Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 - 優秀なオールド標準レンズ

0

Rollei-HFT Planar 1.8/50(SL2000Fに装着)
Rollei-HFT Planar 1.8/50
 ローライの135フィルム用一眼レフカメラは1970年に発売された Rolleiflex SL35 からで、独自のマウント規格QBMが採用された。 レンズは Carl Zeissブランドの他に Schneiderブランドや自社ブランドの Rolleinar などがあった。 Rolleinarブランドの製品はトキナーやマミヤなど日本メーカーからのOEM製品が多かった様だ。

Rollei-HFT Planar 1.8/50

このレンズはシンガポール製
Lens made in Singapore
 この Rollei-HFT Planar は Carl Zeiss からのライセンス製品で、シンガポールで生産されたレンズである。 その昔は「MADE IN GERMANY BY Rollei」の製品には高値が付いて、「MADE BY Rollei SINGAPORE」の製品は敬遠されたりもした。 ただ、両者にどれほどの違いがあるのかは知らない。 なお、Rollei-HFTHFT とは High Fidelity Transparent の略で、ローライが開発したレンズコーティングの名称である。 Carl Zeiss の T* コーティングよりアンバー系が強めの発色なのが特徴とされている。

 ちなみに、レンズのフィルター径が49mmなのだけれど、市販の安価な標準レンズ用フードを装着すると画面四隅がケラレてしまう。 そこで利便性を考慮して49⇒52mmのステップアップリングを介してニコンのフード HS-1 を使う事にした。 このフードならケラレる事もないし、逆付け収納も出来て便利だ。 HS-1 の他に HS-5 や HS-9 でも良いのだけれど、昔の2ボタン式フードが好きなのだ。 また、少しキツイけどローライ純正のカブセ式フロントキャップが HS-1 のΦ52mmオスネジ部にカブセる事が出来る。

 手持ちのQBM⇒SONY E用マウントアダプターでは微妙に無限遠が出ていない感じなので、マウントアダプターに合わせて無限遠位置を微修正しておいた。 また、距離環が昔よりスカスカ感があってトルクムラも生じていたので、ヘリコイドの見える部位だけを簡易清掃してグリスアップしてみたら随分と良い感じになった。 作業後の感触が良すぎて昔の感触を思い出せなくなってしまったけど、昔と同じになった...という事にしておこう。 このレンズはヘリコイドの清掃・グリスアップ・無限遠調整が楽な構造で、レンズも最前面レンズ押さえを外せば前群全部が簡単に取り出せる。 なので、ついでに前群の各レンズも清掃しておいた。

レンズ構成

Rollei / CONTAX / YASHICA のレンズ構成図
レンズ構成図
 Rollei の Planar F1.8 も CONTAX の Planar F1.7拡張ガウス型の6群7枚構成だけど、レンズ配置は随分と異なる。 CONTAX Planar は後群に凸レンズを1枚追加していて、Rollei Planar は前群に凸レンズを1枚追加して 凹Ultron型 に近い(凸レンズだけど)タイプになっている。 レンズ構成の違いにより、描写特性にも違いがあるハズだ。 また、なかなか優秀だと感じた YASHICA ML の 50mm F1.7 は一般的な 5群6枚構成の拡張ガウス型なので、 5群6枚構成の一般型と比べると Rollei も CONTAX もレンズを1枚奢った設計になっている。

描写特性

遠景描写

 絞り開放ではフレアっぽい描写だけど中央解像感は悪くないし、画面周辺でも大崩れすことはない。 この辺りがレンズを1枚奢った成果なのだろう。 F2.8に絞れば中央のフレアっぽさが消えてシャープになり、画面周辺も通常の鑑賞サイズなら充分な画質になる。 F5.6ならとてもシャープなピント面になる。 色々と撮影してみると何となくベストな撮影距離条件は5m前後の様な気がするなぁ。
 絞り開放での周辺光量低下はなだらかに落ちてゆくので素敵な写真が撮れる。 F2.8に絞ると目立たなくなり、F4だと殆ど判らなくなってしまう。 周辺光量落ちは比較的少ない部類のレンズだと思う。
Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 絞り:F1.8
絞り:F1.8
Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 絞り:F2.8
絞り:F2.8
Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 絞り:F5.6
絞り:F5.6

ボケ描写

 ボケ具合は大デフォーカスによる大きなボケはとてもスムースで、小デフォーカスによる小さな後ボケは少しだけ2線ボケの傾向がみられる。 ただし、明確なエッジが立ったりしないので殆ど気にならない。 恐らく球面収差補正がフルコレクションに近いのだろう。 また、周辺グルグル感もないので背景に気を配らなくても大丈夫そうだ。 また、色乗りも悪くないと思う。
Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 絞り:F1.8
絞り:F1.8
Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 絞り:F1.8
絞り:F1.8
Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 絞り:F4
絞り:F4
Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 絞り:F1.8
絞り:F1.8
Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 絞り:F1.8
絞り:F1.8
Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 絞り:F1.8
絞り:F1.8
Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 絞り:F1.8
絞り:F1.8
Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 絞り:F4
絞り:F4
Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 絞り:F4
絞り:F4

逆光描写

 古いレンズだけどHFTのお陰なのか逆光には強いと思う。 前玉を陽光が照らしてる状態でも派手なフレア画面にはならないで良く粘ってくれる。 開放で画面内に太陽を入れ込むと虹ゴーストが出てくれる。 虹ゴーストは絞りユニット部品によるゴーストだろう。 絞れば虹ゴーストが消えてシャワーゴーストを出せるので、必要に応じて効果的に使えば良いだろう。
Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 絞り:F1.8
絞り:F1.8
Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 絞り:F1.8
絞り:F1.8
Rollei-HFT Planar 50mm F1.8 絞り:F5.6
絞り:F5.6

CONTAX Planar T* と比較

 遠景の同じシーンで CONTAX Planar 1.7/50 T* と比較してみると、倍率色収差や周辺画質を含めて CONTAX Planar 1.7/50 T* の方が少しだけ優れていると思う。 決して Rollei-HFT Planar 1.8/50 が悪い訳では無く、CONTAX Planar 1.7/50 T* が良すぎるという印象だ。
 発色については CONTAX Planar 1.7/50 T* が若干暖色系なのに対して Rollei-HFT Planar 1.8/50 は若干寒色系の発色になる...比べればの話だけどね。 HFTコーティングはアンバーが強いハズだけど、結果は逆だった。 使用されている硝材の透過率も影響するし、経年によるレンズのヤケも影響しているのかも知れない。 とちらか好きなレンズを選べと言われれば、 CONTAX Planar を選択するかなぁ。

CONTAX Planar T*Rollei-HFT Planar の比較(絞り:開放 WB:太陽光)

あとがき

 Rollei-HFT Planar 1.8/50 は「Planar」の名に恥じない描写をしてくれるけど、オールドレンズっぽいクセが少ないとも言える。 絞り開放ではフレアっぽい描写だけど、嫌味の無い描写で安心して使える優等生的なレンズだと思う。 このレンズは操作性が悪すぎる Rolleiflex SL2000F 用のレンズだったので使う機会が殆どなかったが、現代ならミラーレスデジタル一眼で気軽に楽しめる。
Sponsored Link
Sponsored Link

0 件のコメント :

コメントを投稿

Sponsored Link