズは輪帯球面収差がオーバー補正なので、近距離にピントを合わせると背景のボケがさんざめくのだけど、遠景輝点が素敵なシャボン玉ボケになってくれる。 ただし、画面周辺にゆくほどC状に欠けたシャボン玉になるのが惜しまれる。 設計者がこの描写特性を意図的に目指したとは思えないけど、高性能レンズでは味わえない個性的な描写をしてくれる。 更に、太陽を画面に入れてみると見慣れない丸いゴーストが現れる。 このゴーストを効果として使えるかも知れないけど、画面全域のコントラストが著しく低下してしまうのが悩ましい。
一方、F4程度に絞ればコマフレアがかなり少なくなるけど、素敵な周辺光量低下も目立たなくなってしまう。 また、F8程度まで絞れば遠景の画面周辺でも充分な描写になり、極四隅以外はシャープになってしまう。 なお、大き目の樽型歪曲収差があるので直線基調の建造物などを撮影すると気になるだろうけど、目くじらを立ててはイケナイ。
逆光には弱く、画面内外にハイライト部があるとコントラストが大きく低下するけど、順光条件なら色乗りや発色自体は悪くないと思う。 また、明暗差がある部分に色収差が目立つ場合があるのでアプリで補正すれば良いだろう。 最新のアプリならイイ感じに色収差部分を補正してくれるので色収差を気にしなくても良くなった。(実写サンプル写真は色収差補正などは行っていません)
豊富な残存収差によりクセが強めのレンズだけど『うぇぇっ』というクセじゃなく、『ほほぅ』というポジティブなクセがある描写だと思う。 現代のレンズとは比べ様もないけど、絞り込めばシャープにも写るので楽しく遊べるレンズだ。
実写サンプル(SONY ILCE-9による)
絞り:F2.5 |
絞り:F4 |
絞り:F8 |
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絞り:F2.5 |
絞り:F2.5 |
絞り:F2.5 |
絞り:F5.6 |
絞り:F8 |
絞り:F8 |
絞り:F2.5 |
絞り:F2.5 |
絞り:F8 |
あとがき
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専用ケース・フード付き |
コムラーレンズの製品は「テレモア」とか「925ズーム」などを知ってはいたけど、今まで買った事も使った事もなかった。 このレンズは元箱・ケース・フード付きの中古が三千円ほどで買えたけど、オークションサイトで調べてもタムロンのアダプトール用交換マウントは沢山あるのに、コムラノン用交換マウントは殆ど見当たらない。 コムラノンの交換レンズ製品販売は芳しくなった(僕自身、このレンズを入手するまでコムラノンブランドは知らなかった)と想像される。 世の中に高性能な銘玉や残念な迷玉は沢山あるけど、コムラー終末期の KOMURANON 28mm F2.5 は現代風の容姿を纏った楽しめる迷オールドレンズだと思う。
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